最新医学61巻5号 
特集 自己免疫疾患の新しい治療方法 ‐生物学的製剤を中心に-   

要  旨


アプローチ
自己免疫疾患の新しい治療法 -生物学的製剤-
安倍 達*

* 埼玉医科大学総合医療センター名誉所長

要  旨
 ここ十年来,関節リウマチの薬物療法は大きく変わった.これまでその主体であ った非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に替わって,疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)が大きな役割を果たすことになった.この背景には,ここ数年来関節リウマチの炎症と関節破壊のメカニズムが分子レベルで明らかになったことが大きく影響している.その結果,関節リウマチを早く診断し,適切な治療をすることによって骨破壊の進行が抑制されることも明らかとなった.

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インフリキシマブ

関口直哉*   竹内 勤**
* 埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科 ** 同教授

要  旨
 生物学的製剤導入により,関節リウマチ(RA)の治療は寛解を目指す域にまで高められた.この一翼を担うものは,キメラ型抗TNFαモノクローナル抗体インフリキシマブであり,従来とは比較にならない優れた臨床効果を挙げている.しかしながら,その効果は必ずしも全例に得られるものではない点や,重篤な有害事象を呈する例など,さまざまな問題も浮き彫りにされてきた.

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エタネルセプト

橋本陶子*   渥美達也**  小池隆夫***
* 北海道大学大学院医学研究科分子病態制御学講座第二内科 ** 同講師 *** 同教授

要  旨
 エタネルセプトは本邦において関節リウマチ(RA)の治療薬として2005年に承認され,現在若年性特発性関節炎(JIA)の臨床試験が進められている.欧米ではすでにRAのほか,JIA,乾癬性関節炎,尋常性乾癬,強直性脊椎炎に対して治療薬として承認されており,その他の自己免疫疾患・リウマチ性疾患に対する治療の試みも報告されている.ここでは,それらの疾患に対するエタネルセプトの有用性について,臨床成績を中心に概説する.

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アダリムマブとゴリムマブ

宮坂信之*
* 東京医科歯科大学膠原病・リウマチ内科 教授

要  旨
 アダリムマブとゴリムマブは,いずれも完全ヒト型抗TNFαモノクローナル抗体である.前者はすでに関節リウマチ(RA)の治療薬として欧米において承認・発売され,後者は臨床試験中である.第1世代として開発されたインフリキシマブはキメラ抗体であるために,投与時反応,効果漸減などの問題点を有している.一方,新規に開発された両抗体は完全ヒト型であるために,これらの問題点を回避することができる.

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アナキンラ(IL-1Ra)


江口勝美*1  折口智樹*2
*1 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・制御学講座(第一内科) 教授
*2 同保健学専攻 助教授

要  旨
 アナキンラは,IL-1 受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)とほとんど同じ構造を持つ物質である.IL-1 には軟骨・骨破壊作用が知られており,アナキンラには関節リウマチ(RA)の関節破壊に対する抑制効果が期待されている.欧米ではすでに RA に認可されており,メトトレキサートを投与しても無効あるいは効果不十分な症例の治療薬として位置づけられている.

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トシリズマブ


西本憲弘*
* 大阪大学大学院生命機能研究科免疫制御学講座 教授

要  旨
 トシリズマブは,遺伝子組み換え技術により作製された治療用ヒト化抗IL-6受容体抗体である.IL-6の作用を特異的に阻害することから,IL-6の過剰産生が病態形成にかかわっている関節リウマチ(RA),若年性特発性関節炎(JIA),クローン病などの自己免疫性炎症性疾患の治療に有効であると考えられる.臨床試験の中で,トシリズマブはこれらの疾患に伴う症状や異常検査所見を速やかに改善することが明らかになった.

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関節リウマチとアバタセプト(CTLA4-Ig)


山本一彦*
* 東京大学医学部アレルギー・リウマチ内科 教授

要  旨
 抗TNF療法がすべての関節リウマチ患者に効果があるわけではなく,根治的な治療法でもない.したがって,新しいコンセプトの治療法の開発は重要である.関節リウマチの病因・病態にT細胞が果たす役割に関しては種々の議論がある.T細胞の活性化に必要な共刺激を阻害するアバタセプト(CTLA4-Ig)の有効性が明らかとなり,病態におけるT細胞の位置づけ,治療での位置づけなど,多くの新しい方向が示されつつある.

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ベリムマブ(抗BLyS抗体)とIDEC-131(抗CD40L抗体)

原 まさ子*
* 東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター 教授

要  旨
 BLySはTNFファミリー分子で,B細胞の生存を助け,成熟を促し,抗体産生を増強する刺激因子である.BLySを過剰に発現したマウスは全身性エリテマトーデス(SLE)様症状を示すこと,自然発症モデルマウスであるNZB/WF1,MRLマウス,ヒトSLE,関節リウマチ(RA)の血中における増加が報告されている.B細胞上のCD40のCD40Lによる活性化も,B細胞の生存,抗体産生を促進する.CD40LのトランスジェニックマウスはSLE様症状を示し,ヒトSLEにおける血清中のCD40Lの高値の報告もある.これらを標的とした治療の可能性が期待され,臨床試験も行われている.

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抗CD20抗体


齋藤和義**  徳永美貴子*   田中良哉***
* 産業医科大学医学部第一内科学講座 ** 同助教授 *** 同教授

要  旨
 自己免疫疾患の病態形成において,B細胞は抗原提示のstimulator,ならびに自己抗体産生のresponderとして中心的な役割を担うことが解明され,B細胞表面抗原は自己免疫制御の明確な標的となった.抗CD20抗体による治療は,従来のステロイドや免疫抑制薬による治療抵抗性の全身性エリテマトーデスをはじめとする多くの自己免疫疾患における有効性が報告され,新たな自己免疫疾患の治療戦略上の強力な武器として非常に期待される.

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エプラツズマブ(ヒト化抗CD22モノクローナル抗体)


川端大介*   三森経世**
* 京都大学大学院医学研究科内科学講座臨床免疫学 ** 同教授

要  旨
 CD22は抑制性共受容体としてB細胞に特異的に発現する糖タンパク質であり,B細胞受容体(BCR)を負に制御している.エプラツズマブ(epratuzumab:抗CD22モノクローナル抗体)はB細胞に特異的に結合し,抗体依存性,補体依存性にB細胞数の減少,機能抑制作用を持つ薬剤である.現在非ホジキンリンパ腫をはじめとする血液腫瘍性疾患のみならず,全身性エリテマトーデス,シェーグレン症候群といったリウマチ性疾患への治療効果が期待されている.

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ダクリズマブ


永渕裕子*   尾崎承一**
* 聖マリアンナ医科大学リウマチ・膠原病・アレルギー内科 講師  ** 同教授

要  
 ダクリズマブはヒト化抗IL-2受容体αモノクローナル抗体であり,臓器移植の際の免疫抑制薬として開発された.抗IL-2受容体αモノクローナル抗体は直接IL-2/IL-2受容体の経路を抑制するだけでなく,抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)によっても治療効果を発揮する.自己免疫性ブドウ膜炎,多発性硬化症,関節炎モデルにおいて有効であるが,重篤な副作用は報告されていない.今後その適応を拡大することが期待される.

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エファリズマブ(LFA抗体)とナタリズマブ(VLA-4抗体)

廣畑俊成*

* 帝京大学医学部内科 助教授

要  旨
 細胞接着分子と呼ばれる一連の物質は,細胞間相互作用に関与し,炎症や免疫反応の調節に重要な役割を果たしている.これらの接着分子に対するモノクローナル抗体が臨床応用されるに至り,注目を集めている.エファリズマブはCD11a分子に対するモノクローナル抗体であり,尋常性乾癬に対する有用性が認められている.ナタリズマブはVLA-4に対するモノクローナル抗体で,多発性硬化症とクローン病に対する有用性が明らかにされている.エファリズマブでは致命的な副作用は報告されていないが,ナタリズマブで進行性多巣性白質脳症の患者が3例発生しており,このため本剤は市場から引き上げられるに至っている.

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アレファセプト(LFA-3Ig)

梅原久範*
* 金沢医科大学血液免疫制御学 教授

要  旨
 アレファセプトは,CD2のリガンドであるLFA-3の細胞外ドメインに,ヒト免疫グロブリンのヒンジ領域以下のCH2,CH3領域を結合させた免疫調節合成タンパク質である.慢性炎症疾患の病変部位にはメモリーT細胞の浸潤が認められるが,メモリーT細胞はCD2分子を高発現している.アレファセプトはLFA-3領域でメモリーT細胞上のCD2にFc領域を介して NK,NKT細胞上のCD16に結合し,メモリー細胞を傷害する.米国では乾癬症に対して食品医薬品局(FDA)に認可され,臨床応用されている.

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ビタキシン(抗αVβ3抗体)

熊谷俊一*
* 神戸大学大学院医学系研究科生体情報医学講座臨床病態・免疫学分野 教授

要  旨
 接着分子インテグリンファミリーである aVβ3(CD51/CD61)は,新生血管や腫瘍細胞,あるいはマクロファージや破骨細胞に発現し,腫瘍細胞の増殖や転移,血管の新生や炎症,さらには関節リウマチの骨破壊などに関与している.マウスモノクローナル抗 aVβ3 抗体をもとに高親和性ヒト化抗体であるビタキシン(MEDI-522)が開発され,悪性腫瘍への臨床応用が始まった.関節リウマチ(RA)に対する治療効果も期待されるが,今のところ有用性は明らかではない.

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対談
生活習慣病の現状と未来(第14回)
日本人の食と健康

ゲスト  木村 修一 先生(昭和女子大学大学院 教授)
聞き手  香川 靖雄 先生(女子栄養大学 副学長)

 木村先生は健康日本21推進フォーラム理事をされており、「日本食」について詳しく研究されています。
 先生の有名な実験にラットを使った食塩の研究があります。餌の中のタンパク質の摂取量が上るほど食塩への嗜好性が低くなるというもので、これは日本人の地域による食塩・(動物性)タンパク質の摂取量の分布とよく一致するそうです。更にアルコールとアミノ酸を用いたラットの実験から、お酒を飲む際、おつまみとして日本のある食べ物が非常に合理的であると話されています。その一方で、妊娠中の母親の虫歯と生活習慣病の意外な関係などについても語って頂きました。
 是非、お読み下さい。
 聞き手は女子栄養大学副学長 香川靖雄先生です。

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