最新医学68巻2号 
特集 血管炎症候群 -新しい分類と名称-


要  旨


座談会 血管炎の新しい分類と名称 

北里大学            勝岡 憲生 
東邦大学           高橋 啓
聖マリアンナ医科大学     尾崎 承一(司会)

 座談会の内容
 ・CHCC1994の概要と利点
 ・CHCC2012の概要
 ・CHCC2012の臨床や病理への影響
 ・CHCC2012の将来への影響
 など

  高橋先生     尾崎先生         勝岡先生

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総説
2012 Revised International Chapel Hill Consensus Conference Nomenclature of Vasculitides

高橋 啓***  大原関利章**  横内 幸*
* 東邦大学医療センター大橋病院病理診断科 ** 同講師 *** 同教授

要  旨
 血管炎疾患は,これまでさまざまな視点から分類が試みられてきた.2013年1月,血管炎の疾患名称とその定義を決定することを目的として1994年に刊行された Nomenclature of systemic vasculitides,proposal of an international consensus conference(CHCC1994)の改訂版である 2012 Revised International Chapel Hill Consensus Conference Nomenclature of Systemic Vasculitides(CHCC2012)が公表された.CHCC2012 では CHCC1994 と比較して対象疾患が大幅に増しており,それぞれの分類項目や疾患定義が示されている.今後,さまざまな領域で利用されていくことが期待される.

キーワード
CHCC2012、用語体系、系統的血管炎、Eponym、川崎病

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Small vessel vasculitis
Upper Respiratory Tract Lesion of Granulomatosis with Polyangiitis(GPA)and Otitis Media with ANCA-associated Vasculitis(OMAAV)

原渕保明*** 岸部 幹**  駒林優樹*
* 旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科 ** 同講師 *** 同教授

要  旨
 上気道限局型 GPA では,70% の症例で典型的病理組織所見が得られない.また,50% の症例が PR3-ANCA 陰性であるが,MPO-ANCA が陽性の症例も少なからず見られる.現在の診断基準では診断が困難な症例も多く,MPO-ANCA 陽性や上気道の2病変を含めるような診断基準の見直しが必要と思われる.また,新たな疾患概念として OMAAV を提唱した.進行すると,顔面神経麻痺や肥厚性硬膜炎による脳神経症状の合併も来しやすい点に注意が必要である.現状においては,このような症例に対しては診断的治療を目的としたプレドニゾロン・シクロホスファミド併用療法を行うことも考慮すべきである.

キーワード
多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、ANCA関連血管炎、ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)

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Small vessel vasculitis
Immune Complex Vasculitis 1.Anti-GBM Disease

山縣邦弘*
* 筑波大学医学医療系臨床医学域腎臓内科学 教授

要  旨
 2012 年の Chapel Hill Consensus Conference(CHCC)において,抗糸球体基底膜(GBM)病が免疫複合体型の小型血管炎の1つとして位置づけられた.抗 GBM 病は血液中に抗 GBM 抗体が存在あるいは GBM に線状の抗体の沈着を認める比較的まれな疾患で,病型としては腎臓では急速進行性腎炎を,肺では肺出血を来す.強い炎症とともに急速に腎機能の悪化を来す症例が多く,早期発見と早期の治療開始が必須であるが,いまだ予後は不良である.

キーワード
急速進行糸球体腎炎、Goodpasture症候群、半月体形成性腎炎、抗糸球体基底膜抗体

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Small vessel vasculitis
Immune Complex Vasculitis 2.Hypocomplementemic Urticarial Vasculitis (Anti-C1q Vasculitis)


寺井千尋*
* 自治医科大学付属さいたま医療センターアレルギー・リウマチ科 教授

要  旨
 低補体血症性蕁麻疹様血管炎は,蕁麻疹と白血球破砕性血管炎,持続性低補体血症を特徴とする小血管炎である.全身症状を伴い,糸球体腎炎,関節痛・関節炎,血管性浮腫,閉塞性呼吸器疾患や炎症性眼病変が見られる.ごくまれな疾患で,抗C1q抗体が全例に見られる.全身性エリテマトーデス(SLE)に類似する症例もあるが,SLEの診断基準は満たさない.SLEに準じた治療が行われるが,しばしば呼吸器病変や急性喉頭浮腫が死因となる.

キーワード
低補体血症性蕁麻疹様血管炎、白血球破砕性血管炎、蕁麻疹、低補体血症、閉塞性肺疾患

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Variable vessel vasculitis
Behct's Disease


廣畑俊成*
* 北里大学医学部膠原病・感染内科学 教授

要  旨
 血管ベーチェット病では,静脈系の血栓性閉塞を来すことが圧倒的に多い.下肢の静脈血栓に続発して肺塞栓を来しやすい.動脈系では中型主幹動脈の閉塞と動脈瘤が見られ,前者は高安動脈炎と酷似している.肺動脈瘤はまれではあるが重篤な合併症であり,ときに致死的となる.血管ベーチェット病の治療における免疫抑制療法と抗凝固療法の有用性についてはエビデンスが確立していないが,本邦ではワルファリンが汎用されている.

キーワード

vasa vasorum、静脈血栓、肺動脈瘤、動脈閉塞、コルヒチン

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Variable vessel vasculitis
Cogan's Syndrome

藤井隆夫*

* 京都大学大学院医学研究科リウマチ性疾患制御学講座 准教授

要  旨
 Cogan症候群は,間質性角膜炎,前庭聴力障害に加えて,発熱や多関節炎などの全身症状を来す極めてまれな疾患である.1945年にCoganらが4例を報告してから症例の蓄積が進んでいるが,若年者が多く,平均発症年齢は25歳である.動脈瘤を伴う大動脈炎など血管炎症状を認めることもあり,大量ステロイドに加えて免疫抑制薬が併用されることが多い.

キーワード
Cogan症候群、間質性角膜炎、難聴、大動脈炎

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Single organ vasculitis
Cutaneous Small Vessel Vasculitis


古川福実*
* 和歌山県立医科大学皮膚科 教授

要  旨
 1994 年の Chapel Hill Consensus Conference(CHCC)分類の出現は,皮膚血管炎の分類や考え方に大きな影響を与えた.その一方で,日本皮膚科学会は,皮膚という臓器の独自性を踏まえたガイドラインを作成した.このガイドラインと2012年のCHCC分類を紹介し,皮膚白血球破砕性血管炎,皮膚型結節性多発動脈炎,皮膚アレルギー性血管炎(Ruiter型),IgA vasculitis,hypocomplementemic urticarial vasculitis について論じた.

キーワード
皮膚血管炎、小血管、CHCC分類、日本皮膚科学会血管炎・血管障害ガイドライン、皮膚白血球破砕性血管炎

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Single organ vasculitis
CNS Vasculitis

平野照之*
* 大分大学医学部総合内科学第三講座 准教授

要  旨
 CNS vasculitis の臨床像には,高度の白質病変が主体,腫瘍性病変を形成,脳出血発症などさまざまなものがある.二次性脳血管炎を生じる感染症や全身性血管炎症候群を除外するとともに,脳血管造影所見,脳生検所見と臨床症候を併せて診断する.致死的転帰をとる例も少なくないが,組織型によってはステロイドと免疫抑制薬による積極的治療で予後改善が期待できる.早期に本疾患を認識し,診断確定することが大切である.

キーワード
CNS vasculitis、脳血管造影、脳生検、脳アミロイド血管症、免疫介在性血管炎

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Vasculitis associated with systemic disease
Rheumatoid Vasculitis

天野宏一*
* 埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科 教授

要  旨
 リウマトイド血管炎は,関節リウマチに伴う血管炎症候群で,本邦では悪性関節リウマチと呼ばれる.病理学的に血管炎を伴わない間質性肺炎を有する例も,「非血管炎型」として本症の概念に含める.典型的な「血管炎型」には,結節性多発動脈炎様の全身性動脈炎型(Bevans 型)と,四肢末梢および皮膚を侵し,内膜の線維性増殖を呈する末梢動脈炎型(Bywaters 型)の2つがある.

キーワード
悪性関節リウマチ、リウマトイド血管炎、関節外症状、間質性肺炎

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Vasculitis associated with systemic disease
Lupus Vasculitis

髙崎芳成*

* 順天堂大学医学部膠原病内科 教授

要  旨
 全身性エリテマトーデス(SLE)は,二次性血管炎の主要な疾患の1つとして知られている.細・小動脈を中心に壊死性血管炎や蕁麻疹様血管炎などを認めるが,これらの所見はSLE独自の病変ではなく,他の血管炎症候群でも認められる.一次性血管炎との鑑別が問題となるが,SLEの診断が確実に行える場合にはそれに伴う二次性血管炎と考える.血管炎は主として皮膚に認められ,臓器病変はまれであるが,しばしば致死的な経過をとることから臨床上問題となる.

キーワード
全身性エリテマトーデス、ループス血管炎、皮膚病変、壊死性血管炎、白血球破砕性血管炎

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Vasculitis associated with systemic disease
Sarcoid Vasculitis

陳 科榮*
* 東京都済生会中央病院皮膚科 部長

要  旨
 サルコイドーシスに血管炎を合併する sarcoid vasculitis は,あらゆる血管レベルに見られる.肺に多いが,サルコイドーシスの好発部位である皮膚は少ない.各臓器の筋性動静脈の血管壁や血管周囲に肉芽腫を形成する肉芽腫性血管炎が多い.一方,まれに真皮浅層の leukocytoclastic vasculitis を見ることもある.

キーワード
Sarcoid vasculitis、サルコイドーシス、サルコイド肉芽腫、肉芽腫性血管炎、Leukocytoclastic vasculitis

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Vasculitis associated with probable etiology
Drug-induced ANCA-associated Vasculitis

有村義宏*
* 杏林大学第一内科(腎臓・リウマチ膠原病内科) 教授

要  旨
 ANCA 関連血管炎の誘発薬剤として,抗甲状腺薬(プロピルチオウラシルなど),抗生物質(ミノサイクリンなど),降圧薬(ヒドララジンなど),TNF 阻害薬などが報告されている.薬剤誘発性 ANCA 関連血管炎の臨床所見は一次性 ANCA 関連血管炎と同様であるが,薬剤中止により改善することが多い.ANCA 関連血管炎患者では,まず薬剤との関連を調べることが大切である.薬剤誘発性 ANCA 関連血管炎は,一次性 ANCA 関連血管炎の病態解明にも繋がると期待される.

キーワード
薬剤誘発性ANCA関連血管炎、抗好中球細胞質抗体、ミエロペルオキシダーゼ、抗甲状腺薬

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Vasculitis associated with probable etiology
Vasculitis Related to HBV or HCV

南 康範*   西田直生志**
* 近畿大学医学部消化器内科医学部 講師 ** 同准教授

要  旨
 肝炎ウイルスは免疫複合体が関連する小型血管炎の原因として知られており,この関連性は血管炎分類に関する Chapel Hill Consensus Conference(CHCC)2 でも取り上げられている.ウイルス性肝炎に合併する腎炎は以前より知られているが,B型肝炎には膜性腎症,C型肝炎には膜性増殖性腎炎と,成因や病態が必ずしも同じではない.しかしながら両疾患とも,肝炎治療が奏効した場合には供給抗原の減少から腎炎が軽快するという特徴を持つ.そのため,ネフローゼ患者における肝炎ウイルスの検索が望ましい.また,そのほかにも肝炎ウイルスとクリオグロブリン血症や結節性多発動脈炎との関連性も知られている.

キーワード
HBV関連腎症、HCV関連腎症、クリオグロブリン血症、結節性多発動脈炎

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連載
現代社会とうつ病

  現代社会において問題となっております「うつ病」について病気そのものの解説、法、サポート体制などを連載形式で詳しく紹介する目的で連載「現代社会とうつ病」を企画致しました。
 今号から約3年間にわたり国内の診療・研究の最前線でご活躍されている先生方に「うつ病」について詳しくご解説をお願いしております。
 第22回は東京女子医科大学・村岡 寛之 先生らによる「治療について-抗うつ薬の適正使用-」です。

要  旨
 うつ病に対する薬物療法は進化してきたが,近年では抗うつ薬に関連した自殺や賦活化症候群(activation syndrome)の問題が顕在化している.抗うつ薬は十分な知識を持ったうえで,慎重に使用することが必要である.

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連載
トップランナーに聞く(第26回)
核酸による自然免疫および獲得免疫の制御機構の研究と核酸アジュバントのワクチンへの応用研究

 「最新医学」では第66巻からの新企画として「トップランナーに聞く」と題し、最先端の研究をされている40歳前後の先生のインタビューを掲載します。
 第26回は核酸アジュバントのワクチン実用化に向けた基礎から臨床への橋渡し研究をされている医薬基盤研究所の石井 健 先生にお話を伺いました。

 石井 健 先生

 核酸(DNA,RNA)の免疫学的生理活性、核酸による自然免疫および獲得免疫の制御機構の研究、および核酸を利用したワクチン・アジュバント、代替免疫療法開発を行っています。1996年より7年間、米国保健省食品医薬品局(FDA)の生物製剤ワクチン部門にて審査官としてかかわりました。2003年大阪大学微生物病研究所、2010年4月より(独)医薬品基盤研究所のアジュバント開発プロジェクトリーダーとして上記研究を行っております。

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連載
ノーベル賞と医学の進歩・発展

 68巻10号からノーベル賞の対象となった業績やその業績が現在どのような恩恵をもたらしているかについて、各領域の専門家の先生方に詳しいご解説をお願いしております。

 第5回は京都大学名誉教授・糸川 嘉則 先生による「ビタミン発見の歴史」です。


トピックス
最近のステロイド補充療法の考え方

宗 友厚*
* 川崎医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科学 教授

要  旨
 副腎皮質機能不全症に対しては,グルココルチコイドの補充は必須である.我が国での使用量は,原発性ではコートリル®20mg/日,続発性では15~20mg/日と,理論値より若干多めの補充量とも言えるが,副腎クリーゼ予防に比重が置かれたものと認識できよう.生命予後は改善したとはいえ,QOL改善のためには,理想的には日内リズムに応じ体重換算した補充が推奨される.剤型を含め至適な投与法を模索していく必要がある.

キーワード
原発性副腎皮質機能低下症、続発性副腎皮質機能低下症、コルチゾール、コーチゾン、グルココルチコイド

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特報 第49回 2012年度ベルツ賞受賞論文1等賞
自己免疫疾患,天疱瘡の病態解明と臨床応用

天谷雅行*
* 慶應義塾大学医学部皮膚科 教授

要  旨
Pemphigus is a group of autoimmune diseases of the skin and mucous membranes and has three subtypes; pemphigus vulgaris, pemphigus foliaceus, and paraneoplastic pemphigus. The modern history of pemphigus began with the discovery of circulating IgG autoantibodies against keratinocyte cell surfaces in those patients by Beutner and Jordon in 1964. In the late 1970s and early 1980s, pemphigus autoantibodies were shown to be pathogenic, i.e. they could induce blister formation in skin organ-culture systems as well as by passive transfer of patientsユ IgG to neonatal mice. We and other groups contributed to identify the target antigens of pemphigus as desmogleins by cDNA cloning; desmoglein 1 (Dsg1) for pemphigus foliacues and desmoglein 3 (Dsg3) for pemphigus vulgaris. We then produced recombinant Dsg1 and Dsg3 by baculovirus expression system and used them to develop Dsg ELISAs, which are now widely used as a sensitive and specific serological diagnostic test for pemphigus in Japan as well as around the world. Desmoglein compensation, not only provided logical explanation for the blister sites in pemphigus, but also lead us to the discovery of the real nature of staphylococcal exfoliative toxins as Dsg1-specific serine proteases. Pemphigus mouse model, which was developed by a novel approach using adoptive transfer of Dsg3-/- lymphocytes to Rag2-/- mice, provided a valuable tool to isolate pathogenic anti-Dsg3 IgG monoclonal antibodies and Dsg3-reactive CD4+ T cells. We then generated Dsg3-specific T cell-receptor (TCR) transgenic mice and found that Dsg3-specific CD4+ T cells are able to induce, not only pemphigus, but also interface dermatitis, a common form of T cell-mediated skin inflammation. Our journey with pemphigus will continue until we find the fundamental mechanisms of autoimmunity and tolerance to provide cure to patients with these devastating diseases.

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