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最新医学56巻11号

特集要旨



原因不明の間質性肺炎(特発性間質性肺炎)
我が国の特発性間質性肺炎とATS/ERS ステートメント


貫和敏博**  海老名雅仁*
* 東北大学加齢医学研究所呼吸器腫瘍研究分野
** 同教授

要旨
 特発性間質性肺炎(肺線維症)は,20 世紀後半,歴史的には呼吸器感染症を主体とする呼吸器臨床の中で,症例の増加とともに難治性のため広く注目され,最近の国際学会会場においても多くの聴衆を集める疾患である.一方,臓器線維症としての肺線維症は,ウイルス性疾患としての肝硬変症の理解や,自己免疫や糸球体など特異構造による慢性腎炎の理解と異なり,その病因よりも生検標本の病理形態により分類整理が進んでいる.本稿では,昨年 International Consensus Statement として報告された特発性肺線維症(IPF)を中心に,単に病型分類ではなく,背景にある研究展開の必然性と今後の課題に関して述べる.

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原因不明の間質性肺炎(特発性間質性肺炎)
HRCT による特発性肺線維症(IPF/UIP)の診断と鑑別


伊藤春海
福井医科大学放射線医学教授

要旨
 高分解能 CT(HRCT)は細気管支,リンパ路を有する肺構造,肺胞領域を病変の場とする多くのびまん性肺疾患の診断に役立ってきた.特発性肺線維症は肺胞領域の構造改変を特徴とし,その HRCT の最も基本的所見は網状影の特殊な形である蜂巣肺である.蜂巣肺は両下葉の胸膜側肺野に優位に見られ,網に当たる高吸収域と網目の低吸収域が細かく繰り返す病変である.微細網状影は組織学的に顕微鏡的蜂巣肺に相当するため,精度の高い HRCT と注意深い読影が必要である.

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原因不明の間質性肺炎(特発性間質性肺炎)
間質性肺炎の血清マーカー,KL-6,SP-A,SP-D の診断的意義


河野修興**  近藤圭一*
* 広島大学医学部第二内科 ** 同教授

要旨
 間質性肺炎は,肺胞隔壁に炎症性細胞の浸潤が認められる 150 種以上の疾患の総称である.間質性肺炎の診断および活動性の評価に有用な血清マーカーとして,KL-6,SP-A,SP-D が医療保険の適応を受け,実地臨床の場で使用されている.KL-6 はムチンの MUC1,SP-A,SP-D は肺サーファクタントである.これらマーカーの間質性肺炎における臨床的有用性の比較検討を行った.

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原因不明の間質性肺炎(特発性間質性肺炎)
気管支肺胞洗浄法,経気管支肺生検,胸腔鏡下肺生検の意義と適応


星野勇馬*   長井苑子**
* 京都大学医学部附属病院呼吸器内科 ** 同助教授

要旨
 気管支肺胞洗浄は,びまん性肺疾患の診断,特に病原微生物,悪性細胞,職業性因子の検出,またびまん性間質性肺炎の鑑別の補助として有用である.
 経気管支肺生検では,特発性間質性肺炎の診断を得ることは不可能であるが,特発性間質性肺炎と鑑別が問題となる種々の疾患の診断において有用である.
 外科的肺生検では,特発性間質性肺炎の診断が可能であり,特発性間質性肺炎と鑑別が必要な各種疾患の確定診断を高い確率で得られる.

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原因不明の間質性肺炎(特発性間質性肺炎)
EBM からみた特発性肺線維症の治療−ステロイド+免疫抑制薬−


千田金吾**  土屋智義*

* 浜松医科大学第二内科 ** 同助教授

要旨
 特発性肺線維症の治療に関して,ステロイド,シクロホスファミドを中心とした免疫抑制薬の意義を明確にした無作為化対照試験は,ほとんど存在しない.かつての報告は例数が限られており,非特異的間質性肺炎(NSIP)の概念が導入される以前のものである.これら薬剤についての無作為化対照試験が現在幾つか検討されている.しかし本邦症例での検討中のものはなく,人種差などを考慮すると将来的には計画されるべきであろう.

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原因不明の間質性肺炎(特発性間質性肺炎)
細胞分子病態を基礎にした特発性肺線維症の治療法の開発動向

吾妻安良太
日本医科大学第四内科講師

要旨
 特発性肺線維症の治療法はいまだ確立されていない.発症頻度が稀少であり,病因・病態が難解であることや類縁疾患が多彩であるため,しかも慢性進行性で急性増悪を含む悪化により極めて予後不良であることが,前に立ちはだかっている.近年,これらの分子病態が少しずつ明らかにされ,それらの病態に基づいた治療法が基礎研究を通じて開発され,その一部が臨床試験を開始している.本稿では,特発性肺線維症の病因・病態研究とこれら分子病態に基づいた治療法の開発研究の現状を,国際的な視野を含めて概説する.

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原因不明の間質性肺炎(特発性間質性肺炎)
特発性肺線維症における急性増悪と肺がん合併の病態学的意義と対応

稲瀬直彦*   吉澤靖之**
* 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 呼吸器科 ** 同教授

要旨
 特発性肺線維症(IPF)の臨床経過において,急性増悪は生命予後に関連する最も重要な病態である.治療法は確立していないが,経験的にステロイドパルス療法などが行われる.一方,IPF における肺がん合併の頻度は高く,一般に 10〜15% とされている.合併の分子機構は不明であるが,IPF では特に化生上皮において p53 の変異・過剰発現や,マイクロサテライト領域のヘテロ接合性消失(LOH)を認める.IPF 合併肺がんの治療においては,急性増悪の誘発に注意が必要である.

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サルコイドーシス
サルコイドーシスにおける肉芽腫形成の免疫学的機序

津田富康
大分医科大学医学部内科学三教授

要旨
 サルコイドーシス肉芽腫病変は遅延型アレルギー反応として起こる.その反応のコンダクターは Th1 細胞である.サルコイドーシス肉芽腫病変では,IFN gamma 陽性T細胞は多くは類上皮細胞集団外(肉芽腫)に存在する.また,この細胞の活性化に関与する IL-12,IL-18 陽性細胞もまた,多くは肉芽腫外に分布している.一方 IL-4 陽性のT細胞は肉芽腫内にのみ存在する.肉芽腫病変を RT-PCR で検討すると,IFN gamma,IL-4,IL-5 mRNA はともにサルコイドーシス病変内に認められる.このことから,サルコイドーシス病変の調節は Th1 細胞と Th2 細胞のバランスのうえになされているものと考えられる.

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サルコイドーシス
Propionibacterium acnes & granulosum の病因的意義と課題

菅 守隆**  一安秀範*
* 熊本大学医学部第一内科 ** 同助教授

要旨
 これまで,Propionibacterium acnes はサルコイドーシス患者リンパ節から高頻度,高濃度に分離培養され,さらに最近,定量的 PCR 法にて P. acnes & granulosum DNA が同様に検出されることが確認された.これらの結果から,Propionibacterium がサルコイドーシスの病変形成に関与していると考えられるが,本菌が偏性嫌気性の常在菌であるため,その病因的意義については慎重でなければならない.今回,その意義と課題について感染論,肉芽腫,宿主要因,動物実験モデルの立場から考察し
た.

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サルコイドーシス
ステロイド療法の適応と実際

折津 愈
日本赤十字社医療センター呼吸器内科部長

要旨
 サルコイドーシスはいまだ原因不明であり,したがって根本的治療法はない.現時点ではステロイドホルモンが第1選択であり,一時的に有効であるが,長期予後の視点から使用量,使用期間については今後の課題である.近年,サルコイドーシスの病因として Propionibacterium など常在菌による内因感染症としての検討がなされており,今後抗生物質による治療法も検討される可能性がある.

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びまん性汎細気管支炎
疾患概念と臨床診断基準

杉山幸比古
自治医科大学呼吸器内科 教授

要旨
 びまん性汎細気管支炎は我が国で確立された疾患概念で,呼吸細気管支領域に病変の主座を有し,臨床的には副鼻腔気管支症候群の形をとる慢性気道感染症である.閉塞性換気障害を特徴とし,慢性の膿性痰,咳,息切れと副鼻腔炎症状を示す.画像的には,小粒状影と過膨張・気管支拡張像を特徴とし,診断上 CT が有用である.予後不良の疾患であったが,マクロライド療法の導入により著しい予後の改善が見られている.

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びまん性汎細気管支炎
人種特異性と疾患感受性遺伝子

慶長直人
国立国際医療センター研究所呼吸器疾患研究部部長

要旨
 1996 年より,びまん性汎細気管支炎の発症素因を HLA 遺伝子との関係を軸に解明する多施設研究が展開された.関連研究を中心に,疾患感受性遺伝子の同定を試みた結果,疾患群では対照群に比べ,アジア系集団特有の HLA-B*5401 を保有する頻度が有意に高く,一方韓国人患者では HLA-A11 の保有頻度が高く,HLA-A,B両遺伝子座の間に疾患感受性遺伝子が存在する可能性が示唆され,分子遺伝学的にその候補領域が推定された.

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びまん性汎細気管支炎
マクロライド療法の意義と治療指針

田口善夫
天理よろづ相談所病院呼吸器内科

要旨
 びまん性汎細気管支炎(DPB)に対するマクロライド療法は,現在では確立された治療法であり,早期治療によって治癒も可能である.本療法の作用機序についてはいまだ結論は得られていないが,さまざまな作用により慢性気道炎症の改善が得られると報告されている.このマクロライド療法の治療指針を策定し,一般臨床医に本療法を啓蒙するとともに,DPB が東アジア特有の疾患であることから,DPB 先進国として治療指針を国際的に普及させる義務がある.

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