最新医学62巻6号 
特集
 医療工学の進歩とがん画像診断への応用

要  旨



アプローチ

森山紀之*

* 国立がんセンターがん予防・検診研究センター センター長

要  旨
 がん医療における画像診断の重要性は日ごとに増しており,存在診断,質的診断,病変の広がり診断,がん治療の効果判定にも幅広く利用されている.これらのがん診断には医療工学の進歩によって開発されたUS,CT,MRI,PETが利用されているが,これらの診断用ME機器の使用に際しては,機器画像の性能,検査方法を十分に理解し,病変に対してどのようなことが分かるのか,またどのようなものが適用であるのかを十分に考えて検査を行うべきである.

目次へ戻る


超音波診断(US)
超音波とがん画像診断

田中幸子*
* 大阪府立成人病センター検診部 部長

要  旨  超音波診断法はがんの診断において,スクリーニングから精査,治療,治療後の効果判定まで広い範囲で用いられている.非侵襲的で簡便なため安易に使用されているが,超音波の原理を十分に理解し適切に用いることにより,安全により多くの情報を正しく認識できる.最近の工学技術の進歩に伴って開発されてきたBモード画像の画質向上,血流画像としてのドプラ,造影,3次元・4次元表示,エラストグラフィーなどについて紹介する.

目次へ戻る


超音波診断(US)
ティッシュハーモニックイメージング(THI)の進歩と新しい超音波診断用造影剤ソナイドメを用いた造影超音波

水口安則*
* 国立がんセンター中央病院臨床検査部

要  旨  超音波映像技術のハーモニックイメージングには,ティッシュハーモニックイメージング(THI)とコントラストハーモニックイメージング(CHI)がある.THIはDifferential THIの登場により,さらにBモード画質が向上した.CHIは,新しく発売された超音波診断用造影剤であるソナゾイドを用いた造影検査に有用である.

目次へ戻る


コンピューター断層撮影(CT)
マルチスライス CT
-現状そして未来-

辰野 聡*

* 東京歯科大学市川総合病院放射線科 准教授


要  旨
 多列検出器型CT(マルチスライス CT:MDCT)の導入によって,実用的な撮像時間内にx,y,z各軸方向の空間分解能が等しいデータセット(等方向ボクセルデータ)が得られるようになり,広い範囲における多断層再構成画像(MPR)や3次元画像(3D 画像)などの高分解能画像作成および多時相造影撮像がルーチン検査として行われるようになった.本稿では,MDCTにおける技術的進歩を振り返り,MDCTの臨床的有用性,将来展望と問題点について概説する.

目次へ戻る


コンピューター断層撮影(CT)
マルチスライス CT
-現状そして未来-

中根正人*1  村山和宏*2  片田和広**2
*1 名古屋セントラル病院放射線科主任医長
*2 藤田保健衛生大学医学部放射線医学教室 **2 同教授

要  旨  頭部領域において,複数の検出器列を有するマルチスライスCT(MDCT)によって高分解能の等方性ボリュームデータを短時間に取得できることは,大きな臨床的意義を有している.これにより,多断面再構成(MPR)やボリュームレンダリング法などによる3次元画像診断がより高度なものとなった.3次元表示によって立体的構造の把握が容易となり,手術のためのシミュレーションとして応用可能である.また,MDCTにより取得されたデータは,手術支援や放射線治療計画などにも臨床応用されている.

目次へ戻る


コンピューター断層撮影(CT)
MDCT の胸腹部領域への応用

関口隆三* 山邉裕一郎* 吉田慶之* 山本孝信* 黒木嘉典* 栗原弘義*
小林 望* 平原美孝* 萩原芳広*
* 栃木県立がんセンター画像診断部

要  旨
 マルチスライス CT(MDCT)の登場は,胸腹部領域における CT の適応をさらに拡大し,近年では検出器の多列化に伴い,その検査手技および診断方法は大きく変化してきている.0.5mm 厚といった薄いスライス厚での撮影が一般化するに至り,MDCT の性能を遺憾なく発揮するためには,診断用画像サーバーおよびワークステーション群を統合した診断システムの導入が必要である.

目次へ戻る


コンピューター断層撮影(CT)
MDCTと3次元画像

山本修司*
* 国立がんセンターがん予防・検診研究センター第3次対がん 10ヵ年総合戦略事業

要  旨
 がん,心臓病および脳血管障害の3大死因疾患の死亡率を低減するためには,コンピューターによる支援は不可欠である.インターネットなどの情報通信産業の技術の熟度が高まるとともに,医学分野における生命活動の解明が進展し知見が蓄積してきた結果,医学とコンピューター科学が統合して,生命活動のマルチスケール3次元モデルの構築,および生体メカニズムに迫るレベルのシミュレーションをもとにした病態の進行予測や手術支援が可能な時代が到来した.また臨床現場においても,マルチスライス CT(MDCT)が飛躍的に普及した結果,今日では3次元画像処理は臨床診断や治療において欠くことのできない重要な役割を担っている.本稿では,MDCTにおける3次元画像の活用やその再構成方法,また利点やピットフォールについて解説する.

目次へ戻る


磁気共鳴画像(MRI)
MR機器,撮像法の最近の進歩


川光秀昭*
* 神戸大学医学部附属病院放射線部

要  旨
 従来の装置に比較してガントリーはコンパクトになり,傾斜磁場コイルやRF送信システムの最適化により,3.0Tでも1.5Tの装置と同等に使用できるようになった.マルチサーフェスコイルを用いた高速撮像やラジアルスキャンなど,従来とは異なる原理に基づく撮像方法が登場し,臨床応用が検討されている.新しいタイプの磁気シールドによると,MR検査室の壁全体をシースルーの観察窓として利用でき,被検者の気持ちを和らげることができる.

目次へ戻る


磁気共鳴画像(MRI)
MRIの頭部領域への応用


森田元穂*1  土屋一洋**1  小林邦典*2
*1 杏林大学医学部放射線医学教室   **1 同准教授   *2 同付属病院放射線部

要  旨
 頭部領域の画像診断において,MRIは最も重要なモダリティーとなっている.CTと比べてコントラスト分解能に優れ,病変の診断能力が向上する利点とともに,単なる存在診断だけではなく機能評価としても利用されているためである.MRIの発展は目覚ましく,さまざまな機能評価の方法が現れてくる中,診断に利用されている最近の撮像法および次世代を担うであろう超高磁場MRIについて,簡単に説明をしたいと思う.

目次へ戻る


磁気共鳴画像(MRI)
骨・関節疾患へのMRIの応用

江原 茂*
* 岩手医科大学放射線医学講座 教授

要  旨
 骨・関節領域におけるMRの発展を,拡散強調画像,全身MRIスキャン,関節軟骨イメージング,3.0T高磁場装置による骨・関節の評価,microscopy coil による関節の評価,造影剤と関節造影の現況,そして人工関節の評価への応用の各領域について述べた.骨・関節領域における MR 画像の役割の重要さには変化がない.このような新たな成果が骨・関節診断に新しい発展をもたらすことが期待されている.

目次へ戻る


磁気共鳴画像(MRI)
MRI による最新画像診断
-腹部・骨盤領域-

富樫かおり*
* 京都大学医学部放射線医学講座(画像診断学・核医学)教授

要  旨
 近年MRI撮像法には急速な進歩が見られる.中でもエコープラナーイメージング(EPI)をはじめとする高速撮像法の開発と,複数のコイルを使用してその位置情報を活用してデータ収集効率を向上させるパラレルイメージングの発展により,最新のCTに迫るものがある.これら技術の内容とともに,腹部・骨盤領域におけるMRI診断の有用性について概説する.

目次へ戻る


磁気共鳴画像(MRI)
腫瘍イメージングとしての拡散強調MRI

那須克宏*1   黒木嘉典*2
*1 国立がんセンター東病院放射線診断部 *2 栃木県立がんセンター放射線診断部

要  
 近年の著しい技術革新の結果可能になった躯幹部における拡散強調画像(DWI)は,悪性腫瘍を高い感度で高信号領域として描出することが可能である.特に肝,乳腺,前立腺における有用性は特筆すべきものがある.ただしDWI上の高信号は非特異的であり,またアーチファクトが発生しやすい画像なので,適切に評価を行うためにはこの画像の成り立ちを正確に理解する必要があろう.

目次へ戻る


陽電子断層撮影(PET)
PET機器の進歩と臨床応用

村上康二*
* 獨協医科大学病院PETセンター センター長

要  旨
 PET/CTはPETとCTが一体となった最新の画像診断装置である.本来PETとCTは別々の検査法であるが,空間分解能に優れるCTとコントラスト分解能に優れるPETの融合画像は,両者の長所を足した以上の有用性がある.PET/CTでは単に診断としての有用性だけではなく,放射線治療や3次元画像への応用も期待されている.今後のPETはPET/CTが主流であるが,読影の際にはPETの知識だけではなくCT診断の知識(解剖学的知識)も必要であり,両者に精通した読影医の養成が急務である.

目次へ戻る


対談
脳とこころの科学と医療(第3回)
脳の中の抑制ということ

ゲスト  伊藤 正男 先生(理化学研究所)
聞き手  金澤 一郎 先生(国立精神・神経センター名誉総長)


 対談シリーズ「脳とこころの科学と医療」は、お招きするゲストの先生方に、ご自身の研究の内容や失敗談、成功談をお伺いしながら、日本における脳・神経研究の歴史を紹介するとともに、そこで語られる先達の教訓を、本誌の対象読者である若手研究者の日頃の研究に役立てていただくことを願って企画致しました。ゲストにはこの分野の基礎を築いて来られた方々、また現在も第一線で研究を続けておられる方々をお招きしています。
 第3回はゲストに理化学研究所・伊藤 正男 先生をお迎えして「脳の中の抑制ということ」をタイトルにお話をお伺いしました。
 小脳研究の世界的権威である伊藤先生は脊椎神経節の研究で成果を上げられていた時に後に抑制性シナプスの発見でノーベル生理学賞を受賞するジョン・C・エックルス博士から研究者としてメルボルン大学へ招待の手紙を受け取られました。エッケルス博士のもと、敗戦国であった日本とは桁違いの設備でイオンのシナプス通過選択性について研究され、山のような論文を3年間で記された後に、本対談のホストである金澤先生がちょうど医学部に進学した年に先生は東大に戻られました。東大では設備の拡充から始められましたが、その後、様々な試行錯誤の末、小脳に刺激を与えると抑制性のシグナルを発生することを発見されました。世界の誰もが脳の中で一番大きいプルキンエ細胞が抑制性だとは夢にも思わなかった時代にこの発見をされた当時のご様子や世界の反応などを詳しくお話頂きました。
 この他にもデビット・マー博士との関係や国際脳研究機構(IBRO)会長になられた頃のお話なども伺いました。
 是非お楽しみ下さい。
 聞き手は国立精神・神経センター総長・金澤一郎先生です。



目次へ戻る


総     説

覚醒および摂食調節におけるニューロペプチドSおよびその受容体

新見道夫*
* 香川県立保健医療大学保健医療学部臨床検査学科

要  旨
 ニューロペプチドS(NPS)は,オーファンGタンパク質共役型受容体(GPCR)の内因性リガンドとして同定された新規神経ペプチドである.NPS前駆体の最も多い発現は,ラット脳幹の青斑核とBarrington核の間に局在するこれまで未知とされてきたニューロン群に見られる.NPS受容体のmRNAは大脳皮質,視床下部,扁桃核,正中視床核群を含む領域に広く分布している.NPSは覚醒を促し,すべての睡眠ステージを抑制し,恐怖反応や摂食の調節にも関与していることが示唆されている.本稿ではこれらの生理作用について概説する.