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最新医学56巻9月増刊号

特集要旨



アプローチ:ゲノム医学の新しい動向


小澤 敬也
自治医科大学内科学講座血液学部門輸血・細胞移植部
分子病態治療研究センター遺伝子治療研究部教授

要旨
 ヒトゲノム全塩基配列の決定を背景に,臨床医学の領域では,DNAチップ解析などの新しいテクノロジーを駆使し,分子病態解明,薬剤感受性遺伝子や疾患関連遺伝子の同定,さらに,それに基づいた遺伝子診断への応用が進み,オーダーメイド医療や予防医学の発展が予想される.また,分子標的治療や遺伝子治療などの先端的治療法の開発にも,より一層拍車がかかるものと期待される.

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ヒトゲノム配列の決定とその意義−ヒトゲノム概要版について−


水島−菅野 純子* 菅野 純夫**
* 東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターゲノム構造解析 ** 同助教授

要旨
 ヒトゲノム概要版が発表された.極めて重要な1歩であり,ヒトの遺伝子が3-4万らしいという衝撃的な発見もあった.しかし,これでヒトゲノム配列決定が終わったわけではない.概要版は,まだまだ不完全であり,完全版のヒトゲノム配列が必要である.また,完全長 cDNA などを通じて,ヒトの持つすべての遺伝子が明らかにされなければならない.全遺伝子が明らかになると,全遺伝子から目的の機能を持つ遺伝子を絞り込むための網羅的アプローチを中核としたゲノム機能解析が,重要な研究分野となるであろう.

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ゲノム機能解析の技術的進歩


油谷 浩幸
東京大学先端科学技術研究センターゲノムサイエンス部門 助教授

要旨
 ゲノム情報量の増大に伴って,ゲノム機能解析においては,従来の遺伝子機能を個別に研究するための探索技術とは異なった,包括的な解析技術が登場してきた.ゲノム機能解析における最近の技術的進歩につき,遺伝子変異解析,遺伝子発現プロファイル解析,プロテオーム解析を中心に紹介した.

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遺伝子多型と疾患感受性


山岡  孝* 板倉 光夫**
* 徳島大学ゲノム機能研究センター 遺伝情報分野 助教授 ** 同 教授

要旨
 一部の SNP はタンパク質量の調節に関与して疾患感受性を直接担ったり,疾患感受性遺伝子の同定に役立つ遺伝マーカーとして機能する.メンデル型遺伝病の原因遺伝子の同定に威力を発揮した連鎖解析は,多遺伝子性疾患の感受性遺伝子の同定にはさほど有効ではなく,関連解析と組み合わせた QTL 解析や,ゲノムワイドの高密度 SNP 連鎖不平衡マッピングによって,疾患感受性遺伝子が同定されてゆくと期待されている.

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オーダーメイド医療

鎌谷 直之
東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター所長
東京女子医科大学大学院先端生命医科学系専攻遺伝子医学分野教授

要旨
 オーダーメイド医療とは患者間の個人差を踏まえて行う医療を言う.一般には,EBM などの医療では患者を集団として取り扱い,統計処理により得られたエビデンスに基づいて患者に均一な治療を行う.しかし,オーダーメイド医療では個人の遺伝子の違いに基づいて個々の患者により異なった治療を行う.それを可能にするためには遺伝的多型と薬物の副作用,効果との関係が遺伝統計学により解明されなければならない.本稿ではこれまでに解明されている薬物副作用,効果に関係する遺伝子多型について解説し,さらに最近のゲノム研究に基づいた知見について解説する.

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先天性骨髄機能不全症


大月 哲也

自治医科大学内科学講座血液学部門 講師

要旨
 先天的骨髄機能不全症につき,その分子病態を概説する.Fanconi 貧血は再生不良性貧血の像を呈するが,その本態は DNA 架橋に対する修復機構の障害であると推定されている.相補性試験により,7つの相補性群(A-G)に分類されることが分かっており,その責任遺伝子が続々とクローニングされている.Diamond-Blackfan 貧血では赤血球系の,Kostmann 症候群では好中球の低下が主に認められるが,これらの疾患においてもその分子病態が徐々に解明されつつある.

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2型糖尿病


門脇 孝**  原  一雄* 山内 敏正* 
*東京大学糖尿病・代謝内科 **同助教授

要旨
 2型糖尿病は多因子病であり,その疾患感受性遺伝子は不明であった.最近,全ゲノムマッピングと候補遺伝子アプローチを用いて,幾つかの疾患感受性遺伝子(座)が明らかになりつつある.PPAR gammaの Pro12Ala 多型やアディポネクチン 276G/T 多型は脂肪の蓄積や燃焼と関連し,高脂肪食下による2型糖尿病発症因子となっている.また,カルパイン 10 はプロテアーゼの一種であり,インスリン抵抗性/インスリン分泌の両面から糖尿病発症との関連が予想されている.全ゲノムマッピングのデータから,民族間を越えて,糖尿病と関連する遺伝子座と,民族に比較的特徴的な遺伝子座の存在も明らかになり,今後,2型糖尿病遺伝子の全面的解明とオーダーメイド医療の確立が待ち望まれる.

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高脂血症

大垣 聡子* 山田 信博** 
* 筑波大学代謝内分泌内科 ** 同 教授

要旨
 高脂血症は遺伝素因,栄養,環境因子により発生する.動脈硬化性疾患予防には高脂血症治療が重要である.現在,高脂血症の病態解明が進行中であり,多くの遺伝子異常が報告されている.病態,原因遺伝子が特定されていない部分も多く残されている.原因遺伝子の解明は遺伝子治療につながるものであり,期待されている.家族性高脂血症について,遺伝子異常を中心に総説する.

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循環器疾患に関係する遺伝子多型


野尻 剛史** 森田 啓行* 永井 良三**
* 東京大学医学部 循環器内科 ** 同 教授

要旨
 ヒトゲノムプロジェクトは大幅なスピードアップにより,すでにほぼ全塩基配列の解読を終了し,ゲノムワイドでの1塩基多型(SNPs)同定の段階に入っている.一方で高血圧や虚血性心疾患などの成人病罹患の遺伝的背景として,以前より SNPs の関与が議論されている.本稿ではこうした SNPs の循環器疾患に対する関与について,最近の知見を交えつつ述べる.

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慢性肝炎


小池 和彦

東京大学大学院医学系研究科内科学専攻生体防御感染症学 助教授

要旨
 ヒトの慢性疾患の大部分は肝炎ウイルスによるものである.電子顕微鏡と人体実験で始まったウイルス肝炎研究の歴史も,遺伝子医学の発展によって大きく変貌してきた.ウイルス遺伝子のクローン化,遺伝子のコードするタンパク質の同定から始まり,宿主免疫系との相互作用,疾患感受性遺伝子とのかかわり,そしてウイルス肝炎最大の害厄である肝細胞がん発生の謎が,次第に解き明らかされてきている.

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大腸がん


堀井   明
東北大学大学院医学系研究科分子病理学分野教授

要旨
 一般に,がん遺伝子,がん抑制遺伝子の異常が蓄積することにより,正常組織から前がん病変を経て多段階的に発がんする.大腸がんでは,家族性大腸ポリポーシスや遺伝性非ポリポーシス症性大腸がんといった疾患の研究を通じて発がんの分子機構の解明が非常に進み,研究成果は診療面でも,存在診断(遺伝子診断)や予後予測などに応用できることが示された.21 世紀前半には,ほとんどの病気の原因が遺伝子レベルで解明され,診断・治療・予防に応用されると期待されるが,その中でも大腸がん研究は,先駆的役割を果たすであろう.

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造血器腫瘍


間野 博行
自治医科大学 ゲノム機能研究部 教授

要旨
 ヒトゲノム情報を利用した造血器悪性腫瘍の病態解析の方向としては,大きく「新たな鑑別診断マーカー遺伝子の同定」と「病因遺伝子の同定」の2種類がある.しかしいずれの場合においても,解析に用いるサンプルの純化,解析結果の正規化,バイオインフォマティクスの充実などが,効率良い解析のためには重要な課題となるであろう.

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免疫・リウマチ性疾患(膠原病)


萩原 清文**  山口 晃弘* 山本 一彦**

* 東京大学医学部アレルギーリウマチ内科 ** 同教授

要旨
 膠原病に限らず,多くの疾患は複数の疾患感受性遺伝子と複数の環境要因との相互作用によって発症に至る多因子疾患である.膠原病の疾患感受性遺伝子として再現性をもって確認されているのは,現段階では主として HLA の多型のみである.今後はポストシークエンス時代の流れの中で,より多くの疾患感受性遺伝子が同定され,膠原病の病態が解明されていくことが期待される.

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喘息のゲノム的解析


塩島  聡* 辻本 豪三**
* 国立小児病院・小児医療研究センター分子細胞薬理学研究部 ** 同部長

要旨
 喘息の分子機構を解明するには,多彩な炎症性メディエーターで構成される複雑な分子ネットワークを解明することが必要不可欠である.連鎖解析や遺伝子発現解析などの手法を使って,喘息と関連するゲノム領域や疾患関連分子の探索が行われている. beta2 アドレナリン受容体遺伝子や 5-リポキシゲナーゼ遺伝子では治療反応性に関連したゲノム上の変異が報告され,テーラーメイド医療への展望として注目されている.

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骨粗しょう症における遺伝子解析


細井 孝之
東京都老人医療センター内分泌科医長

要旨
 骨粗しょう症に対する遺伝子的素因の研究に関する報告の多くは候補遺伝子アプローチを用いたものである.今後,ゲノム情報を用いて,骨粗しょう症の病態が明らかにされ,骨代謝のメカニズムにおける分子レベルの個人差に基づいた診療体系が展開されることが期待される.

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遺伝性筋疾患をめぐる進歩
−原因遺伝子の追究と分子病態の解明から分子治療へ−


武田 伸一
国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部部長

要旨
 遺伝性筋疾患については,原因遺伝子が次々と明らかにされているが,一つの疾患遺伝子が幾つかの臨床病型を説明できる場合がある.一方では,原因遺伝子産物と相互作用する分子の追究が複雑な遺伝病の発症の機構を明らかにしつつある.これらの事実が,少ない数のゲノム遺伝子から,多様な遺伝病の病態を生ずる背景を成している.今後の最も大きな課題は,分子遺伝学の進歩,分子病態の解明をもとに,分子治療の方法を見いだすことにある.

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トリプレットリピート病


中村 浩一郎

東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻神経内科

要旨
 トリプレットリピート病は3塩基反復配列の種類から4種類が知られている.遺伝子の非翻訳領域と翻訳領域に存在するものがあるが,前者は RNA 転写レベルでの異常が想定されているのに対し,後者は主にタンパク質レベルでの gain of toxic function の機序が考えられている.その中でもポリグルタミン病に関しては,ポリグルタミンタンパク質と転写因子との相互作用により転写障害が起こり神経細胞死にいたるメカニズムが注目されている.

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Alzheimer 病


岩田 修永* 西道 隆臣** 
*  理化学研究所 脳科学総合研究センター 神経蛋白制御研究チーム
** 同チームリーダー

要旨
 常染色体優性遺伝を示す家族性 Alzheimer 病(AD)の原因遺伝子として3種類の遺伝子が発見されている.これらの遺伝子の変異はいずれもアミロイド betaタンパク質(A beta)産生を促進する方向に働く.一方,遺伝的危険因子であるアポリポタンパク質Eの epsilon4 allele の出現は A betaの蓄積を促進し老人斑形成を促す.これらの知見は A betaが AD の病因に深くかかわるとする“ betaアミロイド仮説”を支持し,現在 AD 克服の標的は A beta産生抑制および分解促進に向けられている.

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家族性 Parkinson 病


佐藤 健一**  久保 紳一郎*** 服部 信孝** 水野 美邦*** 
* 順天堂大学医学部 脳神経内科学教室 ** 同 講師 *** 同 教授

要旨
 家族性 Parkinson 病の遺伝子が少しずつ明らかとなってきている.これら Parkinson 病の原因遺伝子はユビキチン-プロテアソーム系に関与していることが分かり始めている.ここでは PARK1,PARK2 の原因遺伝子である alpha-synuclein および parkin タンパク質の機能を中心にレビューし,さらに PARK3 から PARK6 までの臨床病型について述べる.

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造血器腫瘍に対する分子標的治療


小椋美知則
愛知県がんセンター血液化学療法部副部長

要旨
 造血器腫瘍に対する分子標的薬剤の開発が急激に進み,新たな治療戦略における有力な薬剤として期待されている.本稿では代表的な薬剤としてB細胞性悪性リンパ腫に対するキメラ型抗 CD20 モノクローナル抗体の rituximab,急性骨髄性白血病に対する CD33 抗原を標的とし,抗腫瘍薬の calicheamicin を結合したヒト型抗 CD33 モノクローナル抗体(gemtuzumab ozogamicin),および慢性骨髄性白血病の発症に関与する,染色体転座 t(9;21)で作られる Bcr-Abl 融合遺伝子産物の p210 に対するチロシンキナーゼ阻害薬である STI571 の3剤について紹介する.いずれの薬剤も特定の標的細胞にのみ作用するため,従来の化学療法剤に比べ,有害事象が比較的軽度であり,3剤とも単剤で評価すべき奏功率が認められている.作用機作が従来の化学療法剤とは異なるために,他剤との併用など多くの治療応用に期待が持たれており,今後は,長期間の生存率での有効性の検証と我が国での早期承認が望まれている.

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乳がんに対する抗体療法:trastuzumab


田島 知郎****  徳田  裕*** 太田 正敏**  鈴木 育宏*  齋藤 雄紀*
* 東海大学医学部外科学教室 ** 同講師 *** 同助教授 **** 同教授

要旨
 HER2/neu に対するマウスモノクローナル抗体のヒト型化製剤の trastuzumab(ハーセプチン)は,特異的に作用する画期的な新薬で,治療効果は単剤で通常の抗がん剤に遜色なくタキソールなどとの併用では抗腫瘍効果が約 25% 向上する.HER2/neu 増幅・過剰発現の判定法の標準化と適切な適応の遵守によって,また他薬剤との併用を工夫することで,乳がんの治療の大きな進歩が期待され,一方で,乳がん以外での本剤の展開も間近い.

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ミニトランスプラントによるがんの免疫療法


牧本 敦*1*2  峯石  真**1 
*1 国立がんセンター中央病院造血幹細胞移植部門 *2 小児科 **1 同 医長

要旨
同種造血幹細胞移植によるがん治療において,大量化学療法や放射線療法による移植前処置の意義が次第に薄れ,移植片生着に伴う同種抗腫瘍免疫の発現が重要視される傾向にある.さらに,純粋に後者による抗腫瘍効果を目指し,副作用を軽減する目的で,骨髄非破壊的前処置を用いた移植であるミニトランスプラントが開発された.このミニトランスプラントは,現在,各種造血器腫瘍における治療効果が確認され,固形腫瘍に対する免疫療法としての地位も築きつつある.

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造血幹細胞遺伝子治療


久米 晃啓
自治医科大学分子病態治療研究センター遺伝子治療研究部 助教授

要旨
 本格的な遺伝子治療研究が始まった当初から,造血幹細胞は主要な標的組織の一つであった.マウスでの前臨床研究が早期に成功したのとは対照的に,ヒト造血幹細胞への遺伝子導入は長らく困難を極めてきたが,X連鎖重症複合免疫不全症に対する治療で明瞭な効果が認められたなど,ポジティブな面が出てきている.この成功が示唆する幹細胞遺伝子治療成否の鍵と,期待される技術開発について概説する.

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血友病の遺伝子治療


中井 浩之
スタンフォード大学医学部小児科・遺伝学 ヒト遺伝子治療プログラム

要旨
 血友病は最も遺伝子治療の研究が進んでいる疾患の一つであり,米国では血友病A・Bともに,すでに遺伝子治療ベクターの人体への投与が臨床研究として開始されている.出血のたびに繰り返し投与が必要な従来の補充療法に代わり,生涯にわたり出血に対する予防的治療効果が期待できる治療として注目されている.特に,アデノ随伴ウイルスベクターを用いた血友病Bの遺伝子治療臨床研究では,明らかな有効性がすでに示されている.

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がんを標的とする遺伝子治療 -phase 3への苦悩


貫和 敏博** 臼井 一裕*
* 東北大学加齢医学研究所呼吸器腫瘍研究分野 ** 同教授

要旨
 がん遺伝子治療は,遺伝子導入による細胞生理の変化を治療に結びつける方法論として期待される分野である.日本においては腎がん免疫遺伝子治療,肺がん・食道がん p53 遺伝子治療,脳腫瘍など臨床試験が進行中であり,世界的にも最も多岐にわたる phase trial がなされている.しかし,ベクター投与経路や他療法との組み合わせなど課題も多い.ここでは,ようやく phase 3 trial への試練に直面する p53 遺伝子治療と ONYX-015 を取り上げ,現状を論じる.

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生活習慣病に対する遺伝子治療


小池 弘美*** 森下 竜一** 金田 安史***
* 大阪大学大学院医学系研究科遺伝子治療学 ** 同助教授 *** 同教授

要旨
 1994 年,Boston の St.Elizabeth's Medical Center で循環器疾患として世界初の遺伝子治療が行われた.薬剤が無効でバイパスをかけることができない重症の閉塞性動脈硬化症の患者の下肢に,バルーンカテーテルを用いて遺伝子を導入し,血管新生を促す治療であった.その結果は予想以上に良好で,患者は下肢切断を免れることができた.循環器疾患は遺伝子治療が始まった当初はその対象とすら考えられていなかったが,現在では閉塞性動脈硬化症をはじめ,経皮的血管拡張術後再狭窄,グラフト再不全(再狭窄),心筋梗塞,狭心症など多岐にわたって臨床試験が行われている.生活習慣病ともいえるこれら循環器疾患の患者数は膨大であり,その成果は国民生活に多大な影響を与えうることになるであろう.

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遺伝子解析研究のためのガイドライン


垣添 忠生
国立がんセンター中央病院 病院長

要旨
 医学または生物学上の重要な発見を振り返ると,20 世紀後半に集中しており,それに伴って,従来の医療倫理から,生命倫理の重要性がクローズアップされた.その最たるものが遺伝子解析研究に付随する倫理的諸問題である.平成 13 年3月に発布された共通指針に基づき,そのポイントを述べた.すなわち,研究が対象であること,生殖細胞系列の差異や多型の解析が対象となること,インフォームド・コンセント,倫理審査の重要性などである.

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遺伝カウンセリング


藤田  潤**  富和 清隆* 小杉 眞司*
* 京都大学医学部附属病院遺伝子診療部 ** 同教授

要旨
 ヒトゲノム・遺伝子解析研究や診療における倫理指針などで遺伝カウンセリングの重要性が指摘されている.トレーニングを受けた医師を中心として進められる遺伝カウンセリングは,遺伝子病研究の進歩を患者・血族に還元するためだけではなく,研究を円滑に進めるためにも不可欠である.しかし,予算的な措置がないために体制の整備は容易ではない.日本に適した遺伝カウンセリングの専門的な教育・研修・認定制度の確立も遅れている.

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ゲノミクスにおける倫理的側面


高久 史麿
自治医科大学学長

要旨
 ポストゲノミクス時代を迎え,ヒトゲノム解析の結果を臨床的な研究,診断,治療に応用する試みがすでに始まっている.そのような新しい時代において考慮すべき倫理的な課題を,我が国で最近公開されたヒトゲノム・遺伝子解析研究における三省共通指針の紹介を中心に,ヒトゲノム研究,遺伝子診断,遺伝子治療を中心に解説した.

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