最新医学60巻1号 
特集 メタボリックシンドローム

要  旨


アプローチ
メタボリックシンドロームの概念と今後の展開

山田信博*

* 筑波大学大学院内分泌代謝内科 教授

要  旨
 動脈硬化性疾患の危険因子の中でも,高脂血症,境界型を含む糖尿病,高血圧,喫煙は4大危険因子として位置づけられている.これらの危険因子はその程度が軽い場合でも,重複した場合には虚血性心疾患のリスクは飛躍的に増大し,心血管イベントの発症に関与することが示され,現在のメタボリックシンドロームの概念へと発展している.動脈硬化性疾患のみならず糖尿病の発症予防の観点からも,メタボリックシンドロームの管理が重要である.

目次へ戻る


基礎
メタボリックシンドロームの疫学とリスクとしての重み

寺本民生*
* 帝京大学医学部内科 教授

要  旨
 メタボリックシンドロームの診断基準が完全な一致を見ていない.しかし,今のところ WHO の基準と NCEP の基準が公表されている.これらに従えば,その頻度は一般人口の 10〜25% と高頻度に見られる.また,このような集団の心血管病の発症頻度は 10 年間で 10% 以上と予測され,ハイリスクと考えられる.それゆえ,早急な診断基準の確立と,それに応じた早期診断,早期治療が心血管病予防に重要であると考えられる.

目次へ戻る


基礎
メタボリックシンドロームの遺伝的素因

後藤田貴也*
* 東京大学大学院医学系研究科臨床分子疫学 助教授

要  旨
 メタボリックシンドロームに特徴的な異常はいずれも遺伝形質であり,メタボリックシンドローム自体も多因子遺伝性疾患の1つである.因子分析の結果,メタボリックシンドロームはそれぞれに高い遺伝度を有する3〜4個以上の独立した病態を内包するものと考えられる.ゲノムワイド連鎖解析の結果を中心として,メタボリックシンドロームの疾患感受性を規定する幾つかの候補遺伝子と染色体領域が明らかになりつつある.メタボリックシンドロームの遺伝素因の解明は,その正確な診断と効果的な臨床介入に重要である.

目次へ戻る


基礎
動脈硬化進展におけるマルチプルリスクファクターの意義


石橋 俊*
* 自治医科大学内分泌代謝内科 教授

要  旨
 リスク重積性が基本病態であるメタボリックシンドロームにおける動脈硬化の促進には,多様なリスクが関与している.高血糖,高血圧,高トリグリセリド血症,低 HDL コレステロール血症,インスリン抵抗性などの1つ1つの動脈硬化リスクが動脈硬化の進展に関与することは言うまでもないが,メタボリックシンドロームの動脈硬化には炎症性サイトカインやアディポサイトカインの関与も注目されている.

目次へ戻る


臨床
メタボリックシンドロームにおける糖代謝異常とその管理

大須賀淳一*
* 東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科

要  旨
 メタボリックシンドロームに見られる糖代謝異常の特徴は,高血糖とその原因となるインスリン抵抗性である.これらはいずれも内皮細胞の障害を惹起し,粥状動脈硬化症を進行させる起点となる.したがって心血管病の発症予防の観点から,糖代謝異常の是正は一義的に重要である.

目次へ戻る


臨床
メタボリックシンドロームにおける脂質代謝異常とその管理

武城英明*
* 千葉大学大学院医学研究院臨床遺伝子応用医学 教授
要  旨
 メタボリックシンドロームにおける脂質代謝異常は,従来冠動脈疾患のリスクとして確立されている LDL コレステロール血症ではなく,高トリグリセリド血症と低 HDL コレステロール血症が,特に軽度の異常から冠動脈リスクとして認められることが特徴の1つである.この成因として,内臓脂肪蓄積による TNFa などの活性物質の発現に伴うインスリン抵抗性が関与する.したがって,脂質代謝異常の管理には内臓脂肪の蓄積を指標とし,総合的に病態を把握する必要がある.

目次へ戻る


臨床
メタボリックシンドロームにおける高血圧とその管理

小田原雅人*
* 東京医科大学内科学第三講座 主任教授

要  旨
 メタボリックシンドロームは動脈硬化性疾患のリスクが集積した病態であり,血糖,脂質とともに血圧の厳格な管理が重要である.UKPDS,ALLHAT などの試験結果から,糖代謝異常を有する患者では厳格な血圧管理が薬剤選択よりも優先すべきことであると考えられる.腎障害の予防にはレニン・アンジオテンシン系薬剤は不可欠であるが,現実的にはカルシウム拮抗薬併用などの多剤併用療法が必要となることが多い.

目次へ戻る


臨床
メタボリックシンドロームにおける肥満とその管理


船橋 徹*
* 大阪大学大学院医学系研究科分子制御内科学 講師

要  旨
 メタボリックシンドロームは,耐糖能異常,高脂血症,高血圧を集積する動脈硬化性疾患易発症状態である.高コレステロール血症対策がほぼ確立され,第2のターゲットと呼ばれている.偶然リスクが重なるのではなく,上流に内臓脂肪蓄積がある.アディポサイトカイン分泌異常がリスクや動脈硬化の分子基盤として注目されている.リスクを総合的に評価し,ウエスト径を指標に内臓脂肪の減少を目指す.

目次へ戻る


臨床
メタボリックシンドロームを呈する内分泌疾患とその管理

中所英樹*   益崎裕章*   中尾一和**

* 京都大学大学院医学研究科内科学専攻内分泌・代謝内科 ** 同教授
要  旨
 内臓脂肪蓄積,糖尿病,高脂血症,高血圧症などの動脈硬化危険因子が同一患者に重複する病態が,メタボリックシンドロームとして注目されている.このような病態は生活習慣病のみならず,クッシング症候群や成人成長ホルモン欠損症,多D胞性卵巣症候群といったインスリン拮抗ホルモン産生過剰や肥満を呈する内分泌・性腺疾患にも認められる.原因である内分泌疾患を適切に診断し,治療することが極めて重要である.

目次へ戻る


臨床
メタボリックシンドロームにおける微量アルブミン尿の意義と管理

橋本 泉*   和田 淳*   槇野博史**

* 岡山大学大学院医歯学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学 ** 同教授

要  旨
 中心性肥満,耐糖能異常,高血圧,脂質代謝異常などを持つメタボリックシンドロームの患者は,高率に心血管合併症を併発する.また微量アルブミン尿は糖尿病・非糖尿病患者において,心血管合併症のみならず,脳血管を含めた全身性動脈硬化性病変を早期に検出しうるマーカーである可能性がある.メタボリックシンドロームでは高率に微量アルブミン尿を認め,さまざまな血管合併症を予防するために有用な検査になりうると考えられた.

目次へ戻る


臨床
虚血性心疾患におけるメタボリックシンドロームの意義と EBM

宮崎哲朗*   代田浩之**

* 順天堂大学医学部循環器内科 ** 同教授

要  旨
 本邦のメタボリックシンドロームの頻度は約 25% と,内臓肥満の基準は異なるが欧米の報告と同等であり,その冠危険因子としての意義は大きい.しかし内臓肥満,インスリン抵抗性を背景とした種々の病態が相互に影響することが病態の解明を困難にし,治療における十分なエビデンスがないのが現状である.1次,2次予防のいずれにおいてもこのリスクに対する積極的な介入が必要であり,日本人におけるエビデンスの集積が急務である.

目次へ戻る


臨床
脳血管障害における メタボリックシンドロームの意義とEBM


松本昌泰*

* 広島大学大学院病態探究医科学脳神経内科 教授

要  旨
 降圧療法の普及とともに,高血圧を最大の危険因子とする脳出血は激減してきた が,糖尿病,高脂血症,肥満などの代謝性危険因子の急速な増加により脳梗塞の年齢調整発症率の減少は鈍化してきており,メタボリックシンドロームがかかわると想定されているアテローム血栓性脳梗塞が増加傾向にある.欧米に比し,脳血管イベントの発症率が高い本邦では,メタボリックシンドロームについても独自のエビデンスに基づく対応が欠かせない.

目次へ戻る


臨床
メタボリックシンドロームとアディポサイトカイン

福原淳範*   下村伊一郎**

* 大阪大学大学院生命機能研究科病態医科学研究室   ** 同教授
要  旨
 脂肪組織は従来エネルギー貯蔵臓器と考えられてきたが,アディポネクチン,レプチン,PAI-1 といったさまざまな脂肪細胞由来内分泌因子(アディポサイトカイン)を産生・分泌し,糖・脂質代謝,動脈壁の恒常性維持に重要な役割を果たしている.メタボリックシンドロームの上流因子としてアディポサイトカインは重要であり,特にアディポネクチンは抗糖尿病作用,抗動脈硬化作用を有し,診断的意義のみでなく治療標的としての意義も大きい.

目次へ戻る


臨床
メタボリックシンドロームのエネルギー代謝,インスリン抵抗性


島野 仁*

* 筑波大学大学院人間総合科学研究科

要  旨
 メタボリックシンドロームは,エネルギーバランスの破綻が血中リスクの重積を来した病態ととらえることができる.肝臓や脂肪組織における脂質代謝,糖代謝の転写調節をつかさどるエネルギー転写因子が,メタボリックシンドロームに深く関与している.脂肪酸合成にかかわる転写因子 SREBP-1c は高脂血症,脂肪肝,インスリン抵抗性を引き起こす因子として,脂肪酸分解や脂肪分化にかかわる PPAR ファミリーは病態を改善する因子として注目される.

目次へ戻る