バックナンバーの紹介

最新医学55巻8号(絶版売切)

特集要旨

注:アルファ、ベータ等のギリシャ文字は機種依存文字のため、HP上ではアルファベット(alpha,beta,etc)で表示しております。(本誌ではギリシャ文字です)


アプローチ:究極の目的 −線維化改善への治療法の開発−


岡崎 勲***1    朴沢 重成**1   石川 昭子*1      渡辺 哲*2
*1 東海大学医学部地域・環境保健系地域保健学部門 **1 同講師 ***1 同教授
*2 同環境保健学部門

要旨
 本論文では,「肝線維化の分子機構−肝硬変治療の新戦略−」の特集を組んだ趣旨と 13 論文の意義を解説した.細胞外マトリックスは単なる支持組織ではなく,接着分子,各種サイトカイン,それらの受容体,シグナル伝達機構と連結しており,興味深い新知見から治療法の開発への進歩を述べた.かつては肝硬変は不可逆性の病態と考えられてきたが,C型慢性肝炎に対するインターフェロン治療で線維化の改善が実証される一方,実験的肝硬変はある条件下で可逆性であることが証明されてきた.肝星細胞の活性化とその抑制,サイトカインの遺伝子工学,マトリックス代謝に関与する酵素の遺伝子治療など,各執筆者の論文を読むに当たって理解に便なるように解説した.


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コラーゲンのニューフェース


米澤朋子*    二宮善文**
* 岡山大学医学部分子医化学 ** 同教授

要旨
 コラーゲンの生体内における新しい生理活性が幾つか明らかになってきている.コラーゲン遺伝子群の発現が,細胞外からの機械的ストレスに対応する保存されたプロモーターを介して制御されている証拠が出てきた.今までに知られているコラーゲン受容体(インテグリン)とは異なる受容体が明らかになってきている.最近,BMP-1類似酵素が見つかり,形態形成に重要な機能を果たしている可能性が出てきた.また,IV型コラーゲンの新しい機能として,NC1 ドメインに血管内皮細胞の遊走阻害活性があることが分かってきた.


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肝におけるヒアルロン酸の動態


矢田俊量*1*2  木全弘治**1
*1 愛知医科大学分子医科学研究所 **1 同教授
*2 生化学工業東京研究所

要旨
 近年,細菌および真核生物のヒアルロン酸(HA)合成酵素遺伝子が単離され,HA 生合成に関して正確かつ新しい知見が集積されつつある.本レビューでは,肝疾患にみられる HA の動態の変化の関与について,この合成酵素の分子実体と HA 合成機構に関する最新の知見から概説する.


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MMP/TIMP のカスケード


中村博幸*    岡田保典**
* 慶應義塾大学医学部病理学教室 ** 同教授


要旨
 肝線維化における線維の沈着は,細胞によるコラーゲンの合成とプロテアーゼによる分解のバランスの崩れによって起こると考えられる.したがって,細胞外マトリックスに対し広い分解活性を持つマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)とそのインヒビター(TIMP)は,肝線維化の制御因子の1つとして注目されている.ここでは MMP と TIMP の諸性質について,最近の知見を中心に概説する.


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肝星細胞の増殖・活性化・運動・接着


上野 隆登**   坂田 隆一郎*    佐田通夫***
* 久留米大学先端癌治療研究センター(第二内科)
** 同助教授 *** 同教授


要旨
 肝臓での主要な細胞外マトリックス産生細胞である肝星細胞は,PDGF や IL-1 betaで増殖し TGF beta1 で細胞外マトリックス産生が増加する.肝線維化が進行する際に,肝星細胞ではこれらの複数のサイトカインの作用が関与している.また活性化した肝星細胞は,その運動能による類洞微小循環制御に重要な役割を果たしている.ここでは,肝星細胞の増殖と活性化,運動,接着にかかわるサイトカインや細胞内情報伝達などを中心に,私どもの研究も含め近年報告されたことを概説した.


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肝星細胞の活性化とレチノイド


秋田國治*1  奥野正隆*1 足立政治*1  佐野哲朗*1  加藤則廣*1 森脇久隆**1 小嶋聡一*2
*1 岐阜大学医学部第一内科学教室 **1 同教授
*2 理化学研究所筑波研究所分子細胞生物学研究室


要旨
 肝星細胞は活性化の過程で,レチノイドを含有する脂肪滴を胞体から失う.この現象から,レチノイドと星細胞の活性化との関係が論じられてきた.レチノイドの星細胞に対する作用は多面性を有する.貯蔵型(レチニルエステル)と活性型(レチノイン酸)のおのおののレチノイドでは相反する作用を示し,また同じレチノイン酸でも標的となる細胞により異なる作用を有する.結果として,レチノイドは肝線維化を抑制する場合も促進する場合もある.


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コラーゲン産生の遺伝子制御


稲垣 豊
国立金沢病院内科・臨床研究部


要旨
 コラーゲンの発現は組織・臓器形態の保持のみならず,種々の生理的あるいは病理的過程において重要な役割を演じている.近年の研究により,サイトカインによるコラーゲン産生の制御機構が分子レベルで明らかにされるようになってきた.alpha2(I)コラーゲン遺伝子を例にとって,その代表的な転写促進因子 TGF betaと,拮抗的に働く TNF alpha,IFN gammaの作用機序に関する最近の知見を,著者らの成績を中心に概説した.


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肝星細胞におけるマトリックスメタロプロテアーゼ-1 遺伝子発現の制御機構


朴沢重成*    岡崎 勲**
* 東海大学医学部地域保健学講師 ** 同教授

要旨
 肝線維化の治療法の開発には肝星細胞におけるマトリックスメタロプロテアーゼ-1(MMP-1)の遺伝子発現の調節機構の解明が必要であるが,現在のところその報告は文献的に見当たらない.他の細胞における MMP-1 遺伝子転写を調節しうる転写因子は,肝星細胞の活性化に関与するものが多い.肝星細胞の活性化シグナルと MMP-1 の発現は密接に関連していると考えられ,今後の検討が期待される.


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トランスジェニックマウスによるTIMP-1 の線維化促進機序


吉治仁志*    栗山茂樹*    福井 博**
* 奈良県立医科大学第三内科 ** 同教授

要旨
 肝特異的発現を示す TIMP-1 トランスジェニックマウスを用いて TIMP-1 の肝線維化過程に及ぼす直接的作用を検討したところ,TIMP-1 は実験的肝線維症において著明な肝線維化促進作用を有することが明らかになった.そのメカニズムとして,マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の活性を阻害して細胞外マトリックスの分解を抑制するとともに,活性化肝星細胞のコラーゲンの産生を亢進させ,これらの作用が相まって肝線維化促進に働くことが示された.


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肝線維化・肝硬変への肝細胞増殖因子(HGF)を用いた遺伝子治療


植木 孝浩*    藤元 治朗**
* 兵庫医科大学第一外科 ** 同講師

要旨
 肝線維化の病態には,TGF beta1 を中心的に,多くのサイトカインがネットワークを形成していることが明らかとなってきた.一方,肝細胞増殖因子(HGF)は,肝再生因子の本体と考えられる増殖因子で,肝疾患への治療の試みが報告されるようになってきた.本稿では,HGF を用いた肝硬変への遺伝子治療を紹介し,臨床応用への取り組みを紹介する.


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肝線維化発症・進展における TGF betaの役割 ― 抗 TGF beta療法の有用性 ―


中村 徹*1*2  Zhe Qi*1    上野 光**1
*1 九州大学医学部 循環器内科 **1 同講師
*2 久留米大学医学部第二内科

要旨
 細胞内キナーゼを欠失した変異型 TGF beta受容体は,野生型受容体機能を阻害して TGF betaの作用を特異的に抑制できる.この変異型受容体をアデノウイルスを用いて肝臓に遺伝子導入すると,肝毒素による肝線維化は著明に抑制され,血清中の肝酵素は低値に保たれ,さらに対照群がすべて肝不全で死亡する中,変異型 TGF beta受容体遺伝子導入群では全例が生存した.すなわち,TGF betaは肝線維化の発症・進展に中心的な役割を果たしていること,線維化の抑制が肝臓機能保持に働くことが明確に示され,抗 TGF beta療法の可能性が開けた.



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インターフェロンの肝線維化抑制機構


谷口博順*    白鳥康史**   小俣政男***
* 東京大学医学部附属病院消化器内科 ** 同講師 *** 同教授

要旨
 C型慢性肝炎に対しインターフェロン(IFN)を使用すると,次第に肝線維化が改善していく.これはウイルスが駆除され,肝炎が鎮静化する結果による2次的なものだと考えられていたが,IFN が星細胞の活性化を抑制することで直接的に肝線維化を抑制している可能性も示唆されている.しかし,いかなる細胞内シグナル伝達経路を介して肝星細胞の活性化を抑制するかについて詳細は不明であり,今後の解明が期待される.


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プロリルヒドロキシラーゼ阻害薬


鈴木千衣子*    坂井田 功*    沖田  極**
* 山口大学医学部第一内科 ** 同教授


要旨
 プロリルヒドロキシラーゼ阻害薬(HOE077)はコラーゲン合成過程でのプロリン水酸化を阻害し,コラーゲン線維の産生を阻止することで抗線維化作用を示す.近年 HOE077 による肝線維化担当細胞である肝星細胞の活性化抑制作用が報告され,その臓器特異性が示された.



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肝線維化の回復過程のマトリックスメタロプロテアーゼ遺伝子発現


高原照美*  渡辺明治**
* 富山医科薬科大学 第三内科講師 ** 同教授


要旨
 細胞外マトリックス量はその産生と分解のバランスで成り立っているが,その分解は主にマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)とそのインヒビター(TIMP)によって調節されている.線維化回復過程では MMP-1,MMP-13 の増加は見られないが,MMP-2,MMP-14 は正常肝より増加しており,肝局所での分解に部分的に関与していると考えられる.また回復過程では肝星細胞のアポトーシスも著明であり,肝星細胞数の減少によるマトリックス産生の低下と TIMP の発現の低下も相まって,分解系が優位となっていくものと考えられる.

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