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最新医学57巻3月増刊号

要旨



アプローチ:肥満から生活習慣病へ


益崎 裕章*  中尾 一和**
*京都大学大学院医学研究科臨床病態医科学第二内科 **同教授

要旨
 過食と運動不足に象徴される現代人のライフスタイルの変容と,倹約遺伝子型などの遺伝的素因を背景に,肥満人口は地球規模で増え続けている.糖尿病,高血圧症,高脂血症,冠動脈疾患などの生活習慣病の発症基盤として,臨床医学における肥満の重要性は論を待たないが,近年の分子医学の進捗により,肥満がなぜ,このような生活習慣病を引き起すのか,これらはなぜ同一個体で重積しやすいのか,という疑問が急速に解明されつつある.そのメカニズムを解き明かす手掛かりは,肥満に伴うインスリン抵抗性の病態,脂肪細胞が分泌する多彩な生理活性物質の作用,内臓脂肪の過剰蓄積を始めとする体脂肪分布の病的変化,などに見いだすことができる.

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大規模臨床 SNPs 解析研究 「厚生労働省ミレニアムプロジェクト」


辻本 豪三
国立成育医療センター(旧称:国立小児病院)・小児医療研究センター
分子細胞薬理学研究部

要旨
 遺伝子多型マーカー SNPs は,各個人の遺伝的背景を個別化するのに最適である.昨年度より,厚生労働省では「遺伝子解析による疾病対策・創薬の実施」として,5大疾患(痴呆,がん,糖尿病,高血圧,喘息・アレルギー)に関して,疾患関連遺伝子,薬剤反応性遺伝子解析事業(ミレニアムプロジェクト)を実施している.患者疾患情報と遺伝子多型情報との相関解析により,オーダーメイド医療の実現を目指す.

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生活習慣病の感受性遺伝子同定法


山岡  孝**  板倉 光夫**
*徳島大学ゲノム機能研究センター遺伝情報分野助教授 **同教授

要旨
 一部の SNP はタンパク量の調節に関与して疾患感受性を直接担ったり,疾患感受性遺伝子の同定に役立つ遺伝マーカーとして機能する.メンデル型遺伝病の原因遺伝子の同定に威力を発揮した連鎖解析は,多遺伝子性疾患の感受性遺伝子の同定にはさほど有効ではなく,関連解析と組み合わせた QTL 解析や,ゲノムワイドの高密度 SNP 連鎖不平衡マッピングによって,疾患感受性遺伝子が同定されていくと期待されている.

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老化:テロメアと老化


井出 利憲
広島大学医学部総合薬学科教授

要旨
 ヒト体細胞の有限分裂寿命が,テロメア DNA の短縮によって決められていることが明らかになった.テロメア短縮は,分裂時計として体細胞の分裂寿命の有限性を決めるだけではなく,テロメア短縮とともに細胞機能を変化させることによって,ヒト個体の老化あるいは寿命をつかさどる要因の一つと考えられる.

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栄養:アジア人の SNP と生活習慣病


香川 靖雄
女子栄養大学副学長

要旨
 生活習慣病の予防に必要な栄養と遺伝子多型は日本人を含むアジア人で解明する必要がある.生活習慣病は数十年の経過で健康人から進展するので,栄養の西欧化による影響の長期解析と1塩基多型(SNP)を進化論的病因論から解説する.健康日本 21 の食塩摂取量 10 g,脂肪エネルギー比 25% 以下などの目標値,さらに,新所要量の中で活性酸素を防ぐマンガン,銅,亜鉛,セレン,ビタミンE,C,A,動脈硬化を防ぐ魚油,葉酸,ビタミン B12,B6 などを述べる.

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肥満:肥満と遺伝子発現


笠岡(坪山)宜代**  江 崎  治**
*独立行政法人国立健康・栄養研究所生活習慣病研究部 **同部長

要旨
 肥満は遺伝素因と多様な環境因子が重なって引き起される多因子疾患である.環境因子である運動不足や過剰な脂肪摂取は,エネルギー摂取と消費のバランスを崩し肥満を惹起する.しかし,運動や食事成分はエネルギー出納のバランスを崩すだけでなく,さまざまな転写因子を介して遺伝子発現を制御し,エネルギー代謝を調節していることが明らかとなってきた.将来的には,環境因子を用いて遺伝子発現を調節することにより遺伝素因を克服できる可能性がある.

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高血圧:高血圧の病因遺伝子


杉本 研**  勝谷 友宏* 荻原 俊男**
*大阪大学加齢医学 **同教授

要旨
 ポストゲノム時代を迎えた現在,遺伝子への注目はさらに高まっている.代表的な国民的疾患である高血圧は,遺伝因子と環境因子が複雑に絡み合った多因子疾患である.現在高血圧の候補遺伝子はアンジオテンシノーゲン遺伝子を始め数多くが研究されており,遺伝子と血圧との関連性が明らかになってきている.今後ミレニアムプロジェクトを軸に,将来のオーダーメイド医療を実現させるべく日々研究が続けられている.

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高脂血症:高脂血症の原因遺伝子


石橋  俊
自治医科大学内科学講座内分泌代謝学部門

要旨
 高脂血症の新たな原因遺伝子が相次いで発見されている.家族性高コレステロール血症や家族性欠陥アポB-100 以外の高コレステロール血症の遺伝子異常として,シトステロール血症における ABC トランスポーターの一員である ABCG5/G8 と常染色体劣性高コレステロール血症(ARH)における LDL 受容体のアダプタータンパク質が同定された.Tangier 病の原因遺伝子も ABC トランスポーターの ABCA1 である.

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慢性閉塞性肺疾患:慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症機構と疾患感受性遺伝子


別役 智子**  西村 正治**
*北海道大学医学部第一内科 **同教授

要旨
 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主たる原因は長年の喫煙である.しかし,未解決の重要な課題は「何故喫煙者の約 10〜20% にのみ,臨床的に明らかな閉塞性換気障害を伴う COPD が発症するのか」ということである.この疫学的事実は,COPD の発症に喫煙に対する感受性の個体差が関与することを示唆しており,抗プロテアーゼ,抗酸化など生体の防御機構にかかわる遺伝子の多型と COPD との関係が精力的に研究されている.

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糖尿病:糖尿病の遺伝子


小田原 雅人
虎の門病院内分泌代謝科部長

要旨
 糖尿病は1型と2型に分類され,いずれの発症にも遺伝的素因が関係する.1型では,HLA/インスリン遺伝子上流配列のほか,感受性遺伝子座が報告されている.2型糖尿病はインスリンの分泌/作用障害によって起る.インスリン,ミトコンドリア,インスリン受容体,転写因子などの遺伝子が発症に関係している.また,beta 2,beta 3 アドレナリン受容体,PPAR gamma,アディポネクチン遺伝子などの肥満に関係する遺伝子群が間接的に糖尿病発症に関与している可能性がある.

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飲酒:日本人のアルコール代謝酵素の遺伝的多型


原田 勝二
筑波大学社会医学系教授

要旨
 エタノール代謝にはアルコール脱水素酵素(ADH),シトクロム P450-2E1(CYP2E1),カタラーゼが関与する.エタノールの 90% 以上は ADH により酸化されアセトアルデヒドとなる.アセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素(ALDH)により酸化され酢酸になった後,クエン酸回路に入り,最終的に炭酸ガスと水になる.ADH,ALDH はアミノ酸配列の類似性によりスーパーファミリーを構成し,それぞれの酵素タンパク質(アイソザイム)は独立した遺伝子の産物であり,幾つかの遺伝子について,異なる人種や民族にアミノ酸の置換を伴う多型性変異が報告されてきた.このうち,ALDH2 の酵素活性を持たない多型性変異は飲酒量に影響を与える極めて重要なものであり,モンゴロイドのみに見いだされ白人や黒人には検出されない.さらに,アルコール依存症に対する防御因子ともなっている.

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がん:がん原物質代謝活性化・不活性化酵素遺伝子の多型と発がん感受性


小澤 正吾
国立医薬品食品衛生研究所薬理部第三室長

要旨
 喫煙を通じてのがん原物質の経気道摂取,加熱食品中のがん原物質の経口摂取など,化学発がんがヒト発がんに果たす役割は大きい.多くのがん原物質は,生体内で代謝活性化体に変換される.その反応を触媒する酵素には遺伝子多型が知られ,その多型と種々の臓器がんの罹患性との関連を症例対照研究で明らかにする膨大な研究が行われた.本稿では,化学物質による発がんとがん原物質代謝酵素の多型との関連につき,最新の報告をもとにしてまとめた.

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感受性遺伝子と企業:生活習慣病のゲノム創薬


藤田 芳司
グラクソ・スミスクライン褐、究本部本部長

要旨
 疾患感受性遺伝子が産生するタンパク質を同定し,それが疾患メカニズムにおいて中心的な役割を果たしていることを解明することで,創薬の正しい標的分子を特定する.その後,ハイスループットスクリーニングすることで選択的な化合物を探索する.ファーマコジェネティックスにより患者ごとの遺伝子型と効果・副作用などの薬物応答の差を調べることで,オーダーメイド医療への道が開ける.

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感受性遺伝子と企業:疾患感受性遺伝子探索とバイオベンチャー


村松 正明
ヒュービットジェノミクス且謦役研究所長

要旨
 全貌がほぼ明されたヒトゲノムが,最も大きなインパクトを与えるのは基礎医学よりもむしろ臨床医学であろう.ゲノム情報を駆使したゲノム医学により,新しい診断法や治療法の開発が促進され,オーダーメイド医療の実現へ向けて着実に動いていくであろう.研究環境の大きな変動の中で,現在欧米においてそうであるように,医薬研究の推進力の一端を担うべく,日本でもバイオベンチャーが創成されることが期待される.

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生活習慣(生活習慣病のリスク行動)に関する全国規模の調査


吉池 信男*1  瀧本 秀美*2
*1 独立行政法人国立健康・栄養研究所研究企画・評価主幹
*2 同健康・栄養調査研究部主任研究員

要旨
 生活習慣病対策においては,その原因となるさまざまな生活習慣を「健康リスク行動」としてとらえ,国あるいは地方自治体(都道府県など)において,中・長期的な視野に立って,地域格差や経年変化などを“モニタリング”するような仕組みを構築することが重要である.我が国では,厚生労働省が実施する国民栄養調査,国民生活基礎調査など,国民の生活習慣に関する調査が幾つか行われており,貴重な情報を提供してきているが,これらをより一層活用するためには,調査相互の有機的な調整が必要であると思われる.

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日本人と環境因子:8つの健康習慣と健康度


森本 兼曩
大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座教授

要旨
 ライフスタイルの良好な 40 歳代の健康度(健康年齢)は,20 歳代の生活習慣の不健康なグループと同一であり,糖尿病,循環器疾患,がんなどの生活習慣病に数倍多く罹患するのみならず,45 歳以上の死亡率においても健康グループに比し数倍高い死亡率を示す.
 さらに,免疫力(NK 細胞活性),体細胞染色体異常頻度ならびにアレルギー反応においても,不良な値を示す.

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日本人と環境因子:日本人と在米日系人の生活習慣病
−糖尿病,高脂血症,動脈硬化−


山根 公則*1  大久保 雅通**1 江草 玄士*2 河野 修興***1
*1 広島大学医学部第二内科 **1 同講師 ***1 同教授
*2 江草玄士クリニック院長

要旨
 在米日系人では,生活習慣の欧米化により肥満が助長され,その結果として引き起されるインスリン抵抗性が,糖尿病,高脂血症,高血圧を介して,虚血性心疾患を始めとする動脈硬化性病変を高率に合併すると同時に,近年では,日本人においても日系人に匹敵する疾病構造に近づきつつあることが示唆される.今後,我が国においても動脈硬化性疾患の急増が予想され,ライフスタイルの是正を中心とした危険因子の管理が重要であると考える.

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肥満:日本人の肥満の増加


松村 康弘*1  澤 宏紀*2
*1 独立行政法人国立健康・栄養研究所健康栄養情報・教育研究部室長
*2 鈴鹿医療科学大学学長

要旨
 国民栄養調査によると,男性の肥満者割合は 40 歳代までは増加し,その後減少していた.年次推移を見ると,断面的にも,縦断的にも増加傾向を示したが,減少を開始するのは 65 歳以降であった.女性では,60 歳代までは肥満者割合が増加していた.各年齢階級における年次推移では,肥満者割合は横ばいか減少傾向を示しているが,縦断的に見ると増加傾向にあった.また,女性の若年層におけるやせの者の割合が増加していた.

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肥満:肥満症の分子機構


下村 伊一郎** 船橋 徹** 松澤 佑次***
*大阪大学大学院医学研究科生体制御医学系専攻分子制御内科学
**同講師 ***同教授

要旨
 我が国でも食生活の欧米化,運動不足により,肥満症特に内臓脂肪の蓄積した症例が増加し,これらを背景にして,動脈硬化性疾患の発症件数が増えている.また,脂肪細胞は多くの生理活性物質(アディポサイトカイン)を分泌しており,アディポネクチン,PAI-1,レプチン,TNF alpha,レジスチン,アンジオテンシノーゲンといったアディポサイトカインの分泌異常が糖尿病,高脂血症,高血圧,動脈硬化症といった肥満合併症の発症に深くかかわっている.

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高血圧:レニン・アンジオテンシン系


堀内 正嗣
愛媛大学医学部第一医化学教授

要旨
 レニン・アンジオテンシン系は,重要な血圧調節系として,知られているが,心血管リモデリングにも,重要な役割を担っている.アンジオテンシンII(AII)受容体には,AT1 受容体,AT2 受容体のサブタイプが存在し,クロストークすることにより,血圧,心血管リモデリングの調節がなされてきていることも,次第に明らかとなってきている.

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高脂血症:高脂血症の発症機構


横田 千津子
総合病院取手協同病院内科

要旨
 冠動脈疾患を始めとする動脈硬化性疾患の成因に関しては,種々の因子が知られているが,その中でも高脂血症(hyperlipidemia)は,最も主要な危険因子として位置づけられている.
 脂質は血清中ではアポタンパク質と結合してリポタンパク質を形成している.血清リポタンパク質代謝に関与する酵素,転送タンパク質,受容体,アポタンパク質の遺伝子はほぼクローニングされており,それぞれの遺伝子変異による疾患も,多数明らかにされつつある.ここでは,脂質代謝異常症の全体像を,遺伝性高脂血症を中心に解説する.

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慢性閉塞性肺疾患:慢性閉塞性肺疾患(COPD)の疫学と日本の現状


瀬山 邦明**  福地 義之助**
*順天堂大学医学部呼吸器内科講師 **同教授

要旨
 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は人口の高齢化が進むにつれて増加し,2020 年には虚血性心疾患,脳血管障害に次いで,全世界の死亡原因の第3位になると予想されている.日本における COPD の疫学調査は,厚生省や班会議による患者調査が主体であり,22 万人前後とされてきた.しかし,肺疾患疫学調査研究会により最近行われた,日本の人口構成比に準拠した住民調査では,40 歳以上の成人の 8.5%,約 530 万人が COPD であることが示された.

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糖尿病:糖尿病の成因とその発症機序


月山 克史**  清野 裕**
*京都大学大学院医学研究科病態代謝栄養学 **同教授

要旨
 日本糖尿病学会の「糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告」では,糖尿病を成因(発症機序)と病態(病期)の両面から分類する新しい考え方が導入された.同報告中の「糖尿病とそれに関連する耐糖能低下の成因分類」に従い,多様な糖尿病の発症機序を1型・2型糖尿病,その他の特定の機序・疾患による糖尿病(遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの,および他の疾患・病態に伴う種々の糖尿病),妊娠糖尿病の順に概説した.

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糖尿病:インスリン抵抗性の機構


小林  正**  堀  宏之* 川原 順子**  笹岡 利安*
*富山医科薬科大学第一内科 **同副学長

要旨
 インスリン抵抗性の機序は,インスリンの作用を発揮するシグナル伝達機構の過程のいづれかの部分に抑制効果を惹起する種々の因子によりもたらされる.これらの因子の由来は,肥満による肥大した脂肪細胞から分泌される TNFalpha や遊離脂肪酸であり,また,細胞内の抑制的調節因子として SHIP2 や mTOR 経路や,PTP1B などの因子があり.インスリン受容体から糖輸送に至るいづれかの過程を抑制することにより,インスリン抵抗性が惹起される.

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糖尿病:糖尿病大血管障害の成因


山崎 義光
大阪大学大学院病態情報内科学助教授

要旨
 糖尿病大血管障害の成因として,従来の危険因子の詳細な解明が進み,食後高血糖,食後高脂血症や LDL コレステロールの組成変化(異脂質血症)の新たな関与が明らかとなってきた.これらの種々の危険因子は,血管内皮障害(NO 産生障害,血管拡張障害,凝固線溶系異常)を惹起することも明らかとなってきた.新たな危険因子として炎症反応や遺伝因子の関与が明確になり,この面からの治療戦略の進展が期待されている.

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がん:疫学と予防


富永 祐民
愛知県がんセンター総長

要旨
 我が国ではがん死亡は増加しつつあるが,部位別に見ると,胃がんや子宮がん死亡率は低下し,肺がん,大腸がん,前立腺がん,卵巣がんなどの死亡率が上昇している.罹患率で見てもほぼ同じ傾向が観察されている.これらのがんの増減の背景には,喫煙・飲酒習慣,食習慣などの生活習慣や,妊娠・出産などの社会的な因子の変化を反映していると見られる.喫煙対策と食生活対策の推進により,かなりのがんの予防が可能であると推計されている.

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炎症性腸疾患:炎症性腸疾患の病態


仲瀬 裕志*1*2  岡崎 和一**1 千葉 勉***1 R. Balfour Sartor*2
*1京都大学消化器病態学講座 **1同助教授 ***1同教授
*2Multidisciplinary Center for IBD Research and Treatment University of North Carolina

要旨
 炎症性腸疾患の発症,その病態は複雑である.遺伝的要素,環境因子,喫煙,食事,細菌,ウイルス,免疫異常,腸管上皮のバリアー機構などさまざまな要素が関与している.特に近年,病態のイニシエイションとしての腸内細菌の重要性が取り上げられている.また,その後に続く炎症には,さまざまな転写因子,サイトカインが関与していることが示唆されている.これらの発症にかかわる要素を研究することは極めて重要であり,ひいては炎症性腸疾患の根本的な治療方法につながると考えられる.

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運動:運動と活性酸素


井上 正康
大阪市立大学大学院医学研究科分子病態学教授

要旨
 活性酸素の産生を増加させる運動は体に悪いとの考え方があるが,これは生命現象を一面的にとらえたものであり,その善悪は総合的に判断することが必要である.活性酸素は有毒ではあるが,これなくしては動物は生きていけない.酸化反応と抗酸化反応の微妙なバランスの中に生命の動的本質をとらえることが必要である.本稿では活性酸素関連代謝に及ぼす運動の影響を述べ,それらと健康との関係を考察した.

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休養:日本人のライフスタイルと睡眠障害


内山 真**1 金  圭子*1*2 田ヶ谷 浩邦*1
*1国立精神・神経センター精神保健研究所精神生理部 **1同部長
*2大泉金杉クリニック

要旨
 近年,睡眠に関する科学,医学,社会学の発展により,睡眠障害が健康問題,社会問題としてとらえられ,ライフスタイルとしての睡眠のあり方に注目が集まっている.本稿では,我々の行った疫学調査から日本人の睡眠習慣,睡眠障害の有症率,睡眠障害と性・年齢の関係,そして,生活習慣と心理的要因が睡眠障害に与える影響について述べ,最近注目されている睡眠衛生やライフスタイル改善による不眠症治療法について紹介した.

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