最新医学65巻2号 
特集 動脈硬化治療

要  旨


アプローチ
動脈硬化性疾患予防のための臨床的アプローチ

寺本民生*

* 帝京大学医学部内科 教授
要  旨
 動脈硬化性疾患は,多くの危険因子の重積で発症する.したがって,それぞれの危険因子を十分評価し,治療手順を考察する.その際に重要なことは,サロゲートマーカーに振り回されることなく,本来の目的である動脈硬化性疾患自体の予防に繋がる治療手順を構築することである.したがって,サロゲートマーカーの改善により治療中断が起こっては意味をなさないのである.これは患者とともに医療従事者が共有すべき認識である.

目次へ戻る


内科的治療とそのEBM
脳血管障害

細見直永*   松本昌泰**

* 広島大学大学院医歯薬学総合研究科病態探究医科学講座脳神経内科 講師
** 同教授

要  旨
 脳卒中は虚血性と出血性に大きく分けられ,それぞれの病態生理を理解し,患者ごとに有する危険因子に対してリスクを層別化し,治療を行うことが肝要である.新たに脳卒中治療ガイドラインが更新された.脳卒中再発予防のためには,このような治療ガイドラインや近年の臨床研究の報告を踏まえ,各症例の脳卒中の病態生理を理解し,危険因子の治療優先順位を考慮して治療すべき時代となっている.

目次へ戻る


内科的治療とそのEBM
虚血性心疾患

廣瀬邦章*   鬼柳 尚*   代田浩之**

* 順天堂大学医学部循環器内科 ** 同教授

要  旨
 冠動脈疾患における内科的動脈硬化治療には PCI と薬物治療がある.PCI に関しては,特に安定期冠動脈疾患における予後について,日本と海外で相反するエビデンスが出ており,議論の余地がある.薬物治療に関しては,二次予防として積極的脂質低下療法があり,冠動脈プラークの安定化を観察したエビデンスが相次いでいる.今後は,冠動脈プラークの安定化を目的とした具体的な血清脂質管理目標値の設定が望まれる.

目次へ戻る


内科的治療とそのEBM
下肢動脈硬化症

内村 功*

* 東京医科歯科大学内分泌・代謝内科 講師

要  旨
 末梢動脈疾患(PAD)の危険因子を考慮して禁煙を勧め,糖尿病患者に対しては適切なコントロールを行う.抗血小板薬とスタチンを中心とした脂質低下薬の使用については多くのエビデンスがあり,積極的に用いる.降圧薬は PAD に対しての有用性は乏しいが,他の動脈硬化性疾患や生命予後に対しては有用性があるので使用される.また間欠性跛行を訴える時期では内科的治療が行われるが,重症下肢虚血に対しては外科療法を含めた適応が考えられる.

目次へ戻る


内科的治療とそのEBM
動脈硬化性疾患に対する遺伝子治療


森谷純治*1  南野 徹*1*2
*1 千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学
*2 科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業さきがけ

要  旨
 近年,動脈硬化性疾患に対する新たな治療法として,遺伝子導入を用いた血管新生療法の可能性が注目されてきた.しかしながらこれらの疾患に対して,現在までに有効性が確定し実用化されているものはまだない.多くの第U相臨床試験が期待される臨床効果が得られずに終了していることがその大きな要因である.今後この分野においてさらに有効で安全な治療法を実現する余地は大きく残されており,さらなる研究成果が待たれる.

目次へ戻る


内科的治療とそのEBM
細胞治療による血管再生治療のエビデンス


舘野 馨*   横山真隆*   森谷純治*
南野 徹*   小室一成**

* 千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学 ** 同教授

要  旨
 重症下肢虚血や心筋梗塞などの重症虚血性疾患のうち,従来の方法では治療困難なケースが年々増加している.分子生物学の進歩によって血管再生の機序が明らかとなりつつあるが,近年これを応用した血管再生治療が開発され,こういった症例に対する臨床適用が始まっている.本稿では血管再生治療の中でも細胞移植療法に焦点を当て,その開発の経緯と,下肢虚血および心筋虚血を対象とした代表的な臨床研究を紹介する.

目次へ戻る


外科的治療とそのEBM
エビデンスに基づいた脳血管障害の外科治療

菱川朋人*   伊達 勲**
* 岡山大学大学院脳神経外科 ** 同教授

要  旨
 エビデンスに基づいた脳血管障害に対する外科治療の中で,中心的な疾患(内頸動脈狭窄症・閉塞症,未破裂・破裂脳動脈瘤)について概説する.再発予防,発症予防,救命と,目的は異なるがおのおのに高いレベルのエビデンスが存在する.これらが脳神経外科領域にどのように活用されているかをまとめ,今後の課題について言及する.

目次へ戻る


外科的治療とそのEBM
虚血性心疾患



木下 武*   浅井 徹**
* 滋賀医科大学心臓血管外科 ** 同教授

要  旨
 冠動脈バイパス術(CABG)は 1960 年代前半より,静脈グラフト主体のバイパスから,長期開存性,生存率に優れた内胸動脈を1本,さらには2本用いること,また人工心肺を使用しないオフポンプ法を導入することで進化した.その歴史の中で,CABG は薬物治療,経皮的冠動脈形成術とさまざまな角度で比較検証されてきたが,現時点で CABG は最も強力な二次予防効果を持ち,冠動脈病変が複雑・重症であるほど,その効果が強くはっきり現れることが証明されている.

目次へ戻る


外科的治療とそのEBM
下肢動脈硬化症

岡本宏之*
* 東京大学血管外科

要  旨
 下肢閉塞性動脈硬化症に対する外科的治療は,バイパス術および血管内治療を含む血行再建が原則で,保存的治療で症状の改善が見られない間欠性跛行症例や,安静時痛や壊疽を伴う重症虚血肢に対して行われる.最適な血行再建術の選択は,短期的ならびに長期的な改善の程度(開存成績)とその術式のリスクに基づいて行われるべきで,原則として国際的ガイドライン(TASCU)に従って判断されている.

目次へ戻る


外科的治療とそのEBM
大動脈瘤

榊原 謙*
* 筑波大学人間総合科学研究科疾患制御医学専攻心臓血管外科 教授

要  旨
 大動脈瘤に対する手術治療成績は飛躍的に向上してきているが,人口の高齢化や動脈硬化の増加によってリスクの高い対象患者にまで手術適応が広がる傾向にあり,その適応決定に当たっては慎重を期すことが望まれている.真性大動脈瘤と解離性大動脈瘤に対する手術適応について,大動脈瘤の存在部位とその大きさならびに病型によって選択すべき術式を含めて,エビデンスに基づいて概説する.

目次へ戻る


動脈硬化危険因子の治療とそのEBM
脂質異常症

石橋 俊*
* 自治医科大学内科学講座内分泌代謝部門 教授

要  旨
 脂質異常症に対して脂質低下薬を用いた大規模な介入試験の結果が数多く報告されてきた.スタチンの有効性と安全性に関して,レベルの高いエビデンスが多数存在する.冠動脈疾患イベントのみならず,脳梗塞や総死亡も抑制する点に特徴がある.その他の薬剤については,報告例,症例数,エビデンスレベルが限られている.エゼチミブのような新しい薬剤については,今後のアウトカム試験の結果が期待される.

目次へ戻る


動脈硬化危険因子の治療とそのEBM
糖 尿 病

鈴木浩明*
* 筑波大学大学院人間総合科学研究科内分泌代謝・糖尿病内科 准教授

要  旨
 糖尿病患者の心血管疾患の頻度は,1型,2型ともに非糖尿病者の2〜4倍に上る.糖尿病の心血管疾患予防のためには血糖コントロールだけでなく,禁煙や脂質異常症,高血圧といった糖尿病以外の心血管疾患危険因子の管理も一緒に行うことが重要である.また,これらの管理を早期から厳格に行うことにより,心血管疾患と細小血管症の発症・進展を長期間にわたって抑制できる.

目次へ戻る


動脈硬化危険因子の治療とそのEBM
動脈硬化と高血圧

鈴木洋通*
* 埼玉医科大学腎臓内科 教授

要  旨
 動脈硬化は,高血圧という物理的力と脂質異常症という化学的変化によってもたらされる.今回は高血圧関連の大規模臨床試験の成績から,高血圧治療が動脈硬化性疾患の予防にどう結びつくかを検討した.その結果,少なくとも降圧治療は有効であることが判明している.さらにどのような降圧薬かに関しては,試験の組み方や方法により異なる結果となる可能性がある.また,従来の血圧測定で良いのか,中心血圧に今後シフトしていくのかが注目される.

目次へ戻る


動脈硬化危険因子の治療とそのEBM
抗血栓療法

赫 洋美*   内山真一郎**
* 東京女子医科大学神経内科 ** 同教授

要  旨
 アテローム血栓症(atherothrombosis)は,大血管の粥状硬化に起因する脳梗塞,心筋梗塞,閉塞性動脈硬化症を包括する病態である.粥腫斑の破綻(plaque rupture)を契機に発症し,血小板依存性疾患病態と理解されており,再発予防には抗血小板療法の適応がある.しかし,動脈硬化発症のプロセスを考慮すると,アテローム血栓症発症予防には抗血小板作用のみならず抗動脈硬化作用も重要である.抗血栓療法施行の際は,各抗血小板薬の特性を十分に理解し,薬剤を選択することが必要である.

目次へ戻る


対談
血液および血液疾患を語る(第11回)
 がん免疫療法の現状と将来


ゲスト  珠玖  洋  先生(三重大学)
聞き手  齋藤 英彦 先生(名古屋セントラル病院)

 対談シリーズ「血液及び血液疾患を語る」は、司会を名古屋セントラル病院・齋藤英彦先生にお願いし、お招きするゲストの先生方にご自身の研究の内容や失敗談、成功談をお伺いしながら、本誌の対象読者である若手研究者へのアドバイスを頂き、日頃の臨床・研究活動に役立てていただくことを願って企画致しました。ゲストにはこの分野の基礎を築いて来られた方々、また現在も第一線で研究を続けておられる方々をお招きしています。
 第11回はゲストに三重大学教授・珠玖 洋 先生をお迎えして「がん免疫療法の現状と将来」をタイトルにお話をお伺いしました。
 腫瘍免疫の第一人者である珠玖先生が血液学を志されたのは直接病気の細胞そのものを観察できると言う理由と血液の病気には神秘性があると考えられたからでした。
 名古屋大学を卒業後、病院勤務を経てニューヨークのスローン・ケタリング記念がん研究所に留学された際にはキラーT細胞とヘルパーT細胞を表面抗原Ly-B(Ly-2),Ly-C(Ly-3)の有無で区別できることをマウスのポリクローナル抗体を使って証明されました(Ly-B,Cとは現在のCD8の事です)。更にメラノーマの患者の血清中にがん特異的な抗体が含まれている事を突き止められました。
 順調にお仕事を進められていた珠玖先生ですが、1982年に帰国され、研究を進められて行くうちにがん関連分子については質的な違い(bcr-ablの様な特徴的なタンパク質の出現)は限られたものでり、量的な差とその集積が引き金になっている事が多いことに気付かれました。
 そして戦略の見直しを迫られる中で、比較的がんに限局した抗原であるHER2/neuに注目され、がんワクチンを開発するお仕事を進められました。 
 更に現在のがんワクチンの開発状況やその他のがん免疫療法についても詳しくごお話頂きました。
 また若手の研究者に向けてのメッセージも語って頂きました。
 いずれも大変興味深いお話ばかりです。是非お読み下さい。


目次へ戻る