最新医学65巻5号 
特集 膠原病 -病態への新たなアプローチと治療展開-

要  旨


アプローチ
膠原病発症にかかわる免疫細胞と免疫分子 ―標的と制御へのアプローチ―

住田 孝之 *

*筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻臨床免疫学 教授

要  旨
 膠原病の発症機序はいまだ明らかにはされていないが,自己抗原に対する自己反応性T細胞や自己抗体が存在することから,自己免疫応答が重要な役割を担っていると考えられる.本稿では,膠原病発症にかかわる免疫細胞,免疫分子をターゲットとした分子標的治療の現状と将来展望を概説した.

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膠原病の分子標的と制御へのアプローチ
関節リウマチの分子標的と制御

松本 功*

*筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学臨床免疫学分野 准教授

要  旨
 関節リウマチ(RA)に対する薬物治療は,TNFα,IL-6 などの炎症性サイトカインの作用を抑止する分子標的治療薬の登場によって飛躍的に進歩した.昨今の RA 治療においては,早期診断,治療はもちろん,活動性の強い患者および骨破壊の早期抑止目的に対しても,より積極的に強力な治療を考える方向にある.この総論では,RA での分子標的,製剤とおのおのの制御の現状について総論を述べる.

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膠原病の分子標的と制御へのアプローチ
全身性エリテマトーデスの分子標的と制御

高崎 芳成*

* 順天堂大学医学部膠原病内科 教授

要  旨
 全身性エリテマトーデス(SLE)に対し,ステロイドに加え,種々の免疫抑制薬による治療が積極的に行われるようになり,その予後は著しく改善した.しかし,副作用やそれらの治療に抵抗する難治性病態の存在などの問題を認め,より特異性の高い効果的な治療法の開発が求められている.そのような中,SLE の病態形成に重要な役割を有する分子が次々に同定され,それを標的とした新たな治療法の開発が進められている.

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膠原病の分子標的と制御へのアプローチ
シェーグレン症候群の分子標的と制御

住田 孝之*

* 筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻臨床免疫学 教授

要  旨
 シェーグレン症候群は,その発症機序として自己免疫応答が関与した自己免疫性唾液腺炎と考えられている.T細胞およびB細胞が認識する自己抗原として,ムスカリン作動性アセチルコリン受容体3(M3R)が1つの候補として報告されてきた.本稿においては,M3R に対する自己免疫応答および M3R 分子を標的とした抗原特異的制御戦略へのアプローチについて概説した.

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膠原病の分子標的と制御へのアプローチ
全身性強皮症における分子標的療法


藤本 学*
* 金沢大学大学院医学系研究科皮膚科学 准教授

要  旨
 全身性強皮症は線維化と血管障害を主徴とする全身性疾患であり,自己免疫の関与が考えられている.本症に対してはステロイドや免疫抑制薬を用いた治療やおのおのの症状への対症療法が行われているが,発症機序に特異的な分子経路を標的として高い効果を上げる治療法の開発が待望されている.本症に対する分子標的療法の現況として,TGFβ阻害薬,チロシンキナーゼ阻害薬,主として自己免疫機序を標的にしたB細胞標的療法について概説した.

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膠原病の分子標的と制御へのアプローチ
多発性筋炎・皮膚筋炎の分子標的と制御


上阪 等*
* 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科膠原病・リウマチ内科 准教授

要  旨
 組織学的検討から,多発性筋炎(PM)と皮膚筋炎(DM)はそれぞれ CD8,CD4T細胞が主役を演じ,ことに DM は液性免疫による血管障害が原因とされてきた.しかし,現代免疫学や臨床所見の多くはこの歴史的見解を必ずしも支持しない.かかる基本研究の遅れを克服するために,筆者らはCタンパク質誘導性筋炎を新たな PM モデルマウスとして開発した.このモデルを用いて,IL-6 が治療のために新たな制御分子候補であることを見いだした.

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膠原病の分子標的と制御へのアプローチ
混合性結合組織病における肺高血圧症治療とその標的分子

藤井 隆夫*
* 京都大学大学院医学研究科内科学講座臨床免疫学 准教授

要  旨
 混合性結合組織病(MCTD)の生命予後を規定する最も大切な病態は,肺動脈性肺高血圧症(PAH)である.近年プロスタサイクリン徐放剤,エンドセリン受容体拮抗薬,ホスホジエステラーゼ−5阻害薬が使用できるようになり,MCTDミPAH に対して積極的な治療が行えるようになった.さらに最近,PAH 患者における PDGF 受容体阻害薬や Rho キナーゼ阻害薬の有効性が報告され,PAH の標的分子治療として注目されている.

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膠原病の分子標的と制御へのアプローチ
血管炎症候群の分子標的と制御



尾崎 承一*
* 聖マリアンナ医科大学リウマチ・膠原病・アレルギー内科 教授

要  旨
 血管炎症候群の病態や治療の研究は抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎において最も進んでおり,ANCA の産生から ANCA による好中球の活性化に至る過程の関連分子が明らかにされ,また病態関連遺伝子やペプチドも網羅的に解析されている.しかし,現時点ではそのような候補分子を標的とした血管炎特異的な治療法はない.ステロイドと免疫抑制薬の併用療法からなる標準的治療法に抵抗性の症例に対して,生物学的製剤などの新規代替療法が試みられている.


膠原病の分子標的と制御へのアプローチ
ベーチェット病の分子標的と制御

廣畑 俊成*
* 北里大学医学部膠原病・感染内科学 教授

要  旨
 ベーチェット病の基本病態は,T細胞の過剰反応性に基づくサイトカインの産生による好中球の機能(活性酸素産生能・遊走能)の亢進である.近年,新しい治療として難治性眼病変に対する抗 TNFα抗体(インフリキシマブ)の有用性が証明された.また,特に難治性眼病変では IL-17 の病態への関与も示唆される.難治性の慢性進行型神経ベーチェット病では髄液の IL-6 が持続的に上昇するが,これはインフリキシマブで制御できる.

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新たな分子標的治療と新展開
TNF阻害製剤

亀田 秀人*
* 慶應義塾大学医学部内科学教室リウマチ内科 講師

要  旨
 TNF 阻害生物学的製剤は,関節リウマチの治療にパラダイムシフトをもたらした.従来の製剤とは異なり,多くの患者において関節破壊をほぼ完全に阻止することで,専門外来からの高度機能障害患者の新生は皆無になっているようである.既存製剤の至適投与法(適応,開始時期,投与量の決定など)の検討と適応拡大,そしてさらに有用性の高い製剤の開発が今後の課題である.

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新たな分子標的治療と新展開
IL-6 ブロッカー

西本 憲弘*
* 和歌山県立医科大学免疫制御学講座 教授

要  旨
 IL-6 は多彩な作用を持つサイトカインであり,関節リウマチ(RA)をはじめ,さまざまなリウマチ性疾患の病態に関与している.トシリズマブは IL-6 の作用を特異的に阻害することから,IL-6 の過剰産生が病態形成にかかわる疾患の治療薬として開発された.RA に加えてキャッスルマン病と若年性特発性関節炎に承認されているが,それ以外にも IL-6 のかかわる疾患は多い.本稿では,RA 以外の疾患に対する IL-6 阻害治療の可能性について解説したい.

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新たな分子標的治療と新展開
JAK-3 阻害薬

川合 眞一*
* 東邦大学医療センター大森病院リウマチ膠原病センター 教授

要  旨
 膠原病治療では生物学的製剤などの有用性が注目されているが,問題点も少なくない.JAK はサイトカイン受容体に結合したキナーゼで,細胞内シグナル伝達には必須の酵素である.中でも JAK-3 を特異的に阻害する経口剤が新規免疫抑制薬として開発され,関節リウマチにおける著明な抗リウマチ効果が示されつつある.今後の臨床試験によるさらなる有用性の証明が期待される.

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新たな分子標的治療と新展開
T細胞標的療法

渋谷 美穂子*   山本 一彦**
* 東京大学病院アレルギーリウマチ内科 ** 同教授

要  旨
 アバタセプトは,B7 分子と結合することによって共刺激を抑制する CTLA4 と,ヒト免疫グロブリンの Fc 部分との融合タンパク質(CTLA4-Ig)である.アバタセプトによるT細胞を標的とした RA 治療法は,さまざまな臨床試験において RA 患者への治療効果や安全性が示された.RA におけるアバタセプトの有効性は,RA の病態におけるT細胞の重要性を示唆しており,今後さらにT細胞を標的とした RA 治療法の開発が望まれる.

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新たな分子標的治療と新展開
B細胞標的療法

田中 良哉*
* 産業医科大学医学部第一内科学講座 教授

要  旨
 関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病の治療は,ステロイドや免疫抑制薬のような副作用の多い非特異的な治療に終始してきた.しかし,病態形成過程において中心的な役割を担う分子を標的とした生物学的製剤の台頭に伴い,治療が一変した.B細胞標的療法は幾つかの膠原病疾患に対して高い臨床効果を示したが,海外での SLE に対するリツキシマブの治験の失敗,重篤な日和見感染症の併発などの問題点も浮き彫りになった.SLE に対する抗 CD20 抗体療法を中心に,膠原病治療の新展開を概説する.

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対談
血液および血液疾患を語る(第14回)
 悪性リンパ腫はどこまで治るか?


ゲスト  堀田 智彦 先生(名古屋医療センター)
聞き手  齋藤 英彦 先生(名古屋セントラル病院)

 対談シリーズ「血液及び血液疾患を語る」は、司会を名古屋セントラル病院・齋藤英彦先生にお願いし、お招きするゲストの先生方にご自身の研究の内容や失敗談、成功談をお伺いしながら、本誌の対象読者である若手研究者へのアドバイスを頂き、日頃の臨床・研究活動に役立てていただくことを願って企画致しました。ゲストにはこの分野の基礎を築いて来られた方々、また現在も第一線で研究を続けておられる方々をお招きしています。
 第14回はゲストに名古屋医療センター院長・堀田 知光 先生をお迎えして「悪性リンパ腫はどこまで治るか?」をタイトルにお話をお伺いしました。
 大学を卒業後、研修先の病院で非常に重篤な再生不良性貧血の患者さんを担当されたことが血液分野に進むきっかけだったと語る堀田先生は研修を終えると造血障害に強い関心を持たれ、当時まだ概念論が中心であった血液系の幹細胞の研究に不退転の決意で進まれました。
 研究費も潤沢ではなく何もないところからやらなければならない環境の中で幹細胞の研究や再生不良性貧血の重症度の分類などで着々と成果を挙げられた堀田先生は、1980年代半ばにはこれまでの造血障害に加えてリンパ腫にも研究対象を広げられ、JCOG(Japan Clinical Oncology Group)の立ち上げ時には主要メンバーとしてエビデンス作成に貢献されました。
 まだまだ不明な点も多いリンパ腫ですが堀田先生に診断の難しさから治療の現状などについてお話頂きました。
 またJCOGにおける研究者側とデータセンターとのギャップの原因などについても詳しくお伺いしています。
 いずれも大変興味深いお話ばかりです。是非お読み下さい。


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