最新医学64巻2号 
特集 糖尿病治療の Up-to-Date

要  旨


アプローチ
インクレチン治療の多面性 ―血糖コントロールを越えて―

成田琢磨*

* 秋田大学医学部内科学講座内分泌・代謝・老年医学分野 准教授
要  旨
 インクレチンのうち GLP-1 には,血糖低下作用・インスリン分泌刺激作用以外に胃排泄・胃酸分泌抑制,満腹作用,抗肥満作用,膵β細胞増殖・分化・保護作用などが知られ,GLP-1 作用増強治療は2型糖尿病の病態の根本であるインスリン抵抗性,膵 β細胞機能低下を解消しうる.GIP は糖尿病で血糖降下作用は消失しているが,脂肪蓄積,骨カルシウム蓄積などの側面を持ち,そのシグナル遮断が抗肥満治療につながる可能性がある.

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インクレチン関連薬
インクレチン関連薬の基礎

山田祐一郎*
* 秋田大学医学部内科学講座内分泌・代謝・老年医学分野 教授

要  旨
 インクレチンは2つのペプチドホルモン GIP と GLP-1 の総称であり,いずれも消化管の内分泌細胞で合成され,栄養素の摂取に伴って血中に放出される.血中でタンパク質分解酵素DPP-Wによって分解されなかったインクレチンは,膵β細胞内の cAMP 濃度を上昇させ,インスリン分泌を促進する.これ以外にも,膵β細胞数の増加や膵外作用を有しており,多彩な生理活性が糖尿病治療に応用されようとしている.

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インクレチン関連薬
インクレチンミメティクスとインクレチンエンハンサーの臨床成績

根本昌実*1  佐々木 敬*2
*1 東京慈恵会医科大学附属青戸病院総合内科 准教授
*2 同附属柏病院糖尿病・代謝・内分泌内科 教授

要  旨
 インクレチンは,食事摂取により消化管から分泌されインスリン分泌を刺激する.インクレチン効果を持続させる薬剤として,インクレチンミメティクスとインクレチンエンハンサーが作られた.これらは,低血糖を起こさずに血糖やHbA1C を低下させる.さらに,インクレチンミメティクスは視床や消化管に作用して体重を減少させる作用を持つ.また膵β細胞再生を促す可能性もあり,インスリン分泌低下を呈する2型糖尿病に期待される薬剤である.

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膵β細胞を増やす
糖尿病治療における膵β細胞数の意義

勝田秀紀*   石田 均**
* 杏林大学医学部第三内科 ** 同教授

要  旨
 糖尿病患者では,顕性糖尿病を来す前にすでに膵β細胞数の減少が認められており,糖尿病の発症に先行する可能性が示唆されている.この膵β細胞数の減少は,結果として個々のレベルでの膵β細胞の機能障害を促すため,特にインスリン分泌不全型の病態を呈する場合が多い我が国の2型糖尿病の治療を考えるうえで,膵β細胞量を温存させる手段を選択することは非常に意義深い.今後膵β細胞量の維持あるいは増加を念頭に置いた2型糖尿病の治療戦略が,その発症予防の点も含めて重要となるであろう.

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膵β細胞を増やす
インクレチンによる膵β細胞増殖


金藤秀明*   松岡孝昭*   松久宗英*
* 大阪大学大学院医学系研究科内分泌代謝内科

要  旨
 糖尿病の新しい治療標的として最近非常に注目されているインクレチンは,(グルコース応答性にインスリンを分泌させるのみでなく)膵β細胞の分化・増殖にもかかわっていることが明らかとなっている.インクレチンは,(インスリン受容体基質である)IRS-2 や(インスリンの転写因子である)PDX-1 の発現および活性の増加などを介して膵β細胞の分化・増殖を促し,またアポトーシスを抑制することが見いだされている.

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膵β細胞を増やす
グルコキナーゼ活性化と膵β細胞増殖


中村昭伸*1  寺内康夫*2
*1 北海道大学大学院医学研究科内科学講座・第二内科
*2 横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学 教授

要  旨
 2型糖尿病の病因を考えるうえで膵β細胞量が近年注目されつつある中,グルコキナーゼ活性化薬の膵β細胞量に及ぼす影響を検討した.グルコキナーゼ活性化薬は濃度依存性に INS1 細胞を増殖させ,IRS-2 発現を上昇させる.また,高脂肪食 20 週負荷後のグルコキナーゼ活性化薬短期投与では,膵β細胞増殖能が明らかに亢進している個体を認めた.以上より,グルコキナーゼ活性化薬は膵β細胞増殖作用を有すると考えられた.

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膵β細胞を増やす
膵島移植の現状と展望

後藤昌史*1*2
*1 東北大学国際高等研究教育機構 准教授
*2 東北大学大学院医学系研究科先進外科

要  旨
 膵島移植が今後広く普及していくためには,1つの臓器によって1人の患者を治療する One-to-One を確立する必要がある.そのためには膵島分離技術の洗練に加え,さらにグラフト生着の促進に主眼を置いた研究を進めていく必要がある.また,極端にドナーが少ない我が国の特殊事情を考慮すれば,今後の膵島移植の方向性として,すでに開始されているバイオ人工膵島移植といった選択肢も十分視野に入れておく必要がある.

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膵β細胞を増やす
ブタ膵島を用いたバイオ人工膵島移植

松本慎一*

* ベイラー大学研究所

要  旨
 膵島移植は有効性が高く,将来的に糖尿病治療の選択肢の1つになることが期待されているが,提供臓器の不足,免疫抑制薬の内服の必要性,長期成績の改善などの課題も多い.これらの課題の中で,提供臓器不足はブタなどの膵島を用いたバイオ人工膵島移植が可能になると解消される.ただし,確実なブタ膵島分離方法の確立,内因性ウイルスの制御,異種拒絶の抑制などバイオ人工膵島移植特有の課題もあり,今後の研究が重要である.

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肥満抑制
糖尿病治療における肥満抑制の意義

山内敏正*1*2 門脇 孝**1
*1 東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科 **1 同教授
*2 東京大学医学部附属病院22 世紀医療センター統合的分子代謝疾患科学講座 特任准教授

要  旨
 高脂肪食と運動不足による肥満の増加によって,日本人糖尿病患者数は激増している.肥満に伴う脂肪細胞肥大化によって,インスリン感受性アディポカインである高活性型の高分子量アディポネクチンが低下し,骨格筋や肝臓などのインスリン標的器官において組織内中性脂質が増加して,インスリン抵抗性,糖尿病が発症・増悪する.肥満抑制は,これらを健常化することによって糖尿病の原因に基づいた予防・治療法となる.

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肥満抑制
インクレチンによる肥満抑制機構とその臨床

山田千積*
* 京都大学大学院医学研究科 糖尿病・栄養内科

要  旨
 栄養素の摂取に伴って消化管から分泌され,膵β細胞からのインスリン分泌を促進するインクレチン(GIP や GLP-1)は,2型糖尿病の新しい治療薬としてのみならず,肥満抑制作用についても注目されている.GIP については脂肪細胞への栄養素の蓄積作用が,一方 GLP-1 については中枢性の食欲抑制や胃排泄の抑制作用が重要な役割を果たしていると考えられており,これらのインクレチンシグナルの調節による肥満治療への臨床応用が期待される.

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肥満抑制
肥満症治療薬の現状

宮崎 滋*
* 東京逓信病院 内科部長

要  旨
 肥満は2型糖尿病を引き起こしやすく,その予防・解消は糖尿病治療の基本である.食事,運動療法など生活改善療法が行われるが,体重の減少は困難であることが多い.食事,運動療法による減量を補助,強化するために,薬物療法が行われる.肥満症治療薬には,中枢性食欲抑制薬と,末梢性消化吸収阻害薬がある.日本でも 2009 年中に食欲抑制薬であるシブトラミンが認可される予定で,肥満の解消による糖尿病治療が可能となる.

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肥満抑制
肥満症に対する外科治療

吉松博信*
* 大分大学医学部総合内科学第一講座 教授

要  旨
 肥満外科手術は,BMI 40kg/m2 以上または BMI 35kg/m2 以上で重篤な合併症を有し,内科的治療が困難な高度肥満に対して行われる.摂食量の抑制を目的にした胃縮小術,栄養物の消化吸収抑制を目的にした胆膵バイパス術,両者を組み合わせた胃バイパス術などがある.内視鏡的胃内バルーン留置術および腹腔鏡下調節性胃バン ディング術は,低侵襲で安全性が高い.肥満外科療法は減量とその維持,糖尿病や高血圧など肥満に関連する合併症の改善に有効である.

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対談
脳とこころの科学と医療(第23回)
 心身医学の現状と未来


ゲスト  久保 千春 先生(九州大学 教授)
聞き手  金澤 一郎 先生(国立精神・神経センター名誉総長)

 対談シリーズ「脳とこころの科学と医療」は、お招きするゲストの先生方に、ご自身の研究の内容や失敗談、成功談をお伺いしながら、日本における脳・神経研究の歴史を紹介するとともに、そこで語られる先達の教訓を、本誌の対象読者である若手研究者の日頃の研究に役立てていただくことを願って企画致しました。ゲストにはこの分野の基礎を築いて来られた方々、また現在も第一線で研究を続けておられる方々をお招きしています。
 第23回はゲストに九州大学・久保 千春 先生をお迎えして「心身医学の現状と未来」をタイトルにお話をお伺いしました。
 「心療内科とは内科をベースにしてこころと体と社会の面から患者さんを診て、心身相関を判断して治療する診療科である」とお考えの久保先生ですが、意外な事に九州大学心療内科で研修医をされた後、7年間細菌学教室に在籍され免疫について研究をされたそうです。
 また、米国オクラホマ医学研究書の留学を経て帰国された後も呼吸器・アレルギー専門病院で臨床をされたそうです。
 その後、九州大学心療内科に復職されアレルギー患者の臨床心理を中心に研究を進められ4年後には教授に就任されたそうです。
 ところで、心療内科の重要な疾患の一つに「神経性食欲不振症」がありますがそれには痩せを賞賛するマスコミの影響もありますが、患者自身の自己評価が低さ、ひいては基本的な両親との信頼関係の欠如がその根底にあるそうです。
 その他にも心理的な因子が大きく関与する潰瘍性大腸炎やアトピー・転換性障害の臨床についてもお話を伺いました。
 是非お読み下さい。


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