最新醫學 69巻2号 
特集 リウマチ・膠原病における分子標的治療の最前線


要  旨


座談会 リウマチ・膠原病の治療の現況と将来展望 ―分子標的治療薬を中心に―

順天堂大学        髙崎 芳成
慶應義塾大学        竹内 勤
産業医科大学       田中 良哉 (司会)

 座談会の内容
 ・関節リウマチ診療の10年間における進歩
 ・関節リウマチ治療の将来展望
 ・SLEの将来展望
 ・その他の膠原病に対する分子標的治療 など
 
  竹内先生       田中先生       髙崎先生

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TNF 阻害薬 ―関節リウマチ治療における製剤間比較を中心に―

勝又康弘*   山中 寿**
* 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター講師 ** 同所長・教授

要  旨
 TNFαは,細胞接着分子の発現やアポトーシスの誘導,炎症メディエーターの産生亢進,破骨細胞の分化誘導などを介して,関節リウマチ(RA)の病態形成に寄与する.RA に対する TNF 阻害薬としては5剤が使用されているが,治療効果に大差なく,どの薬剤も臨床症状を改善し,骨破壊の進行を抑制し,身体機能を改善させ,メトトレキサートとの併用でこれらの効果が増強する.一方で,高リスク患者に対する感染症の予防対策が共通して重要である.

キーワード
TNF阻害薬、関節リウマチ

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IL-6 の多彩な機能と抗 IL-6 受容体抗体の可能性

森本桂子*1*2  緒方 篤**1*2
*1 大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫アレルギー内科学 **1 同講師
*2 大阪大学免疫学フロンティア研究センター感染病態分野

要  旨
 IL-6は発見からその受容体阻害抗体による臨床応用まで,日本においてなされてきた分子である.炎症反応の中心的役割を果たしており,その制御は極めて重要であり,近年転写後の調節に関しても知見が積み重ねられている.関節リウマチ,若年性特発性関節炎,キャッスルマン病への有効性が確認され,世界100ヵ国以上で使用されているが,強皮症,バセドウ病眼症などさらに多くの自己免疫疾患への応用が期待されている.

キーワード
IL-6、抗IL-6受容体抗体、トシリズマブ、生物製剤

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IL-1 の作用と臨床効果

中村英樹*   川上 純**
* 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座リウマチ免疫病態制御学分野(第一内科)講師 ** 同主任教授

要  旨
 炎症性サイトカインである IL-1 は,炎症の惹起およびインフラマソーム形成にかかわり,細菌感染に対する自然免疫においても重要な役割を果たす.IL-1アゴニストIL-1αとIL-1βに拮抗するアナキンラは,関節リウマチや成人発症スティル病に有効である.一方,IL-1βを標的分子とする薬剤としてカナキヌマブ,リロナセプトおよびゲボキズマブが知られている.これらは自己炎症症候群や糖尿病治療に用いられる.

キーワード
IL-1タンパク質ファミリー、アナキンラ、関節リウマチ、クリオピリン関連周期熱症候群

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IL-20
亀田秀人*
* 東邦大学医学部内科学講座膠原病学分野 教授

要  旨
 IL-20 は,マクロファージや樹状細胞などから主に産生され,ケラチノサイトをはじめとして血管内皮細胞や滑膜細胞の増殖にも関与している.乾癬や関節リウマチ(RA)の病態における役割が考えられ,抗 IL-20 抗体の臨床試験も行われているが,乾癬では最初の試験で無効,RA における第Ⅱ相試験の結果も学会報告のみで論文報告はされていない.

キーワード

IL-10、乾癬、関節リウマチ

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IFN
天野宏一*

* 埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科 教授

要  旨
 全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病では,その病態にⅠ型 IFN が深くかかわっている.近年,これらの疾患に対して抗IFNα抗体製剤が開発され,SLE を対象としてシファリムマブとロンタリズマブの第Ⅰ相試験が終了し,安全性が確認され,一部に有効例があった.また炎症性筋疾患でもシファリムマブの有効性が示され,今後期待される.

キーワード
自己免疫疾患、Ⅰ型インターフェロン、モノクローナル抗体

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IL-17

近藤裕也**  田原昌浩*   横澤将宏* 住田孝之***
* 筑波大学医学医療系内科(膠原病・リウマチ・アレルギー) ** 同講師 *** 同教授

要  旨
 IL-17 は,生体内では主に好中球応答の増強によって感染防御に関与するサイトカインであるが,IL-17 を産生する新規の Th 細胞サブセットであるTh17が同定され,さらにさまざまな自己免疫疾患との関連が指摘されている.IL-17およびTh17を新たな治療標的と位置づけた新規治療法の研究・開発が進行しており,各疾患に対する有効性が明らかにされてきている.

キーワード
IL-17A、IL-17F、Th17、RoRγt、抗IL-17抗体

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IL-12/IL-23 をターゲットとした治療
藤田英樹*1  佐藤伸一*2
*1 日本大学医学部附属板橋病院皮膚科 准教授 *2 東京大学医学部皮膚科 教授

要  旨
 IL-12 と IL-23 はT細胞の活性化に重要な役割を果たすサイトカインであり,IL-12 は p35 と p40 から,IL-23 は p19 と p40 から構成され,両者は p40 を共有するヘテロ2量体である.IL-12はTh1細胞の分化に,IL-23はTh17細胞の増殖・維持に重要である.抗 p40 抗体は IL-12 と IL-23 の両方を阻害するが,乾癬に対し非常に有効であり,すでに治療薬として広く使用されている.また,特に TNF 阻害薬抵抗性のクローン病での有効性も報告されており,クローン病への適応拡大に向けて臨床試験が進行中である.IL-23 特異的阻害薬である抗 IL-23p19 抗体も乾癬での臨床試験が進行中であり,良好な結果が報告されている.将来的には乾癬のみならずさまざまな疾患において,IL-12/IL-23 をターゲットとした治療が行われることが期待される.

キーワード
IL-12、IL-23、乾癬、生物学的製剤

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M-CSF/GM-CSF
南家由紀*   小竹 茂**
* 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター内科 講師 ** 同准教授

要  旨
 GM-CSF,M-CSF はともに colony-stimulating factors(CSFs)を構成するサイトカインであり,免疫に関与する主に好中球と単球/マクロファージの生存,分化,活性化の調節因子である.またM-CSFは骨破壊を担う破骨細胞には必須の分子である.M-CSF および GM-CSF を標的とした薬剤が開発されている.マブリリムマブはGM-CSF受容体α鎖に対する完全ヒトIgG4型モノクローナル抗体であり,関節リウマチに対する第Ⅱ相試験が終了し有効性が報告された.一方,M-CSF 受容体の c-Fms キナーゼ阻害薬も,動物モデルでの検討で関節炎への有用性が報告されている.

キーワード
CSF、c-Fms、GM-CSF、M-CSF、単球/マクロファージ

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RANKL
遠藤逸朗*   松本俊夫**

* 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部生体情報内科学 講師 ** 同教授

要  旨
 関節リウマチ(RA)は増殖性滑膜炎および骨破壊が主体となる疾患であり,その病態には破骨細胞誘導性T細胞である Th17 および同細胞が産生する ILミ17,そして滑膜線維芽細胞や Th17 が発現する RANKL,滑膜マクロファージが産生する炎症性サイトカインなどが関与している.本稿では RA 骨病変において重要な役割を果たしている RANKL/RANK 系についての基礎的検討成績を概説するとともに,治療ターゲットとしての可能性について述べる.

キーワード
関節リウマチ、RANKL/RANK系、生物学的製剤、デノスマブ

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BAFF/APRIL
有沼良幸*   廣畑俊成**

* 北里大学医学部膠原病・感染内科学 ** 同教授
要  旨
  全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとした自己抗体の産生と密接に関係している自己免疫疾患では,副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬を用いた治療が行われてきた.近年,抗体医薬の登場により,それぞれの分子が持つ特異的な作用を制御することで,病態に即した治療を行うことが可能となりつつある.本稿においては,SLEを中心にその機能と疾患との関連性が明らかとなっているBAFF/APRILを阻害する抗体製剤による臨床試験の結果について概説する.

キーワード
全身性エリテマトーデス、分子標的治療、B細胞、ベリムマブ、アタシセプト

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T細胞の共刺激に着目した新規治療法 ―CD28/CTLA-4 とアバタセプト―
駒井俊彦*   藤尾圭志**

* 東京大学医学部附属病院アレルギーリウマチ内科 ** 同講師br>
要  旨
 T細胞は抗原認識と免疫寛容により自己と非自己の認識を行い,免疫応答の中心的機能を担う.T細胞の活性化には,抗原提示細胞からの抗原シグナルとともに CD28 や CTLA-4 を介した共刺激シグナルが必要である.共刺激シグナルを阻害するアバタセプトは関節リウマチの治療薬として臨床応用され,T細胞の共刺激を介した活性化機序の解明や関連薬剤の開発は注目を浴びている.

キーワード
アバタセプト、CD28、CTLA-4、関節リウマチ、T細胞

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CD20/CD22
藤井隆夫*
* 京都大学大学院医学研究科内科学講座リウマチ性疾患制御学講座 准教授

要  旨
  CD20/CD22は,いずれもB細胞表面上に発現するマーカーである.関節リウマチ(RA),全身性エリテマトーデス,抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)などの膠原病では,その病態にB細胞が関与する.欧米ではリツキシマブ(抗CD20抗体)がRA治療として確立され,他の膠原病についてもB細胞を標的とした臨床試験が行われてきた.本邦では昨年リツキシマブがAAVで保険適応となり,今後使用が増加すると考えられる.

キーワード
B細胞、全身性エリテマトーデス、抗好中球細胞質抗体関連血管炎、リツキシマブ、エプラツズマブ

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Syk/Btk 標的療法
中山田真吾*   田中良哉**
* 産業医科大学医学部第一内科学講座 講師 ** 同教授

要  旨
 自己免疫疾患の病態形成においては,多様な細胞内シグナル伝達を介した免疫系細胞の活性化が関与する.関節リウマチに対する JAK 阻害薬の成功を受け,細胞内シグナル分子を標的とした創薬が注目を集めている.近年,BCR や FcR などの免疫グロブリンスーパーファミリー受容体からのシグナルを媒介する Syk および Btk の阻害薬もまた,魅力的な治療標的として自己免疫疾患への臨床応用が期待されている.

キーワード
自己免疫疾患、関節リウマチ、シグナル阻害薬、Syk、Btk

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JAK阻害薬
山岡邦宏*   田中良哉**
* 産業医科大学医学部第一内科学講座 講師 ** 同教授

要  旨
 関節リウマチ治療は,生物学的製剤により目標を定めた治療の重要性と有用性が明らかとなった.しかし,長期にわたる治療継続が重要である本疾患では経口内服薬が望まれ,キナーゼ阻害薬として初めて,JAK 阻害薬であるトファシチニブが承認・発売となった.ほかにも複数の JAK 阻害薬で臨床試験が進行しており,治療ツールが増えて新たな治療法開発に向けた扉が開かれたと考えられる.

キーワード
JAK、トファシチニブ、関節リウマチ

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連載
現代社会とうつ病

  現代社会において問題となっております「うつ病」について病気そのものの解説、法、サポート体制などを連載形式で詳しく紹介する目的で連載「現代社会とうつ病」を企画致しました。
 今号から約3年間にわたり国内の診療・研究の最前線でご活躍されている先生方に「うつ病」について詳しくご解説をお願いしております。
 第34回は東邦大学・黒木 宣夫 先生による「労災認定基準の考え方と『うつ病』」です。

要  旨
 2011年12月に「心理的負荷による精神障害の認定基準について」が厚生労働省より発出され,精神疾患の労災認定件数は前年度と比較して年間150件増加した.労災認定された事案の気分障害の占める割合は全体の約半数を占めており,特に自殺におけるうつ病の割合は約9割を占めている.本稿では,「認定基準」の基本的考え方,特に精神疾患発症と業務との因果関係に関しての判断要件,評価方法の要点を説明した.

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連載
トップランナーに聞く(第38回)
病原体を運ぶ節足動物に迫る

 「最新医学」では第66巻からの新企画として「トップランナーに聞く」と題し、最先端の研究をされている40歳前後の先生のインタビューを掲載します。
  第38回は原虫感染に対する節足動物のtoleranceについて研究されている東京慈恵会医科大学の嘉糠 洋陸 先生にお話を伺いました。

 嘉糠 洋陸 先生

 蚊やマダニなどの節足動物によって媒介される感染症には、マラリアや日本脳炎、SFTSやフィラリアなどがあり、依然として世界で大きな問題となっています。一方で、この節足動物を介した病原体のライフサイクルは、はるか昔から保存されてきたものであり、その媒体である節足動物も多様な生命現象の宝庫です。免疫、発生、行動、生理など、病原体媒介節足動物の全てが私の興味の対象です。

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トピックス
インフルエンザウイルスの増殖を制御する新規の脂肪酸代謝物
今井由美子*
* 秋田大学大学院医学系研究科情報制御学実験治療学講座 教授

要  旨
最近私たちは,脂肪酸代謝物のライブラリーを用いたスクリーニングと質量分析法による脂肪酸代謝物のリピドミクス解析から,多価不飽和脂肪酸ドコサヘキサエン酸(DHA)由来の代謝物プロテクチン D1(PD1)が,ウイルス RNA の核外輸送を抑制することによってインフルエンザウイルスの増殖を抑えることを見いだした.PD1は予防的に投与しても,これまで救命の難しかった感染48時間後に投与しても,重症インフルエンザマウスの生存率を改善させた.これらの知見から,PD1は重症インフルエンザの治療薬として有用である可能性が考えられた.

キーワード
インフルエンザウイルス、脂肪酸代謝物、RNA核外輸送

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第50回 2013年度ベルツ賞受賞論文特報 2等賞
ブドウ糖によるインシュリン分泌とインクレチン ―生理的意義の理解に向けて―

駒津光久**1  佐藤吉彦*1  相澤 徹*2
*1 信州大学医学部内科学講座糖尿病・内分泌代謝内科 准教授 **1 同教授
*2 相澤病院糖尿病センター,信州大学名誉教授

要  旨
Insulin is the unique hormone that lowers plasma glucose concentration, and deterioration of insulin secretion by pancreatic β-cells leads to elevation of plasma glucose concentration and eventually to diabetes. Therefore, elucidation of the mechanism of insulin secretion is of prime importance for understanding physiology and pathophysiology of glucose homeostasis. Insulin secretion is controlled by a complex network in the β-cells, where glucose and incretin hormones are playing major roles. Glucose stimulates insulin release via KATP channel-dependent and-independent pathways. Namely, upon exposure of the β-cells to stimulatory concentration of glucose, ATP increases in the cell, by which the KATP channel is closed, leading to depolarization of the plasma membrane. Opening of voltage-dependent Ca2+ channels, Ca2+ influx and elevation of intracellular Ca2+ concentration ensue, and Ca2+-stimulated insulin release eventually takes place. On the other hand, exposure of the β-cells to high glucose increases the pool size of insulin secretory granules, which is mediated by non-ionic metabolic signals: this forms a basis for the second phase of glucose stimulated insulin secretion. The former and the latter refer to as the KATP channel-dependent and -independent glucose actions. The KATP channel-independent glucose action was first discovered by us in 1992, and we have established significance of it since then. Of particular note in this process, was elucidation of the unique interplay of incretin hormone and the KATP channel-independent glucose action. Incretin exclusively augments this branch of glucose action. In this review, we overview accumulated evidence on the mechanism of glucose stimulated insulin secretion with a focus on sophisticated coordination of incretin hormone and glucose, from a physiological perspective.

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