最新医学67巻8号 
特集 自己免疫性肝胆膵疾患 -最近の知見-
   


要  旨


座談会 心不全治療の現状と課題

金沢大学          中沼 安二 
帝京大学           滝川 一
関西医科大学        岡崎 和一(司会)

 座談会の内容
 ・拡張心不全
 ・診断法
 ・治療法
 ・心不全治療の今後の期待 など 

 滝川先生      岡崎先生        中沼先生

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自己免疫性肝胆道疾患における最近の知見
自己免疫性肝炎・原発性胆汁性肝硬変・硬化性胆管炎(IgG4 関連硬化性胆管炎を含む)の病理診断における最新の知見

中沼安二**  原田憲一*
* 金沢大学大学院医学系研究科形態機能病理学 准教授 ** 同教授

要  旨
 代表的な自己免疫性肝胆道疾患として,自己免疫性肝炎(AIH),原発性胆汁性肝硬変(PBC),原発性硬化性胆管炎(PSC)あるいは IgG4 関連硬化性胆管炎(IgG4ミSC)がある.AIH では,国際診断基準での病理所見,急性肝炎様発症の病理所見が注目されている.PBC では新しい病期・活動度分類が普及しつつある.IgG4ミSC と PSC との鑑別が重要である.PBC と AIH,PSC と AIH のオーバーラップでの診断に,病理所見が重要である.

キーワード
原発性硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、IgG4関連硬化性胆管炎、IgG4関連疾患

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自己免疫性肝胆道疾患における最近の知見
自己免疫性肝炎の診断・治療における最近の知見

銭谷幹男*
* 東京慈恵会医科大学大学院医学研究科器官病態治療学(消化器内科)教授


要  旨
 最近の我が国の全国集計により,自己免疫性肝炎の診断数は増加していることが明らかとなっている.一方,従来臨床的特徴とされた IgG 上昇,血清自己抗体の高力価陽性所見に乏しい非定型とも言える症例の増加や,慢性肝炎像を伴わない急性発症型の存在は,薬物性肝障害との鑑別診断を含め,診断指針の再検討の必要性を示している.我が国で臨床的に使用されているウルソデオキシコール酸の意義についても明確な指針が求められている.

キーワード
自己抗体、急性発症、副腎皮質ステロイド、オーバーラップ症候群、ウルソデオキシコール酸

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自己免疫性肝胆道疾患における最近の知見
原発性胆汁性肝硬変―自己免疫性肝炎オーバーラップ症候群の診断・治療における最新の知見― 

岡井 研*   大平弘正**
* 福島県立医科大学消化器・リウマチ膠原病内科学講座 ** 同教授BR>
要  旨
 自己免疫性肝疾患である原発性胆汁性肝硬変(PBC)と自己免疫性肝炎(AIH)では,両者の特徴を併せ持った病態が存在することが知られており,PBC-AIH オーバーラップ症候群と呼ばれている.真の合併はまれであるが,治療方針の決定や予後予測の観点から,本症を定義・診断することの臨床的意義は大きいと考えられる.とりわけステロイドの使用により病状の改善が期待されることから,治療時機を逸しないことが重要である.

キーワード
原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、PBC-AIHオーバーラップ症候群

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自己免疫性肝胆道疾患における最近の知見
原発性胆汁性肝硬変の病因・病態における最近の知見


下田慎治*
* 九州大学大学院医学研究院病態修復内科学

要  旨
 原発性胆汁性肝硬変(PBC)が自己免疫疾患であることが,ゲノムワイド関連解析の結果からも確認されつつある.PBC では小細胆管炎を病変の主座とするので,肝臓の線維化進展形式が,肝細胞の炎症から引き起こされる肝硬変と機序が異なる.モデル動物から,胆汁酸による胆管細胞傷害が疾患原因である可能性が示された.PBC 肝臓の解析により,自然免疫から獲得免疫までさまざまなレベルでの破綻によって PBC の病態が形成されることが明らかになっている.


キーワード
慢性非化膿性破壊性胆管炎、抗ミトコンドリア抗体、自然免疫、獲得免疫

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自己免疫性肝胆道疾患における最近の知見
我が国における原発性硬化性胆管炎の実態に関する最新の知見


田中 篤*   滝川 一**
* 帝京大学内科教授 ** 同主任教授

要  旨
 原発性硬化性胆管炎は,肝内・外胆管に多発性・びまん性狭窄が生じ,胆汁うっ滞を来す慢性肝疾患である.合併症としては炎症性腸疾患,大腸直腸がん,胆管がん,胆■がんの頻度が高い.ウルソデオキシコール酸がしばしば使用されるが,近年その位置づけには疑問符が投げかけられている.強い胆管狭窄に対する内視鏡的治療によって予後は改善する.現在我々は9年ぶりの全国調査を実施しており,今秋には結果をまとめる予定である.

キーワード

炎症性腸疾患、大腸直腸がん、胆管がん、胆嚢がん、ウルソデオキシコール酸

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自己免疫性肝胆道疾患における最近の知見
IgG4 関連硬化性胆管炎の概念・診断・治療における最新の知見

内藤 格*1  大原弘隆*2  中沢貴宏***1  林 香月**1  宮部勝之*1  
清水周哉*1  近藤 啓*1  吉田道弘*1  山下宏章*1 梅村修一郎*1  
堀  寧*1  城 卓志****1

*1 名古屋市立大学医学部消化器・代謝内科学 **1 同病院講師 ***1 同病院教授 ****1 同教授
*2 同地域医療教育学 教授

要  旨
 IgG4 関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)は,血中 IgG4 値の上昇,病変局所の線維化と IgG4 陽性形質細胞の著しい浸潤などを特徴とする原因不明の硬化性胆管炎である.さまざまな胆管狭窄像を呈するため,原発性硬化性胆管炎,胆管がん,膵がんなどとの鑑別が必要である.本邦においても IgG4ミSC 臨床診断基準 2012 が発表され,今後,これに従って診断を行うことが重要である.治療はステロイドに良好な反応性を示し,予後もおおむね良好であると考えられている.

キーワード
IgG4関連硬化性胆管炎、自己免疫性膵炎、原発性硬化性胆管炎、IgG4-SC臨床診断基準2012、胆管像

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自己免疫性肝胆道疾患における最近の知見
自己免疫性肝疾患の肝移植における最近の知見 -特に原発性胆汁性肝硬変,原発性硬化性胆管炎に対する肝移植について-



伊藤孝司*   森  章*   海道利実** 上本伸二***
* 京都大学医学部附属病院肝胆膵・移植外科 ** 同 准教授 *** 同 教授

要  旨
 自己免疫性肝疾患は,肝細胞障害や胆管障害の発症とその後の障害が慢性的に持続する病態に自己免疫が関与し,終末期には肝硬変にまで至る病態と考えられているが,いまだ不明な点が多い疾患である.今回,自己免疫性肝疾患,特に原発性胆汁性肝硬変(PBC),原発性硬化性胆管炎(PSC)についての肝移植適応,肝移植の成績,移植後再発について,当科での経験も踏まえて解説する.

キーワード
自己免疫性肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、肝移植、再発

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自己免疫性膵炎における最近の知見
自己免疫性膵炎の疾患概念・診断における最近の知見 ―亜型分類(1型・2型)と国際コンセンサス診断基準―

下瀬川 徹*
* 東北大学大学院医学系研究科消化器病態学 教授

要  旨
 自己免疫性膵炎(AIP)は我が国で命名され,疾患概念が提唱された.日本人の AIP の大多数は,臨床的には IgG4 の産生過剰,組織学的には LPSP で特徴づけられる.欧米から病理組織学的に IDCP/GEL で定義される別のタイプの AIP が提唱され,前者を1型,後者を2型とするホノルル・コンセンサスが形成された.世界の共通基盤形成のため,1型と2型の診断を可能とする国際コンセンサス診断基準(ICDC)が 2011 年に発表された.

キーワード
自己免疫性膵炎、IgG4関連疾患、診断基準、病理、IgG4

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自己免疫性膵炎における最近の知見
新しい診断基準の中での自己免疫性膵炎(1型・2型)の病理診断

能登原憲司*
* 倉敷中央病院病理検査科 主任部長

要  旨
 近年,自己免疫性膵炎(AIP)の International Consensus Diagnostic Criteria や本邦の自己免疫性膵炎臨床診断基準 2011 が提唱された.IgG4 関連疾患についても本邦から包括診断基準 2011 が提唱され,国際的な合意声明が近刊予定にある.これらの中で,病理所見は重要な位置を占めている.本稿では AIP の診断基準にある病理所見の項目について解説し,さらに IgG4 関連疾患の診断基準における考え方との相違,背景にある議論や問題点について述べた.

キーワード
自己免疫性膵炎、IgG4関連疾患、診断基準、病理、IgG4

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自己免疫性膵炎における最近の知見
自己免疫性膵炎の免疫遺伝学的背景における最近の知見

太田正穂*1  川 茂幸*2

*1 信州大学医学部法医学教室 准教授 *2 信州大学健康安全センター 教授

要  旨
 自己免疫性膵炎(AIP)は,IgG4 が関連する全身性疾患と認識されているが,この疾患の病態・発症機序の詳細については充分解析されていない.AIP は,多くの自己免疫疾患同様,遺伝と環境要因が関与する多因子性疾患と考えられる.本稿では免疫学的機能を示す HLA,CTLA4,FCRL3,TLR4,KCNA3 遺伝子の疾患感受性について,得られた知見を紹介する.

キーワード
自己免疫性膵炎疾患感受性遺伝子、相関解析、HLA,SNP、ゲノムワイド関連解析

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自己免疫性膵炎における最近の知見
自己免疫性膵炎(1型)の免疫学的解析における最近の知見 ―自然免疫系の関与―

渡邉智裕*   千葉 勉**
* 京都大学大学院医学研究科消化器内科学 准教授 ** 同教授

要  旨
 IgG4 関連疾患は,血清 IgG4 値の上昇と IgG4 陽性形質細胞の標的臓器への浸潤を特色とする疾患である.自己免疫性膵炎(1型)は IgG4 関連疾患の膵臓病変であると認識されつつある.IgG4 関連疾患の発症には,獲得免疫反応と自然免疫反応の双方がかかわる.Toll-like receptor および NOD-like receptor を中心とする自然免疫システムの活性化が,IgG4 関連疾患の発症に関与することが明らかになりつつある.

キーワード
IgG4関連疾患、自己免疫性膵炎、自然免疫

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自己免疫性膵炎における最近の知見
自己免疫性膵炎(1型)の免疫学的解析における最近の知見―制御性T細胞の関与―

内田一茂**  住本貴美*   福井由理*   楠田武生*   小藪雅紀*    三好秀明*   岡崎和一***
* 関西医科大学内科学第三講座(消化器肝臓内科)   ** 同講師 *** 同教授

要  旨
 自己免疫性膵炎(AIP)は,2010 年に開催された国際膵臓学会で合意された国際コンセンサスにより,IgG4 の関与した1型と好中球病変を特徴とした2型に分類されることとなった.日本を含むアジアでは,1型 AIP が多く存在する.また一方で,自己免疫疾患には制御性T細胞の関与が報告されているが,1型 AIP での役割は不明である.我々は,1型 AIP における制御性T細胞のかかわりについて検討した.その結果,ナイーブ制御性T細胞の減少が発症に関与しており,1型 AIP に特徴的な血中 IgG4 上昇と IgG4 陽性形質細胞浸潤には ICOS 陽性制御性T細胞の増加との関連性が示唆された.

キーワード
自己免疫性膵炎、IgG4、制御性T細胞

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自己免疫性膵炎における最近の知見
自己免疫性膵炎の治療における最近の知見

神澤輝実**  原 精一*   田畑拓久*   来間佐和子*   千葉和朗*   斎藤 格*
* 東京都立駒込病院内科   ** 同部長

要  旨
 自己免疫性膵炎の標準治療法は,ステロイド治療である.閉塞性黄疸などの有症状例が原則として適応となる.治療開始前に可能な限り膵がんや胆管がんを否定して診断を確定し,黄疸例では胆道ドレナージ術を,糖尿病合併例では血糖のコントロールを行う.経口プレドニゾロンを0.6mg/体重kg/日から投与開始し,2~4週間の投与後1~2週間ごとに5mgずつ減量していく.再燃防止のために少量プレドニゾロンによる維持療法を行う例が多い.

キーワード
自己免疫性膵炎、ステロイド、IgG4

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連載
現代社会とうつ病

  現代社会において問題となっております「うつ病」について病気そのものの解説、法、サポート体制などを連載形式で詳しく紹介する目的で連載「現代社会とうつ病」を企画致しました。
 今号から約3年間にわたり国内の診療・研究の最前線でご活躍されている先生方に「うつ病」について詳しくご解説をお願いしております。

 第16回は爽風会佐々木病院・斎藤 環 先生による「現代型うつ病は病気か」です。

要  旨
 うつ病人口の増加とともに,「現代型うつ病」と呼ばれる病像が主流になりつつある.軽症で治りにくく,「生き方」と症状の区別が曖昧なものへの変化である.背景にあるのは社会的規範の変容,すなわち勤勉主義の退潮と「操作主義」や「コミュニケーション偏重主義」の全面化である.いかに「怠け」的であれ,治療者は当事者のニーズを尊重すべきであるが,治療に際しては薬物のみならず環境調整や「人薬」的な対応が必要とされる.

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連載
臨床研究のススメ

 これまで我が国では臨床研究に対する評価はそれほど高いものではなく、諸外国に比べて大きな成果を上げるのが難しい状況でした。最近になってようやく臨床研究が評価されつつあるものの、日本以外のアジア諸国の台頭もあり、我が国の臨床試験の遅滞状況は危機的なものとなっております。
 そこで、この度、臨床研究とはどの様なもので、何に基づき、何をどの様にやらなければならないかをご紹介する目的で先端医療推進財団・理事長 井村 裕夫 先生にご監修頂き「臨床研究のススメ」を企画致しました。
 第16回は国立がん研究センター・藤原 康弘 先生に「抗がん剤の臨床試験」と題してご解説をお願いしました。

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連載
トップランナーに聞く(第20回)
心血管病発症・進展における環境・遺伝子連関の解明研究

 「最新医学」では第66巻からの新企画として「トップランナーに聞く」と題し、最先端の研究をされている40歳前後の先生のインタビューを掲載します。
 第20回は心筋症の遺伝子探索と機能解析の分野で多くの成果を上げられている東京大学の森田 啓行 先生にお話を伺いました。

 森田 啓行 先生

 成人で見られる心血管病の多くは、環境危険因子と遺伝的要因とが組み合わさって発症・進展に至ると考えられています。しかしながら、その遺伝的要因に関して解明されているのは一部に過ぎません。ヒトにおいては1塩基置換など軽微な遺伝子変化が成人発症の心病変をきたすことから、これらの解析には地道な症例集積と正確な遺伝子解析が必要になるのです。私は①詳細な臨床情報を伴った症例を集積し、遺伝子解析を行って臨床所見と連関する遺伝子変化を同定すること、②その遺伝子変化がもたらす病態をモデル動物作成などにより明らかにすること、を柱に研究を進めています。最終目標は、心血管病発症・進展における環境―遺伝子連関を少しでも明らかにすることにあります。

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トピックス
KRAS 変異を伴う自己免疫性リンパ増殖症候群 ―ALPS と JMML を結びつける新たな疾患―

高木正稔*   水谷修紀**
* 東京医科歯科大学小児科 講師 ** 同教授


要  旨
 自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)は,FAS シグナル経路の異常によるリンパ球増多,自己免疫を呈する疾患である.若年性骨髄単球性白血病(JMML)は小児特有の骨髄異形成症候群(MDS)の中に位置づけられ,造血幹細胞での RAS/MAPK 経路の障害が関与している.我々は,リンパ球を含む造血幹細胞レベルの体細胞 KRAS 変異を持つ ALPS 様の疾患を発見した.血液学的には JMML 様の所見も認められ,これを RAS associated ALPS like diseases(RALD)と命名した.無関係と思われていた JMML と ALPS が,RALD を交差点とする形で交わっている.

キーワード
KRAS、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)

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トピックス
EGFR 遺伝子ステータスに応じた非小細胞肺がんに対する分子標的薬

前門戸 任*
* 宮城県立がんセンター呼吸器科 診療科長


要  旨
 遺伝子変異陽性肺がんに対する EGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ)の治療効果が,本邦を含めた複数の第Ⅲ相試験で明らかになった.奏効率,無増悪生存期間とも EGFR-TKI が有意に良好であるが,クロスオーバーが起こるため生存期間には差がない.現段階では,EGFR-TKI を二次治療以降より一次治療に用いるほうが良いという明確なエビデンスはない.しかし,EGFR-TKI がキードラッグであることは疑いなく,EGFR-TKI の投与の時期を逸することがないよう注意が必要である.

キーワード
EGFR遺伝子変異、EGFR-TKI治療、第Ⅲ相試験、ファーストライン治療

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