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最新医学57巻4号

特集要旨




アプローチ:サイトカインとサイトカイン受容体の多様性と機能


南木敏宏**  宮坂信之**
* 東京医科歯科大学医学部膠原病・リウマチ内科
** 同教授

要旨
 サイトカインは細胞間相互作用にとって必須の物質である.細胞はサイトカインを産生することにより,隣り合わせの細胞のみならず距離的に離れた細胞とも相互作用を営むことができる.一方,サイトカイン受容体はサイトカインを受け取るために必須の分子であり,サイトカインのシグナルを細胞内に伝達する.また最近では,細胞の遊走に関与するケモカインとケモカイン受容体の存在も次々と明らかにされつつある.

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関節炎発症における IL-1 の役割

岩倉洋一郎
東京大学医科学研究所ヒト疾患モデル研究センター 教授

要旨
 関節リウマチ患者の関節では,IL-1 や IL-6 などのサイトカインの発現が亢進している.我々は,IL-1 受容体アンタゴニストノックアウトマウスが自己免疫性の関節炎を発症することを見いだし,過剰な IL-1 シグナルが自己免疫性関節炎の原因になることを示した.IL-1 の免疫系に対する作用を調べたところ,T細胞に作用して CD40 リガンドや OX40 などの副シグナル分子を誘導し,免疫系を活性化することが分かった.

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IL-6 と炎症性疾患


萩原圭祐*1   西本憲弘**1*2  中原英子*1   吉崎和幸***1**2
*1 大阪大学大学院医学系研究科分子病態医学専攻 生理病態学 **1 同助教授 ***1 同教授
*2 大阪大学健康体育部健康医学第一部門助教授 **2 同教授

要旨
 IL-6 は多彩な生理活性を持つ炎症性サイトカインである.IL-6 受容体システムは IL-6R とシグナル伝達を担う gp130 からなり,細胞内へのシグナル伝達は JAK-STAT 系と Ras-Raf-MAP キナーゼ系が知られる.いろいろなモデル動物において IL-6 の働きが解析され,Castleman 病,慢性関節リウマチ,Crohn 病などの炎症性疾患で病態に関与していることが明らかになっている.

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IL-7/IL-7 受容体と炎症性腸疾患


山崎元美**  渡辺 守**
* 東京医科歯科大学大学院消化・代謝内科,消化器内科 ** 同教授

要旨
 IL-7 が腸管上皮で産生され,IL-7 受容体(IL-7R)を発現した腸管粘膜内T細胞の増殖を調節する機構の存在が明らかになり,正常の腸管粘膜免疫の維持に重要な役割を果たしていることが明らかとなった.IL-7/IL-7R 機構の異常が慢性腸管粘膜炎症を引き起こしていると考えられ,これを標的とした大腸炎に対する新しい免疫治療法の開発や,粘膜免疫および腸管炎症における IL-7 の重要性がますます注目されている.

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ケモカインの関節炎における役割

赤星 透
北里大学医学部臨床検査診断学助教授

要旨
 ケモカインは白血球の走化能を有する生理活性物質であり,多くのケモカイン分子が報告されている.慢性関節リウマチなどの関節炎局所では,多彩なケモカイン分子の発現が亢進していることが明らかにされている.関節炎局所では,さまざまな種類の白血球浸潤が惹起され,関節炎の病態形成に関与している.ケモカインはこれらの炎症性細胞浸潤の誘導に重要な役割を担っている.

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IL-15 と関節炎


島田浩太
東京大学大学院医学系研究科アレルギーリウマチ学

要旨
 IL-15 は IL-2 類似の生理活性を持つサイトカインであるが,慢性関節リウマチ(RA)など関節炎の病態形成においての役割が解明されつつあり,そのアンタゴニストは RA の治療戦略として期待されている.

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IL-18 と炎症性疾患


山村昌弘
岡山大学大学院医歯学総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科学助教授

要旨
 IL-18 の主要な産生細胞はマクロファージ系細胞である.IL-18 は IL-12 存在下では Th1 型反応,非存在下では Th2 型反応を増強することが知られているが,マクロファージのサイトカイン誘導,血管新生,接着分子誘導,好中球の活性化,軟骨変性など多様な活性を持つ.これらの活性は生体防御反応に寄与するが,一方で慢性関節リウマチ,Still 病,Crohn 病,多発性硬化症,気管支喘息などの炎症性疾患への関与が明らかにされている.

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新規 TNF ファミリー分子 BAFF と自己免疫疾患


鈴木勝也* 津坂憲政** 安倍 達**** 竹内 勤***
* 埼玉医科大学総合医療センター第二内科
** 同講師 *** 同教授 **** 同名誉教授,名誉所長

要旨
 BAFF は TNF ファミリーに属するB細胞活性化因子である.T細胞・単球などから分泌され,B細胞上の3種の受容体を介して増殖および抗体産生に関与する.リンパ球で高発現させた動物モデルでは,全身性エリテマトーデス様病変を発症する.ヒト自己免疫疾患においても,血中 BAFF 上昇と自己免疫検査指標との相関より,その病因・病態への関与および新たな抗サイトカイン療法の標的として注目されている.本稿ではこれらの最新知見を概説する.

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新規 TNF ファミリー分子 LIGHT と慢性関節リウマチ


針谷正祥**  中川美紀*
* 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター** 同講師

要旨
 LIGHT は新規に同定された TNF ファミリー分子であり,抗原提示細胞に発現しT細胞活性化における共刺激分子として作用すると同時に,活性化T細胞にも発現する.我々は,慢性関節リウマチ(RA)滑膜組織浸潤T細胞が LIGHT を発現し,滑膜表層細胞が LIGHT の受容体である HVEM を発現することを見いだした.リコンビナント可溶性 LIGHT タンパク質を用いて CD14 陽性マクロファージ様 RA 滑膜細胞を刺激すると,LIGHT 単独刺激により TNF alpha 産生が誘導され,IFNg との共刺激により TNF alpha 産生は増強され,IL-12 の産生も誘導された.これらの実験結果は,RA の病態形成における LIGHT の重要性を示唆している.

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抗 TNF alpha キメラ抗体による慢性関節リウマチの治療


天野宏一
埼玉医科大学総合医療センター第二内科助教授

要旨
 TNF alpha は慢性関節リウマチ(RA)の病態に深く関与している.これを標的とした治療の1つとして抗 TNF alpha キメラ抗体 infliximab がある.infliximab には,即効性(関節の疼痛・腫脹の速やかな改善)と,骨破壊進行抑制という画期的な効果がある.短期的には副作用は特にないが,長期投与に伴う感染症,悪性腫瘍の発生などについて注意が必要である.RA の新たな治療として大いに期待されている.

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抗 TNF alpha キメラ抗体による Crohn 病の治療


松川英彦*  日比紀文**
* 慶應義塾大学医学部内科学 ** 同 教授

要旨
 Crohn 病は若年者に多い炎症性腸疾患で,根治的治療は存在しない.その病態は Th1 細胞優位の免疫反応を主体とする複雑なサイトカインネットワークによると考えられており,近年その中心的存在である TNF alpha をターゲットにした治療が試みられている.中でも抗 TNF alpha キメラ抗体 cA2 の有効性が欧米を中心に相次いで報告されており,本邦での発売が期待される.

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抗 TNF alphaキメラ抗体による Behcet 病の治療


中村 聡*1  大野重昭*2
*1 横浜市立大学医学部 眼科学講座 講師
*2 北海道大学大学院医学研究科視覚器病学分野 教授

要旨
 視力予後不良な Behcet病によるぶどう膜炎の新しい治療として,ヒト-マウスキメラ型抗 TNF alpha モノクローナル抗体の効果を検討した.対象は従来の免疫抑制療法などに抵抗性の症例であったが,短期投与,長期投与いずれもぶどう膜炎の明らかな寛解をみた.長期的な副作用の問題は不明であるが,本抗体は従来の治療が奏効しない Behcet 病によるぶどう膜炎の重症例への効果が期待される.

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TNF 受容体タンパク質製剤 etanerceptによる慢性関節リウマチ治療


川合眞一
聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター教授

要旨
 etanercept(ETA)はヒト TNF alpha 受容体を安定化させた生物学的製剤で,近年慢性関節リウマチにおいて関節破壊阻害効果を含めた著明な改善効果が示され,我が国では未承認ながらすでに世界では 10 万人以上が使用している.有害反応としては肝・腎などの臓器障害は少ないが,結核などの重症感染症には特に注意が必要である.また,まれながら多発性硬化症など自己免疫疾患の合併例が報告されている.一方,ETA などの最近の抗リウマチ薬は一般に高価なため,医療経済学的な検討も将来の課題である.

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抗 IL-6 受容体抗体による慢性関節リウマチの治療


西本憲弘
大阪大学健康体育部健康医学第一部門

要旨
 慢性関節リウマチ(RA)は,自己免疫反応に起因する全身性炎症性疾患である.関節内では炎症性メディエーターが大量に産生され,それらは自己免疫反応を増幅させるばかりでなく,血管新生や滑膜増殖を引き起こしたり,破骨細胞の活性化やプロテアーゼの産生を増強し,骨・軟骨破壊を招く.また,RA の多彩な全身症状をも生じる原因となっている.IL-6 はその中心的役割を担っており,IL-6 の阻害は病態に基づいた新しい治療法となる可能性がある.ヒト型化抗 IL-6 受容体抗体は,RA に対する優れた治療効果を有することが臨床試験の中で明らかになりつつある.IL-6 阻害は TNF alpha 阻害剤とともに,近い将来,リウマチの治療を変えてしまうかもしれない.

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