最新医学60巻9月増刊号 
特集 臨床遺伝子学'05-多因子遺伝病研究の最前線   

要  旨



座談会
多因子遺伝病研究の最前線


本研究の基本的解説から展望までを話し合ってもらい本論のアプローチとしています。

笹月 健彦
 (国立国際医療センター)
中村 祐輔 (東京大学医科学研究所)
鎌谷 直之 (東京女子医科大学:司会)

         
  鎌谷 先生      中村 先生       笹月 先生


多因子遺伝病研究の手法
(1)連鎖解析

山 本   健

九州大学生体防御医学研究所ゲノム機能制御学部門 助教授

要  旨
 連鎖解析は遺伝法則を利用して複数の遺伝子座間の関係を解析する手法である.ヒトゲノムが完全解読された現在,疾患遺伝子座が位置する染色体領域がひとたびマップされれば,原因遺伝子の同定が可能である.多因子疾患の連鎖解析は多数の罹患同胞対を対象とするが,マーカー遺伝子としてマイクロサテライトのみならず高密度な一塩基多型(SNP)を利用することによって,より検出力の高い解析が可能となりつつある.

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多因子遺伝病研究の手法
(2)連鎖不平衡を用いた解析

角田 達彦
*理化学研究所遺伝子多型研究センター遺伝子多型情報解析研究チーム チームリーダー

要  旨
 連鎖不平衡は,疾患や薬剤応答関連遺伝子の全染色体レベルの体系的網羅的な探索を行う際,ゲノム中のSNPを用いた相関解析を行う妥当性の根拠となる.またゲノム中では,先祖からのハプロタイプが広範囲に保存され連鎖不平衡にあることが多く,それらの中で代表となるSNPだけを選び解析すればよい.すなわち連鎖不平衡は,従来考えられていたよりもはるかに効率的かつ効果的に解析を進めることが可能となる極めて重要な手掛かりになる.

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多因子遺伝病研究の手法
(3)双生児研究法

大木 秀一
石川県立看護大学健康科学講座 助教授

要  旨
 双生児研究法は多因子性疾患の遺伝的背景の解明に大きな役割を果たしてきた.最大の利点は遺伝要因と環境要因および両者の交互作用をマクロからミクロレベルまで把握しうる点である.@統計遺伝学的解析手法の大幅な進歩,A分子遺伝学的な解析手法との連動,Bツインレジストリーをもとにしたpopulation-basedな研究の推進,により近年その新たな可能性がクローズアップされている.

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多因子遺伝病としての神経疾患
認知症


紙 野 晃 人*   武田 雅俊**
* 大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室助手 ** 同教授

要  旨
 認知症(痴呆症)の主な原因疾患は血管性認知症からアルツハイマー病へと移行した.アルツハイマー病は,本邦では孤発性が90%以上であり,若年発症型には新たな原因遺伝子の可能性が残っている.一般集団での高齢発症型アルツハイマー病に対するAPOE4アレルの寄与は約20%で,まだ多くの発症感受性/発症年齢修飾遺伝子があると考えられる.その発症要因は複雑であるがゆえに,治療予防への介入に可能性が残されている.

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多因子遺伝病としての神経疾患
躁うつ病(双極性障害)

加藤 忠史
理化学研究所脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チーム

要  旨
 躁うつ病には多因子遺伝が関与するが,遺伝的危険因子として確立したものはない.双極性障害では統合失調症,うつ病,神経変性疾患,および糖尿病と共通の候補遺伝子が報告されており,これらはおのおの神経発達/グルタミン酸/カテコールアミン系,セロトニン系,およびミトコンドリア/小胞体ストレスと関連している.各候補遺伝子に疾患特異性はないが,その相乗効果で神経可塑性,細胞生存の障害が起きると双極性障害が引き起されるのかも知れない.

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多因子遺伝病としての神経疾患
統合失調症

有波 忠雄
筑波大学大学院人間総合科学研究科社会環境医学専攻遺伝医学分野 教授

要  旨
 統合失調症は発症に遺伝要因が強く関与しており,その遺伝様式は多因子性である.統合失調症の全ゲノムを対象とした連鎖解析は20以上実施されている.おのおのの研究結果は異なっているが,メタ解析によりまとめられ,10以上の遺伝子座がかかわっていることが示唆されている.日本ではJSSLGにより連鎖解析が実施されている.これまでに発見された統合失調症の発症に関与する遺伝子多型やハプロタイプは単独では発症リスクは小さい.

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多因子遺伝病としての神経疾患
パーキンソン病

水田 治男*1*2  黒田 康夫**2
*1 Cambridge Institute for Medical Research(CIMR),University of Cambridge
*2 佐賀大学医学部神経内科 **2 同教授

要  旨
 パーキンソン病は,神経変性疾患の中でアルツハイマー病に次いで多い神経疾患である.その発症原因はいまだ不明であるが,環境因子に加え幾つかの遺伝子が関与している多因子遺伝疾患と考えられている.決定的な関連遺伝子は現時点では同定されていないが,家族性パーキンソン病の原因遺伝子,ドーパミン代謝関連遺伝子や酸化ストレス関連遺伝子などの関与が疑われている.

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多因子遺伝病としての循環器疾患
心筋梗塞


尾崎 浩一*  田中 敏博**
* 理化学研究所遺伝子多型研究センター心筋梗塞関連遺伝子研究チーム
** 同チームリーダー

要  旨
 約 93,000 個の一塩基多型(SNPs)を用いた体系的な心筋梗塞−コントロールアソシエーション解析を行い,リンホトキシン−a(LTA)を心筋梗塞感受性遺伝子の1つとして同定した.さらに,LTAタンパクの新たな結合パートナーとしてガレクチン-2を発見するとともに,その遺伝子内SNPもまた心筋梗塞感受性であることを見いだしている.これらの分子の生体内ネットワークの詳細な解明が,病因の理解につながると考えられる.

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多因子遺伝病としての循環器疾患
心筋症

松岡 瑠美子

東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート循環器小児科

要  旨
 日本人の約人口100人から1,000人に一人の頻度で認められる心筋症のうち,主な心筋症である肥大型心筋症の50〜70%,拡張型心筋症の20〜35%,不整脈原性右室心筋症の大半に家族性遺伝を認める.近年,これらが疾患遺伝子変異に起因することが次々に明らかにされてきたが,疾患遺伝子変異が確認されたものは約半数にとどまり,その他の心筋症は依然,成因不明である.本稿では心筋症における成因解明の現状に関して主に触れる.

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多因子遺伝病としての循環器疾患
高血圧症

名倉 潤

愛媛大学医学部老年医学講座 講師

要  旨
 高血圧症は最も有病率の高い疾患の一つであり,また動脈硬化の大きな危険因子として重要であるため,その発症機構解明と臨床応用に向けて,高血圧症感受性遺伝子単離同定と遺伝子多型を用いた遺伝子診断への研究が精力的に進められている.その結果,すでに多くの高血圧症感受性遺伝子多型候補が同定されてきているが,その生物学的機能解析や大規模集団における検証は現在および今後の大きな課題として残されている.

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多因子遺伝病としての代謝内分泌疾患
糖尿病

岩ア 直子

東京女子医科大学第3内科学(糖尿病センター)講師

要  旨
 これまでに報告されている2型糖尿病の感受性多型はオッズ比(OR)<2程度であり,1型糖尿病におけるHLAのような大きな効果を持つ遺伝子は今のところ見いだされていない.したがって,比較的小さな効果の多数の遺伝子が遺伝素因として作用していると考えられる.2型糖尿病の遺伝素因の解明は困難な作業であるが,候補遺伝子アプローチによる相関解析および連鎖解析からスタートした一連の研究の進捗状況について,最近の成績をもとに概説する.

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多因子遺伝病としての代謝内分泌疾患
肥満


堀田 紀久子

理化学研究所・遺伝子多型研究センター肥満関連遺伝子研究チーム チームリーダー

要  旨
 肥満発症には環境因子のほかに遺伝因子が重要であると考えられている.肥満発症に関連した遺伝子は複数存在することが示唆されており,候補遺伝子解析や家系解析が多く行われてきている.内臓脂肪蓄積やメタボリックシンドローム発症にも遺伝素因が重要な因子であり研究が行われている.ここでは現在までに報告されている肥満,内臓脂肪蓄積,メタボリックシンドロームに関連した遺伝子や遺伝領域とともに,最新の研究について紹介する.

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多因子遺伝病としての代謝内分泌疾患
低HDLコレステロール血症とABCA1遺伝子
−SNP解析を基盤とした疾患関連遺伝子研究の問題点−

中島 敏晶

日本医科大学老人病研究所 講師
要  旨
 Cohenらが低HDLコレステロール血症の遺伝要因として,ABCA1遺伝子に存在する複数の頻度の低い変異のかかわりを報告している.ありふれた病気common diseaseの遺伝要因が複数のrare variantによるものであることを示す最初の報告である.本稿ではCohenらの成果を紹介するとともに,common variantであるSNP解析を基盤とした疾患関連遺伝子研究の問題点について言及する.

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多因子遺伝病としての代謝内分泌疾患
成長障害(微小成長遺伝子)


緒方 勤

国立成育医療センター研究所小児思春期発育研究部 部長

要  旨
 多因子疾患としての成長障害について,成長学に基づくデータと最近の分子遺伝学に基づく知見について述べた.微小成長遺伝子の存在は,まず,成長学による身長分布の正規性や相関係数の観察から想定された.その後,身長の遺伝力が高いことから,相関解析やゲノムワイドスキャンによる微小成長遺伝子同定が試みられている.現在,明確なデータは存在しないが,今後,多数の微小成長遺伝子が同定されると期待される.

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多因子遺伝病としての代謝内分泌疾患
自己免疫性甲状腺疾患


白澤 専二

国立国際医療センター研究所・臨床病理研究部 部長

要  旨
 自己免疫性甲状腺疾患(AITD)は自己免疫疾患において最も頻度の高い疾患であり,双生児研究などの疫学的研究により遺伝要因が強く関与することが示唆されている.HLA,CTLA-4はAITD感受性遺伝子として広く認められている一方,近年の全ゲノムに対する解析から,新たなAITD感受性遺伝子の候補としてZFATやAITDを含む複数の自己免疫疾患に関連する遺伝子としてFCRL3が同定されつつある.

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多因子遺伝病としての消化器疾患
クローン病


山ア 慶子*1  羽田 明*1 中村 祐輔*2

*1 理化学研究所遺伝子多型研究センター消化器系疾患関連遺伝子研究チーム
**1 同チームリーダー   *2 同センターセンター長

要  旨
 クローン病(CD)は,我が国においても急激に増加傾向にある慢性炎症性腸疾患である.これまでの多くの研究にもかかわらず原因は不明であり,治療も対処療法にとどまる難病である.糖尿病などの生活習慣病よりも遺伝要因の関与がかなり強い多因子遺伝病であることが,これまでの遺伝疫学的研究から分かっている.欧米人を対象とした研究では,CARD15,SLC22A4,SLC22A5などの遺伝子多型が発症に関与しているとされたが,日本人患者を対象とした我々の解析では報告された多型が見つからず,遺伝要因に人種差がある可能性が高い.これまでの研究成果と我々が行っている全ゲノムアプローチの現状について解説する

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多因子遺伝病としてのリウマチアレルギー疾患
変形性関節症とその原因遺伝子へのアプローチ


池川 志郎

理化学研究所・遺伝子多型研究センター変形性関節症関連遺伝子研究チーム チームリーダー

要  旨
 変形性関節症の原因遺伝子を2つ同定した.候補遺伝子アプローチによりアスポリン遺伝子を同定した.アスポリンはトランスフォーミング増殖因子(TGF)βと結合してその作用を抑制し,軟骨細胞の分化,基質産生を抑制すると考えられた.ゲノムレベルでの相関解析により細胞質タンパクのカルモジュリンをコードするカルモジュリン1遺伝子を同定した.カルモジュリンは細胞外からの力学的刺激を仲介し,軟骨細胞の分化に対して促進的な役割を担うと考えられた.

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多因子遺伝病としてのリウマチアレルギー疾患
関節リウマチ


山本 一彦*1**2 高地 雄太*2 鈴木 亜香里*2  山田 亮*3

*1 東京大学医学部アレルギーリウマチ内科 教授
*2 理化学研究所遺伝子多型研究センター **2 同チームリーダー
*3 京都大学医学部疾患ゲノム疫学

要  旨
 複数の遺伝要因が関節リウマチの発症に寄与していることが想定されている.ヒト主要組織適合遺伝子複合体(HLA)領域の寄与度は大きいが,詳細なメカニズムはまだ分かっていない.非HLA領域の遺伝要因の検索については,罹患同胞対解析など家系を用いた手法では絞り込める範囲を十分に狭めることができないことから,ケースとコントロールでの多型頻度を比較する関連解析が有望視されており,これを用いた成果が得られつつある.

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多因子遺伝病としてのリウマチアレルギー疾患
全身性エリテマトーデス


土屋 尚之

東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学分野 助教授

要  旨
 遺伝疫学的データから,全身性エリテマトーデス(SLE)の病因に遺伝要因が大きく関与することが示唆されている.これまでに,欧米の数グループの連鎖解析により,多数の疾患感受性候補領域が報告され,また,多数存在する有力な機能的候補遺伝子について,関連解析も活発に展開されているが,多くの研究者が感受性遺伝子として認める遺伝子は,現在のところ,HLA classU,C4,Fcγ受容体遺伝子群など,比較的少数である.本稿では,研究の現状を概説するとともに,解析の実例として,筆者らの FCGR2B,CD72に関する成果を紹介した.

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多因子遺伝病としてのリウマチアレルギー疾患
強皮症と成人発症Still病


川口 鎮司

東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター

要  旨
 強皮症は,多臓器の線維化を主症状とする自己免疫疾患である.線維化の機序には,線維芽細胞の異常が重要である.我々は,インターロイキン(IL)-1αの発現が過剰に誘導されていることを発見し,その遺伝子の変異と発病に関連があることを報告した.成人発症 Still病は,原因不明の炎症性疾患であり,炎症性サイトカインの過剰な産生が病態に関与している.我々は,IL-18の過剰な発現がその遺伝子多型に起因している可能性を報告した.

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多因子遺伝病としてのリウマチアレルギー疾患
気管支喘息


呉 艶玲*1*2 鈴木 雅雄*1  白川 太郎**1

*1 京都大学大学院医学研究科健康要因学講座健康増進・行動学分野  **1 同教授 
*2 東北大学大学院医学系研究科小児病態学分野

要  旨
 気管支喘息を始めとするアレルギー疾患は近年増加の一途をたどり,その原因の特定・病態の解明が待たれる疾患の1つである.これらは発症に複数の遺伝要因と環境要因とが関与する多因子疾患であると考えられる.近年分子遺伝学の進歩に伴い,アレルギー原因遺伝子の一部が明らかになっている.本稿では,気管支喘息の発症に関与が示唆されている候補遺伝子について紹介したい.

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多因子遺伝病としての悪性腫瘍
乳癌


三木 義男
東京医科歯科大学難治疾患研究所 教授

要  旨
 一般(散発性)がんは発生に複数の遺伝子が関与する多因子遺伝子病である.しかし,多因子がイニシエーターとしてがん発生に働くという具体的な報告は,まだされていない.一方,がんの発生や進展は,多段階過程を経て生じると考えられ,この点でもがんは多因子遺伝子病であると言える.乳癌の発生過程や,乳癌発生への関与が示唆される遺伝子について概説し,乳癌の多段階発がんに関与する多因子について考察した.

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多因子遺伝病としての悪性腫瘍
消化器癌


山本 博幸*1  谷口 博昭*1 宮本 伸樹*1 平田 珠希*1 篠村 恭久**1  今井 浩三*2

*1 札幌医科大学医学部内科学第一講座 **1 同教授 
*2 札幌医科大学学長

要  旨
 多因子遺伝子病としての消化器癌の発癌・進展にかかわる多くの遺伝子異常が明らかにされつつあり,それらの知見に基づく分子病態解明や診断・治療法の開発,臨床応用が進行している.本稿では,p53関連遺伝子,マイクロサテライト不安定性,RUNX3癌抑制遺伝子,インスリン様増殖因子および TGFβシグナル伝達経路,Wntシグナル伝達経路,EphB受容体を中心に研究の最前線について解説する.

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その他
多因子遺伝病としての川崎病


尾内 善広*  羽田 明**
理化学研究所遺伝子多型研究センター消化器系疾患関連遺伝子研究チーム 
** 同チームリーダー

要  旨
 川崎病は本邦に多い乳幼児急性熱性疾患であり,その本態は全身の中小動静脈の血管炎である.その疫学的な特徴から,何らかの病原体の感染と遺伝的素因に基づく個人の感受性が発症に関与していると考えられており,国内外で研究が行われている.しかし,病因に関しては,ほとんど分かっていないというのが現状である.川崎病の多因子遺伝病としての側面を考察し,遺伝学的研究の現状および今後の展望について述べる.

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その他
多因子遺伝病としての慢性腎炎の解析の現状


武井 卓* 湯村 和子**
* 東京女子医科大学腎臓病総合医療センター内科 ** 同助教授

要  旨
 慢性腎炎(IgA 腎症など)と正常群の一塩基多型(SNP)パターンや頻度を比較し,疾患と関連する遺伝子を同定した.SNPはヒトで約1千塩基に1つあり,個人差をつかさどる遺伝子マーカーとして,また多因子病の遺伝子探索ツールとして注目されている.SNPゲノム解析は遺伝的背景が充分考えられている腎炎での病因解明,さらに診断ないし治療法の確立へ寄与できる可能性がある.

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その他
多因子遺伝病としての乾癬


岡  晃*  猪子 英俊**
* 東海大学医学部基礎医学系分子生命科学助手 ** 同教授

要  旨
 尋常性乾癬(乾癬)は炎症性角化症に分類される皮膚疾患である.双生児研究,罹患率の調査などの疫学データから遺伝性が疑われているが,遺伝子座異質性,環境要因,不完全な浸透率などが障壁となり,遺伝学的な解析による感受性遺伝子の同定はいまだ達成されていない.そこで我々は,独自に開発したゲノムワイドな約3万個のマイクロサテライトマーカーを用いて,感受性遺伝子を網羅的に同定する研究を進めている.

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その他
薬物応答性と遺伝子多型


斎藤 嘉朗*  澤田 純一**
* 国立医薬品食品衛生研究所機能生化学部室長 ** 同部長

要  旨
 薬物応答性の変化を伴う遺伝子多型に関する研究においては,薬物動態関連分子の薬理遺伝学的研究の進展が特に著しい.本稿では,薬物代謝酵素UGT1A1,CDA,CYP2C9,CYP2C19,NAT2の日本人における遺伝子多型を例に挙げて,それらの多型が薬物動態や薬効の変化,副作用発現へ及ぼす影響を,筆者らの報告も含めて解説した.

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その他
多因子遺伝病研究と診療の倫理問題


福嶋 義光*1*2
*1 信州大学医学部社会予防医学講座遺伝医学分野 教授
*2 信州大学医学部附属病院遺伝子診療部 部長

要  旨
 多因子遺伝病研究により得られた成果は主に易罹患性検査として診療の場面で用いられると予想されるが,遺伝情報は生涯変化することがなく,血縁者も共有している可能性のある情報であるため,多因子遺伝病の場合であっても,種々の指針・ガイドラインに従い遺伝情報を慎重に取扱う必要がある.多因子遺伝病の遺伝子情報の多くは,現時点においてはまだ診断法として直接,医療に役立てられるものは少なく,その疾患の病態解明のための基礎となり,新しい薬剤の開発などの治療法を生みだすための研究の一環として意味があることをよく理解しておく必要がある

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