最新医学64巻10号 
特集 内分泌性高血圧-最新の話題-


要  旨


アプローチ
高血圧を内分泌学的に診る

伊藤 裕*

* 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 教授
要  旨
 高血圧は,血管収縮型,体液貯留型に大別できる.二次性高血圧のみならず本態性高血圧においても,これらの病態は循環調節ホルモンの血中濃度によってある程度把握することが可能である.おおむね前者は高レニン,低 ANP 血症を呈し,後者は低レニン,高 ANP 血症となる.こうして得られた病態を治療薬の選択に反映させることにより,より効果的な降圧を図ることが可能である.

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原発性アルドステロン症 ―診療ガイドラインと今後の問題点―

西川哲男**** 大村昌夫*** 齋藤 淳** 松澤陽子*
* 横浜労災病院内分泌・代謝内科 ** 同部長 *** 同総合診療部長 **** 同副院長

要  旨
 原発性アルドステロン症(PA)は副腎からのアルドステロン過剰分泌が原因となるが,外科的処置で治癒が期待できる二次性高血圧である.PA は,高血圧の原因の1%以下とまれな疾患群であると思われてきたが,血漿アルドステロン濃度と血漿レニン活性の同時測定で高血圧の 10% 前後を占める最近注目を集めている疾患である.欧米諸国ならびに本邦でも,一般医家にも PA の診断手引きが発表されてきた.本稿では,米国,本邦で昨年より策定された幾つかの本疾患へのガイドラインの特徴と相違点を中心に概説する.

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アルドステロン関連高血圧 ―ミネラルコルチコイド受容体活性化と治療抵抗性高血圧―

柴田洋孝*   伊藤 裕**
* 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 専任講師 ** 同教授

要  旨
 原発性アルドステロン症は,高アルドステロン症によるミネラルコルチコイド受容体(MR)の活性化により,高血圧および心血管疾患の合併症を伴う.一方,血中アルドステロン濃度が正常でも,食塩過剰摂取,肥満,メタボリックシンドローム,睡眠時無呼吸などの病態において,MR 感受性の亢進によって治療抵抗性高血圧を呈する「アルドステロン関連高血圧」が近年注目されている.今後,治療抵抗性高血圧では,血中アルドステロン濃度が正常でも,MR 拮抗薬の併用が心血管合併症の予防に重要である.

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クッシング症候群とプレ(サブ)クリニカルクッシング症候群
―診療ガイドラインと今後の問題点―

曽根正勝*1   益崎裕章*2  中尾一和**1
*1 京都大学大学院医学研究科内分泌代謝内科 **1 同教授
*2 琉球大学医学部器官病態医科学内分泌代謝内科学 教授

要  旨
 高血圧はクッシング症候群の最も頻度の高い合併症の1つである.一方,高血圧患者におけるクッシング症候群の頻度は0.1〜1%と多くはないもののまれとは言えず,特に肥満,糖代謝異常,脂質代謝異常などを合併している症例では見落としてはいけない疾患である.本稿では,クッシング症候群とプレ(サブ)クリニカルクッシング症候群のスクリーニング検査と診断基準について概説するとともに,その問題点を挙げる.

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褐色細胞腫の遺伝子診断の現状と課題


成瀬光栄*1  田辺晶代*1*2  櫻井晃洋*3 竹越一博*4
*1 国立病院機構京都医療センター内分泌代謝高血圧研究部 部長
*2 東京女子医科大学第二内科 講師 *3 信州大学遺伝医学・予防医学 准教授
*4 筑波大学臨床分子病態検査医学 准教授

要  旨
 褐色細胞腫の多くは完治する良性疾患であるが,約 10〜20% は悪性褐色細胞腫で予後不良である.最大の課題は確実な早期診断法がないことであり,遠隔転移で初めて診断される.最近,病態の遺伝的基盤が注目されており,特にコハク酸脱水素酵素サブユニットB(SDHB)と悪性との関連が示唆され,臨床的有用性が期待されている.今後,解析による利益と予想される課題に配慮して,長期のフォローアップ体制を構築する必要がある.

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成長ホルモン分泌異常と高血圧


高橋 裕*
* 神戸大学大学院医学研究科内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科学分野 講師師

要  旨
 成長ホルモンは成人の代謝調節において重要な役割を果たしているが,水・電解質調節にもかかわっている.成長ホルモン過剰である先端巨大症では高血圧の合併が多く認められる.成長ホルモン/IGF-I 系の血圧調節における生理的意義,作用機序,病態とのかかわり,高血圧関連合併症に与える影響について述べる.

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甲状腺ホルモンの心血管系制御機構

中村浩淑*
* 浜松医科大学第二内科 教授

要  旨
 心血管系と血圧調節に甲状腺ホルモンが重要な働きを行っていることは,古くからよく知られている.頻脈・動悸は甲状腺中毒症患者の最も頻度の高い訴えの1つである.甲状腺ホルモンは,末梢血管の抵抗を減少させ,心収縮力を増加させる.また心拍数を増加させ,血液産生を刺激する.甲状腺ホルモン作用は,受容体に結合し,標的遺伝子の転写活性を制御するゲノム作用が主であるが,近年非ゲノム作用も次第に明らかになってきた.

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原発性副甲状腺機能亢進症における高血圧と心血管障害

竹内靖博*

* 虎の門病院内分泌センター 部長

要  旨
 原発性副甲状腺機能亢進症には高血圧や心血管障害がしばしば合併し,その生命予後との関連が議論されてきた.近年では,本症患者の多くは軽症あるいは無症候性であり,その生命予後は必ずしも不良ではないとされている.しかし,高血圧や心血管障害の合併例では生命予後が悪い可能性があることや,副甲状腺手術によりこれらの合併症も改善されることを示唆する報告が散見されることから,さらなる臨床的検討が望まれている.

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遺伝子変異による内分泌性高血圧

櫻井晃洋*
* 信州大学医学部遺伝医学・予防医学 准教授

要  旨
 ほとんどの高血圧は,多数の疾患感受性遺伝子によって規定される遺伝要因と生活習慣の両者が関与しているが,一部の高血圧は単一遺伝子の変異によって生じる.本稿では内分泌性高血圧を来す単一遺伝子疾患について概説する.

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高齢者の内分泌異常と高血圧

神出 計*   楽木宏実**
* 大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学 講師 ** 同教授

要  旨
 高齢者高血圧では二次性高血圧の存在を常に念頭に置き,診断・治療を行う必要がある.種々の内分泌性高血圧症はいずれも典型的症状を呈することが少ないため,いわゆる老年症候群との鑑別が難しい場合があることを念頭に置いて診療に当たるべきである.特に高齢者では両側性腎動脈狭窄が存在している可能性があるため,レニン・アンジオテンシン系阻害薬投与後には早期に腎機能やカリウムをモニターし,急性腎不全の進行に注意を払わねばならない.

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メタボリックシンドロームにおける内分泌異常と高血圧

吉田英昭*   島本和明**
* 札幌医科大学第二内科 ** 同教授

要  旨
 メタボリックシンドロームは今や国民病と言っても過言ではない.この成因には過食や運動不足が大きくかかわっているが,最近の研究では,過剰に蓄積した脂肪細胞から分泌される種々のアディポサイトカインが深く関与していることが明らかとなってきた.これが生体の内分泌・代謝系にも悪影響を及ぼし,直接的・間接的にメタボリックシンドロームの発症や進展にかかわっている可能性がある.

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グルココルチコイド補充療法と血圧

明比祐子**  蘆田健二*   竹之下博正* 工藤忠睦*   柳瀬敏彦***
* 福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科学 ** 同講師 *** 同教授

要  旨
 慢性副腎皮質機能不全症患者へのグルココルチコイドの補充量と血圧との間に明らかな相関は認めず,むしろヒドロコルチゾン 30mg/日の投与量でも血圧低下の傾向であった.しかしながら,ヒドロコルチゾン 20mg/日以上では BMI や脂質代謝の各指標は健常人より高値であり,容量依存性の悪化を認め,長期にわたる過剰な補充療法の心血管系に及ぼす影響が懸念される.

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慢性腎臓病の内分泌異常と高血圧 ―レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を中心に―

水口 建*   溝口達也*   増冨智弘* 木村玄次郎**
* 名古屋市立大学大学院医学研究科心臓・腎高血圧内科学(医学部学生) ** 同教授

要  旨
 レニン・アンジオテンシン(RA)系は,主として糸球体血圧や糸球体濾過量を一定に維持する目的で調節されている.糸球体濾過能が低下すると,RA 系を活性化させ糸球体血圧を上昇させることによって,糸球体濾過量を維持することが可能となる.腎機能が低下すると,この RA 系の亢進のみならず血清Kが上昇傾向となるため,アルドステロンの分泌も亢進する.これらの慢性腎臓病における RA 系やアルドステロンと血圧調節との関係を要約した.

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高血圧の発症予防・退行(regression)とレニン・アンジオテンシン系

篠村裕之*   伊藤 裕**
* 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 ** 同教授B>

要  旨
 高血圧の有病率が年々増加していることから,その治療対策として高血圧の発症予防(prevention)ならびにすでに発症した高血圧を正常域に戻す退行(regression)が,ますます重要な意味を持つようになっている.これまでの動物実験や臨床検討からは,高血圧が発症する前の段階でレニン・アンジオテンシン系(RAS)を抑制すると,後の高血圧の発症を抑制できることが示されている.また最近我々は,高血圧が発症した後でも高用量の RAS 抑制薬を投与することにより,一度発症した高血圧を退行できる可能性を報告した.これらの成績から,血圧調節を担うホルモン系である RAS が,高血圧発症と退行においても中心的な役割を果たしている可能性が考えられる.

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対談
血液および血液疾患を語る(第7回)
 繊維素溶解現象の解明


ゲスト  青木 延雄 先生(東京医科歯科大学)
聞き手  齋藤 英彦 先生(名古屋セントラル病院)

 対談シリーズ「血液及び血液疾患を語る」は、司会を名古屋セントラル病院・齋藤英彦先生にお願いし、お招きするゲストの先生方にご自身の研究の内容や失敗談、成功談をお伺いしながら、本誌の対象読者である若手研究者へのアドバイスを頂き、日頃の臨床・研究活動に役立てていただくことを願って企画致しました。ゲストにはこの分野の基礎を築いて来られた方々、また現在も第一線で研究を続けておられる方々をお招きしています。
 第7回はゲストに東京医科歯科大学名誉教授・青木 延雄 先生をお迎えして「繊維素溶解現象の解明」をタイトルにお話をお伺いしました。
 α2-PI(プラスミンインヒビター)の発見者であり、血栓止血学の研究者として世界的に有名な青木先生ですが、意外な事に江田島の海軍兵学校の最後の入学生として終戦を迎えられたそうです。
 戦後、改めて東大医学部に進まれ、市中病院での経験を経て、再度大学に戻られると、青木先生はTAME(tosyl-l-arginine methyl ester)を使ってプロトロンビン時間(PT)の代わりにプロトロンビンを測定するシステムを構築し、血小板とトロンビンの関係について様々な研究をされました。
 その研究が縁でウェイン州立大学のSeegers研究室に留学され第X因子の精製に成功された後、コロラド大学のvon Kaulla教授の研究室に移られ尿中の凝固促進因子について研究をされました。
 一旦、東大にお戻りになられましたが、改めてECFMG(the Educational Commission Forein Medical Garduates)の資格をお取りになり、再度コロラド大学に戻られた青木先生はいよいよ繊維素溶解現象の解明に着手され自治医科大学の教授としてご帰国後、α2-PIを発見された訳ですがその当時のお話を詳しく伺いました。
 また若い研究者へのアドバイスなども語って頂きました。
 大変興味深いお話ばかりです。是非お読み下さい。
 是非お読み下さい。


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