最新医学56巻3月増刊号(絶版売切)

要旨



アプローチ:がんの化学療法の最前線


軒原 浩* 西條 長宏**
* 国立がんセンター中央病院内科 ** 同部長

要旨
 最近の分子細胞生物学,分子遺伝学の研究の進歩に伴い,分子レベルでのがん治療(オーダーメイド治療,分子標的治療など)が展開されつつある.多くの分子標的治療薬が開発され,幾つかの化合物は臨床試験に進み,すでに一部の薬剤においては有効性を示唆する結果が得られつつある.一方,これらの分子レベルでのがん治療を適正に評価できる質の高い臨床試験を効率よく行う体制づくりが重要である.


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Molecular marker によるオーダーメイド化学療法


西尾 和人**1 小泉 史明*1 芥川 茂*1 洪 泰浩*1
西條 長宏**2

*1 国立がんセンター研究所薬効試験部 **1 同耐性研究室長
*2 同中央病院内科 **2 同部長

要旨
 cDNA アレイを用いたがん治療へのアプローチが始まっている.cDNA アレイは大量の遺伝子機能解析を行う技術として発展し,発現プロファイルおよび遺伝子変異を効率よく検索できる.個々の遺伝情報から個人個人に最適な治療を提供することが可能であると考えられている.すなわち Molecular Marker によるオーダーメード化学療法である.


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がん化学療法の Pharmacogenetics/Pharmacogenomics

南 博信
国立がんセンター東病院化学療法科

要旨
 遺伝的に薬物代謝能の欠損や低下を示す個体が存在し,pharmacogenetics として研究されてきた.最近では分子生物学の進歩に伴い遺伝子レベルでの解析が進歩し,pharmacogenomics としてゲノムから薬物開発,薬物治療を捉えるようになった.薬物代謝能の遺伝的個体差が重大な意味を持つ抗悪性腫瘍薬として,TPMT と 6-MP,DPD と 5-FU がある.また,UGT1A1 も塩酸イリノテカン治療の毒性の重要な因子である可能性がある.


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抗がん剤耐性の分子標的と克服へのアプローチ


鶴尾 隆** 冨田 章弘* 坂本 洋*
* 東京大学分子細胞生物学研究所分子生物活性分野 ** 同教授

要旨
 我々は新たな抗がん剤耐性克服の分子標的を探索する目的で研究を進めてきた.その中,多剤耐性細胞における,P-糖タンパク質,抗がん剤の誘導するアポトーシスに対して抵抗性を示す細胞株におけるグリオキサラーゼI(GLO1)の過剰発現,さらには固形がん細胞におけるプロテアソーム等の耐性に関与する分子標的を見いだしている.その知見と耐性克服へのアプローチについて述べる.


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腫瘍血管新生阻害


小野 眞弓* 桑野 信彦**
* 九州大学大学院医学研究院医化学分野講師** 同教授

要旨
 がん治療を困難にしている最大の要因が転移と浸潤というがんの特性にあることは言うまでもない.がんの転移および浸潤の分子機構の1つに血管新生がある.それゆえ血管新生を標的とした薬剤は転移も制御する可能性を有している.しかしながら腫瘍血管新生の分子機構も複雑で多岐にわたる因子の関与が報告されている.それぞれのがん種による腫瘍血管新生の分子機構を解明することによりそれぞれの分子標的が明らかになるであろう.より選択的にがんにかかわる分子の探索が重要と思われる.


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がん化学療法における DDS


松村 保広
国立がんセンター中央病院内科

要旨
 がん治療における DDS は腫瘍新生血管の増生,腫瘍血管透過性の亢進および腫瘍局所のリンパ回収路の未熟といった腫瘍脈管の特性に基づき開発されてきた.ポリマー結合体,リポソーム製剤などすでに認可されていて,さらなる適応拡大を目指した臨床試験が盛んに行われている.また近い将来 ADR 封入ミセルを皮切りにミセル製剤の臨床試験が開始されようとしている.


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分子標的治療薬の種類と臨床


田村 友秀
国立がんセンター中央病院内科医長

要旨
 がん細胞の特性である無秩序な増殖と転移・浸潤を引き起こす分子レベルでの異常を標的として開発された新たなタイプのがん治療薬は分子標的薬剤と呼ばれる.増殖因子受容体,シグナル伝達系,転移・血管新生などにかかわる分子の阻害剤の開発が意欲的に進められている.これらの薬剤の開発には,基礎と臨床の密接な連携と適切な臨床評価の実施が不可欠である.


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新しい免疫療法−bench から bed side へ−


渡辺 正人*1  奥 川 利 治*2 生田 安司*3  永田 康浩*4 珠玖 洋**1
*1 三重大学医学部第二内科 **1 同教授 *2 同産婦人科
*3 長崎大学医学部第一外科 *4 Ludiwig institute for Cancer reseach

要旨
 マウスを用いて HER2 由来の 9mer ペプチド(HER2p63 と HER2p780)が,1. CD8+ CTL の抗原エピトープであること,2. 抗 HER2 CTL の誘導能を有していること,3. HER2 発現腫瘍の拒絶抗原であることを示した.同時に HER2p63,HER2p780 のいずれもが,ヒトの HLA 2402 に結合し,かつ CD8+ CTL 誘導能を有していることも併せて示すことができた.


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新しい免疫療法−臨床応用の実際


峠 哲哉** 山口 佳之*
* 広島大学原爆放射能医学研究所腫瘍外科講師 ** 同教授

要旨
 がんに対する免疫療法は,がん抗原に対し非特異的な試みからはじまった.近年,がん抗原が同定され抗原認識の分子機構が急速に解明されると同時に,細胞・遺伝子工学の進歩を背景に,免疫療法もがん抗原特異的な領域に突入した.すなわち,がん細胞ワクチンなどの免疫遺伝子治療や,抗原ペプチドと樹状細胞を用いたワクチン,あるいは特異的リンパ球の応用である.この流れの一方で,新しい効果細胞 NKT 細胞やミニトランスプラントも臨床応用が開始されていて,新世紀への期待は大きく膨らんでいく.


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モノクローナル抗体を用いたがんの治療


飛内 賢正
国立がんセンター中央病院特殊病棟部13B病棟医長

要旨
 Bリンパ腫に対するキメラ型抗 CD20 抗体 rituximab とマウス型抗 CD20 放射性同位元素標識抗体の臨床試験が精力的に進められており,優れた臨床効果が確認されつつある.乳がんに対するヒト化抗 HER2 抗体(trastuzumab),急性骨髄性白血病に対する calicheamicin 抱合ヒト化抗 CD33 抗体(CMA-676)の臨床的有効性も確認された.モノクローナル抗体治療が,将来にわたって悪性腫瘍の重要な治療手段になることは確実である.


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がんの化学予防:基礎


西野 輔翼
京都府立医科大学生化学教室教授

要旨
 がんの化学予防物質には,blocking agents と,suppressing agents とがあり,種類によっては,その両方の作用を併せ持っているものもある.現在開発中のがんの化学予防物質には,合成のものと天然のものとがあり,一部のものはすでに実用化に成功している.この分野においても,新しい技術導入を行うことは重要であり,DNA アレイ技術の活用や,バイオ・ケモプリベンション(バイオテクノロジーを用いたがん化学予防)のための基礎的研究が進められている.


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がんの化学予防:肺がんへの臨床応用


斎藤 誠*1  土田 敬明*2 加藤 治文**2
*1 東京医科大学霞ケ浦病院呼吸器科 *2 東京医科大学外科 **2 同教授

要旨
 ベータカロテンを中心とした肺がん予防の大規模介入試験は,期待に反する結果となったが,緑黄色野菜中のがん予防効果をもつ成分を検索する試みは今後も続くと思われる.我々は肺がんの前がん病変としての気管支扁平上皮化生に対して,ビタミン B12 と葉酸の血中濃度を高めることにより治療効果が得られることを検討してきた.また,肺がん治癒後の症例は,特に高齢者は2次発がんの高危険群である.再発の少ないI期で化学予防の効果を検討することは意義あることと考えられる.我々は前述の気管支扁平上皮化生に対するビタミンの結果から,I期肺がん治癒後の2次発がんの化学予防を開始した.


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最近の抗がん剤


田端 雅弘* 上岡 博**
* 岡山大学医学部第二内科 ** 同講師

要旨
 近年血液系悪性腫瘍のみならず,固形腫瘍に対して高い有効性を示す新規抗がん剤が開発され,臨床に導入されてきている.これらは既存の抗がん剤とは作用機序が異なり交差耐性を示さない,あるいはより強い抗腫瘍活性を有することから,固形腫瘍患者の予後改善をもたらす可能性が期待されている.一方,これら新規抗がん剤は既存の薬剤とは異なる厳しい毒性を有することも報告されており,今後副作用防止対策などを含めた研究が期待されている.本稿では最近開発され臨床導入された新規抗がん剤に関して,投与法,有効性,毒性などについて概説した.


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EBM に基づくがん化学療法の施行と抗悪性腫瘍薬の適正使用ガイドライン


有吉 寛
県立愛知病院院長

要旨
 がん化学療法は効果発現の不確実性と副作用による危険性をはらんだ治療法であるため,がんの実地医療においてはそれを適正に行う必要がある.その推進の手段として EBM の導入が効果的と考えられる.さらに,実地医療におけるがん化学療法が,バラツキがなく,安全に,無駄のない効率的医療となるよう,EBM に基づいた抗悪性腫瘍薬適正使用のガイドライン作成も有意義な試みである.


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がん臨床試験方法論Minimum Requirements


福田 治彦
国立がんセンター研究所がん情報研究部/JCOG データセンター

要旨
 臨床試験に携わる上で最低限知っておきたい倫理原則と統計的原則についてオムニバス的に概説した.倫理では,ヘルシンキ宣言,ベルモントレポート,科学的不正行為の概念を紹介し,統計では,統計は正しい臨床的推論のための「道具」であり論理的な臨床的考察が重要であること,「エンドポイント」と「目的」は違うこと,「有意差がない」と「差がない」は違うこと,有意水準は「常に 0.05」ではないこと,について述べた.


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新しい薬物有害反応判定規準:NCI-CTC Version 2.0


渋谷 昌彦
日本医科大学第4内科助教授

要旨
 がんの臨床試験を中心とする毒性評価基準の標準化を目的として NCI-CTC 改訂版が作成された.従来の CTC とは以下の点で異なっている.1.毒性区分,項目が増加した(18 区分 49 項目から,24 区分 279 項目).2.関連する毒性項目も grading することになった.3.詳細な情報が必要が場合に対して毒性モジュール,感染モジュールが設けられた.4.特殊な治療法に対するオプション(造血幹細胞移植,RTOG/EORTC 遅発性放射線反応評価基準)が加えられた.


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新しい効果判定規準 RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors):総論・肺がん


渡辺 裕一
神戸大学医学部放射線科

要旨
 WHO 基準に代わり RECIST が提唱され,効果判定法が標準化されつつある.効果判定は“標準化されたものさし”の使用が重要である.現在,ベースライン時における標的病変と非標的病変の振り分け基準が議論となっている.日本も“標準化”を最優先にした情報を発信すべきである.各がん種に対応した新しい“取扱い規約”が待望される.


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新しい効果判定規準:RECIST ガイドライン:消化器がん


宮田 佳典
佐久総合病院内科・胃腸科

要旨
 WHO Handbook による効果判定規準が改訂され response evaluation criteria for solid tumors(RECIST)が発表された.RECIST では消化管の原発巣は計測不可能病変に含まれ,計測可能病変を有する症例のみが第II相臨床試験の対象となる点が大きな改正点である.このため,手術不能胃がんの約半数が対象とならない可能性がある.我が国の消化管診断技術は優れている.我々が世界をリードする原発巣効果判定法を開発すべきである.


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がん治療における QOL 把握の可能性とその意義


大橋 靖雄
東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻 生物統計学教授

要旨
 我が国で行われた第III相臨床試験の例を用いて,測定法としての健康関連 QOL の信頼性・妥当性評価,有害事象や治療効果との関連,予後予測性,患者個人毎の評価構造の違いについて概観する.健康関連 QOL は,より症状に密着した proximal な極から社会環境にも大きく影響される distanl な極までの連続体と捉えるべきであり,積極的な治療法評価にはより疾患特異的で proximal な尺度を,患者の全体像を見誤らないために distanlあるいは包括的な尺度を押えとして用いるという使い分けが必要である.第III相臨床試験のエンドポイントを適切に設定するために,毒性と proximal な QOL の関連を第II相臨床試験の段階から多面的に解析することは有意義であろうし,また心理社会的介入のエンドポイントとしては当然 distanl な尺度も対象となる.


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本邦における抗がん薬の承認までの過程


藤原 康弘
国立医薬品食品衛生研究所医薬品医療機器審査センター審査第二部審査管理官

要旨
 平成9年7月,厚生省内部部局等の組織再編が行われ,新薬承認審査は,審査管理課と医薬品医療機器審査センター,医薬品機構の3部門が担うこととなった.さらに,平成 10 年4月の新 GCP の完全施行,平成 11 年 11 月の新薬関連調査会の廃止による内部審査体制への移行,平成 12 年4月のタイムクロック 12カ月への短縮等があいまって,日本における審査の質とスピードならびにその透明性は着実に進歩してきている.


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食道がん術前・術後の補助化学療法


安藤 暢敏*** 小澤 壮治** 北川 雄光* 北島 政樹****
* 慶應義塾大学医学部外科 ** 同講師 *** 同助教授 **** 同教授

要旨
 食道がんに対する術前化療は欧米では術前化学放射線併用療法と同様に積極的に行われている.本邦では手術単独とのランダム化比較試験(RCT)は行われていないが,SWOG,RTOG など共同の RCT の結果,術前化学療法の有効性は未だ立証されていない.JCOG 食道がんグループが行った CDDP/5-FU を用いた術後補助化学療法と手術単独との RCT の結果,無再発生存率が有意に良好で術後補助化学療法による再発予防効果が認められた.


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放射線化学療法

浜本 康夫*1*3 大津 敦**1 伊藤 芳紀*2 石倉 聡*2
*1 国立がんセンター東病院消化器内科 **1 同医長 *2 同放射線部
*3 札幌医科大学第一内科(現所属)

要旨
 放射線治療と化学療法の併用療法は,種々のがん種に対して近年,広く普及するに至っている.本稿では,放射線科学療法の理論的背景と有用性が証明された種類別に,1.放射線単独との比較で治療成績が明らかに優れているもの,2.化学療法単独との比較で治療成績が明らかに優れているもの,3.術前後の補助療法としての意義,4.臓器機能温存としての意義,5.外科切除に代わって標準的治療となりうるもの,6.切除不能例でも標準的治療となりうるものに分け無作為化比較試験において有用性が明らかであることが証明された事項を中心に記載する.


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造血幹細胞移植と細胞免疫療法

高上 洋一
国立がんセンター中央病院薬物療法部医長

要旨
 造血幹細胞輸注(移植)療法は,超大量抗がん剤治療や全身放射線照射後の骨髄機能の補助療法として導入されたが,最近は同種免疫反応に伴う抗腫瘍効果を充分に利用することで,治療関連毒性を減少させたミニ移植も開発された.本法は固形腫瘍に対する有効性も示され,今後は非腫瘍性疾患に対する応用も展望されている.


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高齢者がんの化学療法−肺がんを中心に−


塚田 裕子
県立がんセンター新潟病院 内科医長

要旨
 高齢化に伴いがん罹患・死亡に占める高齢者の比率が増加している.歴年齢は予後因子でないとの報告もあるが従来の標準的治療確立の根拠となった臨床試験への高齢者の参加は少数であり,年齢に関係なく同じ治療を適応するには未だ問題が多い.肺がんでは毒性の少ない新規抗がん剤の登場で化学療法の適応が高齢者にも拡大された.今後,高齢者の特性と多様性を考慮した標準的治療法の確立のための臨床試験が行われることが求められている.


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H. pylori 駆除療法の意義

加藤 元嗣**1  中川 宗一*1
高野 眞寿*2  小田 寿*2 仲屋 裕樹*2  加藤 貴司*2 熊谷 彩恵*2  大石 正枝*2 大川原 辰也*2 鈴木 岳*2 杉山 敏郎**2  浅香 正博***2

*1 北海道大学医学部光学医療診療部 **1 同助教授
*2 同第3内科 **2 同助教授 ***2 同教授

要旨
 H. pylori の発見による上部消化管疾患の概念や治療法の変化は,胃がんや胃リンパ腫などの胃腫瘍性病変にも及んでいる.動物モデルでは H. pylori 除菌により胃がんの発生が抑制されるとの成績があるが,臨床的には除菌治療が胃がんの1次予防として有効かの結論は出ていない.また,H. pylori 除菌により低悪性度胃 MALT リンパ腫が治癒することが判明し,現在では外科切除に代わる第1選択の治療法となっている.


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PEI(経皮的エタノール注入療法)


岡田 周市
国立がんセンター中央病院肝胆膵内科医長

要旨
 経皮的エタノール注入療法(PEI)は細径針を用いて小肝細胞がん(径3cm 以内,3個以内)内に無水エタノールを注入し,腫瘍を壊死させる治療法である.PEI では良好な腫瘍壊死効果が得られ,肝切除術と遠隔成績(無再発期間,生存期間)に差はみられない.PEI の主な副作用は発熱と腹痛であるが,その程度は軽い.今後,解決すべき問題は,PEI 後にみられる肝内他部位の再発である.


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局所療法:PDT


奥仲 哲弥** 似鳥 純一* 加藤 靖文* 石角 太一郎*一ノ瀬 修二*   加 藤 治 文***
* 東京医科大学外科学第一講座 ** 同講師 *** 同教授

要旨
 腫瘍親和性光感受性物質と低出力レーザーを用いた光線力学的治療法(PDT)は腫瘍を選択的に破壊するため最も侵襲の少ない局所治療法の1つである.PDT の対象となるのは皮膚,脳,頭頸部,呼吸器,消化器,泌尿生殖器,子宮頸部,膀胱などのがんで,このうち早期肺がん,表在型食道がん,早期胃がんおよび早期子宮頸部がんは保険採用されている.当科で治療した早期肺がんの治療成績は 125 例(161 病巣)中,完全寛解が 139 病巣 86.3% であり PDT の有効性が証明されている.PDT は患者の QOL を最優先とした,いわゆる患者に優しい治療としてがんの局所治療の中心的役割を果たしてゆくものと思われる.


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局所療法としての遺伝子治療−p53 遺伝子製剤の安全性と臨床効果−


藤原 俊義* 片岡 正文* 田中 紀章**
* 岡山大学医学部第一外科 ** 同教授

要旨
 近年の遺伝子工学の進歩は,標的細胞に外来性に特異的な遺伝子を導入し,その生物学的特性を変化させることを可能としてきた.がんは複数の遺伝子異常の蓄積により生ずる「遺伝子病」であり,中でも p53 遺伝子の機能喪失はがん細胞の悪性形質の発現に深く関与していることが明らかになってきた.正常な p53 は転写因子として生体ストレスに対する反応を巧妙に調節しており,ウイルス系ベクターを用いて p53 遺伝子をがん細胞に導入することで,幾つかの作用機構を介した抗腫瘍効果が観察される.p53 を遺伝子製剤と考えた場合の有用性について,基礎的および臨床的側面から考察する.


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治療関連白血病


鵜池 直邦
国立病院九州がんセンター造血器科医長

要旨
抗がん化学療法ないし放射線療法に続発した白血病を治療関連白血病と呼ぶ。1次がんから数ケ月−数年で発症し、第5および第7染色体の(部分)欠失やMLL遺伝子異常を伴うことが多く予後不良である。1次がん治療法の進歩と治療成績の向上に伴い発症の可能性が増すという矛盾をはらんでいるが、その予防・早期診断・根治の達成には、がんの治療に携わる側の治療関連白血病に対する意識の向上が大切である。九州がんセンターでの自験例を中心に解説を加える。



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抗がん剤の毒性対策


林 千鶴子 小林 健彦 佐々木 常雄
東京都立駒込病院化学療法科

要旨
 抗がん剤投与時における毒性は,時に抗がん化学療法の継続を困難にし,また患者の QOL を低下させる.近年,抗がん剤投与後の悪心,嘔吐に対するセロトニン受容体拮抗薬や,好中球減少に対する G-CSF が使用されるようになり,抗がん剤がより安全で円滑に投与されるようになった.さらに最近検討されているものに血小板減少に対するトロンボポエチン,貧血に対するエリスロポエチン,ミスプラチンによる腎毒性や末梢神経障害に対するアミフォスチン,アドリアマイシンによる心毒性に対する dexrazoxane などがあり,今後の支持療法として期待される.

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