注文フォームへ

最新医学57巻6号

特集要旨



アプローチ: 薬物による糖尿病合併症の予防・治療は可能か ?


川上正舒
自治医科大学大宮医療センター総合医学T教授

要旨
  糖尿病合併症については,ポリオール経路の亢進,プロテインキナーゼCの活性化,非酵素的糖化反応と AGE の産生,酸化ストレスの増加など,その成因がかなり明確になってきた.血糖コントロールが第1であることには変わりはないが,アルドースレダクターゼ阻害薬など既存の薬物を含めて,成因とされる機序に直接介入する薬物を上手に使うことにより,合併症の予防・治療が可能になることが期待される.

目次へ戻る


糖尿病性細小血管症の発症機構と遺伝素因

中島英太郎*   中村二郎**
* 名古屋大学大学院医学研究科代謝病態内科学 ** 同助教授

要旨
 糖尿病性細小血管症の発症・進展因子として,高血糖が最も重要な因子であることは言うまでもないが,厳格な血糖コントロールのみでは細小血管症の発症を完全に阻止することは不可能であり,高血糖以降のメカニズムを解明し,予防および治療法を確立することが重要である.さらに,近年の遺伝子解析の進歩により細小血管症の発症・進展を規定する可能性のある幾つかの遺伝子が報告されている.本稿では,現在想定されている発症機構と候補遺伝子について概説した.

目次へ戻る


糖尿病網膜症の病態と治療

佐藤浩章*  佐藤武雄*  山下英俊**
* 山形大学医学部眼科学講座 ** 同教授

要旨  
糖尿病網膜症は後天失明原因の上位を占め,由々しき問題となっている.現在の糖尿病網膜症に対する治療目標は QOV の維持に変わりつつある.糖尿病網膜症の病態を理解するためには,重症度を,単純網膜症,増殖前網膜症,増殖網膜症の3期に分けて考える.網膜症の原因として高血糖が最も重要であるが,高血圧,高脂血症も関係が見られる.網膜血管新生については VEGF が主要な因子として重要であるが,実際には多くの促進因子と抑制因子が相互に関連して血管新生を制御していると考えられる.治療としては,血糖コントロール,網膜光凝固,硝子体手術が確立され,一定の効果が上げられているが,軽症網膜症に対する治療薬が熱望されている.候補としてレニン・アンジオテンシン系の制御薬が注目され,脚光を浴びつつある.

目次へ戻る


糖尿病性腎症の病態と治療

合田朋仁*  富野康日己**
* 順天堂大学医学部腎臓内科学講座 ** 同教授

要旨
 糖尿病性腎症の病態は多岐にわたっている.現時点での糖尿病性腎症の保存的治療の3本柱は,血糖コントロール,血圧コントロール,低タンパク質食療法である.しかし,2型糖尿病患者における末期腎不全の発症率が急速に増加し,本邦では 1998 年以降新規に透析導入された原疾患の第1位に糖尿病性腎症がなっていることより,病態に基づいた特異的な治療法の開発・確立が望まれる.

目次へ戻る


糖尿病性神経障害の病態と治療戦略:最近の進歩

安田 斎
滋賀医科大学第三内科講師

要旨
 糖尿病性神経障害は,糖尿病性ポリニューロパチーを中心として複雑な病態を呈する.治療の第一歩は,臨床像の正確な把握である.糖尿病性ポリニューロパチーの発症機序にはポリオール代謝異常,タンパク質糖化,血管障害,酸化ストレス,神経栄養因子低下,プロテインキナーゼC(PKC)活性異常などの多因子が複雑に関与する.治療の中心は血糖管理であり,少なくとも HbA1C は7% 以下を目標とし,できるだけ早期から本質的治療薬の投与を開始する.薬物としてはアルドースレダクターゼ阻害薬に次いで,PKC 阻害薬が有望である.

目次へ戻る


大血管症の発症機構と遺伝素因

石橋 俊
自治医科大学内科学講座内分泌代謝部門教授

要旨
 2型糖尿病における動脈硬化の形成には,ブドウ糖と,高血圧・リポタンパク質代謝異常・凝固線溶の異常などのブドウ糖以外の因子が複合的に関与する.ブドウ糖は血管壁のプロテインキナーゼCやポリオール経路を活性化するとともに,後期反応生成物(AGE)の産生を促進し,これらが動脈硬化形成過程の複数のステップに対して促進的に作用する可能性がある.これまでに複数の遺伝素因が想定されているが,糖尿病に特異的な遺伝素因の報告はない.

目次へ戻る


冠動脈心疾患の病態と治療

後藤田貴也
東京女子医科大学糖尿病センター講師

要旨
 糖尿病に伴う冠動脈心疾患は近年増加しており,糖尿病患者の QOL を損なう主要な死因となっている.糖尿病患者の冠動脈病変は,無症候性にびまん性・多枝性に進行する予後不良のものが多く,その発症・進展には,糖尿病(高血糖)に直接関連した危険因子と,糖尿病以外の一般的な冠動脈心疾患の危険因子とが複雑に絡んでいる場合が多い.治療面では,各危険因子の総合的な改善が重要である.

目次へ戻る


脳血管障害の病態と治療

松本昌泰
広島大学大学院病態探究医科学脳神経内科 (第三内科)教授

要旨

 脳血管障害の病態診断法や治療法には著しい進歩が見られる.脳血管障害には少なくとも8種類の臨床病型があり,病態や治療もそれぞれの病型ごとに異なる.このうち糖尿病との関連が深いのは,脳梗塞(特にラクナ梗塞およびアテローム血栓性脳梗塞),一過性脳虚血発作,無症候性脳梗塞などである.脳梗塞を中心に,これらの臨床病型ごとにその病態と治療に関する最新情報の整理を試みた.

目次へ戻る


末梢血管障害の病態と治療

重松 宏
東京大学大学院医学系研究科血管外科助教授

要旨

 糖尿病の末梢循環障害の成因は細小血管症と大血管症に大別されるが,治療的な観点からは,主幹動脈に閉塞性病変があるものも含めて,糖尿病があって足部に潰瘍や壊死性病変を有する病態を糖尿病性足疾患として広くとらえるのが良い.動脈壁の石灰化が強い例ではドプラ血流計による圧測定は肢虚血の評価として不適当で,近赤外線分光法や皮膚灌流圧測定などによる評価を検討する.糖尿病性足疾患の治療原則 は,血糖値の管理,組織血流の改善,感染症対策と局所的処置の4点に絞られる.

目次へ戻る


糖尿病性昏睡の病態と治療

荒木栄一***  城谷哲也**  豊永哲至*
* 熊本大学医学部代謝内科 ** 同講師 *** 同教授

要旨
 糖尿病性昏睡の中で糖尿病性ケトアシドーシスは,1型糖尿病や2型糖尿病のインスリン依存状態において,インスリン注射の中断,感染症,外傷などの誘因が加わって発症する.高血糖性高浸透圧昏睡は,比較的高齢の2型糖尿病に上記のような誘因や手術,高カロリー輸液などの医療行為により惹起されることが多い.ごくまれに乳酸アシドーシスをみるが,本症は主にビグアナイド薬によって引き起こされる.病態を的確に把握し,脱水,高血糖をはじめとする代謝異常を是正する必要がある.

目次へ戻る


糖尿病の高脂血症

大須賀淳一
東京大学医学部附属病院糖尿病代謝内科

要旨
 生活習慣の変容により糖尿病や高脂血症が急増している.高脂血症は前糖尿病期にも認められ,その要因としてインスリン抵抗性が注目されている.糖尿病は冠動脈疾患のリスクが高いとされている.また,高脂血症の薬物介入は冠動脈疾患の発症予防と進展阻止に有益な効果を示している高脂血症の治療には血糖の是正も必要であるが,脂質低下薬導入のタイミングを逸して冠動脈疾患を進展させないように,積極的に治療すべきである.

目次へ戻る


糖尿病における高血圧

馬場恒春
福島県立医科大学第三内科講師

要旨
 糖尿病患者には高血圧合併が多く,その適切な降圧療法は腎症,網膜症,大血管障害の予防,進展抑制に重要である.糖尿病における高血圧の成因には,腎症に伴う循環血液量増大と血管昇圧反応性亢進や,動脈硬化に伴う末梢血管抵抗増大の両者が関与している.糖尿病における目標血圧値は 130/85mmHg 未満で,1g/日以上のタンパク尿を伴う腎症例では 125/75mmHg 未満を目標とする.降圧薬に関してはアンジオテンシン変換酵素阻害薬の腎症への好効果を示す報告が多いが,最近アンジオテンシンU受容体拮抗薬(ARB)にも注目が集まっている.

目次へ戻る


糖尿病と感染症

人見重美
筑波大学臨床医学系内科学(感染症)助教授

要旨
 糖尿病患者では,特定の感染症(結核,真菌症,クレブシエラ感染など)の頻度が高くなったり,重症化する.幾つかの免疫機能の変化が報告されているほか,末梢血流障害のため宿主の炎症反応や創傷治癒が遅延したり,抗菌薬の浸透が阻害される.足部の感染はよく見られ,治療が困難な場合がある.壊死性筋膜炎,侵襲性外耳道炎,ムコール症,気腫性胆D炎・腎盂腎炎は,糖尿病患者で頻度が高く,生命の危険性の高い感染症である.

目次へ戻る



糖尿病における足病変

小林哲郎
山梨医科大学第三内科教授

要旨
糖尿病の足病変は,糖尿病性神経障害,糖尿病性血管障害,易感染症などを基礎として起こる潰瘍,足組織の破壊性病変を言う.この病変は足の切断にも関連するので,予防・予知に加え迅速な治療が大切である.糖尿病性神経障害および血行障害の進行マーカーをモニターすることにより,足病変発症の予知が可能である.

目次へ戻る