最新医学67巻4号 
特集 IgG4関連疾患
   
-21世紀に生まれた新たな疾患概念-

要  旨


座談会 IgG4関連疾患発見の意義と世界に与えるインパクト

関西医科大学       岡崎 和一 
岡山大学          吉野  正
金沢医科大学       梅原 久範(司会)

 座談会の内容
 ・分子病理診断の歴史
 ・分子病理診断の方法論
 ・保険診療上の問題点 など 

  梅原先生      吉野先生       岡崎先生

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臓器別IgG4関連疾患
IgG4 関連疾患の発見から現在にかけて

岡崎和一*   内田一茂*
* 関西医科大学内科学第三講座(消化器肝臓内科)教授

要  旨
 IgG4 関連疾患は,血中IgG4高値に加え,膵,肝・胆,唾液腺・涙腺,後腹膜腔など,全身臓器に線維化とIgG4形質細胞浸潤,閉塞性静脈炎などを認め,我が国より発信された原因不明の新しい疾患概念である.本疾患の歴史,厚生労働省研究班(岡崎班・梅原班)によるIgG4関連疾患包括診断基準の提唱,国際シンポジウムなどについて述べた.

キーワード
IgG4関連疾患、包括的診断基準、厚生労働省難治性疾患克服研究事業

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臓器別IgG4関連疾患
IgG4 関連自己免疫性膵炎

川 茂幸*1  伊藤哲也*2  渡邊貴之*2   丸山真弘*2  村木 崇*2  
浜野英明*3   新倉則和*4

*1 信州大学総合健康安全センター 教授
*2 信州大学消化器内科
*3 信州大学附属病院医療情報部 講師
*4 同内視鏡センター 准教授


要  旨
 IgG4 関連自己免疫性膵炎は,IgG4 関連疾患に属し,発症に自己免疫機序が想定される膵臓の慢性炎症である.高齢・男性に好発し,膵腫大と主膵管の狭細像を呈し,膵がんとの鑑別困難例が存在する.病理学的には lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)と呼称される.本症では血中IgG4の上昇と,病変組織にIgG4陽性形質細胞浸潤を特徴的に認める.

キーワード
自己免疫性膵炎、IgG4、IgG4関連疾患

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臓器別IgG4関連疾患
IgG4 関連消化器病変

神澤輝実**  原 精一*   田畑拓久* 来間佐和子*   千葉和朗*
桑田 剛*    小泉浩一**

* 東京都立駒込病院内科 ** 同部長

要  旨
 IgG4 関連消化器病変は,病理組織学的にリンパ球とIgG4陽性形質細胞の著しい浸潤と線維化を特徴とし,しばしば閉塞性静脈炎を伴う.自己免疫性膵炎のほかにIgG4関連硬化性胆管炎,IgG4 関連硬化性胆■炎,IgG4 関連炎症性肝偽腫瘍がある.多数のIgG4陽性形質細胞浸潤を伴う食道,胃,主乳頭,小腸,大腸の粘膜下腫瘤様病変などが,IgG4 関連疾患であるか,特殊な炎症性変化に伴う反応性のIgG4陽性形質細胞浸潤かは今後の検討課題である.

キーワード
自己免疫性膵炎、IgG4関連硬化性胆管炎、IgG4、IgG4関連硬化性胆嚢炎、潰瘍性大腸炎

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臓器別IgG4関連疾患
IgG4 関連ミクリッツ病とシェーグレン症候群


山本元久*   高橋裕樹**  篠村恭久***
* 札幌医科大学医学部内科学第一講座 ** 同准教授 *** 同教授

要  旨
 ミクリッツ病は,両側性に涙腺・唾液腺の腫脹を呈する原因不明の病態である.一時は原発性シェーグレン症候群に包括されていたが,今世紀に入り,高IgG4血症と著明なIgG4陽性形質細胞浸潤を呈することが判明し,両疾患は異なる病態であることが明らかになった.現在,その合併症の検討から,ミクリッツ病はIgG4関連疾患という大きな枠組みの中の涙腺・唾液腺炎(IgG4 関連涙腺・唾液腺炎)に位置づけられている.

キーワード
IgG4、ミクリッツ病、シェーグレン症候群

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臓器別IgG4関連疾患
IgG4 関連腎臓病の診断基準について


川野充弘*1  佐伯敬子*2
*1 金沢大学附属病院リウマチ・膠原病内科 臨床教授    *2 長岡赤十字病院内科

要  旨
 IgG4 関連腎臓病はIgG4関連疾患の腎病変である.ステロイドが著効するため,不可逆的な腎障害を阻止するには早期発見が重要である.高齢男性に好発すること,約半数例でタンパク尿・血尿などの尿所見に乏しいこと,アレルギー素因,高 IgG 血症,高 IgE 血症,低補体血症を伴う頻度が高いことから,これらに当てはまる腎障害を診た場合,積極的にIgG4関連腎臓病の診断基準に当てはめて検討する必要がある.

キーワード

IgG4、IgG4関連腎臓病、尿細管間質性腎炎、診療指針

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臓器別IgG4関連疾患
IgG4 関連呼吸器病変

松井祥子*
* 富山大学保健管理センター 准教授

要  旨
 呼吸器は空気の出入りが行われる器官であり,複数の臓器により構成されている.IgG4 関連呼吸器病変においては,その諸臓器の各所にさまざまな程度で病変が生じるため,多彩な病像を呈する.また,呼吸器病変部位のIgG4陽性細胞は他臓器に比べて浸潤の程度が低いことが報告されており,その確定診断は容易ではない.包括的診断基準に加えて臓器ごとの診断基準が確立されつつあることから,呼吸器病変においても診断基準の確立が望まれる.

キーワード
IgG4関連呼吸器病変、上気道病変、下気道病変

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臓器別IgG4関連疾患
IgG4 関連甲状腺炎



西原永潤*1  廣川満良*2
*1 隈病院内科 医長    *2 同病理診断科 科長

要  旨
 甲状腺疾患の中で橋本病の一部やリーデル甲状腺炎が,IgG4 関連疾患の病態を示す炎症性疾患(IgG4 関連甲状腺炎)と考えられている.橋本病型のIgG4関連甲状腺炎では,線維化は甲状腺組織内に限局しており,抗甲状腺自己抗体は高力価,甲状腺機能は低下傾向,手術までの罹病期間が短いといった特徴を有している.一方,リーデル甲状腺炎型では,甲状腺組織外に及ぶ炎症・線維化所見が特徴であるが,免疫学的所見は不明瞭である.

キーワード
橋本病、リーデル甲状腺炎、甲状腺機能低下症、抗甲状腺自己抗体、IgG4陽性形質細胞

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臓器別IgG4関連疾患
眼科領域のIgG4関連病変

高比良雅之*
* 金沢大学大学院医学系研究科眼科学 講師

要  旨
 ミクリッツ病のIgG4関連が明らかになって以来,眼領域のIgG4関連疾患の研究や臨床は涙腺病変を主体に発展してきた.症例が蓄積される中,眼窩リンパ増殖性疾患のうち約 1/4 がIgG4関連であると推察され,決してまれな病態ではないことが明らかになった.眼窩では,MALT リンパ腫との併発に留意する必要がある.また,IgG4 関連病変は涙腺以外にもしばしば見られ,特に外眼筋や三叉神経分枝の周囲を侵しやすい.

キーワード
IgG4、涙腺炎、リンパ増殖性疾患、眼窩、MALTリンパ腫

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IgG4関連疾患の診断
IgG4 関連疾患の病理診断 ―鑑別診断を中心に―

佐藤康晴*   吉野 正**
* 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科病理学(腫瘍病理/第二病理)講師   ** 同教授

要  旨
 IgG4 関連疾患の診断において,病理診断は非常に重要な位置を占める.しかしながらIgG4関連疾患は各臓器によってその組織像は多様であるため,必ずしも病理診断は容易ではない.また,悪性リンパ腫や多中心性キャッスルマン病などとの鑑別が難しい例も多い.
 免疫染色で IgG4+/IgG+ 細胞比>40% であればIgG4関連疾患である可能性は高いが,この診断基準を満たす「非IgG4関連疾患」が存在することも事実である.そのためIgG4関連疾患の診断は病理所見のみならず,臨床像や臨床検査データなども併せて総合的に診断することが重要である.

キーワード
IgG4関連疾患、病理診断、IL-6、悪性リンパ腫、鑑別診断

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IgG4関連疾患の診断
IgG4 関連疾患の病理診断 ―1型自己免疫性膵炎における線維化病変の特徴―

能登原憲司*

* 倉敷中央病院病理検査科 部長

要  旨
 1型自己免疫性膵炎の線維化巣には,線維がさまざまな方向に向かって走行し,炎症細胞を豊富に含んだ,花筵様線維化と呼ばれる病変が形成される.この所見は,閉塞性静脈炎,多数のIgG4陽性形質細胞浸潤とともに,1型自己免疫性膵炎の組織診断のうえで重視されている.花筵様線維化は,さらに諸臓器のIgG4関連病変でも広く認められるが,唾液腺やリンパ節のように出現頻度の低い臓器も知られている.IgG4 関連疾患を病理診断するうえで,花筵様線維化は注目すべき所見である.

キーワード
自己免疫性膵炎、花筵様線維化、閉塞性静脈炎、IgG4、病理

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IgG4関連疾患の診断
IgG4 関連疾患の画像所見

井上 大*1*2 全  陽*3  松井 修**1
*1 金沢大学大学院医学系研究科循環医科学専攻血管病態制御学講座経血管診療学(放射線科)
**1 同教授   *2 富山県立中央病院放射線科
*3 Institute of Liver Studies,King's College Hospital

要  旨
 IgG4 関連疾患は臨床,画像,病理所見を総合して診断するべき疾患であるが,画像所見は本疾患を最初に疑うきっかけとして大きな役割を担っている.そのため,各臓器の典型的な画像所見については各専門科の枠組みを越えて熟知しておく必要がある.基本的な画像所見は,臓器を問わず,腺組織の腫大と管腔構造最外層の腫大/壁肥厚であるが,常に悪性腫瘍を念頭に鑑別を進めるべきであり,必要であれば生検を躊躇してはならない.

キーワード
IgG4関連疾患、CT、MRI、超音波

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IgG4関連疾患の病因と治療
ミクリッツ病/IgG4 関連疾患の病態形成におけるサイトカインの関与

森山雅文*   中村誠司**
* 九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座顎顔面腫瘍制御学分野 ** 同教授

要  旨
 ミクリッツ病は,涙腺と唾液腺腫脹を特徴とする原因不明の疾患であるが,近年「IgG4 関連疾患」の1つとしてとらえられている.我々は,ミクリッツ病の特徴であるIgG4産生のメカニズムを解明するために,唾液腺に浸潤するT細胞サブセットとサイトカイン産生を検索した.その結果,唾液腺に Th2 と制御性T細胞が浸潤し,それらが産生する IL-4 と IL-10 がIgG4産生に関与していることを見いだし,ミクリッツ病の病態形成におけるサイトカインの関与を明らかにした.

キーワード
ミクリッツ病、IgG4関連疾患、サイトカイン、ケモカイン、ケモカイン受容体

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IgG4関連疾患の病因と治療
IgG4 関連疾患の治療

正木康史**  中村拓路*   中島章夫* 岩男 悠*   三木美由貴*   
梅原久範***
* 金沢医科大学血液免疫内科学 ** 同准教授 *** 同教授

要  旨
 IgG4 関連疾患の治療について概説する.その診断は血清IgG4高値と組織IgG4陽性形質細胞増多によるが,各臓器の悪性腫瘍を含め,鑑別診断が非常に重要である.治療は中等量以下のステロイド(プレドニゾロン 0.6mg/kg/日)より開始し,漸減のうえで5~10mg程度の維持量を要する例が多い.ステロイド治療の効果は開始後2~4週で評価し,治療抵抗例は診断を見直す必要がある.欧米では治療抵抗例にリツキシマブが用いられているが,その適応は慎重に考慮すべきである.

キーワード
副腎皮質ステロイド、リツキシマブ、18FDG-PET、悪性リンパ腫、多中心性キャッスルマン病

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連載
現代社会とうつ病

  現代社会において問題となっております「うつ病」について病気そのものの解説、法、サポート体制などを連載形式で詳しく紹介する目的で連載「現代社会とうつ病」を企画致しました。
 今号から約3年間にわたり国内の診療・研究の最前線でご活躍されている先生方に「うつ病」について詳しくご解説をお願いしております。

 第12回は九州大学・本村 啓介 先生による「メランコリア概念をめぐって」です。

要  旨
 メランコリアとは,古代から使われていた精神異常の一呼称である.20 世紀には「うつ病」が用いられるようになったため,メランコリアはうつ病の一特殊型として曖昧に位置づけられるのみであった.しかし 21 世紀に入り,うつ病(大うつ病性障害)の概念がもたらした問題が明らかになるにつれ,現在のうつ病を,より重症のメランコリアとその他のうつ病とに分けるべきであるという主張が繰り返されている.

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連載
臨床研究のススメ

 これまで我が国では臨床研究に対する評価はそれほど高いものではなく、諸外国に比べて大きな成果を上げるのが難しい状況でした。最近になってようやく臨床研究が評価されつつあるものの、日本以外のアジア諸国の台頭もあり、我が国の臨床試験の遅滞状況は危機的なものとなっております。
 そこで、この度、臨床研究とはどの様なもので、何に基づき、何をどの様にやらなければならないかをご紹介する目的で先端医療推進財団・理事長 井村 裕夫 先生にご監修頂き「臨床研究のススメ」を企画致しました。
 第12回は京都大学・川上 浩司 先生に「薬剤疫学の課題と展望」と題してご解説をお願いしました。

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連載
トップランナーに聞く(第16回)
細胞運動を制御する新たなシグナル伝達機構の解明を目指す

 「最新医学」では第66巻からの新企画として「トップランナーに聞く」と題し、最先端の研究をされている40歳前後の先生のインタビューを掲載します。
 第16回は原因・病態解明や治療法の開発など筋疾患の分野で幅広い研究をされている国立精神・神経医療センターの西野 一三 先生にお話を伺いました。

 西野 一三 先生

 筋生理学を専門とし、全国から送られてくる筋生検検体に対して筋病理診断を行っています。診断後の凍結筋検体は保存され、すでに12,000を超える凍結筋が蓄積されています。この金でポジとリーを用いて、各種筋疾患の病院・病態解明を進めると同時に、メダカやマウスなどのモデル動物作成を通じて、病態に基づいた治療法開発を進めています。幸運なことに縁取り空胞を伴う遠位性ミオパチー(DMRV)という遺伝性疾患がシアル酸欠乏を病態としていること、シアル酸補充が有効であることを示すことができ、現在、臨床応用を目指した治験が進行中です。

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トピックス
アディポネクチンの抗糖尿病作用におけるIL-6の役割の発見

粟澤元晴*
* 東京大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科


要  旨
 これまでアディポネクチンの作用メカニズムは,主に AMPK の活性化により説明されてきた.今回我々は,アディポネクチンが肝 IRS-2 を上昇させインスリン感受性を高めることを明らかにした.この作用は IL-6 依存的で,しかも AdipoR1/2 を介さない作用であった.本研究は未知のアディポネクチン受容体の存在を示唆するとともに,IL-6 が肝 IRS-2 を介してインスリン感受性を亢進させうるという新たな知見をもたらした.

キーワード
アディポネクチン、IRS-2、IL-6

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トピックス
気候変動と感染症

橋爪真弘*
* 長崎大学熱帯医学研究所小児感染症学分野


要  旨
 地球温暖化の進行に伴い,熱波や洪水,台風,干ばつなどの異常気象の頻度や強度が増し,さまざまな健康影響が生じる可能性がある.世界では熱帯・亜熱帯地域を中心に,マラリア,デング熱,コレラなどの感染症の流行地域の拡大や患者数の増加が懸念されている.国内では明らかな気候変動による新興・再興感染症の流行は現時点ではないが,今後ある種の感染症については潜在的リスクが存在する.

キーワード
地球温暖化、気候変動、感染症、健康影響、適応策

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