最新医学59巻3月増刊号 
特集 要  旨


循環器系:心不全の診療ガイドラインに沿った心不全の診断・治療

堀 正二*
* 大阪大学大学院医学系研究科病態情報内科学(第一内科) 教授

要  旨
  心不全はその病態の差異により,急性心不全と慢性心不全に分類される.急性心不全は,発症が急激で生命に対する危機を伴うことから原因の除去,血行動態の安定化,苦痛の緩和処置が重要な治療戦略となる.
 慢性心不全は,心機能の障害による運動能力の低下とうっ血症状が主な徴候であるが,心室のリモデリングが進行し病状が悪化する.治療は神経体液因子の抑制による心筋障害の抑制に主眼が置かれる.共に重症で薬物治療でコントロールできない場合は補助循環の適用となる.

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循環器系:心不全の大規模臨床試験とエビデンス

岡本 洋*1  北畠 顕*2
*1北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学講師 *2同教授

要  旨
 1980 年代から心不全領域においても,心機能などの surrogate endpoint ではなく,生命予後という true endpoint を指標としたランダム化臨床試験(RCTs)の成績が報告され,その結果に基づいた治療(EBM)が志向されるようになった.EBM の展開は,治療に対する見方を変え,多くの診療ガイドラインが作成された.しかし,臨床試験の成績やガイドラインは,個々の症例を診るための簡略な地図に過ぎない.目的地に到達するためには,経験や知識に基づいて地図を深く理解すること,そして,何より,どんな状況にも即応できるように足を鍛えることが要求される.

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循環器系:心筋梗塞の診断・治療のガイドライン

渡辺 郁能**  上松瀬 勝男**
*駿河台日大病院循環器科 **日本大学内科学講座内科2教授

要  旨
 1998〜2002 年の全米の調査ではガイドラインに沿った適切な治療を受けている患者は全体の6割にも満たないとの報告があり,我が国でもガイドラインの実用の普及・評価に努めていかなければない.我が国では EBM の蓄積が始まったばかりであるが,医療の進歩・社会経済状態に応じガイドラインは常に改訂を念頭に置かなければならない.

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循環器系:心筋梗塞の大規模臨床試験とエビデンス

坂本 知浩*   小川 久雄**
*熊本大学大学院医学薬学研究部循環器病態学講師 **同教授

要  旨
 メタアナリシスにて明らかとなっている心筋梗塞症のエビデンスでは,急性期における発症 12 時間以内の血栓溶解療法,アスピリン,b遮断薬,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の効果が確実であると考えられている.また primary angioplasty は血栓溶解薬の経静脈投与と比較して,患者の予後を改善する.慢性期において低用量アスピリン,強めの抗凝固療法,b遮断薬,ACE 阻害薬,スタチンが心筋梗塞の再発,心血管死を予防した.

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循環器系:高血圧の診断・治療のガイドライン

安東 克之*   藤田 敏郎**
*東京大学保健管理センター講師 **東京大学大学院医学系研究科腎臓・内分泌内科教授

要  旨
 高血圧は重要な心血管リスクの一つで,血圧値は 140/90mmHg 未満にコントロールすべきであり,さらに糖尿病・慢性腎疾患などを有するものでは 130/80mmHg 未満と厳しくコントロールする.降圧薬の選択に関しては米国合同委員会第7次報告では降圧利尿薬を中心とする処方が提唱されているが,欧州高血圧学会/心臓病学会の高血圧管理ガイドラインではこれに対して否定的であり,意見が大きく分かれている.

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循環器系:高血圧の大規模臨床試験とエビデンス

武田 和夫
京都府立医科大学腎臓・高血圧内科病院教授

要  旨
 これまで多くの高血圧の大規模臨床試験が行われてき,その成績は臨床の現場で貴重なエビデンスとされている.最近でも三つの成績が発表されている.
 老年者高血圧治療,糖尿病合併症治療などにおいても,これらの大規模治療成績をもとに降圧治療の重要性が指摘されてきている.また,多くの大規模治療成績のメタアナリシスも発表されており,薬剤間での比較もされ,これらのエビデンスをもとに高血圧治療ガイドラインが改訂されている.

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呼吸器系:COPD の診断・治療のガイドライン(GOLD に基づいて)

三嶋 理晃
京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学教授

要  旨
 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断は,症状の有無にかかわらず危険因子に対する暴露歴と,完全には可逆的ではない気流制限の存在に基づく.気管支拡張薬投与後の Gaensler の1秒率(FEV1/FVC)が 70% 未満が COPD の必須条件であり,1秒量(FEV1)の % 予測値で病期を決定する.慢性安定期において,症状のある症例に対しては,気管支拡張薬を単独使用もしくは併用する.長期吸入ステロイド剤は,重症で急性増悪の回数が多い患者を対象とする.リハビリテーションは中等症から行う.呼吸不全を合併した最重症例に対しては,長期酸素投与・外科療法の適応がある.

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呼吸器系:COPD の治療に関する大規模臨床試験とエビデンス

藤本 圭作
信州大学医学部内科学第一講座助教授

要  旨
 本稿では慢性閉塞性肺疾患(COPD)の禁煙を含めた薬物治療について,大規模臨床試験の結果をもとに解説した.唯一禁煙は COPD の予後を改善することは周知の事実であるが,薬物治療としては気管支拡張薬が最も中心的な薬物である.気管支拡張薬としては抗コリン薬,徐放性テオフィリン薬,長時間作用性 b2 刺激薬があるが,おのおのの臨床的効果およびその併用効果につき解説するとともに,COPD におけるステロイド治療の位置付けについて解説した.

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呼吸器系:喘息の診断・治療ガイドライン
―研修医,実地医療にあたる先生方へ―

知花 和行*   福田 健**
*獨協医科大学呼吸器・アレルギー内科 **同教授

要  旨
 2003 年 10 月に『喘息予防・管理ガイドライン 1998』が改訂され,『喘息予防・管理ガイドライン 2003』が発表された.新しい喘息治療薬の出現,大規模臨床試験のエビデンスを背景に長期管理が主に改訂されている.また,喘息治療の国際化に伴い,共通の基盤に立った議論が重要となってきており,『GINA(Global Initiative for Asthma)』との整合性が図られている.ガイドラインの普及によりさらに良い管理が期待される.

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呼吸器系:喘息の大規模臨床試験とエビデンス

藤村 直樹
弘英会琵琶湖大橋病院副院長

要  旨
 喘息が気道炎症性疾患と定義された 1990 年代以降,同一の診断基準に基づく多施設無作為化比較対照試験が多く行われるようになった.喘息の大規模臨床試験はいまだ限らているが,システマティックレビュー/メタ分析からエビデンスと認知されたものが EBM の基礎となり,客観的診断と重症度に基づく吸入ステロイド剤を長期管理薬の中心とした GINA を始め,我が国のガイドラインが作成されている.

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呼吸器系:成人市中肺炎の診断・治療のガイドライン

橋口 浩二*  関 雅文*  河野 茂**
*北九州市立八幡病院内科 **長崎大学大学院感染分子病態学講座(第二内科)教授

要  旨
 市中肺炎(肺炎)は日常診療で高頻度に遭遇する疾患である.より実効的な肺炎診療のために,エビデンスに基づいた本邦独自のガイドライン作成が行われた.本邦のガイドラインの特徴は,細菌性肺炎と非定型肺炎を鑑別して治療すること,起炎菌の検索を積極的に行うことなどにある.肺炎診療においては患者背景,重症度,薬剤感受性などを考慮したエンピリックセラピーを行う必要がある.今後もいろいろな意見・エビデンスを反映してガイドラインの改訂が望まれる.

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呼吸器系:肺炎の大規模臨床試験とエビデンス

二 木 芳 人
川崎医科大学呼吸器内科講師

要  旨
 我が国の肺炎のガイドラインでは,その推奨項目に対する良質なエビデンスが不足している部分が多い.エビデンスとして採用できるような研究や報告が,我が国では過去にほとんどなかったためである.しかし,公表されたガイドラインについては,検証試験として良質なエビデンスとなるような臨床試験も必要であろう.そのためには,行政や学会の理解や援助が必要であり,試験のデザインや実施方法についてもさまざまな努力や工夫も必要であろう.

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呼吸器系:エビデンスに基づく肺癌の診断・治療

石角 太一郎*   西條 長宏**
*国立がんセンター中央病院肺外科 **同薬物療法部長

要  旨
 我が国における肺癌による死亡数は急速に増加している.早期診断,早期切除の努力にもかかわらず,大半の肺癌は根治が困難な状況にある.しかし,診断技術の発達や種々の新規抗癌剤の導入によって,肺癌の治療成績は徐々に改善されており,各臨床病期における肺癌治療のコンセンサスも明らかになりつつある.本稿では,現在の肺癌診療における臨床試験のエビデンスに基づいて,診断および治療の現状を概況する.

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呼吸器系:肺癌の大規模臨床試験とエビデンス

加藤 晃史*   大江 裕一郎**
*国立がんセンター中央病院肺内科 **同医長

要  旨
 肺癌の治療成績はいまだ満足するにはほど遠く,現在も新薬を取り込んだ治療開発が続けられている.新しい治療の評価には科学的かつ倫理的な臨床試験が必要であるが,特に大規模臨床試験の基盤となる多施設共同研究グループの組織作りでは米国が世界をリードしている.近年,我が国でも日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)を中心に大規模臨床試験が実施され,国内外に大きなインパクトを与える研究結果が生み出されるようになってきた.

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代謝系:『科学的根拠(evidence)に基づく糖尿病診療ガイドライン』(2002)

野田 光彦
虎の門病院内分泌代謝科部長

要  旨
 『科学的根拠(evidence)に基づく糖尿病診療ガイドライン』は,厚生省(当時)の研究事業として,平成 11〜12 年度にかけて行われた根拠に基づく医療(EBM)に依拠した診療ガイドライン作成の成果をベースに,日本糖尿病学会の診療ガイドライン策定に関する委員会によって策定された.各項目は勧告の内容を記載したステートメントとその解説,および文献とアブストラクトテーブルから成る.おのおののステートメントには勧告の強さと根拠となった文献のレベルが示されている.本稿では,このガイドラインの作成の経緯や方法,使用上の留意点などについて記載する.

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代謝系:糖尿病の大規模臨床試験とエビデンス

小田原 雅人
東京医科大学内科学第三講座主任教授

要  旨
 1型糖尿病を対象とした DCCT,2型糖尿病を対象とした Kumamoto Study,UKPDS は,血糖の厳格な管理が糖尿病性慢性合併症の発症,進展予防に有効であることを示した.また,糖尿病の発症予防には,生活習慣の改善が重要であることは,北欧で行われた,Malm・ Preventive Trial や,中国で行われた Da Quing Study によって示されていたが,2001 年に発表された Diabetes Prevention Study によって,証明されたと考えられる.また DPP,STOP-NIDDM Study によって,薬物介入により,糖尿病の発症が抑制されることが示された.

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代謝系:日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患診療ガイドライン』

山下 静也
大阪大学大学院医学系研究科分子制御内科学助教授

要  旨
 近年動脈硬化を基盤とする心血管疾患は世界的規模で死因の
トップを占めており,その基盤となる粥状動脈硬化の予防と治療は重大な課題である.粥状動脈硬化を引き起す原因として,高脂血症,特に高 LDL コレステロール(LDL-C)血症が重要であることは言うまでもないが,それ以外の危険因子も大切である.日本動脈硬化学会によって,『動脈硬化性疾患診療ガイドライン』(2002 年版)が発行され,実地医家に対しての指針が示された.本稿では本ガイドラインのアウトラインについて述べ,また高脂血症治療に関する最近の EBM について紹介したい.

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代謝系:高脂血症・動脈硬化症の大規模臨床試験とエビデンス

酒井 尚彦
大阪大学大学院医学系研究科分子制御内科

要  旨
 主にスタチンを用いた高コレステロール血症に対する種々の臨床介入試験によって,1次予防・2次予防試験共に総死亡も含めた冠動脈イベント,そしておそらく虚血性脳卒中をも減少させることが明らかとなっており,コレステロール低下療法は今や最も確実な動脈硬化の予防医学と言える.2次予防においてはできる限り低比重リポタンパクコレステロール(LDL-C)を低下させることが望ましいが,1次予防におけるコレステロールの治療目標にはまだ検討の余地がある.冠動脈疾患の発症率が欧米の3ないし5分の1である我が国においても,近年独自のエビデンスが蓄積しつつあり,それらに基づいた高脂血症治療の診療ガイドラインが作成されている.

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代謝系:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン

細谷 龍男
東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科教授

要  旨
 高尿酸血症・痛風の治療に関するガイドラインとしては世界で初めてのものである.本ガイドラインでは,本邦における高尿酸血症・痛風の現状から始まり,高尿酸血症の定義と尿酸の測定法,痛風関節炎の治療,高尿酸血症に対する治療,合併症,併発症に対する治療,二次性高尿酸血症とその治療,生活指導などが,図表も多く取り入れて書かれてある.

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代謝系:高尿酸血症の大規模臨床試験とエビデンス

加藤 雅彦*1  荻野 和秀*2  井川 修*3  重政 千秋*4
久留 一郎*5

*1鳥取大学医学部附属病院循環器内科 *2同講師 *3同助教授 *4同教授
*5鳥取大学大学院医学系研究科再生医療学教授

要  旨
 痛風性関節炎や尿路結石の原因としての高尿酸血症が,近年生活習慣病の一つとしてクローズアップされ,欧米や我が国における大規模臨床試験において,心血管疾患の独立した危険因子である可能性が報告されてきている.これらの結果を踏まえ,高血圧,糖尿病,高脂血症のみならず血清尿酸値を適正にコントロールすることにより,心血管疾患の1次あるいは2次予防を目指していくことが重要である.

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感染症:結核の診断・治療のガイドライン

下方 薫
名古屋大学医学部附属病院呼吸器内科教授

要  旨
 肺結核の症状は微熱,咳,痰,血痰,胸痛など非特異的であり,受診や診断の遅れにつながりやすい.呼吸器症状が2〜3週間以上続いているような場合には,結核の可能性を考慮する.結核の診断は,結核菌を証明することで確定される.塗抹・培養検査,核酸増幅法は診断に重要である.結核の治療として,イソニアジド,リファンピシン,ストレプトマイシンまたはエタンブトール,ピラジナミドの4剤による6ヵ月間の化学療法が確立された.

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感染症:結核治療のガイドラインとその見直しの提言

倉澤 卓也
国立療養所南京都病院院長

要  旨
 我が国の結核医療は,結核予防法に基づく『結核医療の基準』に規定されており,結核の治療はこの基準に則って行われなければならない.今日の結核治療の目標は,化学療法を軸に細菌学的治癒を達成することであり,本稿では,まず現行の『結核医療の基準』を解説し,細菌学的治癒に導くための化学療法の考え方と,それに基づいた日本結核病学会治療委員会の現行の『結核医療の基準』の見直しの提言について概説する.

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