最新医学64巻5号 
特集 関節リウマチ -治癒を目指す治療の最前線-


要  旨


アプローチ
治療パラダイムシフト

竹内 勤*

* 埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科 教授
要  旨
 関節リウマチの薬物治療の基本的な考え方が大きく変わった背景について解説した.特に薬物治療のゴールが寛解とされる現在,それによって何がもたらされたのか,今後何を変革すればさらなる寛解導入率の改善が図れるのか,欧米のみならず,日本のエビデンスから考察した.

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治療に直結する病因・病態研究最前線
関節リウマチ治療標的としてのシトルリン化抗原

庄田宏文*   山本一彦**
* 東京大学大学院医学系研究科アレルギーリウマチ学 ** 同教授

要  旨
 関節リウマチ患者(RA)では,その血清中に抗シトルリン化ペプチド抗体が高い特異度で出現するため,RA の病因・病態と抗シトルリン化ペプチド抗体の関連が注目されている.炎症関節には種々のシトルリン化抗原が存在し,抗シトルリン化ペプチド抗体と免疫複合体を形成することで関節炎の発症・増悪に関与していると考えられており,この免疫反応経路の修飾による関節炎治療の可能性が検討されている.

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治療に直結する病因・病態研究最前線
治療反応性と関連する予後因子

川上 純**  玉井慎美*   岩本直樹*  川尻 真也*   
藤川敬太*   江口勝美***

* 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座(第一内科)
** 同准教授 *** 同教授

要  旨
 関節リウマチ(RA)の予後不良因子,治療反応性を規定する因子の解析は,極めて重要である.ベースラインの自己抗体陽性(特に抗 CCP 抗体高力価),炎症反応高値,MMP-3 高値は関節破壊進展の予後不良因子であり,自己抗体陽性と関連する遺伝的背景は HLA-DRB1*SE が最も強く相関し,また環境因子としては喫煙も注目されている.治療反応性は性別,自己抗体,ベースラインの疾患活動性などで異なることが明らかとなるも,遺伝的背景の解析は報告で異なる点もあり,今後は gene-environmental interaction の研究が待たれる.

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診断と評価
寛解・治癒を目指すための診断法 ―特に関節リウマチの早期診断における抗 CCP 抗体の有用性について― 

湯川尚一郎*   三森経世**
* 京都大学大学院医学研究科内科学講座臨床免疫学 ** 同教授

要  旨
 関節リウマチ(RA)の治療戦略において,生物学的製剤の登場によってパラダイムシフトがもたらされ,臨床的寛解のみでなく,画像的寛解が治療の目標となった.そのためには早期診断が重要であるが,世界的に用いられている米国リウマチ学会(ACR)の 1987 年改訂 RA 分類基準は早期 RA の診断には適していない.抗 CCP 抗体は RA において極めて高い疾患特異度を有し,早期 RA の診断にも有用である.さらに,RA 診断基準を満たさない診断未確定関節炎においても,抗 CCP 抗体陽性例は RA に進展する可能性が高く,RA として治療を考慮する必要がある.

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診断と評価
関節リウマチのタイトコントロールについて


田中栄一*   山中 寿**
* 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター ** 同教授

要  旨
 近年,生物学的製剤導入に伴い,これまでの炎症コントロールから関節破壊防止へと関節リウマチ(RA)の治療戦略は変化し,寛解が現実的な治療目標となってきている.RA 発症早期の寛解導入のために,疾患活動性のコントロールを厳重に行っていくタイトコントロールという概念が提唱されている.本稿では,タイトコントロール,RA 寛解,RA 疾患活動性評価法などの概略を述べ,実際にタイトコントロールの治療戦略を用いて行われた臨床研究などから,「RA 寛解の早期導入とその維持」がいかに RA 患者の予後にとって重要であるかを説明していく.

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治療戦略
寛解・治癒を目指すための薬剤選択 ―NSAID,ステロイド,DMARD,生物学的製剤の使い方―


田中良哉*
* 産業医科大学医学部第一内科学 教授

要  旨
 関節リウマチの治療目標は疾患制御と関節破壊の進展抑制で,治療は抗炎症薬を中心とした対症療法,抗リウマチ薬を中心とした根本療法の2本立てで行われる.メトトレキサート(MTX)を中心として抗リウマチ薬が治療の基本となる.しかし,臨床的寛解,画像的寛解,機能的寛解,さらに薬剤フリー寛解(治癒)を目指すためには,早期からの TNF 阻害薬などの生物学的製剤と MTX の併用が必要である.関節破壊や身体機能障害が不可逆性になる前からの適切な治療介入の重要性を概説する.

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治療戦略
2008年米国リウマチ学会勧告を読み解く

川合眞一*
* 東邦大学医療センター大森病院 リウマチ膠原病センター 教授

要  旨
 米国リウマチ学会は 2008 年になって,リウマチ専門医を対象とした指針として疾患修飾性抗リウマチ薬の使用に関する ACR 勧告を公表した.本勧告は,各種臨床要因で層別した抗リウマチ薬使用に関する指針と,禁忌などの安全性情報などからなっている.我が国の臨床現場への適用の可否を含め,ACR 勧告を解説した.

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薬剤選択
早期症例に対する最新治療

鈴木康夫***  若林孝幸*   齋藤榮子* 諏訪 昭**

* 東海大学医学部内科学系リウマチ内科学 ** 同准教授 *** 同教授

要  旨
 関節リウマチの治療目標は関節破壊の停止・修復を可能にする寛解の達成である.そのために,発病極早期からの強力な治療が勧められている.治療の中心はメトトレキサートを中心とする強力な抗リウマチ薬である.薬剤の選択に当たっては,疾患活動性,既存の骨破壊の有無,罹病期間,リウマトイド因子や抗 CCP 抗体を考慮する.最近では,診断基準を満たさない診断未確定関節炎の段階で抗リウマチ薬を開始する考え方が定着してきた.発病早期の寛解導入により,drug-free remission が現実的になっている.

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薬剤選択
メトトレキサート不応症例に対する最新の治療

亀田秀人*
* 埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科 講師

要  旨
 現在,関節リウマチ患者の7〜8割にメトトレキサート(MTX)が処方され,以前より活動性コントロールは向上した.しかし有効性と安全性の面から,将来は分子標的薬に替わられるであろう.当面,MTX 不応症例に対しては TNF 阻害薬の併用をまず患者に提示すべきであり,次の選択肢として,有効性重視ならトシリズマブへの変更,安全性重視ならブシラミンやタクロリムスの併用,以下他の抗リウマチ薬を漸次試みることとなろう.

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薬剤選択
生物学的製剤の変更と中止のタイミング

名和田雅夫*   齋藤和義**  田中良哉***
* 産業医科大学医学部第一内科学講座 ** 同准教授 *** 同教授

要  旨
 関節リウマチ(RA)は,生物学的製剤の登場で約3割が寛解可能となり,寛解を維持することにより,生物学的製剤の中止,さらに薬剤フリー寛解も可能となってきている.しかし TNF 阻害薬無効例も少なからず存在し,本邦では現在までに TNF 阻害薬が3剤(インフリキシマブ,エタネルセプト,アダリムマブ),IL-6 受容体抗体(トシリズマブ)が RA に使用可能であり,TNF 阻害薬の一次無効・二次無効といった無効症例に対する救済もさらに可能となってきている.

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薬剤選択
合併症症例における抗リウマチ薬の選択とリスクマネージメント

針谷正祥*
* 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科薬害監視学講座 教授

要  旨
 合併症を有する関節リウマチ患者では,その種類と重症度を的確に評価し,各症例の治療ゴールを設定する.特に肺・腎・肝・血液合併症を有する患者では,疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)の選択に十分な注意が必要である.自分が使用する低分子 DMARDs,生物学的製剤の添付文書にしっかりと目を通し,禁忌・慎重投与・副作用の種類と頻度を確認し,副作用発現時の対応について理解しておくことがリスクマネージメントの第一歩である.

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新しい治療薬
抗IL-6受容体抗体トシリズマブ

西本憲弘*
* 和歌山県立医科大学免疫制御学講座 教授

要  旨
 トシリズマブはヒト化抗 IL-6 受容体抗体であり,関節リウマチの治療薬として 2008 年4月に承認された.その特徴は,メトトレキサートの併用を必ずしも必要とせず,しかも寛解導入率と長期継続率において優れていることである.関節破壊の抑制効果も確認されている.IL-6 は自己免疫疾患の発症に重要な役割を果たしている Th17 細胞の分化に不可欠であり,IL-6 の阻害は根本に作用する可能性がある.IL-6 阻害治療の研究により,治癒を目指した治療法の確立が可能になるかもしれない.

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新しい治療薬
新規抗TNF製剤 アダリムマブ,ゴリムマブ,セルトリズマブ

宮坂信之*
* 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科膠原病・リウマチ内科学 教授

要  旨
 関節リウマチ(RA)は,早期から積極的に抗リウマチ薬,特にメトトレキサート(MTX)や生物学的製剤を用いて治療することで高い寛解導入率が得られ,しかも関節破壊の進行阻止が可能となってきた.特に生物学的製剤の中でも TNF 阻害薬を適切に使うことにより,関節予後のみならず生命予後も改善することが明らかとなっている.これまでにインフリキシマブ,エタネルセプトが我が国で広く使用されてきたが,2008 年7月から第2世代 TNFα抗体とも言うべきアダリムマブが使用できるようになった.さらに第3世代の抗 TNFα抗体であるゴリムマブ,セルトリズマブの臨床試験が進行中である.

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新しい治療薬
CTLA4IgGFc 融合タンパク質アバタセプト

天野宏一*
* 埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科 准教授

要  旨
 アバタセプトは CTLA4 と IgG との融合タンパク質で,CD28 を介したT細胞活性化の共刺激経路を遮断する.10mg/kg を4週ごとに点滴静注し,メトトレキサート無効例に対し,TNF 阻害薬と同程度に関節リウマチ(RA)の臨床的活動性および骨破壊の進行を抑制する.TNF 阻害薬抵抗性の RA にも有効で,安全性も高い.TNF 製剤との併用は相加効果はなく,感染症が増加するため勧められないが,極めて有用性の高い期待の薬剤である.

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新しい治療薬
JAK3阻害薬

瀬戸洋平*   山中 寿**
* 埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科 准教授

要  旨
 抗体や受容体タンパク質を用いた TNF 阻害薬などの生物学的製剤に続き,これらと同等以上の抗リウマチ作用を備え,経口摂取可能な低分子化合物の創薬研究が活発である.インターロイキンのタイプI受容体細胞内シグナル伝達にかかわる主要なチロシンキナーゼである JAK3 は,実用化に向けて臨床試験が進行中の標的分子の1つである.JAK3 阻害薬である CP-690,550 は関節リウマチ患者に対し,単独あるいはメトトレキサート併用での良好な短期治療成績を示している.

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対談
血液および血液疾患を語る(第2回)
 造血の仕組みを明かす


ゲスト  岩永 貞昭 先生(九州大学)
聞き手  齋藤 英彦 先生(名古屋セントラル病院)

 対談シリーズ「血液及び血液疾患を語る」は、司会を名古屋セントラル病院・齋藤英彦先生にお願いし、お招きするゲストの先生方にご自身の研究の内容や失敗談、成功談をお伺いしながら、本誌の対象読者である若手研究者へのアドバイスを頂き、日頃の臨床・研究活動に役立てていただくことを願って企画致しました。ゲストにはこの分野の基礎を築いて来られた方々、また現在も第一線で研究を続けておられる方々をお招きしています。
 第2回はゲストに九州大学名誉教授・岩永 貞昭 先生をお迎えして「血液凝固系の系統発生」をタイトルにお話をお伺いしました。
 血液凝固系の研究でご活躍の岩永先生ですが大学院時代には蛇毒の研究をされており、そこから出血や止血の仕組みについて興味を持たれたそうです。
 またカロリンスカ研究所留学時代にはフィブリノーゲンの構造決定をBlomback教授の研究室でされていたそうですが、その当時は後にタンパク質構造解析の中心となるエドマン分解法が確立される前で構造決定に大変ご苦労されたそうです。
 留学から帰国され大阪大学から九州大学に移られた岩永先生は凝固系から自然免疫へと研究対象を広げられいろいろな生体防御に関わる因子を発見されました。
 この他にも若い研究者へのアドバイスなど感銘深いお話を伺いました。 
 是非お読み下さい。


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