最新医学59巻6号 
特集 要  旨


変貌しつつある悪性リンパ腫の診断と治療

堀田知光*
* 東海大学医学部血液腫瘍内科教授

要  旨
  悪性リンパ腫の診断と治療をめぐる状況は,序論で触れたように歴史に残る重要な医学的知見の蓄積によって,近年大きく変貌しつつある.本特集では,最近の悪性リンパ腫をめぐる診断と治療の動向についての詳細はテーマ別に専門家にレビューしていただくが,それらの内容をより身近に理解していただくための横糸として俯瞰的な概説を行い,特集の導入部分としたい.

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診断・病態評価の進歩:WHO 分類と疾患概念の変遷

吉野 正*
* 岡山大学大学院医歯学総合研究科病理・病態学教授

要  旨
 悪性リンパ腫の分類はほぼ 10 年程度の間隔で大きな変革が見られる.2001 年に発刊された WHO 分類は,非ホジキンリンパ腫とホジキンリンパ腫を含んでおり,前者の診断項目はその「由来細胞」をできるだけ推定するという立場をとっている.これは REAL 分類の改訂版的なもので,予後や臨床的な悪性度と密接な関係を有している.本稿では WHO 分類の概要を示すとともに,現在までに判明してきた問題点,今後に残された課題についても触れる.

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診断・病態評価の進歩: 悪性リンパ腫の分子病態

野村憲一*   谷脇雅史**
* 京都府立医科大学血液内科 ** 同教授

要  旨
 分子細胞遺伝学的手法の発達により,悪性リンパ腫の染色体遺伝子異常と病理所見や臨床像との密接な関係が明らかになってきた.特異的な染色体異常の検出は悪性リンパ腫の補助診断となるだけでなく,分子標的薬開発に寄与する可能性がある.今後,SKY 法の成果を指標にして,分子遺伝学による詳細な解析が望まれる.

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診断・病態評価の進歩:リスク因子と予後
―代理指標から特異的指標へ―

永井宏和*
 * 国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター

要  旨
 悪性リンパ腫において予後因子解析は重要である.代表的なものとして,aggressive 非ホジキンリンパ腫の国際予後指標(IPI)や進行期ホジキンリンパ腫の国際予後スコア(IPS)など予後予測モデルが開発された.しかしこれらのモデルに採用されている臨床的指標は,細胞学的・分子生物学的多様性の「代理指標」であるとされている.近年,包括的な遺伝子解析手法を用いた生物学的予後因子の同定が進んでおり,オーダーメード医療に一歩ずつ近づきつつある.

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診断・病態評価の進歩:画像診断の進歩
―PET,SPECT,CT,MR 拡散強調画像―

那須政司*   高原太郎*   今井 裕**
* 東海大学医学部基盤診療学系画像診断学 ** 同教授

要  旨
 ガリウムスキャンは最近頻度が少なくなってきたが,SPECT と呼ばれる断層画像を作成し,また CT と合成(fusion)することができるようになってきた.PET は腫大リンパ節の描出により優れた方法で,同様に CT との比較が盛んになってきている.CT は従来より局所的な病変分布や合併症の判断に用いられる.MRI は従来ほとんど使用されることはなかったが,最近拡散強調画像と呼ばれる新しい撮影法が可能になり,PET と同様の画像が得られており注目に値する.

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新たな標準的治療への動向:ホジキンリンパ腫に対する治療戦略
―最近の進歩―

小椋美知則*
* 愛知県がんセンター血液・細胞療法部副部長

要  旨
 ホジキンリンパ腫の全病期の予後は,過去2,30 年間に劇的に改善してきている.これは,強力な多剤併用化学療法と他のモダリティーとの併用での予後予測因子に基づく治療戦略によるものが大である.限局早期症例には ABVD 療法を短コース(2〜4コース)実施した後に病変部位への区域照射(involved-field radiotherapy:IFRT,20〜30Gy)を実施することが標準的治療法であり,初発進行期の症例には ABVD(d)療法の6〜8コースが標準的治療法である.多剤併用化学療法による寛解後の初回再発例や難反応例には,救援化学療法後の自家末梢血幹細胞移植併用の大量化学療法が標準的治療法である.本稿では,こうしたホジキンリンパ腫に対する標準的治療法,毒性と予後の改善を目指した新たな治療戦略,そして分子標的治療薬などのホジキンリンパ腫に対する最近の治療の進歩について紹介する.

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新たな標準的治療への動向:限局期 aggressive リンパ腫

魚住公治*
* 鹿児島大学医学部血液・膠原病内科講師

要  旨
 限局期 aggressive リンパ腫の標準的治療は CHOP 療法(3コース)+局所放射線療法と考えられているが,危険因子が3個以上の群には適さず,長期生存における優位性がないため新しい治療が必要である.GELA study(LNH 93-1)で既知の薬剤による ACVBP 療法の有効性が示され,SWOG では R-CHOP と放射線療法の併用による臨床試験(S0014)が行われた後,現在はリツキシマブと Yttrium-90 ibritumomab tiuxetan を用いた臨床試験が進行中である(S0313).

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新たな標準的治療への動向:進行期 aggressive リンパ腫
―白血球系細胞除去療法―

畠 清彦**   三嶋裕子*    照井康仁*
* 財団法人癌研究会附属病院化学療法科 ** 同部長

要  旨
 進行期 aggressive リンパ腫には,臨床病期U〜W,Tで bulky disease のものが含まれ,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)が最も多く 30% を占め,国際予後指標(IPI)から,low,low/intermediate,high/intermediate,high の4群に分類される.数週間から数ヵ月で進行し,高齢化社会となって頻度も約2倍に増加し,標準治療としてリツキシマブ-CHOP となった.

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標準的治療確立に向けて:濾胞性リンパ腫

渡辺 隆*
* 国立がんセンター中央病院特殊病棟部 11B 病棟医長

要  旨
 限局期濾胞性リンパ腫の標準的治療法は放射線治療である.進行期の標準的治療法はまだ確立されていない.抗 CD20 抗体リツキシマブと化学療法の併用療法が,近い将来標準的治療法とされる可能性が高い.最大効果を得るための,併用する化学療法のレジメン,リツキシマブの投与タイミングについては,まだ定説が得られていない.フルダラビンならびに抗体療法を用いた造血幹細胞移植療法も,再発例に対する治療選択の1つとなろう.

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標準的治療確立に向けて:胃 MALT リンパ腫

小島隆嗣*   目良清美*  土井俊彦*   大津 敦**
* 国立がんセンター東病院内視鏡部 ** 同部長

要  旨
 胃 MALT リンパ腫に対する治療は,従来の外科的治療から Helicobacter pylori 除菌治療や放射線治療を中心とした非外科的治療へと大きく変化しつつあるが,一方で除菌抵抗例の取り扱いなどの問題点も明らかになってきている.本邦では,限局期胃低悪性度 MALT リンパ腫に対する除菌治療を1次治療とし,放射線治療を2次治療とした非外科的治療の多施設共同前向き研究が展開中であり,これらの問題点を解決するためにも結果の解析が待たれる.

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標準的治療確立に向けて:マントル細胞リンパ腫の治療法

薄井紀子*
* 東京慈恵会医科大学血液・腫瘍内科助教授

要  旨
 マントル細胞リンパ腫は既存のリンパ腫の治療には抵抗性で,生存期間中央値3年と予後は不良である.臨床的に診断時より進行性で,これまで多施設共同の無作為化比較試験などが少なく,推奨すべき標準的治療法は確立されていない.しかし最近の無作為化比較試験の結果から,リツキシマブと化学療法の併用療法の有効性が確認され,さらに比較的若年の患者には大量化学療法+造血幹細胞移植術が無増悪生存率を向上させるなど,予後の改善が望めるようになった.

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標準的治療確立に向けて:バーキットリンパ腫

笠井正晴**  米積昌克*
* 札幌北楡病院血液内科 ** 同副院長

要  旨
 バーキットリンパ腫は,アフリカで見られる EBV の関与した endemic type と,欧米や日本で見られる sporadic type,そしてエイズ関連バーキットリンパ腫に分けられる.c-myc 遺伝子のある第8染色体の 8q24 転座による単一疾患群であり,骨髄や中枢神経系への浸潤も高度で成人では予後不良と考えられていたが,小児のプロトコールに準拠した治療強度を高めた治療により予後が改善してきている.

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標準的治療確立に向けて:成人T細胞白血病/リンパ腫

福島卓也*
* 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科附属原爆後障害医療研究施設分子医療部門分子治療研究分野

要  旨
 成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)は,従来の悪性リンパ腫に対する化学療法に準じた治療では極めて難反応性であったが,G-CSF を併用し治療強度を高めた多剤併用化学療法により治療成績の改善が得られた.一方 ATLL に対する同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)の後方視的解析で,患者全体の中の選択された一群が対象と思われるが,有望な治療成績が示され,その一因として GvATLL の関与が示唆された.今後 allo-HSCT を用いた第U相臨床試験を計画している.

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標準的治療確立に向けて:NK 細胞リンパ腫

山口素子*
* 三重大学医学部第二内科

要  旨
 限局期鼻 NK/T細胞リンパ腫では,通常の限局期 aggressive リンパ腫に対する標準的治療である CHOP 療法後に病変部放射線治療を行う治療法の成績は不良であり,有効な治療法の確立が求められている.近年では診断後早期の放射線治療の有効性を示す報告が多いことから,さらなる治療成績の改善を求めて,現在我が国では放射線治療と化学療法の同時併用療法の臨床試験が企画,実施されている.

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