最新医学62巻9月増刊号 
特集 臨床遺伝子学’07 -ゲノム科学の臨床へのインパクト-

要  旨



アプローチ
ゲノム科学への招待

菅野 純夫

東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授

要  旨
 ゲノム科学は,「全体像を明らかにする」,「個別性に注目する」という新しい方向性を持った分子生物学といってよい.それは情報学の活用,目的指向型の技術開発という2本の柱に支えられている.ゲノム科学の持つ新しい方向性は医学,特に臨床医学の方向性と合致しており,臨床のさまざまな分野に徐々にそのインパクトを与えつつある.

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新しい局面に進むゲノム科学
ヒトゲノムコピー数多型と疾患解析

油谷 浩幸   石川 俊平*
* 東京大学先端科学技術研究センターゲノムサイエンス分野 ** 同教授

要  旨
 ヒトゲノム配列中にはコピー数多型(CNV)が高頻度に存在することが明らかとなり,一塩基多型(SNP)とは異なるタイプのゲノム多様性として注目されている.ゲノムアレイ解析により作成した最初のヒトCNVマップでは,1,447ヵ所のCNV領域は合計360Mbに及び3,000近い遺伝子が含まれる.CNVと関連する疾患も報告されつつあるが,今後全ゲノム関連解析を進めるうえでの課題について解説した.

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新しい局面に進むゲノム科学
トランスクリプトーム解析が見せる新しいゲノム像

窪崎 敦隆*   林ア 良英**
* 独立行政法人理化学研究所ゲノム科学総合研究センター ** 同プロジェクトディレクター

要  旨
 生物にとって,タンパク質のアミノ酸配列情報とそれらの発現調節領域情報が含まれているゲノム上の2%程度が重要であり,それ以外の部分は意味を持たないと信じられていた.しかし,我々のトランスクリプトーム解析から,アミノ酸配列情報を持たない大量のRNAや複雑で広範囲にわたる転写制御領域の存在が明らかになった.この成果は,生物における新規の制御メカニズムを示すだけでなく,疾患の原因を考えるうえで重要である.

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新しい局面に進むゲノム科学
エピジェネティクスと疾患


石野 史敏
東京医科歯科大学難治疾患研究所エピジェネティクス分野 教授

要  旨
 医療分野においてエピジェネティクスの重要性が広く認識されるようになってきた.エピジェネティクスはなぜ必要なのか?どのような新しい視点を与えてくれるのか?21世紀の医療におけるエピジェネティクスの広がりをゲノムインプリンティング関連の遺伝子疾患,がん,胚性幹(ES)細胞・クローンES細胞を用いた再生医療,生殖医療,遺伝子治療などを例に概説した.

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新しい局面に進むゲノム科学
世界における疾患データベースの現状


日紫喜 光良*1 五條堀 孝**1*
*1 産業技術総合研究所生物情報解析研究センター **1 同研究顧問
*2 国立遺伝学研究所生命情報・DDBJ 研究センター教授

要  旨
 疾患データベースは,疾患関連遺伝子の変異を報告する媒体として一般には理解されている.しかし,疾患データベースにどのような種類があるのか予断抜きで調べてみると,実際には創薬研究から診療意思決定に至る幅広い目的に供され,また配列の多型にとどまらない幅広いデータを提供していることが明らかになった.今後の疾患データベースは標準化が進むと同時に,臨床像から遺伝子レベルでの所見に至るまで統合的に利用できることが期待される.

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新しい局面に進むゲノム科学
メタボロミクスの医学への応用

曽我 朋義*1*2 大橋 由明*2 冨田 勝*1*2
*1 慶應義塾大学先端生命科学研究所 教授
*2 ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社

要  旨
 メタボロミクスはゲノミクス,トランスクリプトミクス,プロテオミクスに続く第4のオミクスとして確立されつつある.しかし,目的物質の化学的性質が多様なため一斉分析が難しい.筆者らが開発したキャピラリー電気泳動−質量分析計(CE-MS)は,イオン性代謝物質に特化した極めて分解能の高い一斉分析法であり,メタボロミクスにおける技術的ブレイクスルーとなった.本稿では,CE-MS 法の手技と実際について解説する.

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新しい局面に進むゲノム科学
新型DNAシークエンサーのインパクト

豊田  敦*1 服部 正平*2
*1 独立行政法人理化学研究所ゲノム科学総合研究センターシーケンス技術チーム
*2 東京大学大学院新領域創成科学研究科情報生命科学専攻 教授

要  旨
 現在,さまざまな生物種のゲノム解読が新たな配列決定技術の登場により強力に進められている.パイロシークエンス技術を利用した超並列型短鎖配列決定装置に始まり,合成による配列解読(sequencing by synthesis)や段階的ライゲーションによる配列解読(sequencing by ligation)といった斬新な配列決定技術を備えた装置も市場に登場しつつある.このように配列決定の高速化,低コスト化および情報処理能力の進展を背景にゲノム研究は新たな展開を迎えようとしている.本稿では,超並列型パイロシークエンサーの実際のパフォーマンスと技術開発の動向について解説する.

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ゲノムで進むがん研究
がんとmiRNA


間野 博行
自治医科大学ゲノム機能研究部 教授

要  旨
 マイクロRNA(miRNA)は20〜24塩基からなる低分子量RNAであり,標的メッセンジャーRNAの3'非翻訳領域に結合し,その翻訳を抑制すると考えられている.特定のmiRNAはがん遺伝子としての作用があり,一方ある種のmiRNAはがん抑制遺伝子として働く.実際のヒトがん細胞においても,これら miRNA の発現異常あるいは点突然変異などの結果,さまざまな形でmiRNAが発がんに関与していることが明らかになった.

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ゲノムで進むがん研究
がん全ゲノム解析のインパクト


井本 逸勢* 稲澤 譲治**
* 東京医科歯科大学難治疾患研究所ゲノム応用医学研究部門分子細胞遺伝学分野 准教授 
** 同教授

要  旨
 がんは,ゲノム不安定性を背景に生じたさまざまなゲノム異常の蓄積により,種々の悪性形質を獲得し発生・進展していく.ほぼ明らかになったヒトゲノム配列情報を基盤に開発されたさまざまなゲノムアレイや超高速シークエンサーにより,ゲノム1次構造(コピー数や配列)異常の高分解能でゲノムワイドな検出が可能になったことで,がんの発生・進展にかかわる複雑なゲノム異常の網羅的な解明と,その結果に基づくがんの予防・診断・治療の発展が期待される.

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ゲノムで進むがん研究
小児がんの網羅的遺伝子発現解析とその臨床応用


大平 美紀* 中川原 章**
* 千葉県がんセンター研究所ゲノムセンター室長 ** 同所長

要  旨
 小児がんの発症には,発生母地の組織が発生初期から分化・増殖し成熟するまでの過程にかかわる遺伝子ネットワークが密接に関係している.マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析の手法は,このような遺伝子ネットワークの解明に役立つだけでなく,臨床の現場でがんの個別化医療の実現に不可欠な腫瘍層別化のシステムとしても大いに注目されつつある.本稿では小児がんの相補的DNA(cDNA)プロジェクトから明らかになった知見と,マイクロアレイを用いた予後予測システムの構築による臨床応用への取組みについて紹介する.

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ゲノムで進むがん研究
がんのエピゲノム

牛島 俊和** 延山 嘉眞*

* 国立がんセンター研究所発がん研究部 ** 同部長

要  旨
 DNAメチル化・ヒストン修飾とも,マイクロアレイを用いたゲノム網羅的解析の時代に入った.がんでのゲノム全体の低DNAメチル化に伴うヒストン修飾の変化や,高DNAメチル化される遺伝子が明らかになっている.エピゲノム・エピジェネティクス解析により,新規がん抑制遺伝子,発がんの milieu,そしてエピジェネティックな発がんの素地が明らかになった.DNAメチル化異常のがんの存在・病態・リスク診断への応用は実用化されつつあり,DNAメチル化およびヒストン脱アセチル化を標的とした薬剤も臨床的に活用され始めた.

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ゲノムで進むがん研究
白血病研究から見た,がんの診断ツールとしての遺伝子発現プロファイル解析


市川  仁

国立がんセンター研究所腫瘍発現解析プロジェクト プロジェクトリーダー

要  旨
 マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析は,今やがん研究に欠かせない解析手法の1つとなり,個別化医療のための診断ツールとしても大きな期待が寄せられている.その一方で,データの再現性,用いられるデータ解析手法などに関して問題点も指摘されてきている.我々自身がかかわってきた急性骨髄性白血病(AML)の遺伝子発現プロファイル解析を振り返ることで,今後どのような臨床応用が期待されるのかを再検討する.

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ゲノムで進むがん研究
がんのシステムバイオロジー:腫瘍頑健性理論の視点から

北野 宏明

株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所取締役副所長
特定非営利活動法人システム・バイオロジー研究機構会長

要  旨
 がんは,治療などに対してロバストな疾病である.このロバストネスという特徴は,生命システムの基本的な特徴であり,がんは我々の本来有するロバストネスをハイジャックしているとも考えられる.本稿では,ロバストネスというシステム・レベルの特徴から,がんという疾病にどのように対応するべきか,システムバイオロジーのアプローチでどのような研究の方向性がありうるかを議論する.

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多因子病のゲノム研究は今
多因子病の遺伝的要因をどのように考えるべきか


井ノ上 逸朗

東海大学医学部 教授

要  旨
 この1年で多くの疾患で大規模なゲノム全域アソシエーション・スタディがなされ,革新的な成果が上がっている.糖尿病,心筋梗塞などの多因子疾患の感受性遺伝子が続々と報告され,追試までなされている.わずかな違いながら確実な感受性遺伝子同定ができている.その経緯を述べるとともに,今後の展開について考えてみたい.

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多因子病のゲノム研究は今
疾患感受性遺伝子の探査の実際:ゲノムワイド関連解析を中心として


宮川  卓*   徳永 勝士**
* 東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学分野 ** 同教授

要  旨
 多因子病の疾患感受性遺伝子を同定することは現在の医学研究において重要な課題であるが,疾患感受性遺伝子の相対危険率は比較的低いことが多いため同定が困難になっている.しかし,適切な研究計画と解析方法を採用すれば,相対危険率の低い疾患感受性遺伝子の同定は可能である.本稿では,近年話題となっているゲノムワイド関連解析を中心に,そのタイピング技術と疾患感受性遺伝子同定までの流れを紹介する.

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多因子病のゲノム研究は今
精神疾患とゲノム


有波 忠雄
筑波大学大学院人間総合科学研究科社会環境医学専攻遺伝医学分野 教授

要  旨
 精神疾患には家族集積性があるが,メンデル遺伝をするリスク遺伝子変異は例外的にしか見つかっていない.しかし,統合失調症や自閉症など,罹患すると子どもの数が少なくなり遺伝的に淘汰される疾患では,新生突然変異によるコピー数変異による発症が次第に明らかにされつつある.このほかに大規模,多施設の研究により,精神疾患と関連している遺伝子多型や,治療反応性や副作用脆弱性と関連している遺伝子多型が明らかになりつつある.

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多因子病のゲノム研究は今
神経疾患とゲノム


戸田 達史

大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝学 教授

要  旨
 神経疾患には単一遺伝子の異常によるものと,大部分は孤発性だが一部にメンデル遺伝をとる多因子遺伝性疾患がある.単一遺伝子発見により分子病態の解明が進み,異常タンパク質の凝集・蓄積が神経変性を引き起すという共通の分子機構が考えられている.多因子神経疾患の感受性遺伝子としてはアルツハイマー病の ApoE4 とパーキンソン病のαシヌクレインが確立されたが,現在世界的に全ゲノムタグ一塩基多型(SNP)チップ関連解析が進行している.

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多因子病のゲノム研究は今
糖尿病とゲノム


原 一雄

東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科

要  旨
 これまで候補遺伝子アプローチや罹患同胞対法による全ゲノム解析で,糖尿病感受性遺伝子が幾つか同定されてきた.最近は,遺伝子多型の高速・大量タイピング法と,国際HapMapプロジェクトのデータが整備され,疾患感受性遺伝子を全ゲノムで一網打尽に検索することが可能となった.実際に糖尿病の分野においても全ゲノム相関解析で糖尿病感受性遺伝子が続々と同定されてきており,日本人での評価が急務である.

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多因子病のゲノム研究は今
循環器疾患とゲノム


木村 彰方
東京医科歯科大学難治疾患研究所分子病態分野 教授

要  旨
 ヒトゲノムは解読が終了し,多様性とその機能解析が焦点となっている.また,種々の疾患で病因となる遺伝子変異や疾患関連多型が同定され,その知見に基づいた病態解明が行われている.さらには,遺伝子診断に基づく予後予測や治療法選択も可能となり,今後は新たな治療法や予防法の開発に向かうと考えられる.本稿では,循環器疾患のうち心筋症と心筋梗塞を例にとり,ゲノム研究のもたらしたインパクトを概説する.

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ゲノムを臨床につなげる薬の世界
薬剤感受性:肺癌におけるEGFR阻害薬を中心に


近藤 征史*   長谷川 好規**
* 名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座・呼吸器内科講師 ** 同教授

要  旨
 がんにおける抗がん剤の感受性は,その体内薬物動態に関与している種々の分子(薬物代謝酵素,トランスポーターなど)の遺伝子多型(宿主側要因)や,腫瘍細胞内における関連遺伝子の異常や発現パターンの変化(がん細胞側要因)によって規定される.ゲフィチニブなどの分子標的薬の効果は,標的としている分子における遺伝子増幅や機能獲得型突然変異と相関し,感受性を予測することはある程度可能となったが,耐性化の問題もあり,さらなる研究の発展が必要である.

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ゲノムを臨床につなげる薬の世界
ゲノムと薬物代謝


山本 武人*1   樋坂 章博*2   鈴木 洋史**1
*1 東京大学医学部附属病院薬剤部助教 **1 同教授
*2 東京大学医学部附属病院薬理動態学 准教授

要  旨
 薬剤の効果や副作用には大きな個人差が存在することが知られているが,その要因の1つとして薬物代謝酵素の遺伝子多型が注目されている.最近では,米国の医薬品添付文書にも薬物代謝酵素の遺伝子多型により効果や副作用が変化するとの記述が見られるようになっており,患者の遺伝子情報に基づいた個別化薬物療法も実用段階に近づいたと言える.本稿では薬物代謝酵素の遺伝子多型とその影響について具体例を挙げて解説する.

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ゲノムを臨床につなげる薬の世界
生物医学研究を加速するケミカルゲノミクス


村田 亜沙子*   佐藤 慎 一*1   上杉 志成*1*2
*1 ベイラー医科大学 *2 京都大学化学研究所ケミカルバイオロジー 教授

要  旨
 ポストゲノム時代を迎え,基礎生物学・生物医学の研究には新たな切り口が必要である.ケミカルジェネティクスは,化合物を道具として使って生命現象を理解しようとする学問である.多くの生物でゲノム配列が解読されている今,化学と遺伝学が融合することで,生命現象と化合物の関係が理解されてきている.本稿では,ケミカルジェネティクスの考え方を紹介し,ケミカルジェネティクスからケミカルゲノミクスへの発展について述べる.

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ゲノムを臨床につなげる薬の世界
天然化合物バンク NPDepo:アカデミアにおける創薬基盤


長田 裕之**   植木 雅志*   斎藤 臣雄*

* 独立行政法人理化学研究所中央研究所抗生物質研究室 ** 同主任研究員

要  旨
 ヒトゲノムの解読やタンパク質構造の解析が進んだので,その成果に基づく創薬研究の発展が期待される.すべてのタンパク質に対する阻害薬を網羅的にスクリーニングするケミカルゲノミクス研究が注目されているが,その推進には化合物ライブラリーの構築が重要である.製薬企業では多数の化合物を収集して新薬のスクリーニングを行っているが,アカデミアの研究者が行うべきことは,その基盤となる独自性の高い技術開発である.

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ゲノムを臨床につなげる薬の世界
ドッキングシミュレーションは創薬の標準手段


福西 快文
産業技術総合研究所

要  旨
 タンパク質と化合物の相互作用計算は,標的タンパク質に対する薬物探索の基本であると同時に,生体系における化合物の関与するネットワークの理解,薬物の代謝や毒性の理解にもつながる.近年,ドッキングシミュレーション・in silico スクリーニングによるタンパク質−化合物相互作用評価は,ネットワーク推定には十分ではないものの,実用レベルに高まりつつある.我々は,タンパク質−化合物相互作用行列を作成することで飛躍的にヒット化合物予測率を向上させた種々の手法を開発・応用してきた.

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ゲノム疫学研究と臨床への展開
世界のゲノム疫学研究:英国のバイオバンクを中心にして


増井 徹
独立行政法人医薬基盤研究所生物資源研究部 JCRB 細胞バンク 主任研究員

要  旨
 人の生物学としての医学が成熟してきた時代の中で,ゲノム情報を基礎にして人の集団での性質をとらえて研究するゲノム疫学研究が重要となっている.この研究のために,多くの国がバイオバンク構想を打ち出しているのだが,その中で,8年の議論を経て2007年から本格開始されるUKバイオバンクについて最近の動きを紹介するとともに,その意義について解説する.

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ゲノム疫学研究と臨床への展開
日本のゲノム疫学研究


村松 正明
東京医科歯科大学難治疾患研究所分子疫学 教授

要  旨
 疫学研究にゲノム解析手法やヒトゲノム情報を応用していくゲノム疫学が現代の趨勢である.日常的疾患(common disease)は遺伝子および環境因子の双方によって発症するが,多くの臨床研究の中から疾患関連遺伝子が明らかになってきた.遺伝子多型がどのように疾患の易罹患性に関与しているかを症例−対照研究だけでなく,コホート研究の中で進めていくことは,科学的根拠に基づく予防医学を構築するために必須である.

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ゲノム疫学研究と臨床への展開
臨床ゲノム研究の支援体制構築


羽田  明
千葉大学大学院医学研究院 教授

要  旨
 ヒトを対象とする臨床ゲノム研究の推進には,多くの方々の研究への自主的参加という協力が不可欠である.その際,インフォームド・コンセントの前提条件である十分な理解可能な説明が必須である.したがって,研究支援体制としてヒト試料集配体制の構築,研究者間のネットワーク構築,ウェブページ,マスコミなどを通じた社会へ向けた研究説明に加えて,インフォームド・コンセント履行補助者の養成と制度構築が急務である.

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ゲノム疫学研究と臨床への展開
ゲノム情報から個別化医療への展開の実際:関節リウマチにおける実践を中心に


鎌谷 直之** 谷口 敦夫*
* 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター准教授 ** 同教授

要  旨
 ゲノム情報を個別化医療へ応用するには,@実験的正当性,A臨床的正当性,B臨床的有用性,の確認が重要である.Aには臨床疫学データに基づく統計的検定が重要であり,独立のサンプルを用いた再現実験が不可欠である.Bには臨床疫学データから感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率などを推定することが望ましく,またゲノム情報を医療介入に応用するためのアルゴリズムの設定などが重要である.

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ゲノム疫学研究と臨床への展開
循環器分野における個別化医療への展開
−心筋梗塞感受性遺伝子の探索−

宮田 聖子*1 浅野 展行*2 横田 充弘*3
*1 セラノスティック研究所 *2 名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学
*3 愛知学院大学歯学部ゲノム情報応用診断学 教授

要  旨
 21世紀の医療において,疾病の早期診断(早期発見)と早期治療を目指す早期医療と,個人個人の遺伝情報に基づいて疾病の発症予防と治療を目指すテーラーメイド(個別化)医療が中核をなすと考えられている.中でもテーラーメイド予防は,健康寿命の延長,医療費抑制の切り札となることが期待されている.21 世紀型テーラーメイド(個別化)医療の実現のためには,疾病の発症に寄与する遺伝子(感受性遺伝子)を探索し,同定することが重要である.本稿では,心筋梗塞(MI)を中心とした生活習慣病の感受性遺伝子探索研究の現状を,我々の研究を中心として概説する.

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