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最新医学57巻10号 特集要旨



アプローチ: 概念の統一と新たな研究の方向性


瀬山邦明
順天堂大学医学部呼吸器内科講師

要旨
  2001 年4月に発表された GOLD は,世界的公衆衛生上の脅威となっている COPD に対する注意を喚起し,世界各国の COPD 診療にインパクトを与えている.特に肺気腫や慢性気管支炎の病名を組み込まずに,吸入された有害粒子やガスに対する異常な肺の炎症反応と定義して COPD の概念を改めた点が注目される.GOLD ガイドラインをもとに治療,研究,予防など COPD の多方面にわたる活動が活性化されることが期待される.

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日本の COPD の疫学と危険因子 ―特に喫煙感受性について―

巽 浩一郎
千葉大学大学院医学研究院加齢呼吸器病態制御学 助教授

要旨
 日本においては,1秒率 70% 以下の閉塞性換気障害を呈する COPD は,40 歳以上の人口の 8.5%(およそ 530 万人)とかなりの高率に認められることが,NICE study により判明した.COPD は加齢に伴って増加する男性優位の疾患である.喫煙者の約 12% に認められ,喫煙は明らかに COPD の危険因子である.しかしこれら COPD の9割以上は,%1秒量で 50% 以上の軽症ないしは中等症の症例である.日本には潜在的な症例を含めて 530 万人の COPD 症例がいることが推定されるが,病院にて診療を受けている COPD 患者はその約7% の 38 万人であるというのが,日本における現状と考えられる.  COPD の発症機序には遺伝的素因と環境要因の双方が関与しているが,その割合は症例により異なる.COPD は多因子疾患であり,単一の遺伝子多型(SNP)ではその発症機序は説明できない.喫煙感受性に影響を及ぼす SNP は多数知られており,それらは異なった割合で COPD の発症・進展に関与していると考えられる.

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禁煙プログラムの新展開: 携帯電話を利用した禁煙外来


阿部眞弓
東京女子医科大学第一内科講師

要旨

携帯電話からのインターネット接続(モバイルインターネット)機能を利用した禁煙プログラム「卒煙ネット」は,「なるべく自力で手軽にやめたい」という現代人のニーズにマッチした禁煙法である.2001 年2月より利用できるようになった. 本プログラムでは,喫煙衝動が生じたら簡単に携帯電話からアクセスし,24 時間対応で即時にメッセージを受け取れる(即時性・即応性).携帯電話利用の使いやすさ(簡便性)を持ち,全国どこの地域に住んでいても同質のサポートが受けられる(広域性).さらに,医療者に対面しなくて良いので失敗を恐れず気軽に試用することができる(匿名性).利用料金を抑え(経済性),育成キャラクターを設定するなどの(娯楽性)も持たせた.これにより,禁煙を達成する自信のない人や,禁煙への動機固めができていない層にも働きかけることができる.


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禁煙プログラムの新展開:インターネットによる禁煙外来

 
寺本信嗣
東京大学医学部附属病院老年病科

要旨
  禁煙外来はカウンセリング療法と薬物補充療法が中心であるが,これにインター ネットによる情報公開,インターネット通信を利用した患者とのフィードバックを行うことで,禁煙外来の枠組みの拡大,患者の禁煙達成率・継続率の向上,禁煙指導を行う側の教育も普及することが期待される.これらの現状と取り組みを紹介した.

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COPD の画像診断: 胸部 CT における低吸収域の検出頻度

佐藤功
香川医科大学放射線部助教授

要旨
 慢性閉塞性肺疾患に分類される肺気腫には幾つかの亜分類があるが,今回検討した症例からは小葉中心性肺気腫と慢性閉塞性肺疾患に分類される傍壁在性肺気腫とし,その CT での低吸収域の出現を検討した.低吸収域は通常の1回息止め CT か,テーブル移動を行うヘリカル CT か,また CT 機種によっても画像は異なる.筆者の1回息止め CT では,機種にもよるが喫煙者の 50% 前後に肺気腫を認めた.喫煙,特に若年者の喫煙が肺気腫の重症化を生じるため,早期の肺気腫診断が必要となろう.

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COPD の画像診断: 胸部 CT を用いた COPD における 気道病変の評価

三嶋理晃
京都大学医学部呼吸器内科教授

要旨
 1)COPD の多くは,CT において気道壁厚の増大と気道内腔の狭小化を認め,これらの症例にはリモデリングを伴った気道病変が存在すると考えられる. 2)気道内腔の面積や気道壁の厚みを自動測定する方法が開発された. 3)CT において肺気腫の程度を示す LAA%(低吸収領域の全肺野に対する面積比)と,気道病変の程度を示す WA%(気道壁の全気道断面に対する面積比)は,相補的に COPD における閉塞性障害を説明する. 4)CT を用いて COPD を気道病変優位群と気腫病変優位群に弁別することが,病因の解明・治療法の選択に寄与すると考えられる.

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COPD の薬物療法: テオフィリン薬の作用と使い方

中島幹夫*   大田 健**
帝京大学医学部内科 **同教授

要旨

 テオフィリンは気管支拡張作用,呼吸筋力増強作用,呼吸中枢刺激作用などを有し COPD に有効であり,他の気管支拡張薬との併用で相加効果がある.GOLD では慢性安定期の薬物療法としてステップ2(病期2期)以上の症例で抗コリン薬および beta 2 刺激薬の吸入とともに,その使用が推奨されている.安全に最大限の効果を得るためには,テオフィリンの血中濃度を測定することが重要である.

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COPD の薬物療法: beta2 刺激薬,特にツロブテロール貼付薬の役割

田村 弦
東北大学医学部附属病院感染症呼吸器内科副科長

要旨

 気管支拡張薬が推奨される COPD は高齢者に多く見られ,しかも長期にわたって管理する必要があることから,作用時間が長く,副作用が少なく,かつコンプライアンスの良好な薬剤が望まれる.ツロブテロール貼付薬は,1日1回投与で 24 時間作用が持続し,動悸や振戦などの副作用も経口薬に比べるとはるかに少なく,簡便な投与方法で確実に薬効が得られることから,COPD 治療における有用な薬剤の1つである.

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COPD の薬物療法: 長時間作動型吸入抗コリン薬と beta2 刺激薬の役割 ―喘息との対比―

山内広平
岩手医科大学第三内科助教授

要旨
 吸入抗コリン薬は,COPD の治療ガイドラインの中で第1選択の気管支拡張薬として慢性期治療に推奨されてきた.近年,長時間作動型吸入抗コリン薬が開発され,従来の抗コリン薬に比べて優れた臨床効果を示した.また長時間作動型吸入 beta 2 刺激薬は,喘息治療のみでなく COPD の治療上もその有用性が確認されている.抗コリン薬と beta 2 刺激薬は喘息および COPD の治療上,異なった役割を担っており,今後,上記長時間作動型2剤の治療上の位置づけの再検討が必要である.

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COPD の薬物療法: 安定期 COPD の治療におけるステロイド薬の役割

西村浩一
京都桂病院呼吸器センター部長

要旨
 高用量の吸入ステロイド薬は,安定期の中等症および重症の COPD においてわずかであるが有意な改善をもたらす.特に,健康状態(健康関連 QOL)の障害の進行の防止や急性悪化の頻度の減少,医療施設受診の頻度減少などの効果が示されている.しかし,吸入ステロイド薬は1秒量の経年的低下速度には影響を及ぼさない.欧米では COPD に対して吸入ステロイド薬を認可しようとする動きがあるが,我が国ではまだ困難な現状と言わざるをえない.

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COPD の薬物療法: COPD の急性増悪の薬物療法

仲村秀俊*   山口佳寿博**
* 慶應義塾大学医学部呼吸循環器内科 ** 同助教授

要旨
 GOLD のガイドラインにおける COPD の急性増悪時の薬物治療の第一歩は,気管支拡張薬の増量または併用である.beta 2 刺激薬の用量,頻度の増加,抗コリン薬の併用などを行う.アミノフィリンの点滴追加投与は重症例においてのみ考慮するとされている.原因として気道感染症の臨床徴候を伴う場合には抗生物質を投与する.全身性のステロイド薬投与は回復時間を短縮し,肺機能の改善を促進するため,1日 30〜40mg のプレドニゾロンの 10〜14 日間投与が推奨されている.

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COPD における運動療法 (Exercise training)の効果

谷口博之*1  近藤康博*2  西山 理*3 小川智也*4  渡辺文子*4
*1 公立陶生病院呼吸器・アレルギー内科部長 *2 同第二部長 *3同医長
*4 同中央リハビリテーション部

要旨
 COPD に対する呼吸リハビリテーション(PR)により,呼吸困難の軽減,運動耐容能の改善,健康関連 QOL の改善などの効果が期待される.下肢トレーニングを中心とした運動療法は,PR の構成要素として特に重要である.運動療法においては高負荷トレーニングの有効性が報告されている.自験例でも運動療法を主軸とした PR により,呼吸困難,運動耐容能,健康関連 QOL の改善が得られた.また,運動療法時に著明な低酸素血症が見られる場合には,PR と適切な酸素療法の併用が必要な場合がある.また,最近では運動療法と NPPV との併用効果が注目されている.

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全身性疾患としての COPD における 栄養の臨床的意義

福岡篤彦*   宮本謙一*   玉置伸二** 竹中英昭*   吉川雅則*   木村 弘**
* 奈良県立医科大学第二内科 **同教授

要旨
 COPD 患者にやせが多いことは古くから知られていたが,その病態について解析が進んだのは栄養アセスメントの手法が確立して以来のことで,それほど古い話ではない.GOLD でも体格指数(BMI)が独立した予後因子であることはエビデンス Aにランクされている.本稿では,COPD 患者のやせの原因の仮説“pulmonary cachexia”について概説し,栄養アセスメントの方法ならびに栄養治療の現在の推奨について解説する.

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COPDにおける肺循環評価−肺性心・右心不全の評価と治療−

小泉知展*   久保恵嗣**
* 信州大学医学部第一内科学教室講師 **同教授

要旨
 COPD における肺高血圧または肺性心(右心不全)の存在は,COPD の予後の重要な決定因子と言われる.その成因には,低酸素性肺血管収縮や肺血管床の減少が関与している.COPD 患者では,この肺高血圧および右心不全の存在の有無を注意深く観察する必要がある.本稿では,その成因や診断治療について概説する.

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トピックス:COPD 関連遺伝子多型の新展開

石井健男*1  松瀬 健*2
*1 東京大学医学部老年病科 *2 横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター 呼吸器内科教授

要旨
 COPD は他の多因子疾患と同様,遺伝・環境・加齢因子により発症すると考えられる.プロテアーゼ・アンチプロテアーゼバランス,オキシダント・アンチオキシダントバランス,有毒物質の代謝および慢性炎症にかかわる遺伝子と COPD 罹患感受性との関係についての報告が見られ,今後は母集団の拡大による確認作業,人種および地域での差に関する検討が必要である.

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トピックス:COPD における気道過分泌のメカニズム−治療戦略へのフィードバック-

玉置 淳
東京女子医科大学第一内科助教授

要旨
 気道過分泌は COPD の病態増悪因子であり,粘液分泌亢進を制御することは,本疾患を管理するうえで重要な戦略の1つである.COPD 患者の気道では粘膜下腺の肥大や杯細胞の過形成が見られるが,そのメカニズムとしてタバコ煙や大気汚染物質の刺激に基づくムチン遺伝子発現の役割が注目されている.また最近では,EGF 受容体を介する細胞内シグナル伝達経路も明らかになってきた.

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