最新醫學 69巻5号 
特集 ホルモンから見たアンチエイジング


要  旨


座談会 ホルモンから見たアンチエイジングメディスンの現状と今後の展開

東京大学            秋下 雅弘
順天堂大学           堀江 重郎
福岡大学            柳瀬 敏彦 (司会)

 座談会の内容
 ・ワクチン開発の現状と問題点
 ・疫学とモデリング
 ・アジュバント研究
 ・粘膜免疫 など
 
  清野先生       平山先生       山西先生

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加齢と GH/IGF-I

高橋 裕*
* 神戸大学大学院医学研究科糖尿病内分泌内科学 講師

要  旨
 GH,IGF-Iの分泌は加齢とともに低下すること,成人GH分泌不全症においては内臓肥満や筋力,骨塩量,QOL低下など加齢と類似した症状を呈することから,GH,IGF-Iはアンチエイジングホルモンとして期待されてきた.しかしながら健常高齢者に対するGH投与によって,除脂肪体重増加,脂肪量減少効果は示すものの,筋力,運動能力は改善せず,その効果は限定的である.

キーワード
成長ホルモン(GH)、IGF-1、加齢、成人GH分泌不全症、アンチエイジング

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加齢とDHEA

大中佳三*1  高柳涼一*2
*1 九州大学大学院医学研究院老年医学 講師 *2 同病態制御内科学 教授

要  旨
 副腎アンドロゲンであるDHEAとその硫酸塩DHEA-Sは特異な加齢変動を示し,長寿マーカー,抗老化ホルモンとして注目される.DHEAには抗糖尿病作用,抗肥満作用,抗骨粗鬆症作用などの有益な作用が報告されているため,DHEAの低下した高齢者に対するDHEA補充療法がランダム化比較試験にて施行され,さまざまな効果が示されている.その有用性については議論の余地もあり,さらなるデータの蓄積が重要と考えられる.

キーワード
加齢、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、抗老化(アンチエイジング)、DHEA補充療法、ランダム化比較試験(RCT)

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エストロゲンとアンチエイジング

髙松 潔*   小川真里子**
* 東京歯科大学市川総合病院産婦人科 教授 ** 同講師

要  旨
 エストロゲンの変動は女性の心身の変化の大きな要因の1つとなるため,閉経に伴うエストロゲンの低下によって生じる諸症状や疾患の予防・治療に対してエストロゲンを補うホルモン補充療法(HRT)が施行されている.近年,HRTはアンチエイジングに関連した身体各所の機能に対する維持・改善効果を持つことが報告されており,HRT施行者では死亡率が低下することも示されている.まさにエストロゲンは女性におけるアンチエイジングの鍵であると言っても過言ではないと考えられる.

キーワード
閉経、ホルモン補充療法(HRT)、QOL、死亡率、悪性腫瘍

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選択的エストロゲン受容体修飾薬の現状
水沼英樹*

* 弘前大学大学院医学研究科産科婦人科 教授

要  旨
 選択的エストロゲン受容体修飾薬(SERM)は抗エストロゲン薬の開発段階で発見された薬剤で,これまで抗乳がん剤や排卵誘発剤として臨床応用されてきた.最近になって,骨粗鬆症治療薬としてのSERMが開発され臨床応用されているが,これらには抗乳がん作用,脂質代謝改善効果をはじめとして,さまざまな骨外作用のあることが証明され,高齢女性のQOLの維持や改善薬としても期待性の高い薬剤となっている.

キーワード
選択的エストロゲン受容体修飾薬(SERM)、エストロゲン受容体修飾薬、抗エストロゲン薬

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テストステロンの加齢変動における意義
辻村 晃**  宮川 康*   野々村祝夫***

* 大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(泌尿器科) ** 同准教授 *** 同教授

要  旨
 加齢によるテストステロンの低下は,加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)を引き起こす.同時に,テストステロンの低下は性機能障害,うつ,サルコペニア,メタボリックシンドローム,血管内皮障害などを生じることから,高齢男性のQOLを損ねるとともに,活動性を低下させる.テストステロンを維持することは,これらの症状を抑える意味でアンチエイジングとしての価値は高く,今後ますます注目を集める概念である.

キーワード
加齢男性性腺機能低下症候群、ED、うつ、メタボリックシンドローム、血管内皮障害

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選択的アンドロゲン受容体修飾薬開発の現況

柳瀬敏彦*
* 福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科 教授

要  旨
 骨や筋肉には,有益なアンドロゲン作用を保持し,有害作用である前立腺刺激作用は発揮しないような薬剤,いわゆる選択的アンドロゲン受容体修飾薬(SARM)の研究開発が進みつつある.ただし,現時点で市場に出ているものは皆無である.現在,加齢性筋肉減少症(サルコペニア)や骨粗鬆症を主な治療標的とする SARMの研究開発が主であるが,我々自身は抗メタボ作用のある SARM 開発を目指し,研究を行っている.最近,がんに伴うカヘキシア(悪液質)患者を対象にした SARM投与の臨床研究が行われ,除脂肪体重(LBM)と身体能力の向上が報告されており,今後の臨床応用が期待される.

キーワード
アンドロゲン、選択的アンドロゲン受容体修飾薬、サルコペニア、骨粗鬆症

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健康寿命延長を目指した潜在性甲状腺機能低下症へのアプローチ法
大野洋介*   田中祐司**

* 防衛医科大学校総合臨床部 ** 同教授

要  旨
 「甲状腺ホルモンで若返る!」ことができたら夢のようであるが,現時点ではアンチエイジングとしての甲状腺ホルモン補充療法は確立していない.一方,加齢に伴い頻度が増加する潜在性甲状腺機能低下症は,脂質異常症に伴う動脈硬化や認知症,虚血性心疾患の発症と関連し,老化全般を促進する.したがって,個々の患者における併存因子を勘案し適切に治療を行えば,健康寿命の延長が期待できる.本稿では,そのエッセンスを概説する.

キーワード
アンチエイジング、甲状腺ホルモン、潜在性甲状腺機能低下症、脂質異常症、認知症

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グレリンの多面的作用 ―特にアンチエイジングについて―
米川忠人*   中里雅光**

* 宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学分野 ** 同教授

要  旨
 本邦は高齢化社会に突入し,多くの基礎と臨床の施設で抗加齢対策の研究が進行している.グレリンは成長ホルモン分泌促進因子として発見され,摂食亢進作用を併せ持つ以外に,筋肉量増加,抗炎症作用や交感神経抑制作用など多面的作用を呈することが明らかになった.今後,グレリンは臨床分野において,高齢者における術後の栄養状態早期回復や心不全を伴う循環器疾患など,多分野にわたり治療薬となる可能性がある.

キーワード
グレリン、加齢、摂食、GHS受容体、サルコペニア

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インスリンシグナルによる老化制御とアンチエイジング
北村忠弘*

* 群馬大学生体調節研究所代謝シグナル研究展開センター 教授

要  旨
 摂取カロリーを制限すると寿命が延びることが下等動物からサルに至るまで証明されており,個体のエネルギー代謝調節と寿命(老化)の間に密接な関係があると考えられる.特にインスリンシグナル下流の転写因子FoxO1とNAD依存性脱アセチル化酵素の SIRT1 が,肥満,糖尿病などの代謝疾患との関連に加え,個体の寿命とも深く関連していることが最近の研究で明らかになってきた.これらの分子を標的としたアンチエイジングに期待がかかる.

キーワード
インスリン、FoxO1、サーチュイン、寿命、老化

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抗加齢ホルモンとしてのアディポネクチン
平田 歩*   下村伊一郎**

* 大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学 ** 同教授
要  旨
 マウスや超高齢者における検討でも,アディポサイトカインの重要性が長寿と関連していることが報告されている.アディポサイトカイン異常は全身臓器の機能障害,すなわち老化を引き起こすことが分かってきた.さらにアディポサイトカインの中でもアディポネクチンは,特に老化の中心となる動脈硬化,心筋障害,腎障害に対し保護的に働く,すなわち「抗加齢」として働くサイトカインであることが種々の報告で明らかとなっている.

キーワード
アディポネクチン、内臓脂肪蓄積、動脈硬化、腎機能障害、超高齢者

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ビタミンDとアンチエイジング
竹内靖博*

* 虎の門病院内分泌センター 部長
要  旨
 ビタミンDは抗くる病因子として発見され,カルシウム・リン代謝に必須の役割を果たしている.ミネラル代謝は骨代謝と密接に関連するため,これまでビタミンD作用はもっぱら骨ミネラル代謝との関連で検討されてきた.しかし,ビタミンD受容体は多くの組織に発現しており,最近では筋肉,免疫,神経,血管などにおけるビタミンDの役割が注目されている.これらのビタミンDの生理的な役割は,加齢に伴う現象にも密接に関与している.

キーワード
骨粗鬆症、骨軟化症、転倒、発がん、FGF23

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オキシトシンの働きと老化
尾仲達史*
* 自治医科大学生理学講座神経脳生理学部門 教授

要  旨
 オキシトシンは下垂体後葉ホルモンであるが,社会的な刺激で脳内にも放出される.オキシトシンは不安を緩和させ,情動認知と共感性と信頼感を増やし,絆を形成させる.これらのオキシトシンの作用には,ドーパミンとセロトニン,そして扁桃体-前頭前野の機能的結合の強化が関与しているらしい.さらに,オキシトシンは神経発達にも影響を及ぼす.また,オキシトシンはエネルギー代謝と骨代謝も制御しており,今後,老化とのかかわりの研究が望まれる.

キーワード
オキシトシン、社会行動、愛着行動、ストレス、記憶学習

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メラトニンとメラトニン受容体作動薬
服部淳彦*
* 東京医科歯科大学教養部生物学 教授

要  旨
 メラトニンは,自身がユニークな抗酸化物質であるとともに,体内時計からの指令を受けて「夜」の時刻情報を伝えるホルモンである.しかし,夜間に分泌されるメラトニンは年とともに激減する.また最近の研究から,体内時計の破綻がさまざまな疾病の引き金になることも分かり始めた.昼夜を問わず活動でき,リズムが乱れやすい現代社会においては,時刻情報を伝えるメラトニンとその受容体作動薬の役割は,今後ますます重要になるものと思われる.

キーワード
メラトニン、体内時計、睡眠、抗酸化物質

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連載
現代社会とうつ病

  現代社会において問題となっております「うつ病」について病気そのものの解説、法、サポート体制などを連載形式で詳しく紹介する目的で連載「現代社会とうつ病」を企画致しました。
 66巻5号から約3年間にわたり国内の診療・研究の最前線でご活躍されている先生方に「うつ病」について詳しくご解説をお願いしております。
 第37回はうつの家族の会みなと共同代表・砂田 康雄・くにえ 先生による「「うつからの卒業」を目指して」です。

要  旨
 家族会を始めて,うつのご家族は,うつ本人の回復を最優先するあまり,ご自身を気遣うことなく過ごしていることに気がついた.このままでは共倒れにもなりかねないと感じ,家族がまず心身共に健康でいることがうつご本人の回復にも必ず役立つことをご家族に知っていただきたい.それに加え,家族でなければできないことがある.それは,うつご本人の回復を信じきって,見守り続けることである.そのために必要な5つのポイントを提案したい.

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連載
トップランナーに聞く(第39回)
消化管におけるがんの微小環境と幹細胞の研究

 「最新医学」では第66巻からの新企画として「トップランナーに聞く」と題し、最先端の研究をされている40歳前後の先生のインタビューを掲載します。
  第41回は消化器がんと自然免疫、幹細胞の関係について多くの業績を上げられ、Dclk1が正常な腸管では幹細胞マーカーとはならず,腸腫瘍でのみ幹細胞マーカーとなることを明らかにされた京都大学の妹尾 浩 先生にお話を伺いました。

 妹尾  浩 先生

 「手を動かす」ことと「目で見て分かる」点に惹かれて、消化器内視鏡を中心とした診療に従事するようになりました。研究面では、遺伝子改変マウスを用いて、消化器の分化・再生や、がん化のプロセスをヒトの病理組織と対比させながら見てきました。今後も、上皮細胞やがんが周囲組織とどのようにかかわり、どのように維持されているかを、「目で見て分かりやすい」表現型と解析手法で明らかにしていきたいと思います。

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連載
ノーベル賞と医学の進歩・発展

 68巻10号からノーベル賞の対象となった業績やその業績が現在どのような恩恵をもたらしているかについて、各領域の専門家の先生方に詳しいご解説をお願いしております。

第19回は兵庫医科大学・越久 仁敬 先生による「化学性呼吸調節研究の進歩」です。

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トピックス
胆膵疾患における Interventional EUS
北野雅之*    工藤正俊**
* 近畿大学医学部消化器内科 准教授 ** 同教授


要  旨
 超音波内視鏡(EUS)は,内視鏡チャネルから出てくる穿刺針をリアルタイムに観察しながら消化管内外の病変を穿刺することが可能であり,この技術を用いた診断・治療法は Interventional EUS と総称される.膵腫瘍・リンパ節における病理診断,がん性疼痛に対する腹腔神経叢ブロック術,膵仮性嚢胞,閉塞性黄疸,急性胆嚢炎および閉塞性膵炎に対するドレナージ術などに用いられており,胆膵領域のさまざまな疾患の診断・治療に重要な役割を果たしている.

キーワード
Intervetional EUS、胆膵疾患、腹腔神経叢ブロック術、ドレナージ術、EUS-FNA

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