最新医学65巻6月増刊号 
乳癌


要  旨


疫学・予防
乳癌疫学の最近の動向

溝田 友里*   山本 精一郎**

*国立がん研究センターがん対策情報センター **同室長
要  旨
 我が国における乳癌の動向は,女性乳癌死亡者数が 11,797 人,年齢調整死亡率 11.9 人(2008 年)であり,女性乳癌罹患数の推計は 50,549 人,年齢調整罹患率は 62.0 人(2004 年)である.女性のがんでは,年齢調整死亡率が2位,年齢調整罹患率では1位であり,いまだ一貫した増加傾向にある.乳癌リスクファクターとして,乳癌家族歴や家族性乳癌遺伝子1,2(BRCA1,BRCA2)などの遺伝的素因,初経や閉経に関する内分泌環境因子,出産や授乳など社会環境と共に,予防が可能な生活環境要因として,肥満や身体活動,アルコール摂取などが明らかになっている.乳癌の増加に早急に対応するために,まずは利用可能なエビデンスの中から,予防行動につなげていくことが重要である.

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疫学・予防
乳癌の化学予防

村上  茂
広島大学病院乳腺外科 講師

要  旨
 タモキシフェンとラロキシフェンの予防投与は,臨床試験において浸潤性乳管癌の発生が減少することが認められた.米国では,乳癌高リスクの女性に対する予防投与として,タモキシフェンとラロキシフェンが米国食品医薬品局(FDA)より認可されている.一方予防投与では,薬剤による副作用も認められる.予防投与を実施する際には,個々の女性での乳癌リスクを正確に評価し,薬剤投与のメリット,デメリットを十分説明し,同意を得ることが重要な課題である.

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Intrinsic subtype
乳癌の intrinsic subtype と治療感受性

徳永えり子*1*2 秋吉清百合*1  山下 奈真*1    岡田 敏子*1  前原 喜彦**1
*1九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科 **1同教授
*2九州大学病院きらめきプロジェクトキャリア支援センター 特任講師

要  旨
 網羅的遺伝子発現解析により,乳癌が多様性に富んだ雑多な疾患であることが明らかになってきた.2000 年代初めに,散発性乳癌が Luminal A,Luminal B,HER2−enriched,Basal−like の少なくとも4つのサブタイプ“intrinsic subtype”に亜分類されることが報告された.乳癌はこれらのサブタイプにより予後や治療感受性が大きく異なり,乳癌の診療においてはこの“intrinsic subtype”を念頭に置くことが不可欠である.

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Intrinsic subtype
遺伝子発現パターンからみた乳癌分類:乳癌の分子病理学的分類

笹野 公伸*1*2
*1東北大学大学院医学系研究科医科学専攻病理病態学講座病理診断学分野 教授
*2東北大学附属病院病理部 教授

要  旨
 ヒト乳癌は非常に多彩であることが知られており,基礎,臨床双方の面から病型の分類が何よりも重要となる.従来の病理形態所見に基づく分類は極めて重要ではあるが,患者の予後予測,治療に対する反応性の予知などの点で限界があった.そこで,がん細胞の遺伝子発現プロファイルを網羅的に検討することで乳癌を分類する試みが報告されている.この分子病理学的分類では乳癌を,@Luminal A 型,ALuminal B 型,BHER2 型,CBasal−like 型,DUnclassified/normal 型の5つのタイプに分類する.本分類はすべての遺伝子発現を検討して得られた分類ではあるが,実際のところエストロゲン受容体(ER),プロゲステロン受容体(PgR),ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)の3つをしっかりと検討することでほとんどの症例で大まかな分類は可能である.

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発がん・増殖
乳癌に関するゲノムネットワーク解析


渡邊  学*   菅野 純夫**
*東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻ゲノム制御医科学分野 **同教授

要  旨
 ゲノムネットワークとは,ある生物種のゲノムおよびゲノムにコードされているさまざまな遺伝子情報が織り成す生体分子ネットワークの総体と定義されている.そのネットワークを解明するために,セントラルドグマの各階層を網羅的に調べるオミックス解析,つまりゲノム,トランスクリプトーム,プロテオーム解析が行われ,乳癌を理解する新たな知見が見いだされるとともに,診断・術前化学療法効果予測などに臨床応用されている.

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発がん・増殖
BRCA 遺伝子機能とその機能欠損による乳癌発生機序


三木 義男
東京医科歯科大学難治疾患研究所分子遺伝分野 教授

要  旨
 遺伝性乳癌・卵巣癌の原因遺伝子 BRCA1,BRCA2 は,相同組換え修復機能を有するがん抑制遺伝子である.その機能不全は染色体異常や DNA 損傷に対する高感受性などのゲノムの不安定化を引き起し,乳癌発生の原因となる.また,乳癌の Basal−like サブグループと BRCA1 との関係が明らかにされるなど,BRCA 遺伝子の機能解明に伴って,新たな乳癌発症の分子機構が明らかになりつつある.

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発がん・増殖
発がん防御に重要な相同組換えの分子機構

齋藤 健吾*   香川  亘*  胡 桃 坂 仁 志**
*早稲田大学理工学術院先進理工学部・研究科 **同教授

要  旨
 遺伝情報を担うゲノム DNA は,環境要因や細胞内要因によって日常的に損傷を受けている.中でも,二重鎖切断は重篤な損傷であり,相同組換えを介した経路によって正確に修復されることが近年明らかになってきた.相同組換えは,減数分裂期での遺伝的組換えにおいても主要な役割を果たしている.そこで本稿では,相同組換えの分子機構を概説し,中心酵素である RAD51/DMC1 の反応機構と発がんや不妊症などとの関連について議論する.

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発がん・増殖
乳癌幹細胞特性とEpithelial−Mesenchymal Transition

吉川 清次

ダナファーバー癌研究所・ハーバードメディカルスクール

要  旨
 乳癌は不均一な細胞集団から成っている.中でも CD44high CD24low/−,細胞は造腫瘍性が高く,乳癌幹細胞の1つの指標として用いられてきた.近年この表現型は間葉系乳癌に特徴的であることが知られていたが,この表現型が epithelial−mesenchymal transition(EMT)によって誘導され,正常乳腺・乳癌両方においてその幹細胞分画に EMT の特徴があることが明らかになった.さらに,特定の microRNA(miR)が EMT にかかわる転写因子と幹細胞において機能する遺伝子の両方を制御していることが判明し,幹細胞と EMT の密接な関係が一層明らかになった.

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発がん・増殖
乳癌の薬剤抵抗性や転移能を制御する新規分子の解明

落谷 孝広
国立がん研究センター研究所がん転移研究室 室長

要  旨
 乳癌の悪性度を支配する新しい分子や non−coding RNA の働きが明らかになりつつある.これらの因子は主に乳癌の上皮間葉転換(EMT)から浸潤転移,薬剤耐性獲得への各過程に密接に関与し,がんの micromanagement を通して,がんの治療抵抗性に寄与する.本論では特に ZEB1,14−3−3 zeta,ribophorinU(RPN2)や microRNA(miRNA)の新規分子の役割を概観するとともにがん幹細胞との関係を考察する.

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ホルモン感受性,非感受性
エストロゲン受容体の転写活性調節

林  慎一
東北大学大学院医学系研究科分子機能解析学分野 教授

要  旨
 乳癌のホルモン療法の標的であるエストロゲン受容体(ER)は転写因子であり,その転写活性に関して理解を深めることが,乳癌の診断,治療の進歩に大きく貢献する.その転写活性はリガンドであるエストロゲンだけでなく,他のいろいろな要因によって規定されている.そのことも含め,これまでの研究の現状と乳癌の臨床との接点,臨床検体を用いた転写活性の解析の試み,最近のゲノムレベルの研究の展開などを紹介する.

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ホルモン感受性,非感受性
エストロゲン代謝酵素群の役割

本間 尚子*1  原田 信広*2
*1東京都健康長寿医療センター研究所・老年病理学研究チーム
*2藤田保健衛生大学医学部・生化学第一講座

要  旨
 乳癌の発生・進展にはエストロゲンが重要だが,卵巣機能が低下した閉経後女性にも乳癌は多く発症する.閉経後のエストロゲン動態には,末梢組織局所でエストロゲンを合成・代謝するエストロゲン代謝酵素群の働きが重要である.本稿では乳癌で特に重要な,アロマターゼ,ステロイドサルファターゼ(STS),エストロンスルフォトランスフェラーゼ(EST),17β−水酸化ステロイド脱水素酵素1型および2型(17β−HSD−1,2)について概説する.

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ホルモン感受性,非感受性
アロマターゼ阻害と抗腫瘍効果

山本  豊*   岩瀬 弘敬**
*熊本大学大学院生命科学研究部乳腺・内分泌外科学分野 **同教授

要  旨
 アロマターゼ阻害薬(AI)は乳癌組織におけるエストロゲン産生過程の key enzyme であるアロマターゼの作用を抑制することにより,局所でのエストロゲン産生を低下させる.その結果,ホルモン依存性乳癌の増殖抑制を来し,抗腫瘍効果が得られると考えられる.エビデンスからは,閉経後ホルモン受容体陽性乳癌のどのセッティングにおいても,AI は第1選択薬である.

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ホルモン感受性,非感受性
ホルモン療法の効果予測

佐治 重衡*   佐々木 康綱**
*埼玉医科大学国際医療センター腫瘍内科准教授 **同教授

要  旨
 ホルモン療法の効果は,腫瘍縮小効果と予後改善効果の2つの側面があり,これらは必ずしも一致した結果を持たない.古典的なエストロゲンレセプター(ER),プロゲステロンレセプター(PgR)の発現量評価の重要性に加えて,術前ホルモン療法による Ki−67 の変化や予後予測ツールである Oncotype DXTM などを利用した,新たなホルモン療法による予後改善効果予測法が開発されている.

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ホルモン感受性,非感受性
乳癌培養細胞を用いた前臨床研究

紅林 淳一
川崎医科大学乳腺甲状腺外科

要  旨
 乳癌細胞を in vitro において長期にわたり培養する技術が開発され,広く研究に利用されている.免疫不全動物に培養細胞を移植する in vivo 実験モデルも乳癌患者により近いモデルとして利用されている.乳癌培養細胞株 MCF−7 は,内分泌療法薬の前臨床研究の実験モデルとして中心的な役割を果たしてきた.ホルモン感受性・非感受性の研究に寄与してきた乳癌培養細胞株の樹立,研究方法,最近のトピックスを紹介する.

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臨床生物学的特性
乳癌のリンパ節転移

佐藤 知美*   神野 浩光**  北川 雄光***
*慶應義塾大学医学部外科 **同専任講師 ***同教授

要  旨
 乳癌において所属リンパ節は最も転移リスクの高い部位である.さらに,腋窩リンパ節転移の有無が予後と強く相関することより,腋窩リンパ節転移の予後因子としての役割は大きい.また,近年ではセンチネルリンパ節生検が行われるようになり,腋窩リンパ節に対する手術は縮小化している.
 本稿では,乳癌リンパ節転移の頻度およびリンパ節転移が示唆する予後,センチネルリンパ節生検の実際や今後の課題などに関して概説する.

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臨床生物学的特性
乳癌の骨髄転移

三森 功士*1  甲斐 裕一郎*2  上尾 裕昭**2 森  正樹*3
*1九州大学病院別府先進医療センター外科 講師
*2うえお乳腺外科クリニック **2同院長 *3大阪大学医学部消化器外科 教授

要  旨
 乳癌は高頻度に骨転移を来す疾患であり,骨転移は遠隔転移の中で最も頻度が高く臨床的に重要な病態である.一方,乳癌細胞が骨または骨髄に存在するものの直ちに転移巣を形成せず,晩発性に再発を来すこともある.
 一般的な骨転移機構について:骨は破骨細胞と骨芽細胞との骨改変を繰り返している.破骨細胞は骨を吸収するが,骨転移を成立させる大きな要素と考えられている.すなわち,骨転移においてがん細胞が破骨細胞を活性化させることにより自らの増殖空間を確保している.
 骨または骨髄内に潜在する乳癌細胞による晩発性転移再発機構:一般に,造血系幹細胞は骨芽細胞ニッチとの複合体により細胞周期を静止期に保つ.がん幹細胞も骨芽細胞ニッチとの複合体を形成することにより転移に寄与するのではないかと考えられるようになってきた.骨膜内における骨芽細胞をニッチとする造血幹細胞の細胞制御機構について,乳癌の晩発性転移再発の1つのモデルとして紹介する.

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臨床生物学的特性
原発性乳癌の予後因子と効果予測因子

増田 慎三   山村  順   水谷 麻紀子
国立病院機構大阪医療センター外科・乳腺外科

要  旨
 乳癌診療において,個々の患者の再発リスクを予測し(予後因子),薬物療法などの治療の際はその感受性を予測し(効果予測因子),リスクに応じて,より有効な治療を選択することが望まれる.腋窩リンパ節転移の有無は最も重要な予後因子である.エストロゲン受容体(ER)やヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)発現は予後因子であると同時に,おのおの target therapy としての内分泌療法,抗 HER2 療法の効果予測因子である.多数遺伝子の発現プロファイリングの技術が進み,より精密なツールの開発が進んでいる.

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臨床生物学的特性
乳癌における circulating tumor cell

伊藤 良則
癌研究会有明病院乳腺センター・化学療法科

要  旨
 転移乳癌において末梢血液中の末梢循環がん細胞(circulating tumor cell:CTC)の存在は予後不良の指標である.CTC の変化は治療効果予測に有用である.CTC は原発巣とは異なる表現型を有する.すなわち,エストロゲン受容体(ER),プロゲステロン受容体(PgR)の発現頻度は低く,ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)および triple negative の頻度は高い.CTC は間葉系細胞または幹細胞の性質を持つ.CTC および骨髄の disseminated tumor cell(DTC)はがん前駆細胞として存在し,遠隔転移を引き起す.CTC/DTC の生物学的特性を理解し,これらの微小がん細胞を制御することは新たな治療戦略となる.

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臨床生物学的特性
乳癌の circulating endothelial cell

温泉川 真 由*1  小泉 史明**1  田村 研治*2
*1国立がん研究センター中央病院計画治療病棟支援施設 **1同室長
*2国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科医長

要  旨
 血管新生は悪性腫瘍の特異的性質であり,抗腫瘍薬の標的としても重要視され,さまざまな分子標的薬が開発されている.乳癌に対しても血管新生阻害薬の効果が注目されている.しかし,血管新生の状況や血管新生阻害薬の治療効果を反映するバイオマーカーは少ない.その中で末梢循環内皮細胞(circulating endothelial cell:CEC)は血管新生や血管新生阻害薬の効果予測のサロゲートマーカーとしての有用性が示唆されている.CEC についての総論と共に,乳癌治療における CEC の現況について述べる.

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治療戦略
トリプルネガティブ乳癌の治療戦略

小野 麻紀子
国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科

要  旨
 トリプルネガティブ乳癌(TNBC)とは,エストロゲン受容体(ER),プロゲステロン受容体(PgR),ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)すべてが陰性の乳癌で,全乳癌の 15〜20% を占める.治療のターゲットとなる分子標的を持たず,薬物療法は殺細胞性薬剤が主体であるうえに,増殖能力が高く,予後は不良である.しかし,近年では,新たに開発された PARP 阻害薬,血管新生阻害薬や,プラチナ系薬剤,ixabepilone,上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害薬などによる治療効果が期待されている.

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治療戦略
新規抗HER2療法

藤田 崇史*   岩田 広治**
*愛知県がんセンター中央病院乳腺科医長 **同部長

要  旨
 トラスツズマブが導入されたことにより,これまで予後不良と考えられていたヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)陽性乳癌の予後は大きく改善し,さらにカペシタビンとの併用でラパチニブも使用可能となり,治療の選択の幅が広がっている.しかし,トラスツズマブに抵抗性を示す場合もあり,pertuzumab,neratunib,trastuzumab−DM1 などの新規抗 HER2 薬の開発および分子標的薬同士あるいは分子標的薬とホルモン剤の併用療法の導入が待たれる.

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治療戦略
TopoUα指数による化学療法効果予測

谷山 清己*1*2 森井 奈央*3*4 倉岡 和矢*2 齋藤 彰久*2
宮本 和明*3  加藤 大典*3
*1国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター臨床研究部部長
*2同病理診断科 *3同乳腺外科 *4同外科


要  旨
 DNA トポイソメラーゼUα(TopoUα)遺伝子のコピー数やタンパク発現量が,TopoU阻害薬の効果予測因子や予後因子となる可能性が指摘されている.我々の検討では,組織標本上での免疫組織化学的 TopoUα指数≧25% と評価された乳癌は,同指数<10% と評価された乳癌より有意にアントラサイクリン系抗がん剤による腫瘍縮小率が上昇した.また,TopoUα遺伝子欠失例の TopoUα 指数は,ほかのグループと差がみられなかった.以上のことより,TopoUα指数は,アントラサイクリン系抗がん剤の効果予測因子として有用である.

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治療戦略
乳癌の化学療法感受性

中山 貴寛*   野口 眞三郎**
*大阪大学大学院医学系研究科乳腺・内分泌外科 **同教授

要  旨
 これまでの早期乳癌治療は,臨床病理学的因子をもとに再発リスクを予測し,治療戦略を立てていた.しかし,最近の研究により,乳癌が異なる生物学的特性を持つ幾つかの疾患単位の集まりであり,その特性により薬剤感受性や悪性度が異なることが明らかになってきた.今後,より高い治療効果を求め,治療に伴う副作用を最小限にとどめる試みが求められる.遺伝子発現プロファイリングからみた化学療法感受性予測と,それに基づく個別化治療についてまとめてみた.

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治療戦略
炎症性乳癌の特性と治療

山内 英子
聖路加国際病院乳腺外科 医長

要  旨
 近年の分子標的治療の開発の恩恵を炎症性乳癌患者も受けていることは事実である.Cell proliferation を標的とした分子生物学的考察は最も行われおり,炎症性乳癌の分野でも期待できる.HER2 および EGFR を標的としたトラスツズマブ,ラパチニブの炎症性乳癌における効果は認められており,また angiogenesis を標的とした治療にも可能性が認められる.WISP3,RhoC GTPase,E−cadherin,NF−κB,CXCR4 などさまざまな分子生物学的因子が標的治療の候補として研究1),その臨床効果が期待されるところであるが,同時にそのような研究のために炎症性乳癌の患者の組織を,そのまれな症例数の中から確保することが重要である.

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治療戦略
乳癌における疼痛治療の基本

橋爪 隆弘
市立秋田総合病院外科 医長

要  旨
 進行再発乳癌の治療方針は,延命,症状緩和,QOL の維持である.がん性疼痛治療を適切に行うことと,疼痛治療の基本的な知識は,乳癌にかかわる医療者全員に求められている.がん性疼痛は,まずその原因を診断し治療することと,世界保健機関(WHO)の原則に従いながら疼痛治療を行う.特に,オピオイド鎮痛薬を処方する際は,副作用対策を適切に行う必要がある.骨転移における疼痛治療は,安静時の疼痛緩和と体動時刺激の解消がポイントである.

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