最新医学58巻3月増刊号 要旨



アプローチ:再生医学,医療と細胞療法の最前線

石川 文彦**  有田 武史* 原田 実根**
*九州大学医学研究院病態修復内科学講座 **同教授

要  旨
  正常細胞や組織を新たに再生させ,これを治療に応用する新しいタイプの医療,“再生医療”が世界的に大きな注目を集めている.再生医学研究は,古典的な幹細胞研究を基盤にしながら画期的かつ飛躍的な展開を見せようとしている.近年,骨髄をはじめとする造血組織由来の幹細胞は,細胞系(lineage)に依存しない分化(transdifferentiation)など,従来予期されなかった能力が明らかにされ,幹細胞の多能性や可塑性を利用する再生医療の大きな可能性が期待されている.

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幹細胞と再生医学

中畑 龍俊
京都大学大学院医学研究科発生発達医学講座発達小児科学教授

要  旨
 近年,再生医学研究が盛んに行われ,その成果が続々と臨床の場に持ち込まれようとしている.再生医学の基盤となる細胞は自己複製能と多分化能を併せ持った幹細胞である.現在行われている再生医療は,我々の身体の中に存在する体性幹細胞を利用したものであるが,将来的には ES 細胞の利用も考えられている.再生医療を健全に発展させるための指針づくりが厚生科学審議会の中で進められている.

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クローン技術の発展と再生医学

若山 照彦
理化学研究所神戸研究所発生・再生科学総合研究センター ゲノム・リプログラミング研究チームチームリーダー

要  旨
 クローン技術によって体細胞からも子孫を作ることが可能になった.しかし,クローン動物の成功率はわずか数%であり,生まれてきても肥満や肺炎などの異常が生じることがあり,まだまだ不完全な技術である.だがこのクローン技術を利用すること で,体細胞から ES 細胞(核移植由来胚性幹細胞:ntES 細胞)の作出も可能になった.つまり自分の体細胞から自分自身のES 細胞を作ることも理論的に可能になったのである.

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再生医療とバイオベンチャー: 産学共同事業の実現

森下 竜一
大阪大学大学院医学系研究科遺伝子治療学助教授
アンジェス MG 株式会社取締役

要  旨
 ヒトゲノムのドラフトが 2000 年に発表されて以後,欧米のベンチャーを中心にゲノムの機能解析に重点が急速に移行し,現在猛烈な競争を繰り広げている.ゲノム機能解析を日常臨床に還元し,患者の治療につなげるためには,ゲノム創薬,遺伝子治療や細胞治療の実現が必須である.欧米では,遺伝子治療・細胞治療ベンチャーは 200 社を超え,遺伝子治療用ベクター開発,生産技術,安全性検討技術,臨床治験受託事業など,多岐にわたる業種を産みだしている.一方,日本では幾つかのベンチャー企業が事業化を目指しているが,まだ少なく,臨床応用が立遅れている.

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胚性幹細胞と体性幹細胞

仲野  徹
大阪大学微生物病研究所遺伝子動態研究分野教授

要  旨
 幹細胞を体外増幅して移植に用いるという再生医学が注目を浴びている.幹細胞とは,自己複製能と分化能を併せ持った未分化細胞であると定義されるが,初期胚から樹立された胚性幹細胞(ES 細胞)と体性幹細胞には,幾つもの面で大きな違いがあり,再生医学的な利用においてどちらがより有用であるかが議論されている.体性幹細胞はそれぞれの臓器において異なった性質を持っているが,ここでは,胚性幹細胞と幾つかの体性幹細胞について,分化能や拒絶反応の制御を比較しながら,その将来性を考えてみたい.

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造血幹細胞と細胞療法-造血幹細胞移植医から見た再生医療の可能性-

中尾 眞二
金沢大学大学院医学系研究科細胞移植学教授

要  旨
 造血幹細胞の可塑性は主にマウスを用いた実験により示されてきた.最近では異性間での臓器移植や同種造血幹細胞移植後の組織を調べることにより,ヒトの造血幹細胞もさまざまな組織に分化しうることが明らかになってきた.このような可塑性を利用して,造血幹細胞は,虚血肢に対する血管新生療法,心筋梗塞に対する心筋・冠血管再生療法,間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)輸注による骨形成不全の治療などに臨床応用されている.

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遺伝子治療と細胞療法

谷  憲三朗
九州大学生体防御医学研究所ゲノム病態学分野教授

要  旨
 遺伝子治療と細胞療法とは極めて密接な関係を持って進化してきている.これは遺伝子治療自体,遺伝子導入ベクターを用いて治療用遺伝子を標的細胞中に導入することで初めてその治療的効果が発揮されるからである.遺伝子治療が公的認可のもとにヒトに対して実施されてからすでに 15 年になろうとしているが,この間多くの情報が明らかになり,そのさらなる進化が望まれている.一方,細胞療法も広範な疾患を対象に新たな医療的展開がなされてきている.両者が今後もより有機的に結びつくことで,難治性疾患に対する新たな医療的貢献が期待できる.

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ヒト造血幹細胞の ex vivo 増幅

平家 俊男*   中畑 龍俊**
*京都大学大学院医学研究科発達小児科学助教授 **同教授

要  旨
 ヒト造血幹細胞の体外増幅は,少量の骨髄液や臍帯血を用いた移植を可能とし,その適応拡大につながるため,開発が期待されている.我々は,ヒト CD34 陽性細胞表面上の各種サイトカイン受容体の発現を検討し,sIL-6R/IL-6 複合体,SCF,TPO,Flk2/Flt3 リガンドの存在下で液体培養すると未分化造血細胞の著明な増幅が得られることを見いだした.ヒト造血幹細胞の増幅の有無は,NOD/SCID マウスというヒト造血幹細胞が生着可能なモデルマウスを用いた測定系にて確認した.また,ヒトT細胞への分化への確認は,NK 細胞の影響を遺伝的に排除した NOD/SCID/common gamma c null マウスを作成して確認した.出現したT細胞は,増殖活性,細胞障害活性を有した.NOD/SCID/common gamma c null マウスを用いることにより,免疫系を含む造血細胞機能の機能評価が可能となり,ヒト細胞幹細胞の活性検討が容易になったとともに,臨床応用に向けた体外増幅造血幹細胞の品質管理が可能となった.

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造血組織コンポーネントと血管新生

高倉 伸幸
金沢大学がん研究所細胞分化研究分野教授

要  旨
 血管再生の臨床応用が始まった.血管形成の分子メカニズムの解析はここ数年の間に飛躍的に発展し,基礎研究が臨床応用に直結し,まさしくトランスレーショナル・リサーチが血管の分野では実現してきたと言える.我々は造血と血管新生の相互作用を詳細にし,ちみつな血管網を有する造血組織の特異性を解析し,虚血を有する患者の患部に造血組織様のちみつな血管を作る治療の概念を提唱してきた.

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血管新生機序の最新知見

服部 浩一
コーネル大学医学部血液腫瘍科助教授
順天堂大学医学部生化学第二講座講師

要  旨
 近年の血管新生研究の進展は目覚ましいものがあり,米国においては,すでに血管新生を制御することによる虚血性心疾患,悪性腫瘍(がん)を含む各種疾患に対する治療の臨床現場への普及が急速度で進んでおり,その成果は従来の疾患治療概念を変革する勢いである.本稿では,これまで我々が取り組んできた,生体内での血管新生因子機能の解明および生理的かつ病的血管新生制御の試みを紹介しながら,その過程を通して血管新生機序の最新の知見について言及する.

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ES 細胞由来血管前駆細胞の臨床応用

伊藤  裕*   中尾 一和**
*京都大学大学院医学研究科臨床病態医科学助教授 **同教授

要  旨
 無限の増殖性(self-renewal)と全能性(totipotency)を有する胚性幹(ES)細胞は,細胞移植による再生医療において魅力的なマテリアルである.我々は,ES 細胞由来 Flk-1 陽性細胞が,内皮細胞と壁細胞の双方に分化しうることを示し,血管前駆細胞(VPC)と呼びうる細胞であることを明らかにした.この ES 細胞由来 VPC は in vitro で血管を構築でき,さらに生体に移植することで血管創生に寄与しうる.体外で適切な段階まで分化させた後 ES 細胞由来 VPC を移植することで,血管再生による血流改善が期待できる.現在我々は,さらにヒトES 細胞を用い,VPC の血管再生医療への応用を検討中である.

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内皮前駆細胞と虚血性心疾患

室原 豊明*1  新谷  理*2
*1名古屋大学大学院医学研究科・器官制御内科学教授
*2タフツ大学セントエリザベス医療センター循環器内科

要  旨
 近年成人の末梢血液中には,内皮細胞に分化しうる未分化な内皮前駆細胞が存在することが明らかにされた.また内皮前駆細胞を蛍光標識し移植すると,虚血下肢の血管新生構築に有意に組み込まれることが明らかにされた.以上より成人における出生後の広義の血管形成(neovascularization)においては,狭義の血管新生(angiogenesis)のみではなく,流血中の内皮前駆細胞の取り込みという血管発生(vasculogenesis)型の血管形成も関与することが示唆された.内皮前駆細胞は成人では唯一の造血臓器である骨髄に由来することが予想されたが,実際にヒトにおいても確認されている.本稿では,最近明らかにされてきた内皮前駆細胞の動員と末梢血液中の動態について概説した.

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ES 細胞由来心筋細胞

森崎 隆幸*1*2 日高 京子**1
*1国立循環器病センター研究所バイオサイエンス部部長 **1同室長
*2大阪大学大学院薬学研究科分子生理病態学分野教授

要  旨
 胚性幹(ES)細胞は発生工学分野で広く用いられてきたが,多能性分化能を利用して,試験管内での細胞分化実験にも用いられてきた.近年,ヒト ES 細胞が樹立され,再生医療に向けた細胞ソースとして期待されている.ES 細胞からの心筋分化について,筆者らの分化途上にある心筋細胞の単離についての研究を中心に,最近の研究の進歩を紹介するとともに,ES 細胞を含めて多能性幹細胞の分化制御の問題点を論ずる.

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骨髄由来外因性および内因性幹細胞 による心筋分化

富田 伸司*1  中谷 武嗣*2
*1国立循環器病センター再生医療部室長 *2同臓器移植部部長

要  旨
 重症心不全に対する新たな治療戦略として細胞療法が注目を集めている.外部から細胞を心筋内に移植する外因性幹細胞移植と,内在する幹細胞により心筋再生を目指す内因性幹細胞のコント ロールの2法が考えられている.その中で,心臓内環境因子は重要な役割を果たしていることが予想されるが詳細は不明である.本稿では自験例を交えてこれら3点について述べる.

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体性幹細胞による心筋再生

福田 恵一*1  板橋 裕史*2
*1慶応義塾大学医学部心臓先進治療学専任講師 *2同呼吸循環器内科

要  旨
 心筋細胞は,生後間もなく終末分化して細胞分裂を行わなくなるため,重篤な心不全では,根本的な治療は心臓移植に頼らざるをえない.しかし,慢性的なドナー不足が深刻な問題となっていることに加え,心臓移植には免疫拒絶,感染症などの解決せねばならない問題も多い.このような現状のもと,骨髄間質細胞や胚性幹(ES)細胞を用いて心筋細胞が再生できることが明らかになり,これらを用いた再生医学に大きな期待が寄せられている.中でも,自己の体性幹細胞を用いた場合には,免疫学的拒絶から免れることができ有用性が高いと考えられている.本章では骨髄間質細胞を中心に体性幹細胞を用いた心筋の再生について述べる.

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脳・神経の再生医学

岡田 誠司*   岡野 栄之**
*慶應義塾大学医学部生理学教室 **同教授

要  旨
 これまで,損傷を受けた中枢神経系はニューロンが新生しないために機能修復は不可能と考えられてきたが,胎生期のみならず成体にも神経幹細胞が存在し,ニューロンを産生していることが明らかとなり,さらにそれらを分離培養・増殖することが可能となった.本稿では現在までに明らかになっている神経幹細胞の分化制御メカニズムについて最近の知見をもとに解説するとともに,幹細胞を用いた中枢神経系の再生医療への応用についても概説したい.

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神経幹細胞分化制御研究と再生医療

瀬戸口 啓夫*1*2  田賀 哲也**1
*1熊本大学発生医学研究センター胚形成部門転写制御分野 **1同教授
*2鹿児島大学医学部整形外科


要  旨
 中枢神経を構成するニューロン,アストロサイト,オリゴデンドロサイトなどの細胞はすべて共通の前駆細胞である神経幹細胞より分化する.近年,神経幹細胞移植を用いた中枢神経再生医療の研究が注目を浴びているが,神経幹細胞移植による治療効果を高めるためには,移植する神経幹細胞を再生に有用な細胞種へと分化誘導することが必要となる.そのためにも神経幹細胞の分化を制御する因子とそのメカニズムの解明が重要になっている.

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細胞移植療法による神経再生戦略

佐々木 祐典**  本望 修** 宝金 清博*** 端 和夫****
*札幌医科大学医学部脳神経外科 **同講師 ***同教授  ****同名誉教授

要  旨
 近年,ヒト成人脳から自己複製能と多分化能を保持した神経幹細胞が発見されたことにより,細胞移植療法による神経再生医療に対しての期待が高まっている.本稿では,神経幹細胞,胚性幹(ES)細胞,骨髄細胞などの神経再生医療のドナー細胞の候補について解説し,細胞移植療法による神経再生研究の最新の知見を概説する.

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肝臓における再生療法の将来展望

谷口 英樹
*横浜市立大学医学部・臓器再生医学教授

要  旨
 幹細胞(stem cell)は,ある組織を構成する細胞集団の根幹に位置する細胞であり,その分化・増殖・可塑性機構の解明が幹細胞システムの人為的操作による再生療法への基盤となる.今後,固形(実質)臓器を対象とした“再生医療”の実用化が望まれるが,現時点において最も重要な課題は,肝臓における幹細胞操作法の確立と,幹細胞制御の分子基盤を解明することである.同時に,各種ヒト肝疾患の病態解明を推進し,再生療法の対象疾患として科学的整合性を有する病態を明らかにする作業が必須である.

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ES 細胞由来肝細胞の肝不全治療への応用

落谷 孝広
国立がんセンター研究所がん転移研究室室長

要  旨
 機能障害や機能不全に陥った生体組織や臓器を,細胞そのものや組織工学的に in vitro で構築を施された細胞を積極的に利用することにより,その失われた機能の再生を図ろうとするのが再生医療である.現在,ほとんどの臓器・組織がその研究対象となっており,各分野で急速とも言える研究の進展が見られる.肝幹細胞の研究も大きく進展し,骨髄中の肝幹細胞や ES 細胞から分化誘導した肝細胞をもとにした細胞治療への応用研究に期待が寄せられている.

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In Vitro における肝組織形成

三高 俊広**1  杉本 真一*2 宮本 茂樹*1
*1札幌医科大学がん研究所分子病理病態学部門 **1同教授
*2京都大学大学院医学研究科消化器外科学講座

要  旨
 幹細胞研究や組織工学の急速な発展,細胞培養方法の改善は,生体の肝臓に組織学的にも機能的にも類似した肝組織(類肝組織)を in vitro で作る可能性を生みだした.最近,肝機能を有する細胞(成熟肝細胞,小型肝細胞,肝芽細胞など)と非実質細胞との共培養や,成熟肝細胞も回転培養により類肝組織が形成されるとの報告がなされている.この総説では,in vitro における肝組織形成について我々の研究成果を中心にまとめてみる.

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腎臓の発生と再生医療-両生類から哺乳類までの腎発生の知見に基づいて-

長船 健二**  西中村 隆一**
*東京大学医科学研究所幹細胞シグナル分子制御研究部 **同助教授

要  旨
 脊椎動物は前腎,中腎,後腎の三つの腎臓を順に発生させていく.我々は両生類の未分化細胞より試験管内で前腎が形成可能であることを示し,この系より哺乳類の後腎発生に必須の遺伝子 Sall1 を単離した.この遺伝子は糸球体や尿細管の前駆細胞である後腎間葉に発現し,ノックアウトマウスは腎臓を欠失した.本稿では Sall を中心として解明の進む腎臓の発生機構と,その知見に基づく幹細胞研究と再生医療の展望について述べる.

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骨髄幹細胞は網膜疾患に何ができるか

大谷 篤史
スクリプス研究所

要  旨
 網膜は神経細胞と血管からなる精巧かつ繊細な器官であり,他の組織では問題にならないほどの小さな異常でも重篤な機能障害を来す可能性がある.骨髄幹(未分化)細胞はそのような特徴を持つ網膜に新しい治療コンセプトをもたらし,より詳細な網膜機能解明に役立ちそうである.

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角膜の再生医学・再生医療

中村 隆宏*   木下  茂**
*京都府立医科大学眼科学教室 **同教授

要  旨
 角膜は上皮,実質,内皮の3層構造からなる無血管な透光体であり,生体内で極めてユニークな組織であると言える.その再生には,現存する組織幹細胞から各細胞層を再生するアプローチと,胚性幹(ES)細胞から眼組織を誘導して再生するアプローチが考えられる.本稿では,現段階での各細胞層の組織再生へのアプローチを要約する.特に,再生医療学的観点から,羊膜を基質に用いた培養角膜上皮移植術,培養口腔粘膜上皮移植術などの眼表面再建術について述べる.

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内耳再生医療

山下 裕司
山口大学医学部耳鼻咽喉科教授

要  旨
 内耳の再生に関する研究は始まったばかりであるが,リンパ液に浸されている特異な臓器である内耳は,免疫反応が少なく再生医療を行ううえで利点となっている.また,内耳へ直接的に薬物を投与できるさまざまな方法が開発され,臨床応用されている.これらを再生医療に応用するため,我々の施設では数年前から動物モデルを作成し,検討してきた.薬物輸送システムを用いた内耳治療は,具体的な段階に入っている.

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生体組織工学と骨再生

田畑 泰彦
京都大学再生医科学研究所生体組織工学研究部門生体材料学分野教授

要  旨
 細胞を利用することによって,自己生体組織の再生修復と臓器機能の代替を行う治療が再生医療である.この実現には細胞の増殖・分化に関する生物医学の研究に加えて,細胞による生体組織の再生誘導のための環境(場)作りを行うことを目標とした生体組織工学(tissue engineering)の研究開発が不可欠である.本稿では,この生体組織工学の現状とこれをベースとした骨再生について展望する.

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関節軟骨の再生

脇谷 滋之**  中谷 宏幸* 中村 幸男*   縄田 昌司*
*信州大学医学部整形外科 **同講師

要  旨
 関節軟骨欠損修復のための自己軟骨細胞移植は,皮膚などとともに最も早くから臨床応用され,商品化されている方法であるが,その有用性についてはいまだに論争中である.ほかにも骨髄間葉系細胞移植によりヒト関節軟骨欠損の修復が促進されることが明らかとなったが,十分な成績とは言い難い.これらの成績をさらに向上させるために,培養条件,成長因子投与あるいは遺伝子導入など,さまざまな方法が研究されている.

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歯周組織の再生治療

木下 淳博
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科生体支持組織学系専攻 生体硬組織再生学講座歯周病学分野

要  旨
 歯周炎は主に口腔内細菌によって引き起される炎症であり,歯周組織を不可逆的に破壊する.従来の歯周治療では,炎症の原因を除去し,すでに破壊されてしまった歯周組織を,生理的な形態に近づけることを治療の目標としてきた.1980 年代以降,失われた歯周組織を,再生治療によって回復させる治療法が確立され,応用されてきている.ここではすでに確立している歯周組織再生治療と,今後期待されている新しい再生治療の幾つかを紹介する.

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皮膚の幹細胞と再生医療

大河内 仁志
国立国際医療センター研究所細胞組織再生医学研究部部長

要  旨
 皮膚の再生医療はすでに培養皮膚が熱傷などの治療に臨床応用されている.毛包のバルジ領域に表皮や毛になりうる幹細胞とメラノサイトの幹細胞が存在する.また,皮膚の中に神経細胞や筋細胞になりうる多能性幹細胞や,脂肪組織の中に間葉系幹細胞の存在が明らかにされ,多能性をもつ SP 細胞の存在も確認されている.今後,細胞の可塑性の研究と相まって,遺伝子治療の場としても皮膚は重要になると思われ,皮膚を幹細胞ソースとして利用できる可能性がある.

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