最新医学58巻4号 特集要旨



脳卒中急性期治療へのアプローチ


小林祥泰
島根医科大学第三内科教授

要  旨
  脳梗塞の急性期治療は rt-PA の臨床応用により大きく変貌を遂げつつある.欧米ではEBM が重視され,大規模臨床試験が次々と実施されている.我が国でも遅ればせながら臨床試験が開始され,また EBM の確立を目指して脳卒中データバンクの構築が進んでいる.これにより新しいエビデンスが明らかにされ,治療ガイドラインの更新の際には,我が国の EBM の進歩をもとに日本人により適切な内容になることが期待される.

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脳梗塞急性期患者の実態

熊井康敬*   井林雪郎**
* 九州大学大学院医学研究院病態機能内科学 (第二内科)** 同助教授

要  旨
 脳卒中データベースにより集積された急性期脳梗塞患者について,脳梗塞病型別頻度,国際比較,時代的推移,危険因子を中心に,従来の他の調査とも比較しながら簡述した.動脈硬化を基盤としたラクナ梗塞,アテローム血栓性脳梗塞には高血圧,糖尿病,高脂血症が多く合併し,心原性脳塞栓症では心房細動の合併が多かった.近年,アテローム血栓性脳梗塞の頻度が増加しているが,その原因として本調査参加施設の特徴と我が国における食生活の欧米化などが考えられた.

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脳梗塞急性期治療の実態と新しい展開

松本昌泰
広島大学大学院病態探究医科学脳神経内科 (第三内科)教授

要  旨
 脳梗塞急性期の病態診断法や治療法には著しい進歩が見られる.脳梗塞はラクナ梗塞,アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓症に分けられるが,その病態に応じて適切な治療法を適時に使い分けることが必須となっている.進歩の著しい脳梗塞急性期治療の両輪は抗血栓療法と脳保護療法であり,抗血栓療法としての GPUb/Va 阻害薬や脳保護療法としてのラジカル消去薬の有用性に関する情報を含め,最新情報の整理を試みた.

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超急性期脳梗塞に対する血栓溶解療法の実態とレビュー

岡田和悟
大田市立病院神経内科/院長


要  旨
 脳梗塞発症直後の血栓溶解療法(線溶療法)は,1996 年の米国での組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)の認可以来,欧米ではすでに数ヵ国で普及している.脳卒中大国である我が国でも大規模な実態調査が行われ,本療法の対象となる例が多数存在することが明らかにされており,また現在 t-PA に関する臨床試験が進行中であり,線溶療法に対する期待は高い.  本稿では,最近行われた本邦における脳梗塞を中心とする脳血管障害に関する実態調査と血栓溶解療法のメタアナリシスの報告を中心に解説し,今後の問題点について触れる.

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出血性梗塞の実態と対策

大坪亮一
国立循環器病センター内科脳血管部門

要  旨
 出血性梗塞は,梗塞に陥った脳組織に2次的に出血を生じたものである.閉塞血管の再開通現象と関連が深く,心原性脳塞栓症例,重症例で頻度が高い.転帰に影響を及ぼす重要な因子であり,急性期抗血栓療法を行う際には,出血性梗塞発生のリスクに十分注意を払い,適応基準や患者管理指針を遵守して行うなど,重篤な出血性梗塞の発生を最小限に抑えるような対処が重要である.

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脳梗塞の最重要危険因子としての心房細動

峰松一夫
国立循環器病センター内科脳血管部門部長

要  旨
 急性虚血性脳血管障害患者の約2割が心房細動を合併し,うち8割は非弁膜性心房細動(NVAF)である.NVAF 合併率は加齢とともに上昇し,合併例の約8割は心原性脳塞栓症で,その転帰は極めて不良である.合併例の 98% がリスク要因(高齢,高血圧,糖尿病,心不全・虚血性心疾患,脳卒中既往)を1つ以上有しているが,大半は発症前に抗血栓療法を受けていない.高リスク患者の脳卒中予防にはワルファリン療法が有効であるが,70 歳以上の高齢者には INR 1.6〜2.6 の低用量療法が安全である.

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急性期脳梗塞における抗血小板療法・抗トロンビン療法

星野晴彦
東京都済生会中央病院神経内科医長

要  旨
 急性期脳梗塞治療としてアスピリンの有用性が認められているが,その効果は些少である.抗凝固療法に関しては,有用性が認められている報告はわずかしかない.本邦ではアルガトロバンとオザグレルが頻用されている.抗トロンビン薬の投与方法,抗血小板薬と抗凝固薬との併用,血栓溶解療法後の投与方法は今後の課題である.

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急性期脳梗塞における脳保護薬療法の評価

永沼雅基*1  植田明彦*1   橋本洋一郎**1 松浦 豊*2  寺崎修司**2
*1 熊本市立熊本市民病院神経内科 **1 同部長
*2 同脳卒中診療科 **2 同医長

要  旨
 今までの脳保護薬は,動物実験では効果を認めるものの臨床試験ではほとんど効果を認めていないが,フリーラジカルスカベンジャーを含む白質をターゲットとした治療薬に期待が向けられている.我が国でフリーラジカルスカベンジャーであるエダラボンが発売され,脳梗塞急性期に投与されているが,腎機能障害や肝機能障害に注意しなければならない.抗血栓薬との併用で効果が増すと考えられる.

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脳梗塞の再発予防における抗血小板療法・抗凝固療法

棚橋紀夫
慶應義塾大学医学部神経内科講師

要  旨
 脳梗塞再発予防には,臨床病型に応じ,抗血小板療法,抗凝固療法が行われる.アテローム血栓性脳梗塞,ラクナ梗塞には,アスピリン,チクロピジンなどの抗血小板療法が中心となる.近年,クロピドグレル,ジピリダモール,シロスタゾールなどの有効性が報告されているが,いまだ認可されていない.心原性脳塞栓症にはワルファリンによる抗凝固療法が行われるが,原因となる心疾患によりその強度が異なる.

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脳梗塞慢性期の抗血小板療法・ 抗凝固療法と再発予防

佐藤美佳*   長田 乾**
* 秋田県立脳血管研究センター 脳卒中診療部・神経内科 ** 同科長

要  旨
 アテローム血栓性脳梗塞や一過性脳虚血発作は,大血管のアテローマに形成された血小板由来の血栓が病態の主役を演じるので,抗血小板薬が再発予防の第1選択薬である.主に低用量のアスピリンまたはチクロピジンが広く用いられている.心原性脳塞栓症では,フィブリン血栓が生じることが原因となるのでワルファリンが第1選択薬と考えられる.ラクナ梗塞では,これまで抗血小板薬の再発予防効果は疑問視される傾向にあったが,シロスタゾールのラクナ梗塞を含む脳梗塞例に対する再発予防効果が明らかにされたことから,ラクナ梗塞に対しても有効な可能性が示唆された.いずれの症例でも,発症機序を的確に診断し,年齢,一般状態や副作用などを併せて検討し,治療法を選択することが重要である.

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クリニカルパスの有効性の検証

稲富雄一郎*1  米原敏郎**1  橋本洋一郎*2
*1 済生会熊本病院脳卒中センター **1 同医長
*2 熊本市立熊本市民病院神経内科部長

要  旨
 クリニカルパスの有効性の検証は,患者自身および医療経済の面から直接的な評価指標を用いた無作為化比較試験によって施行されなければならない.しかしいまだ十分な科学的検証が,ことに本邦ではなされているとは言い難く,さらなる検証が必要である.  当院の脳梗塞クリニカルパスについても紹介した.実効性のあるクリニカルパスの運用のためには,診療の標準化のみならず情報共有ツールとしても有効に利用すべきである.

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虚血性脳卒中に対する血管内治療 -急性〜慢性期-

杉生憲志
岡山大学医学部脳神経外科講師

要  旨
 急性期虚血性脳卒中に対する血管内手術は,ブレインアタックの最先端治療の低侵襲かつ有効な手段として期待されている.本稿では,主として脳主幹動脈の塞栓性閉塞に対する血栓溶解療法,バルーンを用いた direct PTA について解説する.動注による血栓溶解療法は現在 MELT-Japan として多施設共同研究が進んでおり,その進展が注目される.また,最近特に進歩の著しい頸部内頸動脈狭窄に対するステント留置術についても簡単に触れたい.

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外来における未破裂脳動脈瘤への対処

冨永悌二
広南病院 脳神経外科

要  旨
 最近外来において未破裂脳動脈瘤に遭遇する機会が増加している。未破裂脳動脈瘤は、動脈瘤の大きさや形状、患者の年齢・全身状態、手術のリスクなどを考慮して治療適応を決める必要があり、脳神経外科へのコンサルトが望ましい。外来で経過観察中、画像上未破裂脳動脈瘤の大きさや形状の変化を観察したら、速やかに治療を考慮すべきである。経過観察や治療に際しては、十分なインフォームド・コンセントが必要である。

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脳卒中に対する再生医療の展望

佐々木祐典*  本望 修** 宝金清博***  端 和夫****
* 札幌医科大学医学部脳神経外科 ** 同講師 *** 同教授 **** 同名誉教授

要  旨
 急速に超高齢化社会を迎えつつある我が国にとって,今後の脳卒中治療の発展は重要かつ大きな問題である.近年,神経幹細胞が発見され,幹細胞を用いた神経再生戦略が注目を集めている.本稿では,神経幹細胞や骨髄細胞などの幹細胞を利用した細胞療法において,各種の幹細胞の利点・欠点を比較検討し,脳卒中に対する再生医療の展望を概説する.

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