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最新医学60巻12号 
特集 特発性肺線維症とその周辺-治療の最前線-   

要  旨


アプローチ
肺線維化の細胞分子病態と治療標的


貫和敏博*

* 東北大学加齢医学研究所呼吸器腫瘍研究分野 教授

要  旨
 肺線維症研究は21世紀に入り2つの新方向が見える.1つはU型肺胞上皮細胞関連遺伝子異常解析であり,家族性肺線維症の大規模研究である.この方向はゲノム解析,バイオインフォーマティクス解析につながる.他方,特発性肺線維症に対する大規模臨床試験の実施は,たとえ結果がネガティブであっても,その後解析を通し,急性増悪の認識や治療(intervention)の意味が再考されている.本小論はかかる現状を紹介する.

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治療法選択のための診断の進め方 1.診断のフローチャート

杉山幸比古*
* 自治医科大学呼吸器内科 教授

要  旨
 特発性間質性肺炎の診断において重要な点は,予後の悪い特発性肺線維症(IPF)かどうかを判定することであり,診断のフローチャートもそこを主眼に組み立てられている.まずHRCTを中心とする画像によりIPFに典型的かそうでないかを検討し,IPF典型例はさらに臨床所見を加味し,臨床診断IPFとする.他の例は外科的肺生検を行い診断するが,診断には臨床医,画像医,病理医の密接な連携が必要である.

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治療法選択のための診断の進め方 2.画像診断

酒井文和**  鎌田憲子***  牛見尚志** 松尾周也*   鈴木瑞佳*
東京都立駒込病院放射線科 ** 同医長  *** 同部長

要  旨
 特発性間質性肺炎の画像診断に当たっては,まず積極的には治療が行われない特発性UIP/IPFとその他の間質性疾患の鑑別が重要である.また急性型の間質性肺炎では,感染症の除外,予後が大きく異なるAIPと COP,NSIPの鑑別診断が要求される.これらの症例のうち,典型的な画像所見を示す例では HRCT での鑑別診断が可能であるが,非典型的な例や早期の例ではVATS肺生検を要することが多い.

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治療法選択のための診断の進め方 3.血清マーカーの診断的有用性

村上晴泰*   大成洋二郎*   河野修興**
* 広島大学大学院分子内科学 ** 同教授

要  旨
 KL-6,SP-D,SP-Aはいずれも特発性肺線維症の肺胞上皮細胞傷害という病態を反映した優れた血清マーカーであり,厚生労働省によって改訂された診断基準においても補助診断として用いられている.活動性や予後の評価にも有用性が示されており,それぞれの血清マーカーの特性を考慮したうえで多角的に病態を把握することは,特発性肺線維症の病態理解,治療成績向上に貢献するものと思われる.

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ステロイドと免疫抑制薬をいかに使うか

一門和哉*   菅 守隆**
* 済生会熊本病院呼吸器科 ** 同部長

要  旨
 特発性肺線維症(IPF)は,原因不明の間質性肺炎の中で50〜60%の頻度を占め,不可逆性の線維化が慢性進行性の経過で進展する予後不良の疾患である.ステロイド単独治療の効果は乏しく,シクロホスファミド,アザチオプリン,さらにシクロスポリンAなどの免疫抑制薬の併用療法が行われているが,進行の抑制効果も限定的である.

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期待される薬剤と現況 1.ピルフェニドン

海老名雅仁*1*2  貫和敏博**1**2
*1 東北大学病院遺伝子・呼吸器内科 講師 **1 同教授 
*2 東北大学加齢医学研究所呼吸器腫瘍研究分野 講師 **2 同教授

要  旨
 ピルフェニドンは,難治で知られる特発性肺線維症患者に対して現在最も期待されている抗線維化薬である.第U相臨床試験でも服薬群で歩行時の飽和酸素濃度の最低値や肺活量が改善し,急性増悪の発症率も有意に低かった.さらに273例による大規模な第V相臨床試験が進行中である.最終患者の投与は2006年8月末までで,その結果が待たれている.第U相臨床試験から取り入れられた6分間歩行試験の意義などを含めて解説する.

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期待される薬剤と現況 2.N-アセチルシステイン

本間 栄*
* 虎の門病院呼吸器センター内科 部長

要  旨
 近年,特発性肺線維症(IPF)の治療において,アンチオキシダント活性を有するN-アセチルシステイン(NAC)の有用性が注目されている.厚生労働省「特発性間質性肺炎の画期的治療法に関する臨床研究」班のNAC吸入療法施行例に関する全国アンケート調査でその有効性がある程度期待される成績が得られ,筆者らもIPF増悪症例におけるNAC単独吸入療法の有用性を臨床的に検討したのでその結果を解説した.

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期待される薬剤と現況 3.インターフェロンγ

吾妻安良太*
* 日本医科大学呼吸器内科 講師

要  旨
 インターフェロン(IFN)はTh1/Th2バランスを改善し,抗線維化作用が期待されることから,近年,特発性肺線維症(IPF)患者の予後改善を目指して臨床試験が進められている.1999年の小規模無作為化試験をきっかけにして,IFNγはステロイド治療抵抗性のIPFでFVCなどの呼吸機能を改善した.その結果に基づいて北米を中心とした第V相大規模臨床試験では,軽症,中等症に対して呼吸機能悪化の遅延効果が見込まれたが,進行期症例では改善が見られなかった.

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期待される薬剤と現況 4.イマチニブ(グリベック)

西岡安彦*   曽根三郎**
* 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 分子制御内科学分野 講師 ** 同教授

要  旨
 イマチニブは,bcr-abl,c-kit,血小板由来増殖因子(PDGF)受容体のチロシンキナーゼ阻害活性を有する癌分子標的治療薬であり,慢性骨髄性白血病,消化管間質性腫瘍に対して承認されている.一方,特発性肺線維症(IPF)における線維化病態にはPDGFが関与しており,イマチニブの有用性が期待される.最近,肺線維症モデルにおけるイマチニブの肺線維化抑制効果が報告されており,米国で進行中のIPFを対象とした臨床試験の結果が注目される.

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期待される薬剤と現況 5.シクロスポリンA

田口善夫*
* 天理よろづ相談所病院 呼吸器内科

要  旨
 免疫抑制薬の1つであるシクロスポリンA(CsA)は,膠原病肺に対しての有用性が明らかにされてきた.しかし特発性肺線維症(IPF)に対する有効性については,現時点では少数例の報告が見られるのみであり,明らかな有効性を証明したものはない.本薬剤の投与方法としてはトラフ値100〜150ng/mlが提唱されてはいるが,血中濃度−時間曲線下面積(AUC)を意識した至適投与量ならびに血中濃度管理が重要である.今後の課題としては,IPFへの真の有効性の検証が最も重要である.

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特発性肺線維症の急性増悪 -病態と治療-

谷口博之*
* 公立陶生病院 呼吸器・アレルギー内科部長

要  
 特発性肺線維症の急性増悪は我が国で提唱された概念であり,国際的にもその臨床的重要性が認識されつつある.臨床的には,呼吸困難の増強,高分解能CT所見上の蜂巣肺所見+新たに生じたすりガラス陰影・浸潤影,動脈血酸素分圧の有意な低下が認められる.病理学的にはUIP所見に加え,DAD所見が認められる.予後は極めて不良であるが,薬物療法としてステロイド薬および免疫抑制薬,シクロスポリンA,抗線維化薬,好中球エラスターゼ阻害薬などが試みられている.また,呼吸管理では非侵襲的陽圧換気法(NPPV)が注目されている.

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肺癌合併の分子メカニズムと対応

山田 玄*   高橋弘毅**

* 札幌医科大学第三内科 講師 ** 同教授

要  旨
 特発性肺線維症(IPF)は肺癌を高率に合併することから,IPFの病変部分には発生母地が存在し,慢性の胞隔炎から線維化に至る病態から発癌に至ると推定される.これまでに肺癌合併に関連する遺伝子異常の報告には,K-ras,p53,FHIT,TGFβU型受容体遺伝子などがある.IPF合併肺癌の治療は,肺癌の病期とIPFの病態を評価したうえで方針を決定し,経過中の急性増悪の出現に注意して進める必要がある.

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肺移植の内外における現況

岡田克典*   近藤 丘**
* 東北大学加齢医学研究所呼吸器再建研究分野 ** 同教授

要  旨
 肺移植は,1983年にトロント大学で世界初の長期生存例となった症例の手術が行われて以来,今日では終末期肺疾患に対する有効な治療法として確立しており,これまで約2万例の手術が行われている.本邦においても,初の生体肺葉移植および脳死肺移植がそれぞれ1998年10月,2000年3月に行われた.2005年10月現在,脳死肺移植実施数は24例,生体肺葉移植実施数は 48 例であり,それぞれ18例,40例が生存中である.

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類縁疾患と治療 1.NSIPの予後と治療

大塚淳司*1  井上義一*2
*1 国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科 *2 同臨床研究センター部長

要  旨
 特発性非特異性間質性肺炎(NSIP)の予後は特発性肺線維症(IPF)に比べると比較的良好である.NSIPの中でも fibrotic NSIPは,IPFとの鑑別が困難な症例もしばしば見られる.NSIPはATS/ERSによる特発性間質性肺炎(IIPs)についての合同国際コンセンサスで独立した疾患と考えられているが,NSIPという臨床診断名だけは暫定的と付記されている.また診断だけではなく,長期予後や通常型間質性肺炎(UIP)との異同を含め,解決すべき問題が多く残されている.

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類縁疾患と治療 2.膠原病肺

滝澤 始*
* 東京大学医学部呼吸器内科 助教授

要  旨
 膠原病で見られる間質性肺病変は頻度が高く,また予後に重要な影響を与える.疾患ごとにその頻度や臨床経過,予後が異なるため,それぞれの特徴を理解して管理治療に当たる必要がある.特発性間質性肺炎(IIP)と比較して共通点と相違点が存在するが,肺病変先行型膠原病には注意する必要がある.膠原病肺の治療は一方でIIPに応用されており,今後も比較検討が望まれる.

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類縁疾患と治療 3.慢性過敏性肺炎

吉澤靖之***  宮崎泰成*   大谷義夫* 古家 正*    
倉持 仁*   仁多寅彦* 岸 雅人*    稲瀬直彦** 
* 東京医科歯科大学大学院統合呼吸器病学分野 ** 同講師 *** 同教授

要  旨
 慢性過敏性肺炎は潜在性発症型と再燃症状軽減型に亜分類され,潜在性発症型は特発性肺線維症(IPF)と誤診されている.再燃症状軽減型は当初は抗原暴露後発熱などの急性症状があり,初期には診断が容易である.画像は気道に沿った蜂巣肺,牽引性気管支拡張,胸膜下の不整型斑状影,小葉間隔壁肥厚,小葉内網状影,限局性の小葉中心性粒状影を示す.自宅と周囲環境,仕事場,野鳥の棲息状況,羽毛ふとん使用などを含めた生活環境の問診が重要である.

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対談
生活習慣病の現状と未来(第9回)
運動とニュートリゲノミクス


ゲスト  小林 修平 先生(人間総合科学大学)
聞き手  香川 靖雄 先生(女子栄養大学 副学長)

 今年の4月に人間総合科学大学の学科長になられた小林先生は機能性食品の機能評価を遺伝子発現レベルで解析する「ニュートリ(栄養)ゲノミクス」が生活習慣病リスクの低減に有効と考えておられます。また、スポーツ栄養学の専門家としてトップアスリートの栄養管理や高齢者の運動指導などについても大変興味深いお話を伺いました。是非、お読み下さい。


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