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最新医学56巻6号

特集要旨



アプローチ:高脂血症治療の意義と EBM


高橋和男*1  武城英明*2  齋藤 康**1
*1 千葉大学大学院医学研究院細胞治療学 **1 同教授
*2 同臨床遺伝子応用医学

要旨
 冠動脈疾患1次・2次予防に対するコレステロール低下療法について,最近 10 年間に多くの大規模介入試験の成績が欧米から報告された.これらの成績から,高脂血症治療の意義として,コレステロール低下療法はさまざまな対象において冠動脈疾患2次予防に加え,1次予防にも有効であることが明らかになった.今後,これらの詳細な数値設定とともに,トリグリセライド,HDL コレステロール,さらに in vitro で同定された多くの atherogenic リポタンパクに関する臨床成績が期待される.

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高脂血症の診療ガイドライン


馬渕 宏
金沢大学医学部第二内科 教授

要旨
 1997 年の日本動脈硬化学会のガイドラインによれば,血清コレステロール 220mg/dl 以上,血清トリグリセライド(TG)150mg/dl 以上,HDL コレステロール 40mg/dl 以下が診断基準値である.治療に関しては冠動脈疾患(CHD)を念頭に置いて,A群は CHD(-)他の危険因子(-),B群 CHD(-)他の危険因子(+),C群 CHD(+)とし,それぞれに治療開始基準値と目標値が設定されている.今後はカテゴリー別の患者ではなく,個々の患者に適応できる“テーラーメイド”医療を目指す高脂血症ガイドラインが望まれる.

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粥状動脈硬化症進展における高脂血症の関与


後藤田貴也
東京女子医科大学糖尿病センター

要旨
 粥状動脈硬化の発症機構に関して,その炎症的側面やプラークの安定性が注目されている.代謝の面からは,コレステロールに加えて中性脂肪(レムナント)の増加としばしばその背景にあるインスリン抵抗性の関与がより鮮明となりつつある.作用が強力で副作用の少ない脂質低下薬の登場とそれらを用いた大規模介入試験の結果,その医学的な有用性はほぼ確立されたが,今後は医療経済の観点からの十分な議論も必要である.

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レムナント


石橋 俊
東京大学医学部糖尿病・代謝内科

要旨
 レムナントリポタンパクが増加する病態が動脈硬化のリスクとして注目されている.代表的な高レムナント血症であるIII型高脂血症はアポEの異常を背景に持つ.レムナントの指標として従来の超遠心法による IDL に加えて,RLP が普及しつつある.レムナントの代謝にはレムナントの持つアポEと肝臓の LDL 受容体が重要であるが,LDL 受容体以外の代謝経路も存在し,LRP と呼ばれる受容体の関与が提唱されている.

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Small dense LDL


平野 勉
昭和大学医学部第一内科助教授

要旨
 超悪玉コレステロールとも名づけられている small dense LDL は,冠状動脈硬化性心疾患の新しい危険因子の筆頭として大いに注目されている.本論文では small dense LDL の組成代謝上の特性,ならびに臨床的意義についてまとめてみる.

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酸化 LDL


木下 誠
帝京大学医学部内科助教授

要旨
 酸化 LDL は,それ自体がマクロファージに取り込まれ泡沫細胞を形成する以外に,白血球接着分子の発現促進など種々の作用を持ち,粥状動脈硬化症の発症から完成までのすべての段階に関与している可能性がある.酸化 LDL の定量法が開発されてきたため,抗酸化薬の動脈硬化症抑制効果についてのエビデンスが増加してくることが期待される.

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高コレステロール血症の治療


山下静也
大阪大学大学院医学系研究科分子制御内科学 助教授

要旨
 高コレステロール血症に対する治療には食事療法や運動療法が重要であるが,効果が得られない場合には薬物療法が行われる.最近では,HMG-CoA レダクターゼ阻害薬(スタチン)を中心とした高コレステロール血症の薬物治療が広く行われるようになり,高コレステロール血症の治療によって冠動脈硬化の発症や進展が抑制されたという1次予防・2次予防の成績が,大規模臨床試験で数多く得られてきた.本稿では最近の高コレステロール血症治療の進歩を概説し,冠動脈疾患予防の機序についても言及する.

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高トリグリセライド血症の治療


武城英明
千葉大学大学院医学研究院臨床遺伝子応用医学

要旨
 日常臨床において,高トリグリセライド(TG)血症の治療は高コレステロール血症とともに重要であるが,その方法は高コレステロール血症と同じように確立されていない.近年,高 TG 血症に対する介入試験により,動脈硬化進展が抑制される成績が報告された.今後,コレステロール低下療法に加えて,TG 低下療法の意義,また薬剤の機序と低 HDL 血症,レムナントリポタンパクの関係を含めて,動脈硬化に及ぼす効果のさらなる解明が期待される,

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コレステロールとトリグリセライドの両方が高いときの治療


田中 明
東京医科歯科大学老年病内科講師

要旨
 高コレステロール(TC)血症と高トリグリセライド(TG)血症の両者を認める場合の食事療法は,1)カロリー制限,2)脂肪制限,3)糖質制限,4)砂糖の制限,5)アルコールの制限,6)コレステロール制限,7)P/S 比 1.0〜2.0,8)omega 3 系多価不飽和脂肪酸の増加,9)食物繊維の増加を行う.IIb 型高脂血症の薬物療法は,まずフィブラート系薬剤を開始し,血清 TG 値を目安にしながら増量,血清 TG 値が正常化した時点で血清 TC 値がまだ高値の場合はスタチン系薬剤を追加し,血清 TC 値の低下を見ながら増量する.III型高脂血症はフィブラート系薬剤が有用である.

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血管疾患治療における抗酸化療法の効果


渡辺嘉郎*  代田浩之**
* 順天堂大学医学部循環器内科 ** 同教授

要旨
 動脈硬化症の発症および進展に,酸化ストレスが重要な役割を担っている.そのため,動脈硬化症の予防および治療において抗酸化療法が期待されている.動物実験では,抗酸化物質により動脈硬化症の発症および進展が抑制されたという報告が多い.しかしヒトでは,現在までの無作為介入試験では,抗酸化物質による抗動脈硬化作用について否定的な結果である.新しい抗酸化物質による治療や,違ったアプローチの抗酸化療法の開発に期待したい.

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虚血性心疾患との合併


梅本誠治*  伊藤真一* 田中正和*  松崎益徳**
* 山口大学医学部器官制御医科学講座 循環病態内科学 ** 同教授

要旨
 虚血性心疾患の再発予防に関する長期大規模臨床試験の結果,HMG-CoA レダクターゼ阻害薬であるスタチンは LDL コレステロールを約 30% 低下させ,総死亡と脳卒中を含む心血管死をともに有意に減少させた.その機序として,スタチンによるコレステロール低下以外のさまざまな抗動脈硬化作用の関与がある.また,虚血性心疾患の再発には,高トリグリセライド血症や低 HDL コレステロール血症も重要であることが明らかとなってきた.

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糖尿病に合併する高脂血症の治療


多田紀夫
東京慈恵会医科大学内科学講座助教授 同附属柏病院総合診療部部長

要旨
 糖尿病では,高トリグリセライド血症,低 HDL コレステロール血症,ならびに small dense LDL や糖化 LDL で代表される LDL の質的変化が出現する.糖尿病合併高脂血症の治療には,生活療法の徹底,血糖コントロール,高脂血症治療薬導入の3つの要素がある.抗高脂血症薬として,これまでの大規模臨床試験からはスタチン薬とフィブラート系薬物の有用性が示されている.糖尿病性腎症に薬物療法を施行する場合は,特に副作用の出現に注意すべきである.

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HDL 代謝の新しい展開− HDL 新生反応とその意義 −


横山信治
名古屋市立大学医学部生化学第一講座教授

要旨
 HDL は,臨床的には動脈硬化性疾患の「負の危険因子」として知られる.コレステロール分子は末梢細胞では異化できず,肝臓で胆汁酸に転換されるために血流中を輸送されるときに中心的役割を演じるのが HDL であって,この機能が動脈硬化性病変からコレステロールを運び出すときにも有効に働くと考えられる.この数年,HDL の機能についての理解が高まり,とりわけ HDL 欠損症であるタンジール病の原因遺伝子が突き止められてから,研究者の興味を急速に引きつけている.これらの知見を整理すると,1)アポリポタンパクが細胞表面と直接反応して細胞からコレステロールとリン脂質を引き抜いて HDL を生じる,2)この反応にはタンジール病で変異が確認された ABCA1 タンパク質をはじめとする多くの細胞側因子が必要である,3)この反応が血漿 HDL の主要な生成源である,の3点にまとめられる.

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糖脂質代謝およびインスリン抵抗性の転写調節


島野 仁
筑波大学臨床系内科(代謝・内分泌)

要旨
 糖脂質代謝はお互いに密接に関連しながら,エネルギー代謝の中心を担う.また臨床的にも,この代謝異常はインスリン抵抗性がその病態の中心をなし,糖尿病,高脂血症,肥満など,生活習慣病などと呼ばれる動脈硬化症の危険因子となる.最近,栄養代謝の転写調節を制御する転写因子の研究が進み注目されている.脂肪酸異化にかかわる PPAR alpha,脂肪酸合成にあずかる SREBP-1,脂肪細胞の分化にかかわる PPAR gammaを中心に,糖脂質代謝,インスリン抵抗性の病態の解明が進むと思われる.

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新しい高脂血症治療薬


中谷矩章
公立福生病院院長

要旨
 近く市場に現われる新しい抗高脂血症薬として,ゲムフィブロジル,ピタバスタチン,ロスバスタチンがある.ゲムフィブロジルは海外では 20 年近い歴史を持ち,大規模臨床試験の成績も得られている.ピタバスタチンは効力の点ではアトルバスタチンとほぼ同等と考えられるが,副作用がやや少ない.ロスバスタチンはアトルバスタチンより効力が強く,期待されている.


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