最新医学66巻6月増刊号 
メタボリックシンドローム(後篇)
ーメタボリックシンドロームの基礎ー

要  旨


巻頭インタビュー
メタボリックシンドロームの基礎と臨床

門脇 孝

東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科 教授

  主な内容

・メタボリックシンドロームとは
・ウエスト周囲径について
・内臓脂肪と病態
・生活習慣改善と薬物治療
・メタボリックシンドロームとがん
・メタボリックシンドロームと認知症
・インスリン抵抗性改善の重要性
など

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成因と病態:臓器の面から−各臓器の役割と臓器連関
内臓脂肪

船橋  徹
大阪大学大学院医学系研究科代謝血管学 教授

要  旨
 メタボリックシンドロームは,過栄養,運動不足を背景に内臓脂肪が過剰蓄積し,インスリン抵抗性,動脈硬化惹起性リポタンパク異常,血圧上昇を合併するマルチプルリスクファクター症候群である.内臓脂肪蓄積を上流として脂肪細胞の機能異常により,アディポネクチンを初めとするアディポサイトカイン異常が起り,危険因子のカスケードの下流で動脈硬化疾患が起る.ここに内臓脂肪を減少させる意義がある.

キーワード
メタボリックシンドローム、内臓脂肪、アディポサイトカイン、動脈硬化性疾患、糖尿病

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成因と病態:臓器の面から−各臓器の役割と臓器連関
中枢性摂食調節

中里 雅光
宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学分野 教授

要  旨
 摂食は,中枢と末梢で産生される摂食亢進物質と抑制物質の相互作用により,調節されている.エネルギー代謝の中枢である視床下部と脳幹ならびに大脳辺縁系や高次脳機能の役割を中心に概説し,肥満治療につながる研究成果も紹介する.
キーワード
快楽的摂食、恒常的摂食、大脳辺縁系、グルカゴン様ペプチド‐1、カンナビノイド

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成因と病態:臓器の面から−各臓器の役割と臓器連関
肝  臓

窪田 直人*   門脇  孝**
*東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 **同 教授

要  旨
 インスリンは,解剖学的特性により門脈を介して肝臓に高い選択性を有している.インスリンは肝臓のインスリン受容体を活性化し,2つのインスリン受容体基質(IRS),IRS−1 と IRS−2 を介してそのシグナルが伝達される.IRS−1 と IRS−2 には,絶食時と再摂食時において時間的な役割のリレーが存在し,絶食時と摂食直後は主に IRS−2 が,その後の再摂食時には主に IRS−1 がそのシグナルを伝えている.

キーワード
肝臓、インスリンシグナル、インスリン受容体基質

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成因と病態:臓器の面から−各臓器の役割と臓器連関
骨格筋:有酸素運動とレジスタンス運動の抗肥満機序

江崎  治

国立健康・栄養研究所 基礎栄養部 部長

要  旨
 筋肉は身体活動として意図的にエネルギーを消費できる唯一の臓器である.運動時にエネルギーを消費することに加え,有酸素運動やレジスタンス運動を定期的に行うと,脂肪を燃やしやすい体質に変わる.また,有酸素運動とレジスタンス運動のどちらの運動もヘモグロビンA1c(HbA1c)値を低下させることが知られていて,どちらの運動も禁忌がない限り,糖尿病の治療に用いられる.抗肥満機序を中心に,筋肉から分泌されるミオカインを含め,最新の知見を解説した.

キーワード
運動、PGC-1、FGF‐21、GLUT-4、mTOR

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成因と病態:臓器の面から−各臓器の役割と臓器連関
脂肪−膵軸による膵β細胞機能の調節


中田 正範*   矢田 俊彦**
*自治医科大学生理学講座 統合生理学 准教授 **同 教授

要  旨
 生体内で,膵β細胞からのグルコース刺激インスリン分泌は,インクレチン,アディポカイン,自律神経などの修飾により精巧に調節されている.しかし,肥満に伴うアディポカイン,脂肪酸の動態変動は,膵β細胞機能を大きく変調させる.その結果,膵β細胞ではインスリン抵抗性,脂肪毒性,小胞体(ER)ストレス,慢性炎症などの病理的反応を経て機能障害,細胞死が誘導される.本稿では,その責任因子としてアディポカインと脂肪酸を取りあげる.

キーワード
インスリン分泌、膵β細胞、脂肪毒性、慢性炎症、レプチン

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成因と病態:臓器の面から−各臓器の役割と臓器連関
消化管とメタボリックシンドローム

山田 祐一郎
秋田大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝・老年内科学 教授

要  旨
 消化管は食物の消化吸収だけではなく,食事の量や質を感知して,生体各所に情報を発信する起点となっている.その1つであるインクレチンは,膵外作用によって肥満・メタボリックシンドロームの発症や治療に密接にかかわっている.同様の膵作用を持ちながら,異なる膵外作用を有するインクレチンを理解することによって,インクレチン薬の薬効の違いも理解できるであろう.

キーワード
インクレチン、GLP-1、GIP、インスリン分泌

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成因と病態:臓器の面から−各臓器の役割と臓器連関
血管:メタボリックシンドロームと血管障害

中神 啓徳*1  森下 竜一*2
*1大阪大学大学院連合小児発達学研究科健康発達医学寄附講座 教授
*2同 医学系研究科臨床遺伝子治療学 教授

要  旨
 糖尿病に合併する心血管疾患イベントの抑制に関して,疫学的な研究から,空腹時血糖だけでなく食後高血糖の是正も必要と考えられる.糖尿病では高血糖による血管内皮機能障害と酸化ストレス亢進の悪循環に加えて,後期糖化反応生成物(AGE)による血管炎症の助長が動脈硬化を進展させる.近年,血管内皮細胞でのインスリン抵抗性が糖尿病の発症進展に関連する基礎的な報告もなされており,血管と糖尿病との連関が注目されている.

キーワード
血管内皮機能、一酸化窒素、インスリン抵抗性、酸化ストレス

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成因と病態:臓器の面から−各臓器の役割と臓器連関
腎  臓

脇野  修*   伊藤  裕**
*慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 専任講師 **同 教授

要  旨
 メタボリックシンドローム(MetS)に合併する腎障害は肥満関連腎症(ORG),高血圧,耐糖能異常,脂質異常症による腎障害が合併したものとなる.それらが軽症で合併した際の腎障害は,尿細管萎縮,間質線維化,細小動脈硬化である.その後の尿細管から糸球体への病変の波及,尿細管細胞・ポドサイト細胞間連関が初期病変である.その一方で,腎障害は MetS の病態を増悪させ,危険因子の逆転現象(RE)も引き起すので,管理に注意を要する.

キーワード
メタボリックシンドローム、慢性腎臓病、肥満関連腎症、腎性インスリン抵抗性症候群、
危険因子の逆転現象症

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成因と病態:遺伝子・病態・標的分子の面から
メタボリックシンドロームの感受性遺伝子

堀田 紀久子
京都大学大学院医学研究科EBM研究センター

要  旨
 近年のゲノムワイド関連解析(GWAS)により,メタボリックシンドローム感受性遺伝子が明らかにされつつある.候補遺伝子として,MKKS/BBS6,SCG3,MTMR9,FTO,GCKR,FADS1,CDKN2A・CDKN2B 遺伝子領域が報告されている.メタボリックシンドロームそのものを解析したのは MKKS/BBS6 遺伝子のみであり,ほかの遺伝子に関してはさらなる検討が必要である.

キーワード
MKKS/BBS6、SCG3、MTMR9、FTO、GCKR

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成因と病態:遺伝子・病態・標的分子の面から
脂肪細胞分化のエピゲノム制御

脇  裕典*1*2 中村 正裕*2  山内 敏正**2 門脇  孝***2
*1東京大学大学院医学系研究科脂肪細胞機能制御学 特任准教授
*2同 糖尿病・代謝内科 **2同 講師 ***2同 教授

要  旨
 脂肪細胞分化はペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)やCCAAT/エンハンサー結合タンパク(C/EBP)など転写因子のカスケードによる制御を受けるが,近年開発された次世代シークエンサーを用いたヒストン修飾や転写因子結合領域のゲノムワイド解析により,既存の研究手法とは異なる新しい視点から,脂肪細胞の転写因子やエピゲノムによる転写調節機構が明らかにされつつある.脂肪細胞特異的なオープンクロマチン領域解析(FAIRE−seq)と,モチーフ解析による新規分化調節転写因子の同定についても紹介する.

キーワード
脂肪細胞分化、エピゲノム、オープンクロマチン、PPARγ、次世代シークエンサー

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成因と病態:遺伝子・病態・標的分子の面から
褐色脂肪細胞とエネルギー消費

斉藤 昌之
天使大学大学院看護栄養学研究科 教授

要  旨
 調節性熱産生の特異的部位である褐色脂肪は,交感神経性の刺激によって活性化され,全身エネルギー消費や体温,体脂肪量の調節に寄与している.ヒト褐色脂肪は加齢とともに減少し,同時に肥満が進展するが,褐色脂肪を維持する者は中高年になっても肥満しない.今後,褐色脂肪を増量・活性化する内的・外的要因が解明されれば,肥満制御への手掛かりとなろう.

キーワード
褐色脂肪組織、交感神経、UCP、FDG-PET、肥満

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成因と病態:遺伝子・病態・標的分子の面から
レプチンとレプチン抵抗性

戸田 知得*   箕越 靖彦**
*自然科学研究機構生理学研究所生殖・内分泌系発達機構研究部門 **同 教授

要  旨
 レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンであり,エネルギー代謝の恒常性維持に重要な役割を果たしている.レプチンの分泌量は体脂肪量と相関するため,肥満すると血中のレプチン量は増加する.しかしながら,肥満したヒトおよびモデル動物においてはレプチンの作用が低下した“レプチン抵抗性”と呼ばれる状態に陥る.レプチン抵抗性は,レプチンの血液脳関門輸送の低下,およびレプチンの細胞内シグナル伝達の低下が主な原因であると考えられている.本稿では,レプチンの代謝調節作用メカニズムとレプチン抵抗性を引き起す分子メカニズムに焦点を当て,概説する.

キーワード
レプチン、レプチン抵抗性、視床下部、摂食、エネルギー代謝

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成因と病態:遺伝子・病態・標的分子の面から
病因・病態解明のためのグレリンの基礎知識

佐藤 貴弘*   大楠 英子*   三浦 芳樹* 児島 将康**
*久留米大学 分子生命科学研究所 **同 教授

要  旨
 グレリン(GHRL)は胃から分泌されるホルモンで,成長ホルモン放出,摂食亢進,脂肪蓄積,インスリン分泌調節,血圧低下など,多彩な作用を持つ.これら生理作用の多くはメタボリックシンドロームの発症や進展にかかわるものであり,特徴的な構造を有する GHRL の生化学的あるいは生理学的知識に基づいて,病因・病態の理解につなげることが重要である.本稿では,臨床研究に携わる際に必要な GHRL の基礎的な知識を述べる.

キーワード
グレリン、グレリン受容体、グレリン-O-アシルトランスフェラーゼ

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成因と病態:遺伝子・病態・標的分子の面から
ネスファチン

清水 弘行*1  土屋 天文*2  森  昌朋**2
*1桐生大学医療保健学部栄養学科 教授
*2群馬大学大学院医学系研究科病態制御内科学 **2同 教授

要  旨
 ネスファチン−1 は中枢および末梢への投与により動物の摂食行動を抑制する.その抑制機構には,中枢におけるオキシトシン作動性ニューロンやメラノコルチン系の関与が推察される.臨床研究では健常男性の血中ネスファチン−1 濃度が体格指数(BMI)と負の相関関係を示し,肥満者において低値を示すことより,ネスファチン−1 の補充が肥満治療に有効となる可能性が示唆される.ネスファチン−1 は,基礎的検討によりブドウ糖依存性のインスリン分泌を促進する可能性や,肥満糖尿病状態におけるインスリン感受性の改善の可能性も指摘されている.ネスファチン−1 とメタボリックシンドロームの関係について,今後の研究の進展を期待したい.

キーワード
ネスファチン-1、オキシトシン、肥満、インスリン

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成因と病態:遺伝子・病態・標的分子の面から
メタボリックシンドロームにおけるインスリン抵抗性の成因と病態へのかかわり

小川  渉
神戸大学大学院医学研究科糖尿病内分泌内科学 准教授

要  旨
 肥満によって生じるインスリン抵抗性とは,インスリン作用の減弱と過剰が混在した状態であり,インスリン作用の減弱と過剰の両者がさまざまなメカニズムによってメタボリックシンドロームの病態形成に寄与する.肥満では,ミトコンドリア機能障害や脂肪組織の慢性炎症,酸化ストレスや小胞体ストレスなどの障害が生じるが,これらが相互に影響を及ぼし合いながらインスリン抵抗性の病態が形成される.

キーワード
インスリン抵抗性、肥満、脂肪組織、炎症

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成因と病態:遺伝子・病態・標的分子の面から
アディポネクチン

山内 敏正*   門脇  孝**
*東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科 講師 **同 教授

要  旨
 メタボリックシンドローム(MetS)では脂肪細胞が肥大化し,アディポネクチン(Ad)が低下し,脂肪組織において酸化ストレスが増加するなどして,ケモカインである単球走化性タンパク−1(MCP−1)の発現・分泌が増加し,動脈硬化巣と同様,classical に活性化された M1 マクロファージの浸潤が認められる.肥大化した脂肪細胞と活性化された M1 マクロファージが相互作用して炎症が惹起され,腫瘍壊死因子α(TNFα)や遊離脂肪酸(FFA)などの悪玉アディポサイトカインの発現・分泌が協調的・統一的に増加し,善玉アディポサイトカインである Ad の低下と相まって,MetS の病態を形成しているものと考えられる.運動を模倣する作用を有する Ad/アディポネクチン受容体(AdipoR)を標的分子として活性化させることが,これら疾患の原因に基づいた治療法として期待される.

キーワード
運動模倣効果、慢性炎症、酸化ストレス、ミトコンドリア、脂肪酸燃焼

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成因と病態:遺伝子・病態・標的分子の面から
アクアポリン

前田 法一*   船橋  徹**  下 村 伊一郎***
*大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学 **同 准教授 ***同 教授

要  旨
 過栄養状態では脂肪組織はトリグリセリドを蓄える一方,飢餓あるいは交感神経活性状態ではトリグリセリドを脂肪酸とグリセロールとに分解し,それぞれ血中に放出し各臓器にエネルギー源として供給している.脂肪細胞に存在するアクアポリン7(AQPap/7)は,グリセロールチャネルとして機能しており,その機能異常はメタボリックシンドローム発症に関与する可能性がある.

キーワード
アクアポリン、脂肪細胞、肥満、グリセロール、糖代謝

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成因と病態:遺伝子・病態・標的分子の面から
慢性炎症とインスリン抵抗性をリンクするケモカインの役割

太田 嗣人*1*2  篁  俊成**2
*1金沢大学 フロンティアサイエンス機構 特任助教
*2金沢大学医薬保健研究域医学系恒常性制御学 **2同 准教授

要  旨
 2型糖尿病やメタボリックシンドロームの基本病態であるインスリン抵抗性の発症に,慢性炎症が深く関与している.ケモカインは白血球走加作用のあるサイトカインの総称であり,ケモカイン単球走化性タンパク−1(MCP−1)とその受容体 CC ケモカイン受容体2(CCR2)は脂肪組織に骨髄由来のマクロファージを浸潤させる重要なシステムである.本稿では,脂肪組織の慢性炎症とインスリン抵抗性の発症をリンクするケモカインとその受容体の役割を中心に,肥満と代謝疾患におけるケモカイン研究の最新の知見を紹介する.

キーワード
慢性炎症、ケモカイン、ケモカイン受容体、インスリン抵抗性

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成因と病態:遺伝子・病態・標的分子の面から
FGF21

江藤 一弘
帝京大学医学部 内科学講座 教授

要  旨
 線維芽細胞増殖因子 21(FGF21)は主に肝で発現され絶食時の代謝適応に重要な役割を果たすが,その血中濃度は2型糖尿病,インスリン抵抗性,肥満,脂質異常症,非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD),冠動脈疾患などの病態と相関することが相次いで判明してきた.褐色脂肪における FGF21 発現にも臨床的意義があるとの報告も興味深い.FGF21 は臨床指標として有用であるばかりではなく,将来的には2型糖尿病などの治療薬としても有望視されている.

キーワード
FGF-21、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性、冠動脈疾患

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成因と病態:遺伝子・病態・標的分子の面から
脂肪組織炎症における免疫細胞

真鍋 一郎
東京大学大学院医学系研究科循環器内科 特任准教授

要  旨
 内臓脂肪組織の肥満はダイナミックな慢性炎症を惹起する.脂肪組織の炎症は全身のインスリン感受性や遠隔臓器における炎症プロセスに影響を与え,生活習慣病の背景病態として重要な役割を果たす.脂肪組織には多様な免疫細胞が存在する.やせ脂肪組織では,常在マクロファージ,2型ヘルパーT(Th2)細胞,制御性T(Treg)細胞などが炎症の活性化を抑制するように働いているが,肥満に伴い,炎症プロセスを促進するCD8+T細胞や M1 マクロファージの機能が勝るようになり,炎症が拡大進展する.

キーワード
慢性炎症、脂肪、メタボリックシンドローム、

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成因と病態:遺伝子・病態・標的分子の面から
脂肪組織炎症とマクロファージ

田中  都*   菅波 孝祥*   小川 佳宏**
*東京医科歯科大学難治疾患研究所 分子代謝医学分野 **同 教授

要  旨
 肥満の脂肪組織では,マクロファージの浸潤を始めとするダイナミックな組織変化が生じており,アディポサイトカイン産生調節の破綻を介してメタボリックシンドロームの病態形成に中心的な役割を果たすと考えられる.また,脂肪組織炎症のような自然免疫にかかわる免疫担当細胞の病原体センサーとその内因性リガンドにより誘導される慢性炎症として,“自然炎症”の概念が提唱されている.

キーワード
脂肪細胞、アディポサイトカイン、マクロファージ、極性、自然炎症

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成因と病態:遺伝子・病態・標的分子の面から
メタボリックシンドロームと概日リズム

前村 浩二
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科循環病態制御内科学 教授

要  旨
 メタボリックシンドロームの発症は過食,運動不足が誘因となるため,これまで主に食事や運動の量が問題にされてきたが,最近,食事,運動,睡眠などの生活リズムも,その発症に関与していることが明らかにされつつある.体内時計の分子機序が解明されたことにより,時計遺伝子と代謝機能が密接な関係にあることが明らかとなり,メタボリックシンドロームを始めとするさまざまな疾患の発症に,概日リズムの変化が重要な働きを担っていることが示されている.

キーワード
メタボリックシンドローム、概日リズム、体内時計、時計遺伝子

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成因と病態:遺伝子・病態・標的分子の面から
ガラニン様ペプチド(GALP)の抗肥満効果について

竹ノ谷 文子*1*2 影山 晴秋**1  塩田 清二***1
*1昭和大学医学部第一解剖学教室 講師 **1同 助教 ***1同 教授
*2星薬科大学薬学部体育学研究室 講師

要  旨
 医薬品の多くのものは受容体,特にGタンパク共役型受容体(GPCR)を標的とする薬剤であり,そのほとんどはリガンドが同定されていないオーファンレセプターであることが明らかとなっている.そこで,GPCR を標的とするリガンドの実体解明は,創薬展開に最も重要であると考えられる.これらの GPCR リガンドのうち,脳内の摂食調節に関係する多くのものは神経ペプチドであり,その生理作用や生体における機能解明が進めば将来的に抗肥満薬や糖尿病などの予防・治療薬になると考えられ,現在盛んに研究が進められている.本稿では 1999 年に GPCR の内因性のリガンドとして同定された,摂食調節やエネルギー代謝に関与する,ガラニン様ペプチド(GALP)について,我々の研究室において得られた研究成果をもとにして解説する.さらに,我々が肥満克服を目指すために行なっている,GALP の点鼻投与法についての最新の動物実験データについても紹介する.

キーワード
ガラニン様ペプチド、摂食調節、エネルギー代謝、視床下部

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新しい治療戦略
抗肥満薬の開発

大西 俊一郎*   藤本 昌紀*   横手 幸太郎**
*千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学(糖尿病内分泌代謝内科) **同 教授

要  旨
 本邦において肥満者は急増し,メタボリックシンドロームのようなさまざまな疾患の原因と成りうる肥満症の治療の必要性は高い.抗肥満薬は食事・運動療法を補助する位置付けにあり,その病態から中枢性食欲抑制薬,糖や脂質の吸収抑制薬,熱産生促進薬に大別される.しかし,本邦では他国と比べて使用できる抗肥満薬は少なく,良薬の開発のみならず,薬剤承認基準の再考が求められる.

キーワード
肥満症、抗肥満薬

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新しい治療戦略
レプチンによる肥満・糖尿病治療

山本 祐二*1  海老原 健*1*2 日下部 徹*1 中尾 一和**1
*1京都大学大学院医学研究科 内分泌代謝内科 **1同 教授
*2京都大学医学部附属病院 探索医療センター 准教授

要  旨
 脂肪組織由来ホルモン,レプチンは,食欲抑制やエネルギー消費亢進による抗肥満作用以外にも,糖代謝および脂質代謝改善作用を有している.脂肪組織が過剰に蓄積した肥満症においても,脂肪組織が減少,消失する脂肪萎縮症においても,糖尿病や脂質異常症を高頻度に合併するが,この理由として,脂肪萎縮症においては血中レプチン濃度の低下によるレプチン作用不足,肥満症においてはレプチン抵抗性によるレプチン作用不足の関与が考えられる.今後,肥満や糖尿病を始め,生活習慣病領域におけるレプチンを用いた新しい治療法の開発が期待される.

キーワード
レプチン、肥満症、脂肪委縮症、糖尿病、レプチン抵抗性

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新しい治療戦略
iPS,ES 細胞由来脂肪細胞を用いた細胞治療

細田 公則*1  野口 倫生*2  山本 祐二*2 藤倉 純二*2  中尾 一和**2
*1京都大学大学院医学研究科人間健康科学系 教授
*2京都大学大学院医学研究科内分泌代謝内科 **2同 教授

要  旨
 最近,山中らによりヒト人工多能性幹(iPS)細胞が開発されたが,筆者らは世界に先駈けて,ヒト iPS 細胞由来からの脂肪細胞誘導の系の開発に成功した.ヒト iPS 細胞由来脂肪細胞の系は,今後,肥満症や脂肪萎縮症などの疾患の成因解明,脂肪細胞治療の開発,脂肪細胞に作用する薬剤の創薬への応用が期待される.稀少疾患である脂肪萎縮症は,肥満症,メタボリックシンドロームなどの adipotoxicity(脂肪毒性)と同様の病態を呈するので,adipotoxicity 解明のモデルとなることが期待される.

キーワード
脂肪細胞、細胞治療、iPS細胞、ES細胞、脂肪委縮症

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新しい治療戦略
肥満症に対する外科的治療

太田 正之**  平 下 禎二郎*   北野 正剛***
*大分大学医学部第一外科 **同 講師 ***同 教授

要  旨
 現在,肥満症に対する外科的治療は,主に腹腔鏡手術として行われており,2008 年には世界中で 30 万例以上に施行された.その主な術式は腹腔鏡下 Roux−en−Y 胃バイパス術と腹腔鏡下調節性胃バンディング術であり,腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が急速に増加している.我が国でも 2009 年には 70 例の腹腔鏡下肥満外科手術が行われ,腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が 70% 以上を占めていた.また我が国においても,腹腔鏡手術や内視鏡的胃内バルーン留置術の,欧米と同等の有効性が確認されてきている.

キーワード
肥満症、高度肥満、肥満外科手術、腹腔鏡下肥満外科手術、内視鏡的肥満治療

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