最新医学60巻3号 
特集 免疫抑制薬の基礎と臨床   

要  旨


アプローチ
イムノフィリン作用薬とスタチン薬に学ぶ創薬

増保安彦*

* 東京理科大学薬学部教授

要  旨
 タクロリムスやシクロスポリンなどのイムノフィリン作用薬および高脂血症治療薬で免疫調節作用があるスタチン薬は,実に多様な作用(pleiotropic effects)を有する.これらの複雑な作用メカニズムを解明し,これら既存薬の誘導体の中から新しい免疫抑制薬が生まれてくる可能性があるだろう.

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免疫抑制薬の基礎と臨床
免疫抑制薬の分類と作用機序

宮坂信之*
* 東京医科歯科大学大学院医歯薬総合研究科

要  旨
 体内で過剰に起こっている免疫応答を抑制しようとする薬剤を,免疫抑制薬(immunosuppressants)と総称する.これらの一連の薬剤はその作用点あるいは分子標的は異なるために,その標的細胞も異なる.そのため,それぞれ特有の作用と副作用を有している.このため,その違いを熟知してこそ,初めて正しい臨床応用が可能となる.

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免疫抑制薬の基礎と臨床
シクロホスファミドとアザチオプリン

山田秀裕*
* 聖マリアンナ医科大学リウマチ・膠原病・アレルギー内科助教授

要  旨
 膠原病・リウマチ性疾患に対する治療薬としてシクロホスファミドとアザチオプリンが使用されるようになってからすでに 30 年以上経過する.これまでに多くの難治性病態に対する有用性が確立され,シクロホスファミドは寛解導入療法薬として,アザチオプリンはその後の寛解維持療法ならびにステロイド節約効果を目的として使用されるようになった.同時に薬物相互作用や薬物遺伝学に関する知見により重篤な副作用を回避する方策も確立されてきた.両薬剤の優れた薬効を慎重な安全管理のもとに臨床応用することにより,多くの難治性病態が克服可能となりつつある.

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免疫抑制薬の基礎と臨床
シクロスポリンとタクロリムス


田中良哉*
* 産業医科大学医学部第一内科学講座教授

要  旨
 シクロスポリンとタクロリムスは,代表的な免疫抑制薬として移植拒絶反応や自己免疫疾患の治療に使用されてきた.主な作用機序は,カルシニューリンの活性化阻害を介して NF-AT などの転写因子依存性の IL-2 を含むサイトカインの転写を抑制することによる.最近,骨代謝系の調節,薬剤抵抗性の克服などの新たな付加作用も解明され,今後,関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの免疫疾患の治療への適応拡大が期待される.

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免疫抑制薬の基礎と臨床
ミゾリビンとミコフェノール酸モフェチル

加藤賢一**  高田裕子*   吉田俊治***
*  藤田保健衛生大学リウマチ感染症内科 ** 同講師 *** 同教授

要  旨
 ミゾリビンとミコフェノール酸モフェチルの免疫抑制作用は,主としてプリン代謝拮抗作用に由来する.両者とも,IMP 脱水素酵素,GMP 合成酵素を阻害することにより DNA の合成を阻害する.その結果,リンパ球の分裂・増殖を抑制することにより免疫作用を示すと考えられる.移植時の拒絶反応の抑制およびループス腎炎,関節リウマチなどの自己免疫疾患への臨床応用が期待される.

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免疫抑制薬の基礎と臨床
メトトレキサートとレフルノミド

鈴木康夫*
* 東海大学医学部内科学系リウマチ内科助教授
要  旨
 メトトレキサート(MTX)はジヒドロ葉酸還元酵素やテトラヒドロ葉酸を補酵素とするプリン・ピリミジン代謝の key enzyme を阻害し作用を表す.抗リウマチ薬のゴールデンスタンダードであるほか,炎症性筋疾患,尋常性乾癬,炎症性腸疾患などの治療に広く使用される.レフルノミド(LEF)はピリミジン代謝の key enzyme であるジヒドロオロト酸脱水素酵素を阻害し優れた抗リウマチ作用を表す.  MTX と LEF は核酸代謝拮抗薬に属する免疫抑制薬で,関節リウマチ治療薬として臨床に広く使用されている.本稿では,両薬剤の薬理,臨床応用,副作用について概説する.

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免疫抑制薬の基礎と臨床
生物学的製剤

天野宏一*   竹内 勤**
* 埼玉医科大学総合医療センター リウマチ膠原病内科助教授 ** 同教授

要  旨
 近年,特定の分子を標的とした生物学的製剤が次々と開発されている.関節リウマチでは,TNFα,IL-1,IL-6 などのサイトカインや,CD20,CD28 などの細胞表面分子を標的とした製剤が使用されている.その一部は劇的な臨床効果に加え骨破壊抑制効果も確認されている.副作用として易感染性とアレルギーが問題であるが,化学的に合成された薬剤に多く見られる肝,腎,骨髄障害などはほとんどなく,有用な薬剤と言える.

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免疫抑制薬の基礎と臨床
新しい免疫抑制薬 -スフィンゴシン1−リン酸受容体アゴニスト,FTY720-


千葉健治*
* 三菱ウェルファーマ株式会社創薬本部研究部門創薬第三研究所所長

要  旨
 FTY720 は,冬虫夏草由来の天然物を構造変換することによって見いだされた新規免疫抑制薬であり,現在,臓器移植における臨床試験が進行中である.FTY720は生体内でリン酸化体に変換され,スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体アゴニストとして作用することによって2次リンパ系組織および胸腺からの成熟T細胞の移出を阻止し,免疫抑制作用を発揮する.本稿では,世界初のS1P受容体アゴニスト,FTY720 に関して最近の知見を含めて概説する.

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免疫疾患における免疫抑制薬の使い方
膠原病・リウマチ性疾患

藤井隆夫*

* 京都大学大学院医学研究科内科学講座 臨床免疫学講師
要  旨
 免疫異常が病態に関与する膠原病・リウマチ性疾患では,ステロイドに加え,メトトレキサート,レフルノミド,シクロホスファミド,アザチオプリン,シクロスポリン,ミゾリビンなどの免疫抑制薬が多用される.関節リウマチや全身性エリテマトーデスに対しては世界的に有用性が確認されている薬剤も少なくないが,特有の副作用には注意する.また保険適応のない疾患に使用する場合,患者への十分な説明が必須である.

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免疫疾患における免疫抑制薬の使い方
免疫血液疾患における免疫抑制薬の使い方

八木田正人*

* 田附興風会医学研究所北野病院免疫血液内科

要  旨
 血液疾患で免疫抑制薬の対象となるのは,免疫学的機序で血液細胞が障害される造血障害である.再生不良性貧血ではT細胞によって未分化な造血幹細胞が障害される.一方,特異的自己抗体の産生が関係する疾患として,特発性血小板減少性紫斑病と自己免疫性溶血性貧血がある.赤芽球癆ではT細胞による赤芽球系の前駆細胞の障害のほかに赤血球系の前駆細胞に対する抗体が検出される場合もある.また,抗サイトカイン血症が関与する血球貪食症候群は免疫抑制薬の適応となる.免疫抑制薬の使用について,各疾患においてある程度の標準的治療法は決まっている.しかし最近開発された多種の免疫抑制薬については,その適応についてエビデンスはまだ確立されておらず,副作用,倫理的問題,コスト面も含めて十分に検討されるべきである.

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免疫疾患における免疫抑制薬の使い方
消化器免疫疾患における免疫抑制薬の使い方
-炎症性腸疾患と自己免疫性肝炎に対して-

久保田大輔*   柿沼 晴*   渡辺 守**

* 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科消化器病態学 ** 同教授

要  旨
 潰瘍性大腸炎治療には,副腎皮質ステロイド薬,シクロスポリン,アザチオプリン(AZP)/6−メルカプトプリン(6-MP)などが用いられる.クローン病には AZP/6-MP のほかに,近年インフリキシマブが適応となり使用されている.自己免疫性肝炎に対してはステロイド療法またはステロイド・AZP 併用療法の有効性が確立され,治療反応性も良好であることが多い.治療に当たっては,各疾患および個々の薬剤の特徴,副作用をよく理解し,薬剤を選択する必要がある.

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免疫疾患における免疫抑制薬の使い方
多発性硬化症における免疫抑制薬の使い方


山村 隆*

* 国立精神・神経センター神経研究所部長

要  旨
 多発性硬化症(MS)は代表的な自己免疫性神経疾患であり,さまざまな中枢神経症状を呈し慢性の経過をとる.MS の長期的な予後を改善するためには,積極的な治療的介入が必要である.国によって状況は異なるが,先進諸国では IFNb やコパキソン(copaxon)の長期投与が普及している.免疫抑制薬の投与を考慮するのは IFNβの効果が認められない症例であり,特に比較的短期間で神経症状が進行する症例が対象となる.最近欧米では MS の重症例に対するミトキサントロンの有効性が強調されている.

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免疫疾患における免疫抑制薬の使い方
自己免疫性水疱症の免疫抑制療法

江雄二郎*1*2 天谷雅行**2

*1 東京電力病院皮膚科 *2 慶應義塾大学医学部皮膚科学教室 **2 同講師
要  旨
 皮膚を主たるターゲットとする代表的な免疫疾患として,水疱性疾患である天疱瘡,類天疱瘡がある.治療の主体は副腎皮質ステロイド薬内服であるが,重症難治症例や副腎皮質ステロイド薬治療に伴う副作用の軽減目的に,免疫抑制薬の併用がしばしば行われる.本稿では,それぞれ疾患について概説し,治療に使用されている免疫抑制薬について述べる.

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免疫疾患における免疫抑制薬の使い方
自己免疫性肝疾患に対する肝移植における免疫抑制療法


上田幹子*

* 京都大学大学院医学研究科移植免疫学講師

要  旨
 自己免疫性肝疾患は,肝移植の適応となる代表的な疾患である.治療目的で肝移植前から免疫抑制療法が行われている場合もあり,移植時にはすでに易感染状態にある.術後早期に致命的な感染症に陥らないためには,内科での免疫抑制療法が過剰にならないよう注意しなければならない.また厄介なことに,自己免疫性肝疾患は移植後にも原疾患が再発しうることが知られている.再発時にはカルシニューリン抑制薬,ステロイド薬,および代謝拮抗薬の3剤投与を行うが,それでも徐々に肝障害が進行し,肝不全に陥れば再移植が必要なこともある.自己免疫性肝疾患に対する免疫抑制療法は,副作用をモニターしながら,多すぎず少なすぎずと,バランスよく行われなければならない.

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