最新医学68巻8号 
特集 消化器疾患における超音波内視鏡検査 -現況と将来展望-



要  旨


座談会 消化器疾患に対する超音波内視鏡検査 ―欧米と日本―

近畿大学           北野 雅之
東京女子医科大学       中井 陽介
愛知県がんセンター     山雄 健次 (司会)

 座談会の内容
 ・致死性遺伝性不整脈の定義・概念
 ・従来の原因遺伝子探索法
 ・エクソーム解析
 ・今後のアプローチ など

 中井先生       山雄先生       北野先生

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総説
消化器疾患における超音波内視鏡検査 ―現状とこれから―

安田健治朗*
* 京都第二赤十字病院消化器内科 副院長

要  旨
 内視鏡的超音波断層法(EUS)は,体腔内超音波診断法として開発され,膵胆道病変,消化管病変診断に活用されてきた.しかしながら,画像診断法として限界のある病変診断や鑑別診断を目的に,また組織病理診断を目的に,EUS 画像下に対象を穿刺して組織診断を行う EUS-FNA が開発され,高い診断能が確認され急速に普及してきた.この手技を応用したドレナージ術や局注術などさまざまな処置が可能となり,臨床応用の範囲は広がった.今後,処置具の開発を含めた手技の拡大が期待される.


キーワード
EUS、EUS-FNA、Interventional EUS、超音波内視鏡、画像診断法

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EUS の現況と新展開
超音波内視鏡検査による消化管疾患の診断の現況

木田光広**  三島孝仁*   金子 亨*   山内浩史*   奥脇興介*   
宮澤志朗*  池田弘子*   岩井知久*   菊地秀彦*   荒木正雄*   
渡辺摩也*   今泉 弘*  小泉和三郎***

* 北里大学医学部消化器内科   ** 同准教授 *** 同教授

要  旨
 超音波内視鏡検査(EUS)は,胆膵疾患のみならず消化管疾患においても,その診断に必要欠くべからざる検査法である.EUS により粘膜下腫瘍は,①主存在層,②エコーレベル,③内部エコーパターンにより,組織診断の推定がある程度可能であり,脂肪腫,リンパ管腫などでは確定が可能である.消化器悪性腫瘍の深達度診断は,特に三次元超音波内視鏡(3D-EUS)を用いることでその精度が向上することが知られ,内視鏡的粘膜剥離術(ESD)の術前診断として参考となり,無駄な ESD を避けることができる.その他,静脈瘤,炎症性腸疾患においてもその有用性が知られている.

キーワード
超音波内視鏡検査、消化管疾患、胃がん、粘膜下腫瘍、超音波内視鏡下穿刺術

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EUS の現況と新展開
超音波内視鏡検査による胆膵疾患の診断の現況


真口宏介**  小山内 学*   潟沼朗生*   高橋邦幸*
* 手稲渓仁会病院消化器病センター主任医長   ** 同センター長

要  旨
 超音波内視鏡検査(EUS)は,高い局所分解能を有することが最大の長所であり,小病変の指摘,質的診断に有用性が高い.胆膵領域での EUS の役割は,膵ではがんの早期発見,進展度診断,充実性・■胞性病変の鑑別,IPMNの結節の評価,胆道では胆■・胆■管がんの早期発見,胆■隆起・壁肥厚性病変の鑑別,小さな胆管結石の診断,胆管狭窄の鑑別,乳頭部腫瘍の進展度診断など,準スクリーニングから質的診断,進展度診断,そして組織採取まで幅広い用途がある.

キーワード
超音波内視鏡検査(EUS)、肝膵疾患、膵がん、胆道がん

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EUS の現況と新展開
超音波内視鏡の新展開 ―造影 EUS―


今津博雄*1  田尻久雄*2
*1 東京慈恵会医科大学内視鏡科准教授   *2 同消化器・肝臓内科主任教授

要  旨
 第2世代超音波造影剤が開発され,造影ハーモニック EUS が可能となった.特に胆膵領域では,造影ハーモニック EUS は,通常のハーモニック EUS の悪性腫瘍の進展度診断,鑑別診断の診断精度を向上させることが報告されている.造影輝度の解析ソフトウエアの開発も進み,より客観的な診断も可能となってきた.造影ハーモニック EUS は,これまで指摘されてきた EUS/EUS-FNA の限界を克服する検査手技として期待されている.

キーワード

EUS、造影、ハーモニック

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EUS の現況と新展開
EUS を用いた Elasticity Imaging ―EUS-elastography―

廣岡芳樹**1  伊藤彰浩**2  川嶋啓揮*2   大野栄三郎*1  伊藤裕也*1  
杉本啓之*1   鷲見 肇*1  林 大樹朗*1  桑原崇通*1   森島大雅*1  
舩坂好平*1  中村正直*1   宮原良二*1  後藤秀実***1***2

*1 名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部   **1 同准教授 ***1 同教授
*2 同大学院医学系研究科消化器内科学   **2 同講師 ***2 同教授

要  旨
 現在臨床応用されている EUS-elastography(Real-time tissue elastographyメ)は strain elastography に分類される Elasticity Imaging であることを理解することが何よりも重要である.  EUS-elastography 画像の解釈は,対象が局所病変か,びまん性病変かで異なる.局所病変の診断にはパターン認識と strain ratio(SR)を用いた半定量分析が行われている.また,びまん性疾患の診断においては各種特徴量が何を示すものかを熟知し,特徴量を組み合わせて診断を行うことが必要である.

キーワード
ストレイン法、剪断波、Elasticity Imaging、Real-time tissue elastography®

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EUS-FNA の現況
EUS-FNA の標準的手技と診断能向上の試み


山部茜子*   入澤篤志**  渋川悟朗*   阿部洋子*   二階堂暁子*   
忌部 航*   星 恒輝*

* 福島県立医科大学会津医療センター消化器内科学講座   ** 同教授

要  旨
 超音波内視鏡検査(EUS)は,消化器がんの深達度診断や,消化管粘膜下腫瘍や膵胆道腫瘤性病変の鑑別診断などに広く応用され,消化器疾患の診療にとって欠かせない診療機器である.しかし,画像診断中心である EUS の診断能力には限界があり,その問題をクリアする技術として超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)は開発された.EUS-FNAは高い診断能,低侵襲性,安全性の面から確定診断法としての有用性は高く,これまでは非侵襲的な検体採取が困難であった膵疾患,消化管粘膜下腫瘍,縦隔・腹腔腫大リンパ節の病理学的確定診断に大きく寄与している.その他,肝・胆道・脾臓病変などの経消化管的に穿刺可能な病変にも広く応用されている.また,最近ではさらなる診断能向上のための各種技術の開発もなされており,EUS-FNA は今後のさらなる発展が期待できる診断手技である.

キーワード
超音波内視鏡検査(EUS)、EUS-FNA、Rapid on-site evaluation、膵がん

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EUS-FNA の現況
消化管粘膜下腫瘍に対する EUS-FNA の現況

赤星和也**1  大屋正文*2  古賀 聡*3   本村廉明*1  久保川 賢*1  
宜保淳也*1   金山兼司*1  福田慎一郎*1  濱田匠平*1   大塚宜寛*1  
細川泰三*1  友枝 成*1   宮崎岳大*1  宇都宮 蘭*1  宮垣亜紀*1

*1 麻生飯塚病院消化器内科 **1 同部長   *2 同病理部部長 *3 同外科

要  旨
 超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引法(EUS-FNA)は,消化管粘膜下腫瘍(SMT)の組織診断を安全かつ正確に行える確立された検査法である.消化管 SMT の代表的悪性腫瘍である消化管間質腫瘍(GIST)の術前診断には,EUS-FNA による免疫組織化学的検査で c-kit または CD34 陽性を証明することが不可欠である.GIST の術後転移率は腫瘍径が大きいほど高率となるため,穿刺可能な消化管 SMT は早期に EUS-FNA を行い組織診断することが,GIST を含む消化管 SMT の早期診断・早期治療を可能とし,予後改善に繋がるものと考えられる.

キーワード
EUS-FNA、消化管疾患、粘膜下腫瘍、免疫組織化学、消化管間質腫瘍

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EUS-FNA の現況
胆膵疾患に対する EUS-FNA の現況

原 和生**1  山雄健次***1 水野伸匡**1   肱岡 範**1  今岡 大**1  
永塩美邦*1   関根匡成*1  與儀竜治*1  堤 英治*1   佐藤高光*1  
藤吉俊尚*1  坂本康成*1   石原 誠*2  田中 努**2  田近正洋**2   
丹羽康正***2   

*1 愛知県がんセンター中央病院消化器内科 **1 同医長 ***1 同部長   
*2 同内視鏡部   **2 同医長 ***2 同部長

要  旨
 2010年に本邦でもEUS-FNAが保険収載となったことから,急速に EUS-FNA が普及するのと同時に EUS-FNA の需要も増している.EUS-FNA の膵腫瘍に対する感度は90%以上であり,偶発症も全体で1%以下と低値であることから,その有用性と安全性は明らかである.従来からの診断的EUS-FNAとEUSを用いたその他の手技を併せて interventional EUS と称されるようになった.EUS-FNA の治療への応用は今後もますます発展すると考えられており,今後の成果に注目が集まる.

キーワード
EUS、EUS-FNA、Interventiona lEUS、抗血栓薬

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EUS ガイド下治療の現況と将来展望
EUS ガイド下腹腔神経叢・神経節ブロック

安田一朗*1  岩下拓司**2 土井晋平**2   上村真也*2  馬淵正敏*2  
森脇久隆***2

*1 岐阜大学大学院医学系研究科地域腫瘍学 准教授   
*2 岐阜大学医学部附属病院第一内科   **2 同助教 ***2 同教授

要  旨
 腹腔神経叢ブロックは,上腹部悪性腫瘍(主に膵がん)に伴うがん性疼痛に対して比較的古くから行われてきた手技である.これまで術中開腹下,CTガイド下などに行われてきたが,近年超音波内視鏡ガイド下に行う方法(EUS-CPN)が紹介され,実際に臨床の場で行われるようになっている.この手技の利点は,EUS画像をリアルタイムに観察しながら正確かつ安全に対象部位への穿刺が行えることであり,これまでに一定の治療成績が報告されている.さらに最近,腹腔神経節を直接穿刺する手技(EUS-CGN)が紹介され,より高い除痛効果が期待されている.

キーワード
腹腔神経叢、腹腔神経節、腹腔神経叢ブロック、腹腔神経節ブロック、がん性疼痛

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EUS ガイド下治療の現況と将来展望
EUS ガイド下膵仮性嚢胞ドレナージ

良沢昭銘**  岩野博俊*    田場久美子*   宮原貢一*   大越章吾***  
井上晴洋****   工藤進英****
* 昭和大学横浜市北部病院消化器センター   ** 同講師 *** 同准教授 **** 同教授

要  旨
 EUSガイド下膵仮性嚢胞ドレナージは,超音波画像上で穿刺針の刺入からドレナージチューブの留置までの一連の手技をリアルタイムで観察可能であるため,安全に施行できる.本法は低侵襲で有用な治療法であるが,十分に体制を整えたうえで慎重に手技を遂行することが望まれる.また,本手技および応用手技である内視鏡的ネクロセクトミーをより安全な治療法とするためには,さらなる手技の改良および専用デバイスの開発が必要である.

キーワード
膵仮性嚢胞、膵仮性嚢胞ドレナージ、EUSガイド下膵仮性嚢胞ドレナージ

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EUS ガイド下治療の現況と将来展望
EUS ガイド下胆道ドレナージの実状

今井 元*   北野雅之***  大本俊介*   門阪薫平*   宮田 剛*    
鎌田 研*   山雄健太郎*   坂本洋城**   工藤正俊***
* 近畿大学医学部附属病院消化器内科   ** 同医学部講師 *** 同准教授   **** 同主任教授

要  旨
 EUS ガイド下胆道ドレナージ術(EUS-BD)は EUS 下穿刺術を応用した手技で,経乳頭的胆管ドレナージが困難な胆道閉塞に対する代替治療として実施されている.経消化管的ドレナージ法とランデブー法,順行性ステント法がある.EUS-BDに関する多数の報告がなされており,手技成功率,臨床症状改善率はおおむね90%以上と良好な成績であるが,専用デバイスがないなどの幾つかの問題点がある.

キーワード
EUSガイド下胆道ドレナージ術、切除不能悪性胆道狭窄

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EUS ガイド下治療の現況と将来展望
EUSガイド下膵管ドレナージ

栗原俊夫*   糸井隆夫*** 祖父尼 淳**   糸川文英*   石井健太郎*   
土屋貴愛*   辻 修二郎*   池内信人*   梅田純子*   田中麗奈*   
殿塚亮佑*   本定三季*   永井俊太郎*   森安史典****
* 東京医科大学病院消化器内科   ** 同講師 *** 同准教授 **** 同教授

要  旨
 膵管狭窄・断裂や膵管-消化管吻合部狭窄に伴って腹痛や急性膵炎などが生じる場合に,膵管減圧が必要となる.減圧方法として外科的治療や内視鏡的治療が挙げられるが,低侵襲な内視鏡的ドレナージが選択されることが多い.通常,内視鏡的逆行性膵管ドレナージが施行されるが,困難例が存在する.近年,新しい膵管ドレナージの手法として,EUS-FNA の手技を応用した EUS ガイド下膵管ドレナージ(EUSPD)が報告された.これまでの報告では手技成功率は25~100%とばらつきがあり,偶発症率は5.6~42.9%と高率であった.通常法の内視鏡的ドレナージが困難な症例にとって新たな選択肢となる可能性があるが,手技の難易度は高く,内視鏡治療に熟練・精通した医師のもとに慎重に行われるべきである.

キーワード
超音波内視鏡、膵管ドレナージ、EUSPD

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EUS ガイド下治療の現況と将来展望
膵腫瘍に対する EUS ガイド下治療

蘆田玲子*   井岡達也**  片山和宏***
* 大阪府立成人病センター検診部消化器検診科医長   ** 同副部長 *** 同部長

要  旨
 膵腫瘍に対する EUS ガイド下治療として欧米やアジア諸国を中心にさまざまな報告がなされてきた.これら治療は,①各種デバイスや薬液を用いた ablation therapy,②抗がん剤やウイルスベクターなどの局注療法,③小線源を留置する brachytherapy に大別される.本稿ではそれぞれの治療法を紹介し,その成績や偶発症などについて概説する.

キーワード
EUSガイド下治療、Interventional EUS、ラジオ波、局所療法

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連載
現代社会とうつ病

  現代社会において問題となっております「うつ病」について病気そのものの解説、法、サポート体制などを連載形式で詳しく紹介する目的で連載「現代社会とうつ病」を企画致しました。
 今号から約3年間にわたり国内の診療・研究の最前線でご活躍されている先生方に「うつ病」について詳しくご解説をお願いしております。
 第28回は洗足ストレスコーピング・サポートオフィス・伊藤 絵美 先生による「特別な精神療法 (1)認知行動療法の応用」です。

要  旨
 認知行動療法(CBT)は,ストレスケアのための心理学的アプローチである.出来事,認知,気分・感情,身体反応,行動の5要素からなる CBT の基本モデルに沿って,患者の抱える問題を循環的に理解し,認知と行動のコーピングによって問題の解決を目指す.うつ病の CBT にはエビデンスがあり,特に再発予防効果が高いことが知られている.ただし,うつ病は個別性の高い疾患であるため,CBT を適用する際には柔軟な臨床的工夫が必要である.

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連載
トップランナーに聞く(第32回)
酸化ストレス増幅タンパク質シクロフィリンAによる循環器疾患促進機構

 「最新医学」では第66巻からの新企画として「トップランナーに聞く」と題し、最先端の研究をされている40歳前後の先生のインタビューを掲載します。
 第32回は酸化ストレスタンパクシクロフィリンAや酸化ストレスによる心血管疾患の促進機構について精力的に研究されている東北大学の伊藤 公雄 先生にお話を伺いました。

 佐藤 公雄 先生

 肺高血圧の病態生理に関する研究に従事し学位取得後、日本心臓財団・バイエル薬品海外留学助成を受け、米国ロチェスター大学医学部 Bradford C. Berk 教授の研究室に留学し、酸化ストレス分泌タンパク質シクロフィリンAの心血管疾患における役割について研究しました。帰国後も、これまでの基礎研究での知見を発展させ、臨床応用を目指してシクロフィリンAのバイオマーカーとしての意義とRhoキナーゼによる分解機構の解明を行っています。

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連載
ノーベル賞と医学の進歩・発展

 68巻10号からノーベル賞の対象となった業績やその業績が現在どのような恩恵をもたらしているかについて、各領域の専門家の先生方に詳しいご解説をお願いしております。

第12回は京都大学名誉教授・前田 道之 先生による「エイズウイルスの発見とその周辺」です。

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トピックス
GATA3 によるナチュラルヘルパー細胞の制御

茂呂和世*1*2*3 古澤純一*1*4   小安重夫**1*5
*1 理化学研究所統合生命医科学研究センター IMS-RCAI免疫細胞システム研究グループ   
**1 同グループディレクター   *2 科学技術振興機構さきがけ   
*3 横浜市立大学大学院生命医科学研究科システム生物学部門免疫生物学研究室 客員准教授
*4 東京医科大学医学総合研究所免疫制御研究部門   
*5 慶應義塾大学医学部微生物学・免疫学教室 客員教授

要  旨
 これまでリンパ球の働きは,抗原認識機構を兼ね備えた獲得免疫のT細胞とB細胞に重きが置かれてきたが,近年,自然免疫機構で Th1 型免疫応答を行う NK 細胞とその近縁細胞,胎児期のリンパ節形成と出生後の Th17 型免疫応答をつかさどる LTi 細胞,そしてナチュラルヘルパー(natural helper:NH)細胞の Th2 型免疫応答の重要性が注目されるようになってきた.本稿では,自然免疫系細胞の新しいリンパ球である NH 細胞の Th2 型サイトカイン産生機構について,最新の知見を交えて紹介する.

キーワード
ナチュラルヘルパー細胞、自然免疫、FALC、IL-25、IL-33、GATA3

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トピックス
造血幹細胞の「休眠」を誘導する微小環境

山崎 聡*
* 東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター幹細胞研究センター

要  旨
 自己複製能および多分化能を持ち,生涯にわたり血液細胞を供給し続ける造血幹細胞は,骨髄中の特別な微小環境中に休眠状態で存在すると考えられている.この微小環境は,造血幹細胞の増殖,分化,細胞周期,骨髄への生着などの制御に重要な役割を果たしている.造血微小環境という概念が提唱され,約40年が過ぎた(Curry J.L. and Trentin J.J.).この概念は1978年にSchofieldにより造血幹細胞「ニッチ」と名づけられた.この微小環境に関して1),近年の免疫組織染色などの技術の進歩により,数多くの報告がなされるようになった.本稿では,骨髄ニッチがどのように造血幹細胞を休眠状態に誘導しているか紹介する.

キーワード
造血幹細胞、造血幹細胞ニッチ、休眠状態

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総説
肝障害と誘導型一酸化窒素合成酵素 ―ラット初代培養肝細胞を用いた肝保護試薬のスクリーニング―

海堀昌樹***1 松井康輔**1  徳原克治**1   荒木吉朗*1 奥村忠芳*1*2 西澤幹雄*3   權 雅憲****1
*1 関西医科大学外科   **1 同診療講師 ***1 同准教授 ****1 同教授   *2 立命館大学総合理工学研究機構 教授   *3 同生命科学生命医科学 教授

要  旨
 ラット初代培養肝細胞を用いて,「in vitro の肝障害モデル」を作成した.細胞を炎症性サイトカインで刺激し,発現誘導した一酸化窒素合成酵素(iNOS)から産生される一酸化窒素は肝障害因子の1つと考えられる.一酸化窒素の抑制を指標として,さまざまな試薬,漢方薬,機能性食品の肝保護効果をスクリーニングした.その結果,肝保護効果を持つ成分を動物モデルに比べて安価で迅速に検出することが可能となった.

キーワード
ラット初期培養肝細胞、誘導型一酸化窒素合成酵素、肝障害因子、一酸化窒素、肝保護

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