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最新医学57巻5号

特集要旨



腸管上皮細胞による腸管T細胞発達分化の調節


南野昌信*1   石川博通*2
*1 潟сNルト本社中央研究所 *2 慶應義塾大学医学部微生物学・免疫学教授

要旨
  腸管上皮細胞(IEC)間や腸管粘膜固有層には多数のT細胞が存在する.IEC は,さまざまなケモカインやサイトカインを産生して腸管T細胞の分布や生存を制御する.また,腸管T細胞は抗原受容体や NK 受容体を介して IEC の多様な主要組織適合遺伝子複合体(MHC)を認識し,粘膜防御に重要な役割を担うと考えられる.

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消化管の抗原提示細胞

稲葉カヨ**  植村泰典*
* 京都大学大学院生命科学研究科高次生命科学専攻 体制統御学講座生体応答学分野 ** 同教授

要旨
 生体外環境に対して高度に分化した防御機構を構築した消化管付属リンパ組織において,抗原提示細胞として獲得免疫応答の誘導とその制御に大きな影響力を持つのが樹状細胞(DC)である.DC はM細胞を介してだけでなく,直接腸管腔から微生物を捕捉することができる.また,表現型の異なる DC サブセットは刺激の種類に応じてサイトカイン産生能をも制御し,生体防御に必要な免疫担当細胞の機能調節を 行っている.

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IL-15 による IgA 誘導と炎症への制御

幸 義和*1   大田典之*2   清野 宏**1**2
*1 東京大学医科学研究所炎症免疫分野  **1 同教授
*2 大阪大学微生物病研究所免疫化学分野 **2 同教授

要旨  
近年,上皮細胞が産生する IL-15 の粘膜免疫におけるかかわりと,その異常が引き起こす炎症性腸疾患について研究が急速に展開している.IL-15 によって誘導されたマウスの新規な腸内炎症について述べる.最初に,IL-15 は粘膜免疫の IgA 免疫応答の制御において,重要なサイトカインであることが分かってきた.IL-15 は,現在まで主流と考えられてきた IgA 誘導のための循環帰巣経路から独立した形式で動いている B-1 型細胞に作用している.一方,循環帰巣経路依存系の B-2 型細胞は IL-5 と IL-6 の受容体を発現しており,IL-5 と IL-6 の作用で IgA 産生細胞に分化する.この IL-15 が腸管局所で異常発現すると CD8ab+NK1.1+T細胞が増殖し,小腸炎症の発症に深くかかわっているらしい.つまり,このT細胞は Th1 型のサイトカインを産生しており,このT細胞の優先的な増加を IL-15 の抗アポトーシス活性に帰して異常を増殖しているらしい.これらの結果は,IL-15 は粘膜免疫の IgA 免疫応答に重要なサイトカインであるが,その制御異常が生体に不利な効果を与えることを示唆している.

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自然免疫におけるグラム陰性菌内毒素の認識

三宅健介
東京大学医科学研究所感染遺伝学分野教授

要旨
 グラム陰性菌内毒素エンドトキシンは,Toll-like receptor(TLR)の1つ TLR4 とその細胞外ドメインに会合する MD-2 分子によって認識される.腸管は常在菌由来のリポ多糖(LPS)に常に接している臓器であり,腸管での LPS による免疫系の活性化が感染防御に重要であると考えられている.

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消化器と免疫寛容

渡辺智裕*   若月芳雄**
* 京都大学大学院医学研究科 臨床生体統御医学 加齢医学 ** 同講師

要旨
 腸管・肝臓は栄養物のみならず,各種の抗原を吸収・処理する免疫臓器である.腸管の免疫系は,侵入性病原性抗原に対しては液性・細胞性免疫を駆使して排除に向かう反応を誘導する一方で,腸内常在菌や食事由来抗原に対しては質的に異なる免疫反応が惹起され,寛容が成立する.寛容の成立・維持には消化管のみならず肝臓の免疫担当細胞も関与する可能性があり,その解明は自己免疫疾患の治療に貢献するのみならず,消化管・肝における慢性炎症に起因する数々の病態解明にも寄与することが期待される.

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粘膜免疫とサイトカインネットワーク

金井隆典*   渡辺 守**
* 東京医科歯科大学大学院消化・代謝内科学 ** 同教授

要旨
 最近,潰瘍性大腸炎と Crohn 病の分子免疫学的な病態メカニズムが徐々に明らかにされるにつれ,従来の治療法とは異なった,より病態に特異的な治療法,特にサイトカインに着目した治療法が開発され,研究されるようになった.特に,抗 TNF 抗体による Crohn 病治療に代表されるように,実際の臨床現場に応用され,優れた成績が報告されつつある.このことは,潰瘍性大腸炎や Crohn 病といった若年者に発症し生涯にわたって治療を余儀なくされる疾患に対して,副作用の問題となる長期副腎皮質ステロイド投与に代わる,より特異的な治療法の開発という社会的ニーズも急迫している.しかし,免疫学の進歩の恩恵を受けてすさまじい進歩を遂げ,数年後の炎症性腸疾患治療は,本邦を含めて思いもよらない治療法が開発されることと想像される.今回,現在までに明らかにされた炎症性腸疾患の免疫学的病態と,特にサイトカインに関連した知見に基づいた治療法の開発状況について概説する.

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Toll-like receptor と腸管免疫

小林正弥*   竹田 潔*   審良静男**
* 大阪大学微生物病研究所癌抑制遺伝子研究分野 ** 同教授

要旨
 近年,免疫の分野で注目を浴びているのが,進化の過程において古くから生物に備わっていたと考えられている自然免疫である.この免疫機構で重要な働きを担っているのが Toll-like receptor(TLR)である.この分子はファミリーを形成し,さまざまな病原体成分の認識に必須であることが明らかとなっている.TLR ファミリーは腸管内での免疫でも重要な役割を担っていることが明らかとなってきている.

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Helicobacter pylori 感染と胃炎

大花正也*   岡崎和一**  千葉 勉***
* 京都大学医学部附属病院 光学医療診療部・消化器内科  ** 同助教授 *** 同教授

要旨

 Helicobacter pylori が慢性胃炎を惹起するメカニズムについては不明な部分も多いが,日本人に感染している菌のほとんどを占める cagPAI 陽性株では,菌体が上皮に接着し,タイプ4分泌装置を通じて上皮内へのシグナル伝達が開始されることが知られている.これに引き続いて,上皮からさまざまなケモカイン,サイトカインが分泌され,炎症細胞から分泌されるサイトカインと複雑なネットワークを形成し,粘膜局所では Th1 型優位の免疫応答が起こることが知られている.抗原特異的な免疫反応が起こっていることは間違いないが,免疫系は菌を完全には排除できず,結果として胃がんや胃 MALT リンパ腫などの疾患の発生母地となると考えられる.Helicobacter pylori の抗原認識部位を含む特異的免疫反応についての詳細は未解明で,さらなる研究成果が期待される.

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炎症性腸疾患の成因と腸管免疫

日比紀文*1  矢島知治*2
*1 慶應義塾大学医学部内科教授 *2 北里研究所病院内科医長

要旨

 潰瘍性大腸炎も Crohn 病も,腸管における免疫異常がその病態において重要な役割を果たしている.潰瘍性大腸炎では大腸上皮細胞の抗原提示とT細胞・B細胞の機能異常が,Crohn 病では単球・マクロファージ系の機能異常と Th1 型免疫反応の関与が強く示唆される.サイトカイン,活性化T細胞,マクロファージなどを標的とした新しい治療法が開発されつつある.今後さらなる病態解明と根本治療の開発が期待される.

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自己免疫性肝炎

銭谷幹男*   戸田剛太郎**
* 東京慈恵会医科大学消化器・肝臓内科助教授 ** 同教授

要旨
 自己免疫性肝炎は原因不明の慢性活動性肝炎を呈する病態である.C型肝炎ウイルスの診断が確立して以後,非ウイルス性肝疾患としてその診断は増加している.一方,診断症例の増加に伴ってその臨床的多様性も指摘され,診断困難な症例は増加傾向にある.副腎皮質ステロイドが著効を示すことから,診断が確定すればその対応は比較的容易であるが,診断が困難で治療が遅延した場合には重篤化する.病態解析の進歩による,より特異的な診断法と治療法の確立が今後の課題である.

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原発性硬化性胆管炎 -病理形態,免疫病理,免疫異常を中心に-

中沼安二**  一瀬久美子**  大幸英喜*
* 金沢大学大学院医学系研究科 形態機能病理学 **同教授

要旨
 原発性硬化性胆肝炎(PSC)は肝内外胆管系の慢性炎症性・線維化性疾患であり、胆管の硬化、狭窄、拡張を伴う。抗核抗体、抗好中球抗体などの自己抗体、自己免疫疾患の合併、胆管上皮でのHLA-DRの発現などの自己免疫現象を伴い、肝内外胆管系を標的組織とする自己免疫疾患と考えられている。PSCの発症・進展には、複数の遺伝性素因と環境因子の関与が重要である。PSCの病態は多彩であり、今後、免疫遺伝学、臨床病理学の観点から、PSCの亜分類が可能となるかもしれない。

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自己免疫性膵炎

岡崎和一**  浅田全範*   内田一茂**  千葉 勉***
* 京都大学医学部附属病院 消化器内科・光学医療診療部  ** 同 助教授 *** 同 教授

要旨
 自己免疫性膵炎は,その発症に自己免疫機序の関与が疑われる膵炎と定義される.びまん性の膵腫大や膵管狭細像を画像検査法により拾い上げる.高gグロブリン血症,高 IgG 血症,自己抗体などの血液所見,あるいは組織学的に自己免疫機序の関与を示唆する特徴をとらえることを診断の手順とする.Sjogren 症候群などの自己免疫疾患を合併している症例も見られる.ステロイド治療が奏効するが,安易な治療的診断法は避けるべきである.

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がん免疫療法の現状

中山一郎*   佐々木 茂*   今井浩三**
* 札幌医科大学第一内科 ** 同教授

要旨
 がん免疫療法は,かつては副作用などの問題から,良い臨床成績が上げられていなかった.しかしながら,最近の分子生物学の目覚ましい進歩により,さまざまな腫瘍特異抗原が同定され,抗腫瘍効果の高い治療法が開発されている.一部は臨床試験および臨床応用がすでに始まっているものもあり,がん免疫療法の現状と今後の展望について概説する.

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