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最新医学 別冊
リウマチ2000−慢性関節リウマチ病因・病態解明と治療の最前線−

要旨

注:アルファ、ベータ等のギリシャ文字は機種依存文字のため、HP上ではアルファベット(alpha,beta,etc)で表示しております。(本誌ではギリシャ文字です)




アプローチ:リウマチ研究の成果と今後の展望−病因解明から治療戦略の確立へ向けて−


西岡 久寿樹
聖マリアンナ医科大学教授・難病治療研究センター長

要旨
 慢性関節リウマチを中心とする,リウマチ性疾患の過去 10 年間での厚生省研究班を中心とした研究効果を総括し,リウマチ性疾患の研究の現状と展望について述べた.とくに,骨関節疾患制圧 10 カ年計画が,国連,世界保健機構(WHO)を中心とした国際機関から提唱されており,それに対する戦略プログラムを提唱した.
 また,今後の生命科学研究および医療分野で大きなテーマと考えられる骨・関節疾患に対して,その科学的な基盤を構築するために,運動器科学(Locomotor Science)という新しい科学領域を提唱し,その確立の意義と重要性について述べた.

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慢性関節リウマチの疾患モデル


岩倉 洋一郎
東京大学医科学研究所 ヒト疾患モデル研究センター 教授

要旨
 慢性関節リウマチ(RA)患者の関節では IL-1,IL-6 などのサイトカインの発現が亢進している.我々は HTLV-I遺伝子導入トランスジェニックマウスモデルを用い,これらのサイトカインが病態形成に重要な役割を果たしていることを示した.さらに,IL-1 受容体アンタゴニスト(IL-1ra)ノックアウトマウスが自己免疫性の関節炎を発症することを見いだし,サイトカイン発現のアンバランスが関節炎の原因になりうることを示した.

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慢性関節リウマチの病因遺伝子


塩沢 俊一**1  駒井 浩一郎*1 小西 良武*1  日笠 真理*1 向江 直子*1  塩沢 和子*2
*1 神戸大学医学部保健学科臨床免疫学 **1 同 教授
*2 国立加古川病院リウマチ科

要旨
 自己免疫疾患は,遺伝素因に環境要因(引き金)が加わって発症する.自己免疫疾患の1つである慢性関節リウマチの遺伝素因について検索し,マイクロサテライトマーカーを用いた家系解析によって疾患遺伝子座を同定した.次いで,この結果を踏まえて,当該部位に位置する疾患感受性遺伝子を同定した.第1染色体に位置する疾患遺伝子候補として細胞死にかかわる DR3 遺伝子を,そしてX染色体に位置する疾患遺伝子として低分子量Gタンパク質に対する GEF 活性を有する Dbl プロトオンコジーンの 3'端欠損遺伝子を見いだした.こうした研究により,細胞増殖あるいは細胞死にかかわる分子が自己免疫疾患の遺伝素因を形作っていることが分かった.

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慢性関節リウマチの原因病巣としての骨髄


冨田 哲也*1  高野 裕史*1 史 賢林*1 高樋 康一郎*1 坪井 秀規*1 橋本 淳*1
鈴木 隆二*2  吉川 秀樹**
 越智 隆弘**1
*1 大阪大学医学部 整形外科 **1 同 教授
*2 塩野義製薬活繪ネ学研究所

要旨
 我々は,慢性関節リウマチ(RA)の原因病巣として骨髄に着目し,一般に主病巣と考えられている滑膜病巣は,骨髄病巣が2次的に関節内に形成されたものであると考え,RA の骨髄病態について解析してきた.RA 造血系骨髄においては,種々の血球系細胞の異常活性化が認められ,骨髄ナース細胞が重要な役割を果たしていると考えられた.ナース細胞は罹患関節骨端部骨髄,関節滑膜にも存在し,関節局所でも造血系骨髄と同様の病巣形成機序が作用していると考えられた.

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転写統合装置からのリウマチ性疾患へのアプローチ


中島 利博*1*2*3
*1 筑波大学応用生物化学系 講師
*2 聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター
*3 科学技術振興財団 先がけ研究 21 研究員

要旨
 慢性関節リウマチ(RA)の主病変の1つである滑膜細胞の過増殖と活性化の制御は,リウマチ性疾患制圧の標的であると考えられている.近年,リウマチ滑膜細胞に転写亢進状態が存在し,RA の病態に深く関与していることが示された.一方,基礎転写学の分野で,ほとんどすべての転写活性化因子と複合体を形成し,核内シグナルを統合する転写コアクチベーターと呼ばれる因子群が同定・機能解析された.本稿では,転写コアクチベーター分子の研究の進展と,筆者らが最近発見したリウマチ滑膜細胞での,転写統合装置レベルにおける機能異常とその意義について概説する.

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アポトーシスとリウマチ


米原  伸
京都大学ウイルス研究所 教授

要旨
 Fas はアポトーシスを誘導する細胞表層受容体分子である.Fas は活性化した末梢のT細胞やB細胞の除去や,慢性関節リウマチ(RA)発症時に炎症に伴って増殖する滑膜細胞の除去を行い,RA 発症の阻止に関与する.ここでは,正常細胞が Fas を介するアポトーシスに耐性を獲得する新たな分子機構と,Fas を介するアポトーシスを誘導することによって RA の治療を試みる研究について解説したい.


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細胞回転と骨軟骨破壊


上阪  等*  宮坂 信之**
* 東京医科歯科大学大学院 生体応答調節学(第一内科)** 同 教授

要旨
 慢性関節リウマチは,関節滑膜における炎症とその結果生じる滑膜増殖に特徴づけられる疾患である.増生した滑膜組織は,関節を破壊して重大な機能傷害を招く.従来の治療法は,炎症を抑制しようとするものがほとんどであった.筆者らは,滑膜細胞の細胞周期について検討を行い正常線維芽細胞との差異を見いだすとともに,これを利用した細胞回転の抑制が効果的な治療法となりうることを見いだした.

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軟骨破壊における一酸化窒素の役割


西田 圭一郎* 井上 一**  松尾 真嗣*  佐々木 和浩* 吉田  晶*
* 岡山大学医学部 整形外科 ** 同 教授

要旨
 慢性関節リウマチ(RA)では,主として増殖した関節滑膜で産生されるサイトカイン,中性プロテアーゼ,活性酸素などの炎症性メディエーターが骨・軟骨破壊を進展させる.近年,関節炎局所において一酸化窒素(NO)産生が亢進していることが報告され,さらに軟骨破壊に関する NO とアポトーシスの役割が注目されて来ている.我々は RA をはじめとする関節炎の発症・進展に NO が深く関与し,炎症下で発現誘導される誘導型 NO 合成酵素(iNOS)を制御することで関節炎の抑制がある程度可能であると考えている.

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滑膜増殖と軟骨破壊


松野 博明** 遊道 和雄* 木村 友厚***
* 富山医科薬科大学医学部 整形外科 ** 同 助教授 *** 同 教授

要旨
 慢性関節リウマチ(RA)の滑膜中には多くのリンパ球が浸潤している.我々はこの中でもとりわけ Th1 タイプのリンパ球のテロメラーゼ活性が高いことを確認した.すなわち,RA の滑膜中では Th1 タイプのリンパ球が長期にわたり生存している可能性が高いと考えられた.そこで次に,もしリンパ球に対して特異的に細胞死を誘導し,その寿命を縮めることができれば,RA の治療法として極めて有用であろうと考えた.以上の仮説からアポトーシスの機能を発現するのに Fc gamma受容体が必要な,ヒト抗 Fas 抗体を用いた治療実験を試みた.その結果,本抗体が RA 治療薬として極めて有用である可能性が証明されたのでここに紹介する.

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血管新生抑制および破骨細胞性骨吸収の抑制による関節炎の骨関節破壊制御


首藤 敏秀*  岩本 幸英**
* 九州大学大学院医学系研究科 整形外科 ** 同 教授

要旨
 慢性関節リウマチ(RA)の滑膜における血管新生はパンヌスの形成に不可欠である.血管新生阻害剤として開発された MMP インヒビター(OPB-3206)をアジュバント関節炎ラットに投与することにより,関節の炎症,パンヌス形成および骨関節破壊を防止できた.また,強力な骨吸収阻害剤であるビスホスフォネート(YM175)を同モデルに投与することによっても,関節の炎症を抑制し骨関節破壊をほぼ完全に防止できた.

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破骨細胞と骨関節破壊


織田 弘美**  田中  栄* 高柳 広*  十字 琢夫* 飯塚 秀治*
山本 愛一郎*  宮崎  剛*  門野 夕峰* 中村 耕三***

* 東京大学医学部整形外科 ** 同 助教授 *** 同 教授

要旨
 破骨細胞は生体内で骨吸収を担う唯一の細胞であり,慢性関節リウマチ(RA)の骨関節破壊において主たる役割を担っている.破骨細胞は造血幹細胞を起源とするマクロファージ・単球系細胞 より分化した単核の前駆細胞が融合して形成されるが,その分化誘導のメカニズムは破骨細胞分化誘導因子,破骨細胞形成抑制因子の発見により飛躍的に進歩し,滑膜組織から破骨細胞が誘導される過程においても,これらの因子が深くかかわっていることが明らかになった.この系の制御を中心とした破骨細胞機能の制御は,今後の RA 治療の大きな柱になることが期待される.

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新しい DMARD の効果と限界


鈴木 康夫*  市川 陽一**
* 聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科 助教授 ** 同 教授

要旨
 メトトレキサートとレフルノミドの慢性関節リウマチに対する有効率は,従来の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)に比べ高く,その効果は治療開始後4週目には見られ,骨破壊進行抑制効果も見られる.しかし,両薬剤の ACR 50% あるいは 70% 改善率は 50% に満たず,骨破壊の抑制という面でも不十分である.従来の DMARD 製剤にない優れた点もあるが,骨破壊,変形の阻止という治療戦略からいえば,幾つかの問題点が依然残されている.

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DMARD 併用療法の現状


齋藤 輝信
学校法人 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター教授

要旨
 慢性関節リウマチの薬物療法において,疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)は免疫異常の是正をはじめ,骨・関節破壊の抑制ないし阻止を図るものとして,現在の治療の中核をなしている.しかしながら,本剤は遅効性であるばかりでなく non-responder の存在,さらに効力の逓減化が課題となっている.最近,DMARD の併用療法が話題になっているが,その有効性,安全性,X線所見などに対して,未だに一定の見解が得られていないことから,文献的に考察を加えその現状について触れた.

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抗 TNF alpha抗体および sTNF 受容体・Fc 融合タンパク質の臨床効果と問題点


近藤 啓文
北里大学医学部内科 教授

要旨
 慢性関節リウマチ(RA)の治療上画期的新薬が開発された.いずれも TNF- alphaを標的としたもので,1つはキメラ型の抗体で,メトトレキサート(MTX)との併用療法で効果が高い.もう1つは sTNF 受容体・Fc 融合タンパク質で,治療効果が高く,副作用が少ない.難治性の RA を適応症とするが,後者は早期例に対する治験が進んでいる.いずれも治療費が高くなることが欠点である.我が国でも治験が行われている.

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IL-6受容体抗体の作用機序と臨床効果


吉崎 和幸***  松本 智成* 宋 健*  中原 英子* 奥畑 聡子* 萩原 圭祐*
松永 奈緒*  西本 憲弘**

* 大阪大学健康体育部健康医学第一部門 ** 同 助教授 *** 同 教授

要旨
 抗 IL-6受容体抗体が IL-6の機能を阻害し,関節炎モデル,腸炎モデルマウスの発症を抑制した.治療薬開発目的のため,ヒト型化抗ヒト IL-6受容体抗体(MRA)を作成した.IL-6の機能亢進症の Castleman 病,慢性関節リウマチに MRA を投与したところ,すべての異常所見が改善され,極めて有効な治療効果が得られた.このことにより,抗 IL-6受容体抗体による新しい治療法が開発された.

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遺伝子治療


宮田 昌之** 小林 浩子* 佐藤 由紀夫**
* 福島県立医科大学第二内科 ** 同 講師

要旨
 慢性関節リウマチ(RA)の病態に対応して,免疫制御遺伝子治療,抗炎症遺伝子治療,転写因子制御遺伝子治療,滑膜細胞制御遺伝子治療などの遺伝子治療戦略が考えられる.関節炎モデルでの遺伝子治療は近年飛躍的に進歩したが,遺伝子導入方法はさまざまで細胞内,核内,染色体 DNA への導入効率を考慮して評価しなければならない.RA に遺伝子治療を応用するには,今後基礎的な実験結果を積み重ねながらさらに有効な遺伝子治療の方向性を探っていかなければならない.

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地域における慢性関節リウマチの医療システム


西林 保朗

三木山陽病院 副院長 整形外科

要旨
 慢性関節リウマチ患者はおよそ 60 万人と推定され,いろいろな福祉措置が講じられ,介護保険制度の特定疾病にも指定されているので,国民病の1つといって良い.患者の 10% は寝たきり状態で,生活が自立している 70% の患者の中にも多くの身体障害者が含まれる.炎症のコントロールと身体機能障害といった全く異なる課題にアプローチする必要があるためか,リウマチ医療に積極的に携わるかかりつけ医は非常に少ない.今秋,アレルギーとリウマチに関する国立の臨床研究センターが設立されるが,これを機に,国レベルから地域に及ぶリウマチ医療提供体制を構築しなければならない.

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慢性関節リウマチ診療と病診連携


吉野 槇一***  田中 秀和* 石神 伸* 永島 正一**
* 日本医科大学リウマチ科 ** 同講師 *** 同教授

要旨
 1998 年9月から 1999 年8月までの1年間にリウマチ科に診療情報提供書をもって来院された患者さんを対象として,紹介していただいた医療機関の種類,紹介を受けた目的,当科での診断,治療経過とその後の動向について調査した.紹介目的は,関節リウマチとその近似疾患の発症早期の診断とその治療法,著しい機能障害を有する患者への手術療法を含めたトータルマネージメントなどであった.関節リウマチのような慢性疾患の診断,治療には効率的な医療機関の連携が必要となろう.

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2次診療圏におけるリウマチセンターの役割


山本 純己
松山赤十字病院 リウマチセンター 所長

要旨
 地区中核リウマチセンターの役割は次の3点に要約できる.1) リウマチ専門医を中心とし,リウマチ性疾患をよく理解しているコメディカルスタッフが参加し,最高レベルの多面的マネジメント,すなわち Multidisciplinary management (MDM)が行われること.2) 医師およびコメディカルスタッフに対するリウマチ性疾患の系統的な教育を行う.3) 臨床研究,治験においてもレベルの高い発表データの提供が可能である.
 地区中核リウマチセンターと中枢的役割を果たすリウマチセンター,および,かかりつけ医との役割分担を考えるとともに,松山赤十字病院リウマチセンターにおける現状と問題点を紹介する.

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慢性関節リウマチ患者の期待するもの


長谷川 三枝子
(社)日本リウマチ友の会 理事長

要旨
 近年,抗リウマチ薬の開発は目ざましく,また,破壊された関節機能の再建手術も進歩して来た.それによって自立できる患者が多くなって来ている.一方,当会への相談は依然として“専門医の問合せ,転院する病院探し,手術への迷い,福祉制度・介護保険の認定について”などなど.
 リウマチが解明される 21 世紀には,新たな医療体制が進み,患者がどこにいても安心して生活できるようになることを期待している.


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