最新医学58巻11号 特集要旨


アプローチ 代謝性骨疾患の診断と治療の進歩

杉本利嗣*
*神戸大学大学院医学系研究科 内分泌代謝・神経・血液腫瘍内科助教授

要  旨
  近年の骨代謝研究の展開により,代謝性骨疾患の病因・病態の解明が著しく進展した.そしてこれに伴い,原発性ならびに続発性骨粗鬆症,くる病・骨軟化症,癌の骨転移など癌に伴う骨病変,そして骨硬化性・骨融解性などの骨系統疾患の診断と治療面にも目覚ましい進歩が見られた.現在,骨粗鬆症をはじめとする代謝性骨疾患の科学的根拠に基づいた日常診療が可能となりつつあり,今後さらなる研究の発展が期待されている.

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骨リモデリングの調節機構

井上大輔*
*徳島大学大学院医学研究科生体情報内科学講師

要  旨
 骨はダイナミックに破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成を繰り返し,再構築(リモデリング)を営むことにより形態や機能を維持している.近年の骨代謝研究の進歩により,これらの細胞分化や機能を根幹的に調節する因子が次々に同定された.本稿では骨芽細胞および主な調節因子について,最新の知見を交えて概説する.

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骨形成調節機構

山口 朗*
*長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 発生分化機能再建学講座硬組織分子病理学分野 教授

要  旨
 骨芽細胞は間葉系幹細胞に由来し,間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化過程では Runx2,Osterix などの転写因子や BMP,プロスタグランジンなどの局所因子が重要な役割を担っている.これらの因子の相互作用を含めて骨芽細胞の分化調節機構が詳細に解析されつつある.

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骨吸収調節機構

小林泰浩*1   宇田川信之*2   高橋直之**1
*1 松本歯科大学総合歯科医学研究所 硬組織疾患制御再建学部門助教授 **1 同教授
*2 同生化学講座教授

要  旨
 骨芽細胞が破骨細胞の分化や機能を調節することは従来より知られていた.RANKL の発見により,その調節機構が分子レベルで明らかにされつつある.骨吸収を促進するホルモンやサイトカインは RANKL 発現を促し,osteoprotegerin(OPG)の発現を抑制する.IL-1 などの炎症性サイトカインやリポ多糖なども破骨細胞の分化と機能を調節していることが判明し,炎症性骨吸収の発症機構が明らかにされつつある.

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石灰化の機構の分子制御

野田政樹*** 小山有紀*  大山厳雄* 鄭 朱令*  湯本健司*
前田由紀子* 北原圭一郎*  二藤 彰**

* 東京医科歯科大学難治疾患研究所分子薬理学 ** 同助教授 *** 同教授

要  旨
 石灰化の制御にかかわる分子群は 相互作用のバランスの中で石灰化のレベルを規定する.石灰化を抑制する機構は,これが阻害されると石灰化に促進的な結果をもたらす.これまでのノックアウトマウスの研究から,石灰化を抑制する分子と促進する分子の平衡が重要であり,一部ではフィードバックのかかることが推察される.現在のこれらのネットワークについてのメカニズムの解明について概観する.

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リン利尿ホルモン

福本誠二*
* 東京大学医学部附属病院検査部講師

要  旨
 血中リン濃度は,主に腎近位尿細管でのリン再吸収により規定されている.慢性的な低リン血症を特徴とする複数の疾患の発症に重要な役割を果たす因子として,FGF-23 が同定された.FGF-23 は腎近位尿細管でのリン再吸収を抑制するとともに,1,25-水酸化ビタミンD産生を抑制する.FGF-23 作用の解明は,リン代謝異常症のより良い管理に必要と考えられる.

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ビタミンDの作用と骨疾患

大薗恵一*
* 大阪大学大学院医学系研究科 生体統合医学小児発達医学(小児科学)講座教授

要  旨
 ビタミンDは抗くる病因子として発見された骨形成に必須の因子である.ビタミンDは体内で活性化され,標的細胞内に存在するビタミンD受容体に結合し,遺伝子の発現を調節することで作用を発揮する.一方,ビタミンD受容体欠損マウスにおいては発生異常がないこと,十分なカルシウムの補充で骨病変もほぼ治癒することより,ビタミンDの主たる作用が血清カルシウムの維持にあると考えられる.また,ビタミンDは骨吸収促進作用も有し,骨に対する作用に2面性が認められる.

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原発性骨粗鬆症

池田恭治*
* 国立長寿医療研究センター老年病研究部部長

要  旨
 骨の老化は,骨量の減少,骨の構造の変化,骨の材質の劣化によって特徴づけら れ,骨の脆弱性と骨折の原因になっている.これら3つの要因を標的にした診断・治療法の開発が急務である.骨の加齢変化には,全身性のホルモンや神経系,局所因子,機械的刺激,細胞固有の要因がある.破骨細胞や骨芽細胞に加えて,第3の細胞である骨細胞が microdamage の除去と修復に重要である.骨吸収抑制薬中心の市場に,PTH 自己注射によるアナボリック治療が導入され始め,積極的に骨を造る時代に突入した.

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ステロイド骨粗鬆症

鈴木 静*1  後藤公宣*1   高柳涼一*2  名和田 新**1
*1 九州大学大学院医学研究院病態制御内科学 (第三内科) **1 同教授 
*2 同老年医学教授

要  旨
 ステロイド骨粗鬆症は,グルココルチコイド(GC)の長期投与によって誘発される続発性骨粗鬆症で,現在その骨粗鬆症発症に伴う骨折の予防対策が必須のものと なってきている.骨量の減少は GC 投与開始の最初の6ヵ月に著明に進行し,過剰の GC による骨形成の低下が主な成因と考えられる.一方で,骨折リスクを判定基準とした大規模臨床試験において,ビスホスホネート製剤が有意の改善効果を示しており,第1選択薬として考慮されている.

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内分泌疾患に伴う骨粗鬆症

越山裕行*1*2
*1 (財)田附興風会医学研究所北野病院 糖尿病・内分泌内科部長
*2 京都大学医学部糖尿病・栄養内科臨床教授

要  旨
 続発性骨粗鬆症の原因として内分泌疾患は比較的頻度の高いものであり,古くからその病因については報告があるが,その頻度,発生機序,治療法についてはまだ不明の点が多い.骨粗鬆症を起こす内分泌疾患としては Basedow 病,Cushing 症候群,原発性副甲状腺機能亢進症,性腺機能低下症が代表的であるが,そのほかにも骨粗鬆症を起こす内分泌疾患は数多くある.それぞれに克服すべき課題は多く,また内分泌疾患に伴う骨粗鬆症全般において,その診断・治療の方針について一定の基準がなく今後の課題である.

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腎性骨異栄養症

西 裕志*   中西昌平*   深川雅史**
* 神戸大学医学部代謝機能疾患治療部 ** 同助教授

要  旨
 腎不全患者では血清 Ca,活性型ビタミンD濃度が低下し,副甲状腺の PTH 分泌が刺激されるという解釈は,すでに2次性副甲状腺機能亢進症の古典的モデルに過ぎない.最近 30 年間の臨床現場の観察と基礎研究の進歩により,腎性骨異栄養症の病態は一層複雑であると認知され,同時に臨床現場では解決困難な問題が山積している.例えば,最近増加傾向にある無形成骨症はその病態自体が依然として十分解明されていないし,虚血性心疾患につながる異所性石灰化は慢性腎不全・維持透析患者の生命予後規定因子であり,その進行予防は臨床面で克服すべき重要な課題である.

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くる病・骨軟化症

田中弘之*
* 岡山大学大学院医歯学総合研究科小児医科学 助教授

要  旨
 骨の石灰化障害によりくる病・骨軟化症が生じる.その病態は,ミネラルの骨への供給の欠乏とミネラルの骨沈着障害に大別される.臨床で遭遇する多くの病態は前者で,ビタミンD欠乏と低リン血症性くる病・骨軟化症がある.ビタミンD欠乏は代謝性骨疾患の中で最も古い病態であるが,欠乏症の定義が最近になって見直されてきている.低リン血症性くる病においては,リン調節にかかわる諸因子が同定され新たな展開を見せている.

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大理石骨病

田中 栄*
* 東京大学医学部整形外科

要  旨
 大理石骨病はまれな遺伝性疾患である.重症型に対しては骨髄移植や IFNgamma 投与などの治療が行われているが,その成績は必ずしも満足すべきものではない.近年,分子生物学を用いた研究からその病態が分子レベルで明らかになってきており,新しい治療法の開発が期待されている.

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癌による骨病変

米田俊之*
* 大阪大学大学院歯学研究科生化学講座教授

要  旨
 癌は高頻度に骨に転移し,耐え難い骨痛などにより癌患者の QOL を損なう.また,癌はさまざまな全身的合併症状,いわゆる癌性症候群(paraneoplastic syndromes)を誘発する.このような癌性症候群はしばしば骨と関連して見られる.癌の骨への転移および骨関連の癌性症候群がどのようなメカニズムを介して起こるかを理解することは,癌患者の治療・管理の向上に不可欠である.

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