最新医学67巻9月増刊号 
抗がん剤治療の最前線:
分子標的薬剤の使用による進歩(後篇)

要  旨

●座談会

 めざそう,がん研究:がん治療にたずさわる若手から

東京医科大学          細永 真理 
がん研究会がん研究所      津山 直子
がん研究会有明病院      畠 清彦(司会)

 座談会の内容
 ・なぜ今の仕事を選んだのか
 ・初期研修時の印象
 ・研究して思ったこと
 ・将来の夢 など 

 津山先生       畠先生       細永先生


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各臓器別の最新治療と新薬の動向
肺がん 1.小細胞肺がん

清家 正博*    弦間 昭彦**
*日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科分野准教授 **同教授

要  旨
 小細胞肺がん(SCLC)は,化学療法や放射線療法に高い感受性を示すものの,再発転移および薬剤耐性化が問題になる悪性度の高い難治性腫瘍である.SCLC に対する分子標的治療は標準化されていないが,新規分子標的薬を用いた幾つかの臨床試験が実施されており,その結果が待たれるところである.今後,SCLC に対する新たな分子標的因子の同定と,その標的薬の開発を含む新規治療戦略の構築が望まれている.

キーワード
小細胞肺がん、分子標的治療

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
肺がん 2.非小細胞肺がんの分子分類とEGFR変異肺がん

須田 健一*1*2 光冨 徹哉*2*3

*1九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科
*2愛知県がんセンター中央病院呼吸器外科 *3近畿大学医学部外科学呼吸器外科部門 教授

要  旨
 がん細胞が1つのがん遺伝子の異常にその生存・増殖を依存している“oncogene addiction”という現象が非小細胞肺がん(NSCLC)にもあてはまるということが,徐々に明らかとなってきた.1つの分子異常を抑えることで著明な増殖抑制効果がもたらされるこのようながんは,まさに分子標的治療の最も適切な治療対象である.本稿では,このような NSCLC の分子異常について概説した後,最も頻度の高いサブセットである上皮成長因子受容体(EGFR)変異肺がんについて詳述する.

キーワード
分子標的治療、がん遺伝子依存性、EGFR変異肺がん、EGFRキナーゼ阻害薬、獲得耐性

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
肺がん 3.c−MET 経路異常

水谷 英明*1  酒井  洋*2

*1自治医科大学呼吸器内科 助教 *2埼玉県立がんセンター呼吸器内科 部長

要  旨
 c−MET受容体型チロシンキナーゼ(RTK)は肝細胞増殖因子(HGF)の細胞表面受容体であり,HGF と c−MET 発現は多くの固形腫瘍において認められ,c−MET シグナルはさまざまの肉腫,造血器腫瘍や黒色腫と同様に肺がん,胃がん,大腸がん,腎がん,乳がんなどのさまざまな固形腫瘍においても認められている.c−MET はがんの進展に関与する複数のシグナル伝達経路をコントロールしていることから,がん治療に対し非常に有力なターゲットであると考えられている.

キーワード
肺がん、c-MET、tivantinib、onartuzumab

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
肺がん 4.ALK 陽性肺がん

蜥J 典子*   西尾 誠人**
*がん研究会有明病院呼吸器センター呼吸器内科 **同部長

要  旨
 肺がんの新たな治療戦略として,がん遺伝子異常(driver mutation)を発見し,その阻害薬を投与する個別化治療が急速に進歩している.2007 年に発見された EML4−ALK 融合遺伝子はその1つであり,阻害薬であるクリゾチニブは,2012 年3月に承認され,本邦でも一般に使用できるようになった.クリゾチニブの効果は,EGFR 遺伝子変異陽性肺がんに対するイレッサメ やタルセバメ と同程度に期待できるが,一方で重篤な毒性を認めることもあり,注意が必要である.ALK 陽性肺がんは頻度が少ないが,いかに ALK 陽性肺がんをスクリーニングし,正確に診断するかが重要である.また,奏効例においても10ヵ月ほどで耐性となることがすでに問題となっており,次世代の ALK 阻害薬の開発が進んでいる.

キーワード
ALK陽性肺がん、クリゾチニブ、分子標的治療薬、非小細胞肺がん

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
肺がん 5.悪性胸膜中皮腫に対する治療の現状と最新治療について
−分子標的治療および遺伝子治療を中心に−

豊川 剛二*   山口 正史*   瀬戸 貴司*   杉尾 賢二*
一瀬 幸人**

*独立行政法人国立病院機構九州がんセンター呼吸器腫瘍科 
**同臨床研究センターセンター長

要  旨
 悪性胸膜中皮腫は胸膜の中皮細胞から生じる腫瘍であり,アスベスト曝露との連関が知られている.呼吸困難や胸痛が主訴となることが多く,CT では胸膜のびまん性肥厚や胸水が見られる.胸腔鏡下生検によって確定診断に至ることが多く,治療としては化学療法,手術や放射線照射が行われるが,治療成績が良いとは言い難く,分子標的治療や遺伝子治療によって,さらなる治療成績の向上が望まれる.

キーワード
悪性胸膜中皮腫、アスベスト、分子標的治療、遺伝子治療

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
胃 が ん


谷口 浩也*   室  圭**
*愛知県がんセンター中央病院薬物療法部 **同部長

要  旨
 切除不能胃がんに対する標準治療は,1次治療がフッ化ピリミジン系薬剤とプラチナ製剤の併用療法,2次治療は WJOG4007 試験の結果から,パクリタキセル(PTX)療法と考えられる.分子標的薬剤は,HER2 陽性胃がんに対するトラスツズマブの有効性が検証されたが,ベバシズマブ,エベロリムス,パニツムマブは有効性を検証できなかった.治療の個別化と成績改善のため,基礎研究および早期臨床開発から,本邦がリードしていく必要がある.

キーワード
胃がん、化学療法、標準治療、分子標的薬剤

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
大腸がんにおける最新治療と新薬の動向

山ア 知子*   吉野 孝之**  大津  敦***
*国立がん研究センター東病院消化管内科 **同医長 ***同科長

要  旨
 切除不能・再発大腸がんの薬物療法は,殺細胞薬2剤の併用である FOLFOX,FOLFIRI,CapeOX 療法と,抗血管内皮増殖因子(VEGF)抗体のベバシズマブ(BV)または抗上皮増殖因子受容体(EGFR)抗体であるセツキシマブ(Cmab),パニツムマブ(Pmab)などの分子標的治療薬との併用療法が主流である.その結果,緩和医療(BSC)の時代に約6ヵ月であった全生存期間(OS)が約4倍の 24ヵ月まで改善した1).
 また,術後補助化学療法(CT)の適応は high−risk stageUとstageV症例であり,標準治療は FOLFOX または CapeOX 療法の6ヵ月投与である.
 新薬開発において,大腸がん細胞のメカニズムがより重要視されている,MAP kinase pathway や PI3 kinase/AKT pathway などの経路にあるさまざまな細胞内シグナル関連の分子を標的にしたものを中心に,新規薬剤の開発が進んでいる.本稿では,切除不能・再発進行大腸がんの薬物療法,術後補助 CT,期待される新薬について概説する.


キーワード
大腸がん、新薬、最新治療、化学療法、分子標的薬

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
GIST

澤木  明
名古屋第二赤十字病院薬物療法科 副部長

要  旨
 消化管間質腫瘍(GIST)は消化管由来の間葉系腫瘍の中で最も頻度の高い腫瘍である.腫瘍化の主な機序は c−kit 遺伝子の機能獲得性変異であり,KIT を阻害するイマチニブおよびスニチニブが有効である.切除不能 GIST に対するイマチニブとスニチニブの無増悪生存期間(PFS)の中央値はそれぞれ約2年と7ヵ月である.治療効果は,腫瘍径の変化で判定できるが,造影効果も考慮する必要がある.完全切除後の再発抑制を目的としたイマチニブの術後補助化学療法も有効である.高リスクや腫瘍破裂を伴う GIST に対しては,3年間のイマチニブ内服が勧められる.KIT を含めた経口マルチチロシンキナーゼ阻害薬である regorafenib の有効性が報告されており,第三の GIST の治療薬として期待されている.

キーワード
GIST、イマチニブ、スニチニブ、術後補助化学療法

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
前立腺がんに対する新規治療薬

井上 正浩*   井手 久満**  堀江 重郎***
*帝京大学医学部泌尿器科 **同准教授 ***同教授

要  旨
 前立腺がん細胞はアンドロゲン依存的に増殖する.したがって,アンドロゲンシグナル伝達系をさまざまなレベルで抑制する治療戦略が前立腺がんに用いられている.しかし,その多くは治療の過程でホルモン療法不応性になる.従来の治療法に抵抗性であるような転移,播種した進行期前立腺がんを対象にする場合,これまでの臨床データに立脚した集約的治療が求められており,今後さまざまな新薬が期待されている.

キーワード
前立腺がん、アンドロゲン、去勢抵抗性、骨転移

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
進行性腎細胞がんの最新治療と新薬の動向

水野 隆一*   大家 基嗣**
*慶應義塾大学医学部泌尿器科学教室 **同教授

要  旨
 進行性腎細胞がんに対する分子標的治療の主なターゲットとなっているのは,VHL/HIF/VEGF 経路と PI3K/Akt/mTOR 経路である.現在国内では4種類の分子標的薬が進行性腎細胞がんに対して使用可能であるが,海外ではこれらの薬剤に加えて数種類の新規分子標的薬が使用可能,あるいは臨床試験の段階にある.進行性腎細胞がんに対する分子標的治療は常に進歩しており,常に最新の知見を取り入れていく必要がある.

キーワード
腎細胞がん、分子標的療法、チロシンキナーゼ阻害薬、mTOR阻害薬

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
乳がんに対する分子標的治療の進歩

伊藤 良則
がん研究会有明病院乳腺センター乳腺内科

要  旨
 乳がん腫瘍学の理解に伴いサブタイプ別の治療が進歩した.ヒト上皮成長因子受容体2型(HER2)を標的とした治療薬は,トラスツズマブ,ラパチニブが標準治療となり久しいが,加えてペルツズマブ,trastuzumab emtansine(T−DM1)が治療成績を向上させた.転移乳がんに対して,ベバシズマブはパクリタキセルとの併用によって,奏効率と無増悪生存期間(PFS)を有意に延長させた.骨転移に対するデノスマブは,従来のゾレドロン酸より優れた.ほ乳類ラパマイシン標的タンパク(mTOR)阻害薬であるエベロリムスはアロマターゼ抵抗性乳がんに対して,エキセメスタンとの併用によって PFS を有意に延長させた.これらの分子標的治療薬は,乳がんの治療アルゴリズムに大きな影響を与えている.

キーワード
乳がん、分子標的、サブタイプ

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
肝細胞がん

上嶋 一臣* 工藤 正俊**
*近畿大学医学部消化器内科講師 **同教授

要  旨
 肝細胞がん治療において,肝切除,ラジオ波熱凝固療法(RFA),肝動脈化学塞栓療法など局所療法が確立されてきたが,一方で,根治後再発予防や増悪予防などの新たな問題が生じている.進行例においては,ソラフェニブの登場により全身化学療法という新しい治療方法が確立したが,ソラフェニブの1次無効,2次無効,あるいは副作用による不耐,といった新たな問題が生じている.これらを克服すべく,新しい分子標的薬の開発が進行している.標準治療に分子標的薬を併用することで,生存期間の数年単位の延長が期待されており,分子標的薬は肝細胞がん治療において非常に重要な薬剤となっている.

キーワード
肝細胞がん、ソラフェニブ、ソラフェニブ不応・不耐

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
膵がん

古瀬 純司
杏林大学医学部内科学腫瘍内科 教授

要  旨
 膵がんに対する薬物療法では,現在ゲムシタビン(GEM)が標準治療薬として広く用いられており,分子標的薬は GEM との併用療法として開発されているものが多い.数多くの分子標的薬による大規模な第V相試験が行われているが,これまでのところ,上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害薬エルロチニブのみで生存期間の有意な延長が得られ,GEM との併用により適応が承認されている.エルロチニブは間質性肺炎の合併が高率であり,適切な適応と治療中の厳重な注意が必要である.

キーワード
膵がん、分子標的治療、エルロチニブ、第V相試験

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
膵神経内分泌腫瘍(P−NET)

手塚 康二*   木村  理**
*山形大学医学部消化器・乳腺甲状腺・一般外科学講座 **同教授

要  旨
 膵神経内分泌腫瘍(P−NET)に対する薬物療法は,腫瘍により分泌されるホルモンによる症状をコントロールするのみでなく,進行,再発症例に対して予後の改善を目的として行われる.WHO 分類では,P−NET は悪性度により分類されており,薬物療法もこの悪性度に応じて選択する.近年,P−NET に対する分子標的薬の効果を評価する臨床試験が数多く行われており,ほ乳類ラパマイシン標的タンパク(mTOR)阻害薬であるエベロリムスが進行性 P−NET に対する治療薬として 2011 年末,適応追加がなされ,マルチチロシンキナーゼ阻害薬であるスニチニブも 2012 年8月 10 日適応追加された.

キーワード
膵神経内分泌腫瘍、薬物療法、分子標的薬剤、エベロリムス、スニチニブ

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
卵巣がん

原野 謙一*   勝俣 範之**
*日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科 **同教授

要  旨
 卵巣がんの治療は近年目覚ましい進歩を遂げている.従来の3週ごと投与のパクリタキセル+カルボプラチン療法(TC 療法)に比較し,パクリタキセルを週1回投与とし治療強度を上げた dose−dense TC 療法による予後改善効果が示された.また,腹腔内化学療法は副作用が強く敬遠されていたが,近年毒性を下げた治療法が開発され,現在臨床試験が進行中である.さらに,分子標的治療薬の開発も進み,ベバシズマブ,olaparib の治療効果が,大規模臨床試験で示されている.

キーワード
卵巣がん、dose-dense TC療法、腹腔内化学療法、ベバシズマブ、olaparib

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
悪性リンパ腫 1.B細胞リンパ腫

小椋 美知則
名古屋第二赤十字病院血液・腫瘍内科 部長

要  旨
 抗 CD20 抗体リツキシマブ(RTX)の開発・導入は,B細胞リンパ腫に対して画期的治療進歩をもたらした.初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)および初発進行期濾胞性リンパ腫(FL)に対して,R−CHOP 療法は明らかな生存率の改善をもたらし,DLBCL や FL の新たな標準的治療法として確立した.しかし,RTX の治療限界が明らかになり,難治性B細胞リンパ腫に対して,分子標的薬を中心とした多くの新薬開発が進んでいる.

キーワード
B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、標準的治療法、新薬

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
悪性リンパ腫 2.T細胞リンパ腫とATL

塚崎 邦弘
国立がん研究センター東病院血液腫瘍科 科長

要  旨
 成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)を含む末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)は,B細胞リンパ腫と比べて予後不良,かつまれな疾患群であることから,その標準治療の開発は遅れていた.新 WHO 分類の改訂に基づく国際T細胞リンパ腫プロジェクトにより,T細胞リンパ腫の個々の疾患単位の臨床病態が明らかにされ,さらには最近,T細胞リンパ腫に対する新薬の開発が進みつつある.今後は治療法によって,対象疾患単位の個別化とグループ化を組み入れての標準治療法の開発が進むことが期待される.

キーワード
末梢性T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病・リンパ腫、標準治療、新規治療法開発

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
悪性リンパ腫 3.節外性 NK/T 細胞リンパ腫,鼻型

磯部 泰司
聖マリアンナ医科大学血液・腫瘍内科 講師

要  旨
 節外性 NK/T 細胞リンパ腫,鼻型(ENKL)の大多数はナチュラルキラー(NK)細胞由来のリンパ腫であり,70% 程度は鼻腔・鼻咽頭に限局する.限局期に対しては放射線療法同時併用化学療法が,進行期に対してはL−アスパラギナーゼ(L−Asp)を中心とした化学療法が有効であるということが,本邦を中心とした東アジアの研究者たちの貢献によって明らかになった.東アジアに多い予後不良のまれな疾患は,東アジアを中心としてその対策を考える.今後,標準治療の定まらないまれな疾患の治療法開発を考えるうえで,良いモデルケースとなった疾患である.標準治療法が開発された現在,治癒を目指した治療法の開発が進んでいる.

キーワード
節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型、放射線療法同時併用化学療法、SMILE療法、EBV-DNA量

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
皮膚T細胞リンパ腫に対する新規治療

大間知 謙*    安藤  潔**
*東海大学医学部内科学血液・腫瘍科講師 **同教授

要  旨
 菌状息肉症(MF)/セザリー症候群(SS)は極めてまれな病型である.限局期例の予後は良好であるが,進行例は極めて予後不良である.近年,インターロイキン−2(IL−2)受容体抗体とジフテリア毒素を結合した denileukin diftitox(DD),ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬のボリノスタット,romidepsin が臨床応用され,高い効果が報告されている.また,本邦で開発されたモガムリズマブの開発が期待されている.

キーワード
菌状息肉症、denileukin difftitox、HDAC阻害薬、モガムリズマブ

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
移植適応でない多発性骨髄腫の最新治療

稲垣  淳*1  飯田 真介*2
*1名古屋市立西部医療センター血液・腫瘍内科 副部長
*2名古屋市立大学大学院医学研究科腫瘍・免疫内科学 准教授

要  旨
 多発性骨髄腫に対し劇的な抗腫瘍効果を持つ新規薬剤が登場し,移植適応でない骨髄腫の初回標準治療は,30年来の標準治療であった MP 療法から,MP 療法と新規薬剤との併用療法に変わりつつある.これまで MP−T 療法[サリドマイド(THAL)との併用]や,V−MP 療法[ボルテゾミブ(BOR)との併用]は,MP 療法と比べ生存期間が改善することが示された.ほかの新規薬剤も,骨髄腫に対する最適な治療戦略を確立する試みが続けられている.

キーワード
多発性骨髄腫、サリドマイド、レナリドミド、ボルテゾミブ

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
MDS 治療の最近の動向:アザシチジンを中心に

桐戸 敬太
山梨大学医学部血液・腫瘍内科 教授

要  旨
 骨髄異形成症候群(MDS)の根治的な治療は造血幹細胞移植である.しかしながら,MDS の多くは移植を行うのが困難な高齢者に発症することが多いことが問題であった.最近,DNA メチル化阻害薬の1つであるアザシチジンについて,大規模臨床試験(AZA−01 試験)により高齢者を含む高リスク MDS に対して生存率を改善することが示された.これより,アザシチジンは移植非適応症の高リスク MDS に対する標準的治療と位置づけられている.

キーワード
骨髄異形成症候群、エピジェネティクス、メチル化阻害薬、アザシチジン

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
白血病 1.慢性骨髄性白血病の治療

大場 理恵*   薄井 紀子**
*東京慈恵医科大学附属第三病院腫瘍・血液内科 **同診療部長

要  旨
 慢性骨髄性白血病(CML)の治療方法は,チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の登場により劇的に変化した.現在,第1世代 TKI であるイマチニブ(IMA)に続き,第2世代 TKI であるニロチニブ(NIL)とダサチニブ(DAS)も保険適応が認可されており,治療選択肢が広がりつつある.モニタリングを行いながら,患者背景を考慮しつつ,治療を選択する必要がある.

キーワード
フィラデルフィア染色体、チロシンキナーゼ阻害薬、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ

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各臓器別の最新治療と新薬の動向
白血病 2.急性リンパ性白血病に対する分子標的療法

久富  崇*   木村 晋也**
*佐賀大学医学部血液・呼吸器・腫瘍内科 **同教授

要  旨
 成人急性リンパ性白血病(ALL)は,強力な化学療法を行っても予後不良な疾患である.同種造血幹細胞移植(alloHSCT)により治療成績の向上が認められたが,長期生存率は 30% 程度と十分ではない.成人 ALL の治療成績が不良な原因として,20〜30% の症例でフィラデルフィア染色体(Ph)が陽性であることが考えられる.画期的な分子標的薬剤である ABL チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の使用により,Ph+ALL の治療成績が向上してきた.

キーワード
フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ

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