最新医学62巻5号 
特集
 若年性特発性関節炎
   -
診断と治療における進歩-


要  旨


アプローチ
リウマチ性疾患の認識
-全身性疾患としての「若年性特発性関節炎」-

横田俊平*

* 横浜市立大学大学院医学研究科発生成育小児医療学 教授

要  旨
 小児期の慢性関節炎の代表的疾患である若年性特発性関節炎は,疾患・治療概念が混沌としていたが,詳細な症例観察と相まって最近の生物学的製剤の開発により,いまや治癒も可能な疾患に変わった.この「アプローチ」では,本特集を概観すべく疾患概念,臨床病態と病態生理,薬剤の使い方,新規導入の生物学的製剤の適応,家族の会の活動まで,若年性特発性関節炎にまつわるさまざまな問題を取り上げ,それがいかに解決されつつあるか現況を報告する.

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「若年性特発性関節炎の診断・分類基準」の国際的な趨勢と意義

今中啓之*
* 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児発達機能病態学 講師

要  旨  日本では,16歳未満に発症した原因不明の慢性関節炎を米国リウマチ学会が定義した若年性関節リウマチ(JRA)と呼称していたが,国際的な研究,討議の必要性から国際リウマチ学会(ILAR)が提唱する若年性特発性関節炎(JIA)が広く使われるようになってきた.ILAR分類には病型の階層化,家族歴の取り扱いなど議論すべき課題もあるが,小児慢性関節炎の診断,治療,予後の改善のために今後も国際的に利用されると思われる.

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若年性特発性関節炎の診断と鑑別診断
-理学的所見の重要性と検査技術の進歩-

岩田直美*
* あいち小児保健医療総合センター感染免疫科 医長

要  旨  若年性特発性関節炎(JIA)は特異的な所見に乏しく,診断に難渋することが多い.関節型JIAを診断する際は,関節に炎症が存在するかどうか確認することが重要であり,診察により関節の熱感や腫脹,疼痛を把握しなければならない.全身型JIAは,細菌感染症や悪性疾患,自己炎症症候群などを的確に鑑別することが必要な疾患である.鑑別診断のため,ポジトロン断層検査(PET)や遺伝子検索など新たな検査が可能となっている.

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若年性特発性関節炎と成人Still病

藤川 敏*
* 藤川医院 院長

要  旨  小児期の全身性関節炎と成人Still病とは,臨床像,臨床検査所見,主なサイトカインの動態,薬剤効果など類似点が多く,発症年齢が異なるだけで,基本的には同一疾患であると考えられている.しかし保有しているHLAにはあまり共通性はなく,全身性関節炎では咽頭痛はほとんど見られないなど多少の差などもあり,今後はさらなるサイトカインの変動,遺伝子解析の点などからも観察し,全身性関節炎と成人Still病が単一の疾患であるのか,異なった疾患であるか否か,今後も検討する必要がある.

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全身型および多関節型若年性特発性関節炎の画像所見:両者は同じ関節炎か ?
-画像所見からのアプローチ-

稲葉 裕*1  小澤礼美*2 斎藤知行**1  横田俊平**2
*1 横浜市立大学大学院医学研究科運動器病態学 学内講師 **1 同教授
*2 同発生成育小児医療学 **2 同教授

要  旨
 全身型と多関節型若年性特発性関節炎の単純X線所見は異なっており,全身型では関節裂隙狭小化を伴わない骨端部の不整像や骨減少という「骨」に関連した異常所見を多く認め,多関節型では関節裂隙狭小化やそれに伴うびらんなどの「軟骨」に関連した異常所見が主体であり,X線学的には病変の局在が異なる可能性が示唆された.

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若年性特発性関節炎の発症のメカニズムから見た疾患マーカーと活動性マーカーについて

梅林宏明*
* 宮城県立こども病院

要  旨
 若年性特発性関節炎(JIA)において,早期診断と適切な治療には関節炎に特異的な疾患マーカーと活動性マーカーが必要となるが,最近ではそれぞれ抗CCP抗体,MMP-3などが注目されている.JIAでは成人と同様,リウマトイド因子陽性の患者においてより高率に抗CCP抗体が検出される.また血清中MMP-3値は関節炎の程度を反映すると言われ,さらに関節破壊の予後予測のマーカーとして有用である.

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全身性自己炎症症候群
-全身型若年性特発性関節炎の鑑別診断として-

西小森隆太*   岡藤郁夫*   斉藤 潤*
* 京都大学大学院医学研究科発達小児科学

要  旨
 自然免疫系の異常制御により発症する全身性自己炎症症候群は,発熱,関節症状,眼症状,皮膚症状を伴い,全身型若年性特発性関節炎との鑑別診断において重要な疾患群である.当総説では,同症候群の中からTRAPS,家族性地中海熱,高IgD症候群,CINCA症候群,Blau症候群を取り上げ,全身型若年性特発性関節炎との鑑別を中心として解説した.

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全身型・関節型若年性特発性関節炎の治療の組み立て方
-NSAIDs およびステロイド薬の使用法と小児に対するDMARDsの限界-

宮前多佳子*   森 雅亮** 今川智之**  横田俊平***
* 横浜市立大学小児科 ** 同准教授 *** 同教授

要  旨
 かつて非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が若年性特発性関節炎(JIA)の基本薬とされてきたが,関節型の基本薬はメトトレキサート(MTX),全身型の基本薬はステロイド薬という認識が世界的レベルで行われている.最近では生物学的製剤が第1選択の薬剤として名乗りを上げる時代になりつつあるが,依然MTXやステロイド薬の位置や重要性は不動である.小児リウマチ医はこれらの薬剤の位置づけを認識し,きめ細やかな使用法を確実に習熟していかなければならないと思われる.小児領域では,他の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)は国際的な検討の結果無効であることが明らかになっており,今後も使用される機会はないが,その国際的な検討についての認識は必要である.このたび,日本リウマチ学会小児リウマチ委員会が日本小児リウマチ学会と協同して,JIAの適切な診断と標準的な治療について,我が国の一般小児診療に携わる医師のために『初期診療の手引き』を作成した.それに基づいて,JIA治療の基本をここで再確認したい.

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関節型若年性特発性関節炎に対する国際的標準治療法としてのメトトレキサート療法

森 雅亮*
* 横浜市立大学小児科 准教授

要  旨
 国内外を問わず,関節型の若年性特発性関節炎(JIA)に対する治療の中核をメトトレキサート(MTX)が担っていることは疑う余地がない.MTXは週1回の少量パルス療法として投与され,無作為対照試験でプラセボより効果的で放射線学的な改善をもたらすことが実証されている.また患者のコンプライアンスも良く,この薬剤の副作用として知られる肝機能障害,肺病変は,本症での投与量が少量で済むためか,重篤化することはほとんどない.本剤は全国調査で有効率が76%と高く,治療上必須の治療薬であることが実証されており,有効性,安全性について十分な合意が得られている薬剤と言える.

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TNFα遮断薬の小児への適応と使用上の問題点

武井修治*
* 鹿児島大学医学部保健学科 教授

要  旨
 TNF遮断療法は,従来の治療に抵抗性であった難治性関節炎を劇的に改善させ,関節破壊の進行抑止や成長障害の回復を誘導するなど,若年性特発性関節炎患児に多様なベネフィットをもたらす.その一方で,生物学的製剤に由来する問題や,特定の感染症の発症頻度を高めるなど,従来の医療では経験しないリスクが存在する.したがって,小児への適応についてはリスクとベネフィトとを十分検討し,使用経験のある専門医との連携が望まれる.

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抗IL-6受容体抗体の全身型若年性特発性関節炎への適応と使用上の問題

今川智之*   横田俊平**
* 横浜市立大学医学部小児科 准教授 ** 同教授

要  
 全身型若年性特発性関節炎症例において,治療抵抗性を示すあるいはステロイド依存性となる難治症例が存在する.これらに対し,抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブが今後有効な治療薬として適用されると考えられる.しかしながらその適応や使用に際して,最大の効果を得て副作用発現を防ぐために注意すべき点も多く,本薬剤の特性や適応基準,除外基準について十分な理解が必要である.

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若年性特発性関節炎の子どもの心のケア

松山 毅*1*2
*1 東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター 非常勤講師
*2 松山クリニック 院長

要  旨
 若年性特発性関節炎(JIA)は,関節痛を主症状とした慢性炎症性疾患である.したがって,患者は慢性的なストレス状態にある.この状態に心理的な適応を果たすためには,対処機制を適切に柔軟に発揮していく必要がある.本稿ではJIA患者の心のケアについて,ストレスへの対処機制と人間関係という面から概説し,JIA患者の心のケアは患者の適応感を高めるための医学的・心理学的サポートであることを指摘した.

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若年性特発性関節炎のリハビリテーション

根本明宜*

* 横浜市立大学附属病院医療情報部


要  旨
 若年性特発性関節炎のリハビリテーションは,内科的治療の進歩により役割が変わりつつある.これまでの残ってしまった障害に対する代償的なリハビリテーションではなく,障害を予防するという観点で,早期からの積極的な関わりが求められる.基本的には成人のリウマチと同様の取り組みになるが,患児の病状,学校生活を含む生活環境,成長の要素などに配慮し,保護者や学校も巻き込んだ形での障害予防の取り組みが必要である.

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若年性特発性関節炎の子どもを持つ親の会『あすなろ会』の活動

石垣成子*
* あすなろ会事務局 担当理事

要  旨
 あすなろ会は,若年性特発性関節炎(若年性関節リウマチ)の子どもを持つ親の会である.年4回発行の会報,春・秋の集い,年の一大イベントのサマーキャンプ,全国各支部の集い,随時ではあるが電話相談を主な活動として,正しく病気を理解し,最新治療に関する知識を得てもらうことや,セカンドオピニオンとしての場の提供をしてきた.しかし専門医の数はまだまだ少なく,患児を中心に地方の主治医と専門医との診療連携が課題である.

「あすなろ会」のホームページ(http://www.asunarokai.com/index.html

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対談
脳とこころの科学と医療(第2回)
形と機能を結ぶ分子を追う

ゲスト  廣川 信隆 先生(東京大学)
聞き手  金澤 一郎 先生(国立精神・神経センター名誉総長)


 対談シリーズ「脳とこころの科学と医療」は、お招きするゲストの先生方に、ご自身の研究の内容や失敗談、成功談をお伺いしながら、日本における脳・神経研究の歴史を紹介するとともに、そこで語られる先達の教訓を、本誌の対象読者である若手研究者の日頃の研究に役立てていただくことを願って企画致しました。ゲストにはこの分野の基礎を築いて来られた方々、また現在も第一線で研究を続けておられる方々をお招きしています。
 第2回はゲストに東京大学・廣川 信隆 先生をお迎えして「形と機能を結ぶ分子を追う」をタイトルにお話をお伺いしました。 
組織実習で観察した内耳のコルチ器などの美しさに魅了されて形態学の道を歩まれた廣川先生ですが、実際の研究では貪欲に新しい技術を取り入れられています。
 最近の研究でも神経細胞の生き残りにはKIF4(キネシンスーパーファミリー4)が深く関与していることを発見されましたが、これはKIF4の輸送分子としての働きを明らかにする過程で様々な手法で検証を行った結果であり、従来の形態学的観察だけでは発見できない生命現象だったそうです。 この他にも留学先でのご苦労や若い研究者に向けたメッセージなども伺いました。
 是非お楽しみ下さい。
 聞き手は国立精神・神経センター総長・金澤一郎先生です。



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