最新医学64巻6号 
特集 がん放射線療法の進歩と展望


要  旨


アプローチ
放射線療法の考え方と最近の進歩

西村恭昌*

* 近畿大学医学部放射線医学教室・放射線腫瘍学部門 教授
要  旨
 放射線療法の目標は,晩期合併症を作ることなく腫瘍の局所制御を達成することにある.局所制御は十分な線量を照射すれば達成できるので一見簡単なようであるが,正常組織の耐容線量が壁となって標的体積に十分な線量を投与できない場合も多かった.近年,放射線療法は空間的線量分布の改善,時間的線量配分の改善,放射線増感法の進歩の3つの方面から進歩し,治療成績の向上と合併症の低減が可能になった.

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総論
放射線療法分野の人材育成

唐澤久美子*1*2
*1 順天堂大学医学部 放射線医学講座
*2 同大学院医学研究科先端放射線治療・医学物理学講座 准教授

要  旨
 今まで本邦で放射線療法が広まらなかった要因の1つには,専門家の不足による適切な治療の普及の遅れ,教育者の不足による教育の不足などが挙げられる.米国と対比すると放射線腫瘍医,医学物理士は 1/10 ほどの人数しかおらず,放射線療法を必要とする患者の増加に対応するには早急な養成が必要である.その中で文部科学省は,全国の大学院に選定した「がんプロフェッショナル養成プラン」により人材育成を開始した.

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総論
Patterns of Care Study(PCS)

手島昭樹*1  光森通英*2  日本 PCS 作業部会*3
*1 大阪大学大学院医学系研究科医用物理工学講座 教授
*2 京都大学大学院医学研究科放射線腫瘍学・画像応用治療学講座 准教授
*3 厚生労働省がん研究助成金計画研究班 8-27,29,10-17,14-6,18-4

要  旨
 放射線治療は全国的には構造(装備,人員)や診療内容の面で不備があるが,がん対策基本法の強力な支援を得て整備が進められている.これらを具体的に測定・分析する方法として PCS がある.1996 年に厚生労働省がん研究助成金と米国 PCS の支援を得て導入した.施設規模による構造,過程,結果に顕著な差を観察した.EBM の国全体への浸透もモニターでき,有益である.

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総論
化学放射線治療

三橋紀夫*
* 東京女子医科大学医学部放射線医学講座 教授

要  旨
 多くの固形がんでは化学放射線治療が標準治療となりつつあるが,併用効果の機序についてはいまだ不明な点が多い.さらに,分子生物学の進歩によって分子標的薬剤と放射線治療の併用も開始されている.本稿では,抗がん剤ならびに分子標的薬剤による放射線増感の現状について述べるとともに,最近臨床に導入されている定位放射線治療,強度変調放射線治療(IMRT)ならびに粒子線治療といった新しい放射線治療法と化学療法の併用上の問題点についても言及する.

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総論
定位放射線治療 ―画像誘導技術と呼吸移動対策による体幹部病変への治療展開―


大西 洋*   荒木 力**
* 山梨大学医学部放射線科 准教授   ** 同教授

要  旨
 定位放射線治療は,「小腫瘍に対して高精度に短期で三次元的に集中的大線量を投与する」と定義される.頭蓋内ではガンマナイフ装置による約 40 年の歴史があるが,体幹部病変は固定法,呼吸性移動,線量計算の問題点によりまだ 10 年程度の経験しかない.それにもかかわらず,小型の肺がん,肺転移,肝腫瘍を中心に安全性と有効性について定位放射線治療の多くの臨床経験が積まれつつあり,手術と遜色ない成績も報告されている.

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総論
強度変調放射線治療(IMRT)


幡野和男**  酒井光弘* 荒木 仁*   今葷倍敏行*
* 千葉県がんセンター放射線治療部 ** 同部長

要  旨
 強度変調放射線治療は,正常組織へ過度の線量増加を伴わない腫瘍への線量増加が可能な照射法である.有害事象の減少などの報告が多く,さまざまな領域の腫瘍に対して臨床応用されており,中枢神経系腫瘍,頭頸部腫瘍,前立腺がんに対し保険適応となっているが,施行可能な施設はまだ限られている.今後は PET/CT などの機能画像を用いてより限局した高線量照射が可能となり,局所制御率向上および有害事象のさらなる減少が期待される.

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総論
小線源治療

井上武宏*
* 大阪大学大学院医学系研究科放射線治療学 教授

要  旨
 小線源治療は,密封された放射性同位元素を腫瘍内や腫瘍の近傍に挿入して治療を行うものである.小線源の特徴は,線源近傍だけに限局して大線量を投与することが可能であること,腫瘍の形状に合わせて線源を配置することで腫瘍の形に応じた線量分布が得られることである.  短所は医療従事者の被曝と患者の隔離が挙げられる.遠隔操作式の小線源治療装置が普及し,これらの短所は解決された.線源挿入の技術の継承の問題が残っている.

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総論
重粒子線を用いたがん治療の現状と展望

山田 滋*   鎌田 正**  辻井博彦***

* 放射線医学総合研究所重粒子線治療センター医長    ** 同センター長 *** 同理事

要  旨
 放射線医学総合研究所では平成6(1994)年6月より,重粒子加速器(HIMAC)から発生される重粒子線を用いて,固形がんに対する治療を施行してきた.平成 15 年 11 月には厚生労働省より,「固形がんに対する重粒子線治療」という名称で先進医療の承認が得られた.15 年間を経過し,平成 21 年2月までに約 4,500 人の治療を行ったので,その臨床成果と展望を紹介する.

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各論
頭頸部がん ―治療精度の向上と QOL の改善を目指して―

古平 毅*
* 愛知がんセンター中央病院放射線治療部 部長

要  旨
 頭頸部がんの放射線治療は,機能・形態温存の点で特に重要である.最近の高精度治療の技術的進歩により,治療効果が高く良質の QOL を保つ治療が実現可能になった.強度変調放射線治療,粒子線治療などの治療機器の進歩に加え,放射線の分割スケジュールを調整して治療効果を高める加速照射法・過分割照射法の有用性,抗がん剤や分子標的薬剤などの放射線との併用療法による成績向上などのさまざまな治療法の進歩が報告されてきている.

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各論
食道がんに対する放射線治療

板坂 聡*   光森通英**  平岡真寛***
* 京都大学大学院医学研究科放射線腫瘍学・画像応用治療学   ** 同准教授 *** 同教授

要  旨
 食道がんに対する放射線治療は,化学放射線療法の導入によりほぼすべての病期に対して根治的治療法として用いられるようになった.病期によっては手術成績と有意な差が見られなくなっており,食道温存を可能とする有効な治療法であるが,進行病期での治療成績は満足に足るものでなく,さらなる治療成績の向上を目指した集学的治療の取り組みが行われている.

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各論
膵がんの放射線治療の現状と将来の展望

唐澤克之*
* がん・感染症センター都立駒込病院放射線科 部長

要  旨
 膵がんの予後は不良であったが,最近は化学放射線療法の進歩によって少しずつ改善の傾向にある.化学放射線療法の進歩としては,塩酸ゲムシタビン(GEM)などの新規抗がん剤の登場や,三次元原体照射などの高精度放射線治療の普及などが挙げられる.さらに今後は,強度変調放射線治療などの適用や,GEM,Sミ1 などの抗がん剤と放射線治療との適切な併用法の検討などにより,さらなる局所制御の向上および長期成績の向上が期待される.

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各論
局所進行非小細胞肺がんに対する化学放射線療法

小塚拓洋*
* 癌研究会有明病院放射線治療科 医長

要  旨
 局所進行非小細胞肺がんの治療は,放射線単独から化学療法の種類や併用方法の工夫により,順次化学放射線療法,同時化学放射線療法へと治療成績を向上させてきた.これまで放射線治療は 1970 年代と大差がなかったが,近年,CT 治療計画,三次元照射などの照射技術の進歩により高線量の照射が可能になった.さらなる治療成績の向上を目指して,現在,高線量放射線治療と分子標的薬などの新規薬剤を併用した臨床試験が進行中である.

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各論
乳がんの放射線治療

鹿間直人*
* 聖路加国際病院放射線腫瘍科

要  旨
 乳がんに対する標準的放射線治療として,乳房温存療法における乳房照射や乳房切除後の放射線治療があり,放射線治療は局所再発率を 1/3 に減少させるとともに,生存率を向上させることが報告されている.緩和的放射線治療として,有痛性骨転移や脳転移に対する放射線治療が行われる.また近年では,照射期間の短縮を目指した加速部分照射法や短期全乳房照射が試みられているが,解決しなければならない問題点も多い.

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各論
前立腺がん

中村和正*1  佐々木智成*2 桑原康雄**1  吉満研吾***1
*1 福岡大学医学部 放射線医学教室/放射線部 講師   **1  同教授   ***1同主任教授
*2  九州がんセンター放射線治療部 部長

要  旨
 前立腺がんの外部照射では,三次元原体放射線治療,強度変調 前立腺がんの外部照射では,三次元原体放射線治療,強度変調放射線治療,画像誘導放射線治療などの最新の技術が導入され,有害事象を抑えてより多くの線量を投与できるようになっている.特に画像誘導放射線治療の出現で,さらに少ない回数で効果的な治療が実現できる可能性がある.また粒子線治療や小線源治療も進歩しており,今後の発展が期待される.


対談
血液および血液疾患を語る(第3回)
 造血因子研究と医学界の展望


ゲスト  久 史麿 先生(自治医科大学)
聞き手  齋藤 英彦 先生(名古屋セントラル病院)

 対談シリーズ「血液及び血液疾患を語る」は、司会を名古屋セントラル病院・齋藤英彦先生にお願いし、お招きするゲストの先生方にご自身の研究の内容や失敗談、成功談をお伺いしながら、本誌の対象読者である若手研究者へのアドバイスを頂き、日頃の臨床・研究活動に役立てていただくことを願って企画致しました。ゲストにはこの分野の基礎を築いて来られた方々、また現在も第一線で研究を続けておられる方々をお招きしています。
 第3回はゲストに自治医科大学学長・久 史麿 先生をお迎えして「造血因子研究と医学界の展望」をタイトルにお話をお伺いしました。
 血液学というよりも寧ろわが国の医学会を代表される久先生ですが意外な事に元々は量子力学などの物理学にご興味をもたれていたそうです。
 ところが高等学校での物理学の講義がつまらなかった事から3年生になってから医学部へ進路を変更されたそうです。
 当時、門司におられ九州大学に進学されるつもりでおられた久先生が東京大学に進学されたのもある偶然がきっかけでした。
 更にインターン時代には眼科に入局される予定だったお話や最終的に血液学を志された理由など今の久先生からは想像もつかないお話をして頂きました。
 またエリスロポエチンの研究を始められたきっかけ、造血因子、造血幹細胞研究に進まれた当時の貴重なお話なども伺いました。
 一方で医学会の重鎮でもあられる久先生に我が国の学術や医学全体に対するお考えも伺いました。
 是非お読み下さい。


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