最新医学68巻12号 
特集 血管新生阻害薬の展開



要  旨


座談会 血管新生阻害薬の臨床現場における現状と今後の期待

聖マリアンナ医科大学   高木 均
金沢大学          矢野 聖二
大阪大学        髙倉 伸幸 (司会)

 座談会の内容
 ・呼吸器腫瘍における血管新生阻害薬の効果,利点について
 ・患者にとって不利な点について
 ・眼科領域における血管新生阻害薬の作用機序について
 ・今後の血管形成制御治療で期待される薬剤,治療法 など

 矢野先生       髙倉先生       高木先生

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基礎研究
血管新生の分子機序

髙倉伸幸*
* 大阪大学微生物病研究所情報伝達分野 教授

要  旨
 出生後に生じる血管形成は,主に既存の血管から新しい血管の分枝が生じて炎症や虚血領域に血管が発芽伸長する,いわゆる発芽的血管新生の過程によって誘導される.これまでこの血管新生の概念として,既存血管の内皮細胞が一様に増殖移動して新しい血管分岐が生じるとされてきたが,近年血管新生の間には,Tip 細胞,Stalk 細胞,Phalanx 細胞といった少なくとも異なる3種の内皮細胞が存在することが知られてきた.

キーワード
内皮細胞、壁細胞、血管新生

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基礎研究
VEGFによる血管形成および血管調節作用

澁谷正史*1*2
*1 上武大学学長 *2 同医学生理学研究所 所長

要  旨
 VEGF とその受容体 Flt ファミリーは,生理的血管新生のみならず腫瘍血管などの病的血管新生に中心的役割を果たす.すでにこのシグナル系に対する阻害薬は臨床開発されてがんなどに広く用いられているが,さらに詳しい作用機構と薬剤抵抗性の分子機構を明らかにすることは今後の重要な課題である.

キーワード
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血管新生、腫瘍血管、受容体キナーゼ

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基礎研究
血管内皮細胞のシグナルと接着による血管成熟・安定化機構


安藤康史*   柏田 建*   中嶋洋行* 福原茂朋**  望月直樹***
* 国立循環器病研究センター研究所細胞生物学部 ** 同室長 *** 同部長

要  旨
 新生血管では,周細胞の内皮細胞へのリクルートなど組織学的な安定性と内皮細胞自身の生存シグナルの増強・細胞骨格再編成による細胞間接着の安定化が,血管全体の安定化に繋がる.安定化のための Ang1-Tie2系,スフィンゴシン1-リン酸系,流れの重要性と VE-カドヘリン依存性接着とその制御が,いかに内皮細胞の安定性を維持しているかを概説する.

キーワード
血管成熟、安定化、血管新生、情報伝達、細胞間接着

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基礎研究
内因性血管新生抑制因子


佐藤靖史*
* 東北大学加齢医学研究所腫瘍循環研究分野 教授

要  旨
 血管新生とは,既存の血管から新しい血管ネットワークが形成される現象であり,その調節は促進因子と抑制因子とのバランスが巧妙に保たれることでなされている.これまでに報告されてきた血管新生抑制因子は主に血管外の細胞・組織に由来するものであったが,最近,血管内皮細胞が血管新生に際して産生し,自らを制御するフィードバック調節因子が同定され,血管新生制御のメカニズムに関する理解が深まっている.


キーワード

Dll4、Vasohibin-1、sVEGFR1

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基礎研究
腫瘍血管内皮細胞の特異性と治療感受性

秋山廣輔*   樋田京子**

* 北海道大学大学院歯学研究科口腔病態学講座血管生物学教室 ** 同特任准教授

要  旨
 がんの血管を標的とした血管新生阻害療法が開発されて以降,幾つかの血管新生阻害薬が臨床応用されており,多くの患者の予後の改善をもたらした.しかし当初の予測と異なり,本治療法にも副作用,薬剤抵抗性という問題があることが報告されている.近年,血管新生阻害薬の標的となる腫瘍血管内皮細胞は,正常血管内皮と比較しさまざまな点で異なることが分かってきた.腫瘍血管内皮細胞の特性の解明が,血管新生阻害療法の問題点克服ならびに新しい治療戦略構築に重要である.

キーワード
腫瘍血管新生、腫瘍血管内皮細胞、血管新生阻害療法、薬剤抵抗性

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基礎研究
網膜血管形成と腫瘍血管新生


久保田義顕*1*2
*1 慶應義塾大学医学部機能形態学教室 *2 同電子顕微鏡研究室 准教授

要  旨
 血管研究の歴史の中で,血管新生を可視化するさまざまな in vivo モデルが開発されてきた.マウス網膜血管はその可視化・定量性における優位性から,その利用が世界的に急速に広まりつつある.特に,網膜血管新生病モデルである虚血性網膜症は,がん血管新生と細胞・分子メカニズムにおいて共通点が多く,その簡便性から腫瘍血管新生の分子標的を効率よく抽出する有用なシステムであり,実際多くのブレークスルーを生み出している.

キーワード
網膜、血管新生、腫瘍血管新生、虚血性網膜症、Atm

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トランスレーショナル研究
腫瘍血管を通じた薬剤送達

狩野光伸**  田中さやか*
* 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科医薬品臨床評価学 ** 同教授

要  旨
 腫瘍組織では脈管系の形成が未熟とされ,粒径が70nm~数百nm前後であるナノ粒子は容易に血管外へ漏出し,組織内に長く貯留すると考えられている.これに基づいてナノ粒子を利用した薬剤送達法が近年注目され,特に腫瘍領域において開発が盛んである.本稿ではこのナノ粒子を用いる視点からの解析を通じ,血管新生阻害薬などの他剤と併用した薬剤送達効率の改善戦略に関する最新の知見について総括する.

キーワード
腫瘍微小環境、周皮細胞、ナノDDS、ナノ病態学

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トランスレーショナル研究
血管新生阻害薬のバイオマーカー

寺嶋雅人*   西尾和人**
* 近畿大学医学部ゲノム生物学教室 ** 同教授

要  旨
 腫瘍血管の新生を妨げて腫瘍の増殖や転移を抑制し抗腫瘍効果を示す血管新生阻害薬は,臨床での有用性が多く報告されているが,バイオマーカー研究により患者の絞り込みが可能となれば,その治療効果がより明確にされると期待される.ベバシズマブの臨床試験では short VEGF-A,VEGFR-1,NRP-1 の値と治療効果の関連性が認められ,2012年から初めての前向き臨床試験として,short VEGF-A 値で層別化を行う MERiDiAN 試験が実施されている.

キーワード
バイオマーカー、ベバシズマブ、short VEGF-1、VEGFR-1、NRP-1

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臨床研究
消化器がんにおける血管新生の制御

菊池寛利*   今野弘之**

* 浜松医科大学医学部外科学第二講座 ** 同教授

要  旨
 消化器がんの多くは進展過程で血管新生を誘導し,腫瘍血管に富む.本邦における消化器がんに対する血管新生阻害薬は,大腸がんに対するベバシズマブとレゴラフェニブ,肝細胞がんに対するソラフェニブが保険収載されている.最近の大規模臨床試験で有効性が示された分子標的薬もあり,消化器がんに対する抗血管新生治療の新たな展開が期待される.一方,抗血管新生治療に伴う耐性や悪性形質獲得機構が示唆されており,検討すべき課題である.

キーワード
ベバシズマブ、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、ラムシルマブ、耐性機構

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臨床研究
呼吸器腫瘍における血管新生の制御

矢野聖二*

* 金沢大学がん進展制御研究所腫瘍内科 教授
要  旨
 現在本邦においては,呼吸器悪性腫瘍に対する血管新生阻害薬として,扁平上皮がんを除く非小細胞肺がんに対し,抗 VEGF 中和抗体であるベバシズマブが認可されている.一定の抗腫瘍効果の増強が得られる反面,致死的な喀血が出現する場合があり,使用に当たっては患者選択が必要である.今後は,呼吸器悪性腫瘍の血管新生の特徴を明らかにし,疾患特異的な血管新生阻害療法の開発が必要であると思われる.

キーワード
ベバシズマブ、非小細胞肺がん、非扁平上皮がん、VEGF

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臨床研究
乳がんにおける血管新生の制御

木曾末厘乃*1  佐治重衡*2  戸井雅和**1

*1 京都大学大学院医学研究科外科学講座乳腺外科学 **1 同教授
*2 同標的治療腫瘍学講座 特定准教授

要  旨
 乳がんにおける血管新生の制御には,VEGF をはじめ,多くの調節因子が関与することが知られている.抗 VEGF 中和抗体による治療は臨床導入され,VEGF制御の臨床的意義,あるいは課題が少しずつ明らかにされている.治療の奏効機序や耐性機構に関する研究も着実に進んでいる.VEGFを標的とする治療法以外にも,VEGF受容体に対する抗体療法,キナーゼ阻害薬,その他の受容体を抑制する治療法の臨床的検討も行われている.最近の知見を中心に,乳がんに対する抗血管新生療法の意義について概説する.

キーワード
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血管新生阻害薬、ベバシズマブ

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臨床研究
脳神経外科疾患における血管新生促進と血管新生抑制
―もやもや病とグリオーマに関して―

伊達 勲*** 菱川朋人*   黒住和彦**
* 岡山大学大学院脳神経外科 ** 同講師 *** 同教授

要  旨
 脳神経外科疾患の治療に関しては,血管新生を促進することが有利に働く場合と,血管新生を抑制することが有利に働く場合とがある.前者の代表的疾患がもやもや病であり,後者の代表的疾患がグリオーマである.両者について,関連する基礎研究,臨床研究を解説し,血管新生の促進・抑制がどのように治療にかかわっているかを考察する.両者に共通のキーワードがありながら,一方では善玉として,一方では悪玉として扱われる点は興味深いところである.

キーワード
血管新生、もやもや病、グリオーマ、脳神経外科

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臨床研究
眼内血管新生疾患に対する抗VEGF療法

村上智昭*1  高木 均*2
*1 京都大学大学院医学研究科眼科学 *2 聖マリアンナ医科大学眼科学 教授

要  旨
 糖尿病網膜症などの眼内新生血管疾患における分子機構の基礎研究から,中心的な役割を果たしている分子が VEGF であることが示された.その結果,糖尿病網膜症のみならず,加齢黄斑変性,網膜静脈閉塞症などの網脈絡膜血管疾患における新生血管や血管透過性亢進を制御する目的で,抗 VEGF 療法の臨床導入へと繋がった.

キーワード
血管内皮細胞増殖因子、糖尿病黄斑浮腫、血管新生、加齢黄斑変性症、血管通過性亢進

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連載
現代社会とうつ病

  現代社会において問題となっております「うつ病」について病気そのものの解説、法、サポート体制などを連載形式で詳しく紹介する目的で連載「現代社会とうつ病」を企画致しました。
 今号から約3年間にわたり国内の診療・研究の最前線でご活躍されている先生方に「うつ病」について詳しくご解説をお願いしております。
 第32回は東京女子医科大学・加茂 登志子 先生による「女性とうつ病」です。

要  旨
 日本の気分障害の女性患者数は,平成8年以降一貫して男性の約1.5倍前後であり,精神疾患が地域医療の重点疾患となった平成25年は女性医療元年と位置づけられる.女性のうつ病に取り組むには,性ホルモンを中心とした生物学的性差(sexuality),心理社会的性差(gender),両者を人生の時間軸に乗せたライフサイクルへの理解が欠かせない.「弱り目に祟り目」という観点から,月経前不快気分障害,産後うつ病,閉経周辺期うつ病を描いた.

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連載
トップランナーに聞く(第35回)
基礎分子病理学的研究から治療法開発への挑戦―腫瘍ホーミングペプチドの研究開発―

 「最新医学」では第66巻からの新企画として「トップランナーに聞く」と題し、最先端の研究をされている40歳前後の先生のインタビューを掲載します。
  第36回は腫瘍ホーミングペプチドや口腔・頭頸部扁平上皮がんの増殖に関するメカニズムの研究で多くの成果を上げておられる愛知県がんセンター研究所の齋藤 憲 先生にお話を伺いました。

 齋藤 憲 先生

 分子生物学を専門とし、がん細胞の増殖、浸潤、転移メカニズムから得られた基盤的知見を活かし、がん治療や診断を支える新しいバイオツールの開発に日々努力しています。現在、口腔・頭頸部扁平上皮がんや非小細胞肺がんの持つ課題(増殖や薬剤耐性)についての基礎研究からの情報をもとにした、がん細胞透過性ペプチドや抗腫瘍効果ペプチドといった「ペプチド」による従来にない新しい分子診断・治療技術の開発を進めています。これからも医療に携わる多くの方々と協力し、基礎と応用を併せた研究を展開していきたいと考えています。

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連載
ノーベル賞と医学の進歩・発展

 68巻10号からノーベル賞の対象となった業績やその業績が現在どのような恩恵をもたらしているかについて、各領域の専門家の先生方に詳しいご解説をお願いしております。

第15回は京都大学教授・成宮 周 先生による「アンジオテンシン,アスピリン,プロスタサイクリン
―1982 年ノーベル生理学・医学賞受賞者Sir John Vane 博士の医学・医療への貢献―」です。

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トピックス
新しい抗 HER2 抗体:ペルツズマブ

服部正也*    岩田広治**
* 愛知県がんセンター中央病院乳腺科 医長 ** 同副院長兼乳腺科 部長

要  旨
 ペルツズマブは,トラスツズマブとは異なる部位のHER2の細胞外ドメインを標的としたヒト化モノクローナル抗体であり,CLEOPATRA 試験の結果を受け,本邦でも2013年6月にHER2陽性進行再発乳がんを対象として承認された.ペルツズマブはトラスツズマブとの併用による高い治療効果とおおむね良好な忍容性が示されており,現在進行中の臨床試験結果に加え,分子標的薬のみの併用療法など新たな治療開発への期待も高い.

キーワード
HER2、乳がん、ペルツズマブ

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トピックス
慢性閉塞性肺疾患(COPD)と全身疾患

室 繁郎*
* 京都大学大学院医学研究科呼吸器内科 講師

要  旨
 COPDは,全身性炎症を伴い,全身併存症を伴うことから,全身性疾患としてとらえられるようになった.近年の大規模臨床研究から,COPDの併存症の種類と頻度,およびそれらが COPD の経過に与える影響が明らかになりつつある.COPD 診療においては,併存する疾患に対する包括的な診療アプローチが必要であろう.

キーワード
慢性閉塞性肺疾患、依存症、慢性炎症、予後

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