最新医学66巻4号 
特集 加齢に伴う内分泌疾患


要  旨


座談会
アンチエイジングと内分泌代謝

 和歌山県立医科大学  赤水 尚史
 
大阪大学         下村 伊一郎
 
虎の門病院        竹内 靖博 
 群馬大学         森  昌朋 (司会)

 座談会の内容
 ・糖尿病・肥満
 ・間脳下垂体・甲状腺系
 ・骨代謝  など 

竹内先生    森先生    赤水先生   下村先生

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加齢がインスリン分泌に与える影響

太田康晴*   谷澤幸生**
* 山口大学大学院医学系研究科応用医工学病態制御内科学分野(第三内科)
** 同教授

要  旨
 加齢に伴い,耐糖能は低下し糖尿病罹患率は増加する.高齢者では食後高血糖を来しやすいという特徴から,加齢に伴う耐糖能低下の機序として,インスリン分泌障害とインスリン感受性の低下の両者が考えられている.加齢に伴うインスリン分泌障害の機序においては,ミトコンドリアの変化,酸化ストレスや小胞体ストレスの増大などが関与している可能性が高いものの,膵β細胞での直接的な証明はなされていないのが現状である.

キーワード
加齢、インスリン分泌障害、ミトコンドリア、酸化ストレス、小胞体ストレス

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加齢とインスリン抵抗性

石橋 俊*
* 自治医科大学内科学講座内分泌代謝学部門 教授

要  旨
 加齢とともに増加する耐糖能異常の一因として,インスリン抵抗性の増加が挙げられる.加齢が肝臓や骨格筋のインスリン感受性を障害するのではなく,加齢に伴う肥満,運動不足,エネルギー消費の減少などがインスリン抵抗性を助長すると考えられている.したがって,これらの増悪因子を予防する食事・運動療法が加齢に伴うインスリン抵抗性の改善にも有効である.

キーワード
加齢、インスリン抵抗性、肥満、脂肪酸

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加齢と脂質

高橋昭光*
* 筑波大学大学院人間総合科学研究科内分泌代謝・糖尿病内科 講師

要  旨
 高齢化社会を迎えた我が国において,加齢がもたらす脂質異常症および動脈硬化性疾患リスクへの影響をコントロールすることは重要である.また,女性では閉経後に LDL コレステロールが上昇することが知られており,平均寿命は女性のほうが長いことからも,高齢女性に対する対応も考慮しておかなくてはならない.現在,スタチンによる LDL コレステロール低下療法は男女の早期高齢者においての有用性が証明されている.

キーワード
高齢者、動脈硬化性疾患リスク、LDLコレステロール低下療法、閉経後女性

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加齢と肥満


岩倉 浩*1 細田公則***1*2*3 有安宏之*1 海老原 健**1
赤水尚史***1 中尾一和***1*3

*1 京都大学医学部附属病院探索医療センター **1 同准教授 ***1 同教授
*2 京都大学医学部人間健康学科 教授
*3 京都大学大学院医学研究科内分泌代謝内科 教授

要  旨
 加齢に伴い骨格筋量は減少,脂肪量,特に内臓脂肪量は増加し,中高年になると肥満者の割合は増加する.この体組成の変化には,摂取エネルギー過多や身体活動量の低下だけでなく,基礎代謝の低下,成長ホルモンやテストステロン分泌低下など,加齢に伴う内分泌機能の低下も関与する.今後増加が予想される高齢者肥満をどうとらえ,どの程度介入すべきか,ホルモン補充療法は有効かなど幾つかの疑問も残り,さらなる検討が待たれる.

キーワード
肥満、加齢、成長ホルモン、テストステロン

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間脳下垂体


野順子* 野幸路**
* 東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科   ** 同特任講師

要  旨
加齢に伴い,エストロゲンは劇的に,またテストステロン,GH および IGF-I,DHEA および DHEA-S は緩徐に分泌が減少する.バソプレシンは腎での反応性が低下する.ホルモン補充療法の意義は,更年期障害の症状改善についてのみ確立している.
 視床下部ニューロンは,細胞群ごとに固有の経年変化のパターンを有しており,ニューロン数が経年的に減少する群,不変の群,増加する群がある.経年変化に性差がある群も存在する.

キーワード
GH/IGF-T系、バソプレシン、視床下部、加齢、経年変化

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甲状腺

志村浩己*
* 山梨大学医学部内科学第三教室

要  旨
 高齢者においては,甲状腺機能低下症ならびに甲状腺機能亢進症の臨床症状がはっきりしない場合が多く,ときに診断が困難な場合がある.しかし,加齢に伴って潜在性を含む甲状腺機能低下症の頻度は上昇し,甲状腺機能亢進症も決して少なくはないため,QOL の維持,認知機能保持,心血管疾患の予防の観点からも,積極的に甲状腺機能検査を行うべきと考えられる.一方最近,甲状腺機能低下傾向を示す超高齢者は死亡率が低いことが報告され,今後の研究に注目が集まっている.
キーワード
加齢、甲状腺機能低下症、潜在性甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、
潜在性甲状腺機能亢進症

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副甲状腺と代謝性骨疾患


竹内靖博*
* 虎の門病院内分泌センター 部長

要  旨
 加齢による内分泌代謝障害の多くは,カルシウムなどのミネラル代謝や骨代謝に大きな影響をもたらす.その結果,骨量の減少が生じ,骨折リスクが高まる.加齢によるミネラル代謝障害の機序には未解明な問題が多く残されており,今後の検討課題である.

キーワード
カルシウム、ビタミンD、二次性副甲状腺機能亢進症、低ナトリウム血症、骨粗鬆症

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加齢と副腎皮質ホルモン



柴田洋孝*
* 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 専任講師

要  旨
 加齢に伴い,副腎皮質網状層からの DHEA および DHEA-S 分泌は 20〜30 歳代でピークとなり,その後は加齢とともに持続的に低下する(Adrenopause).DHEA は骨密度や筋力の低下,内臓脂肪,糖尿病などを抑制するアンチエイジング効果が知られている.糖質コルチコイドのコルチゾールは加齢による変化はない.鉱質コルチコイドのアルドステロンは,加齢とともにレニン・アンジオテンシン系が低下するために,基礎分泌量や食塩制限などの刺激に対する反応性が低下し,ときに低ナトリウム血症の原因となる.

キーワード
デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEA-S)、
Adrenopause


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去勢抵抗性前立腺がんにおける男性ホルモンの意義

鈴木和浩*
* 群馬大学大学院医学系研究科泌尿器科学 教授

要  旨
 前立腺がんは男性ホルモン依存性であるが,進行症例では各種ホルモン療法後にも病勢進行することが多く,去勢抵抗性前立腺がんとして名称が統一された.この状態でも,リガンド依存性・非依存性のアンドロゲン受容体の活性化が認められる.副腎性アンドロゲンの重要性が注目され,合成阻害(CYP17 阻害薬)や結合・核移行阻害(MDV3100)による新規薬剤が開発された.去勢抵抗性前立腺がんの新規ホルモン療法として期待されている.
キーワード
去勢抵抗性前立腺がん、アンドロゲン受容体、副腎性アンドロゲン

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卵巣の老化と代謝性疾患

水沼英樹*
* 弘前大学大学院医学研究科産科婦人科 教授

要  旨
 エストロゲン受容体は性腺ばかりでなく,中枢神経,骨,血管,肝臓,腎臓など生命の維持に必要な臓器に存在し,それぞれ重要な生体機能調節に関与している.加齢に伴う卵巣機能の低下は,女性に恒久的な月経の停止をもたらすばかりか,これらの臓器の生理作用に影響し,骨粗鬆症,脂質代謝異常,認知力低下などの高齢女性に特有の疾患の要因となる.女性におけるエストロゲンの生理作用を理解することは,閉経女性の健康維持や増進,さらには疾患の予防を推進していくうえで重要である.

キーワード
卵巣の老化、閉経、骨粗鬆症、エストロゲン欠乏

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循環器(ナトリウム利尿ペプチド)

上村史朗*   斎藤能彦**
* 奈良県立医科大学第一内科 准教授 ** 同教授

要  旨
 ナトリウム利尿ペプチドは,心臓から分泌されて血管弛緩作用と腎での利尿を促進するペプチドホルモンである.特に血中脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)濃度は,心不全患者の重症度評価の指標として有用性が確立している.高齢者では腎機能障害の合併に伴って BNP のクリアランスが低下し比較的高値を示すが,血中 BNP は高齢者の予後予測因子として注目されている.また,心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は高齢心不全患者の治療においても有効である.

キーワード
ナトリウム利尿ペプチド、ANP、BNP、心不全

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加齢と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)について

寺井崇二*   坂井田 功**
* 山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学 准教授 ** 同教授

要  旨
 加齢に伴ってメタボリックシンドロームが進行し,肝臓においては脂肪肝から NASH へと進行する.NASH は,有効な治療がなされない場合は肝硬変,肝がんへと疾患が進む.その病態機序については不明な部分も多い.また,病態進展において加齢の影響は無視できない因子である.基礎研究においては加齢,加齢に伴うテロメアの変化,SIRT タンパク質は,肝臓の脂肪化,さらに炎症,肝障害,肝再生,発がんに重要な変化を及ぼすことが明らかになってきた.加齢の NASH 進展に与える機序を明らかにすることで,新たな予防法,治療法の開発が可能になる.
キーワード
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、加齢、テロメア、SIRT、メダカモデル

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ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)遺伝子

白澤卓二*
* 順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座 教授

要  旨
 一般的に遺伝子の発現は,ヒストンのアセチル化と脱アセチル化により制御されており,アセチル化は HAT,脱アセチル化は HDAC によって修飾を受けている.本稿では,HDAC の分類,生物学的意義,神経変性における役割に関して解説する.また,クラスVHDAC であるサーチュインファミリーに関して最新の知見を紹介する.

キーワード
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)、遺伝子発現、サーチュイン遺伝子、長寿遺伝子、
神経変性疾患

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新連載
臨床研究のススメ

 これまで我が国では臨床研究に対する評価はそれほど高いものではなく、諸外国に比べて大きな成果を上げるのが難しい状況でした。最近になってようやく臨床研究が評価されつつあるものの、日本以外のアジア諸国の台頭もあり、我が国の臨床試験の遅滞状況は危機的なものとなっております。
 そこで、この度、臨床研究とはどの様なもので、何に基づき、何をどの様にやらなければならないかをご紹介する目的で先端医療推進財団・理事長 井村 裕夫 先生にご監修頂き「臨床研究のススメ」を企画致しました。
 第1回は企画者の井村先生による「臨床研究とは何か、今なぜそれが必要なのか-我が国の臨床研究の問題点-」です。

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連載
トップランナーに聞く(第4回)
脊髄小脳失調症の原因究明と遺伝子診断、治療法開発を目指して

 「最新医学」では第66巻からの新企画として「トップランナーに聞く」と題し、最先端の研究をされている40歳前後の先生のインタビューを掲載します。
 第4回は我が国で患者の多い脊髄小脳変性症として脊髄小脳失調症31型の原因遺伝子とその変異を同定をされました東京医科歯科大学の石川 欽也 先生にお話を伺いました。

 石川 欽也 先生

 脳の不思議に魅了され、さらに医学部高学年時に神経難病の過酷さを感じ、神経内科医を志しました。大学院時代から与えられた「脊髄小脳変性症」の研究に現在全精力をつぎ込んでいます。ミッションは、この難病があおるよう最大限貢献すること。趣味犬とはドイツ語。


トピックス
原発不明がんのガイドライン

佐々木政興*    向井博文*
* 国立がん研究センター東病院化学療法科


要  旨
 原発不明がんの診療においては,治癒可能な患者群,予後良好な患者群を的確に抽出するための系統立った検査計画が求められる.また本疾患は多様ながん種を含んでおり,それぞれの病態に応じた治療法を選択していく必要がある.本稿では,不均一な疾患群から成り立つ原発不明がんに対して適切な診療を行っていくための指針を述べる.

キーワード
原発不明がん、ガイドライン、予後良好群、予後不良群

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トピックス
新規 Treg 細胞による自己免疫制御

藤尾圭志*
* 東京大学医学部アレルギーリウマチ内科


要  旨
 CD4+CD25+Treg は自己免疫寛容の根幹を担っていると考えられるが,ヒトで頻度の高い自己免疫疾患との関連はよく分かっていない.おそらく CD4+CD25+Treg 以外の Treg も,自己免疫寛容の維持に寄与していると推測される.最近,制御性活性を持つT細胞サブセットが多く報告されてきており,T細胞レベルでの多様な自己免疫制御機構の一端が分かってきている.

キーワード
制御性T細胞、IL-10、自己免疫疾患、LAG-3、Tr1I

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