最新醫學 69巻6号 
特集 慢性頭痛の診療 -Update-


要  旨


座談会
 頭痛診療 Update ―新しい慢性頭痛の診療ガイドラインおよび国際頭痛分類第3版β版の活用― 

埼玉医科大学            荒木 信夫
寿会富永病院            竹島 多賀夫
慶應義塾大学            鈴木 則宏 (司会)

 座談会の内容
 ・ワクチン開発の現状と問題点
 ・疫学とモデリング
 ・アジュバント研究
 ・粘膜免疫 など
 
   鈴木先生          荒木先生  竹島先生

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頭痛診療の進め方

濱田潤一*1*2*3
*1 北里大学医学部神経内科学 教授 *2 北里大学北里研究所病院 神経内科部長
*3 同頭痛センター センター長

要  旨
 急性であっても慢性であっても,頭痛の診断には的確な問診を要領良く行うことが最も重要である.二次性頭痛,特にくも膜下出血などの脳血管障害,髄膜炎・脳炎,側頭動脈炎などの迅速に対応すべき頭痛を速やかに診断あるいは除外診断を行う.一方,一次性頭痛は生命にかかわるものではないが,慢性頭痛として患者の不安感を強く認められる.慢性頭痛の典型的な病型であっても,きちんと原因疾患の除外が行われていない場合,また非定型的な臨床所見のときは基礎疾患の存在を念頭に置いた精査が必要である.さらに,診断が不確実なのにまん然と鎮痛薬を投与して経過観察を行うことは避けるべきである.

キーワード
くも膜下出血、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、薬物乱用頭痛

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片頭痛の分類と診断

工藤雅子*
* 岩手医科大学内科学講座神経内科・老年科分野 講師

要  旨
 片頭痛は,我が国での有病率が8.4%とcommonな疾患であることはすでによく知られた事実となっており,プライマリ医にとっても見逃すことのできない疾患の1つである1).国際頭痛分類(ICHD)第2版および改訂版は頭痛診療において欠かせないツールの1つであり,片頭痛の診断もICHD-2 に沿って行われる2)3).本稿では,現行のICHD-2 に従って片頭痛の分類と診断基準を紹介するとともに,2013年に発表されたICHD-3βとの相違について述べる.

キーワード
片頭痛、国際頭痛分類第2版(ICHD-2)、国際頭痛分類第3版β版(ICHD-3β)、前兆のない片頭痛、
前兆のある片頭痛

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片頭痛の病態生理

古和久典**  瀧川洋史*   中野俊也** 中島健二***
* 鳥取大学医学部脳神経医科学講座脳神経内科学分野 ** 同准教授 *** 同教授

要  旨
 片頭痛の詳細な病態生理はいまだ不明な部分が多く残されている.皮質拡延性抑制(cortical spreading depression)が前兆を来し,脳実質を包む脳膜,特に硬膜の炎症と血管の収縮・拡張による疼痛刺激が三叉神経を介して頭痛を呈すると考えられている.近年,皮質拡延性抑制が頭痛を惹起させうることが示された.「片頭痛」脳といった新たな視点から,この領域のさらなる発展が望まれている.

キーワード
皮質拡延性抑制(cortical spreading depression)、三叉神経血管節、片頭痛原因遺伝子、
トリガー、「片頭痛」脳

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片頭痛の急性期治療
根来 清*

* ねごろ神経内科クリニック 院長

要  旨
 片頭痛の急性期治療には,①アセトアミノフェン,②非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs),③エルゴタミン,④トリプタン,⑤制吐薬などが用いられる.軽度~中等度の頭痛にはアセトアミノフェン,アスピリン・ナプロキセンなどのNSAIDsを,中等度~重度の頭痛,NSAIDs無効例ではトリプタンが推奨される.薬剤使用方法(服薬タイミング,使用量,使用頻度),妊娠中・授乳中の対応策,急性期発作中の患者指導と注意点についての説明が必要である.

キーワード
片頭痛、急性期治療、トリプタン、非ステロイド性抗炎症薬、制吐薬

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片頭痛予防療法
柴田興一*

* 東京女子医科大学東医療センター内科 准教授

要  旨
 片頭痛発作急性期治療薬のみでは,生活上の支障を十分に軽減できない場合に予防療法を考える.治療は,発作が頻回で,急性期治療薬が使用できないときや,永続的な神経障害を来すおそれがあり,治療薬の過剰服用の可能性がある片頭痛患者に開始する.治療薬には,抗てんかん薬,抗うつ薬,β遮断薬,カルシウム拮抗薬,ARB/ACE阻害薬などが使われているが,共存症を考えて少量より漸増し,2~3ヵ月程度の期間をかけて効果を判定する.

キーワード
片頭痛、予防療法、バルプロ酸ナトリウム、アミトリプチリン、プロプラノロール

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慢性片頭痛の診療

柴田 護*
* 慶應義塾大学医学部神経内科 専任講師

要  旨
 慢性片頭痛は,最新の国際頭痛分類であるICHD-3βによって独立した片頭痛のサブタイプとして位置づけられ,ICHD-2 で片頭痛の合併症として扱われていた状況から大きく変化した.慢性片頭痛はSilbersteinらが提唱した変容片頭痛(transformed migraine)を参考に作られた疾患概念である.基本的な病像は,月に15日以上頭痛があり,そのうち8日以上に片頭痛としての性質を有する頭痛が存在する状態である.片頭痛慢性化のメカニズムは不明であるが,肥満,うつなどの気分障害,睡眠時無呼吸など是正可能な危険因子が判明しているため,これらが認められた場合には治療介入を行うべきである.薬物治療については,バルプロ酸やトピラマートの有効性が報告されている.特にトピラマートは複数のプラセボ対照ランダム化臨床研究で薬効が実証されているが,我が国では片頭痛に対する適応を取得していない.また,海外ではA型ボツリヌス毒素の頭頸部注射が慢性片頭痛治療に使用されているが,やはり我が国では適応が承認されていない.

キーワード
慢性片頭痛、片頭痛慢性化、痛覚プロセシング異常、トピラマート、ボツリヌス毒素

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月経に関連する片頭痛の診断および治療
渡邉由佳*1**2 山本真也*1*2 平田幸一***2

*1 獨協医科大学日光医療センター神経内科 *2 獨協医科大学神経内科 **2 同准教授 ***2 同教授

要  旨
 片頭痛は女性に多い疾患である.特に月経のある20歳代から40歳代にかけての有病率が高い.月経時の発作は通常前兆のない片頭痛である.診断は国際頭痛分類3β付録基準A1.1の中に,前兆のない純粋月経時片頭痛,前兆のない月経関連片頭痛,前兆のない非月経時片頭痛に分類される.月経時に起こる発作は他の時期に見られる発作に比べ,重症度が高く,持続時間が長く,頻度も多く,治療抵抗性であるため,患者の日常生活に重大な支障を来すことが多い.

キーワード
月経、女性、国際頭痛分類3β付録、ナラトリプタン、月経困難症、月経前症候群

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緊張型頭痛の分類と診断
平田幸一***1 高嶋良太郎*1  渡邉由佳**1*2

*1 獨協医科大学神経内科 **1 同准教授 ***1 同教授 *2 獨協医科大学日光医療センター神経内科

要  旨
 緊張型頭痛は一般的に両側性で,性状は圧迫感または締め付け感であり,強さは軽度から中等度で,日常的な動作により増悪しない.悪心はないが,光過敏,音過敏を呈することがある持続性の頭痛である.一次性頭痛の中で最も多い頭痛である.診断は,新しい『国際頭痛分類3β版』に準拠して行う.第2版と分類,基準に大きな変更点はない.頭痛頻度によって分類されており,稀発反復性緊張型頭痛,頻発反復性緊張型頭痛,慢性緊張型頭痛,緊張型頭痛の疑いの4つに分けられている.

キーワード
一次性、圧痛、両側性、反復性緊張型頭痛、慢性緊張型頭痛

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緊張型頭痛の病態と治療法
清水利彦*

* 慶應義塾大学医学部神経内科 専任講師

要  旨
 緊張型頭痛の病態には,頭頸部筋肉など末梢部位の炎症や圧痛と,それに伴う一次感覚神経終末の感作が関係すると考えられている.さらに精神的ストレスや緊張が疼痛抑制に働く下行性侵害受容調節系の障害も関与するといわれている.急性期治療法には鎮痛薬,予防療法として筋弛緩薬,抗不安薬,抗うつ薬などの薬物療法がある.また,バイオフィードバックとリラクセーションを併用した治療法も効果を示すとされている.

キーワード
緊張型頭痛、トリガーポイント、中枢性感作、治療

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三叉神経・自律神経性頭痛の分類と診断
海野佳子*

* 河北総合病院神経内科 部長代理
要  旨
 三叉神経・自律神経性頭痛は,片側の頭痛に片側のみの頭部自律神経症状(結膜充血・流涙・鼻漏・鼻閉・縮瞳・眼瞼下垂など)を伴う疾患で,代表的なものとして群発頭痛がある.このグループに含まれる疾患は,痛みの部位や程度および随伴症状は共通したものが多く,痛みの持続時間や頻度が少しずつ異なる.主な疾患の臨床的特徴,共通点と相違点を理解したうえで,診断は国際頭痛分類に従って行う.

キーワード
三叉神経・自律神経性頭痛、群発頭痛、SUNCT、頭部自律神経症状を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNA)、持続性片頭痛

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三叉神経・自律神経性頭痛の病態と治療
飯塚高浩*

* 北里大学医学部神経内科学 診療准教授
要  旨
 国際頭痛分類第3版β版では,三叉神経・自律神経性頭痛(TAC)は,群発頭痛,発作性片側頭痛,短時間持続性片側神経痛様頭痛発作,持続性片側頭痛および TAC の疑いの5つに分類された.頭痛と同側に副交感神経症状を伴い,三叉神経第1枝領域に限局する片側性の頭痛発作が TAC の特徴であり,三叉神経・副交感神経反射と視床下部後部の活性化が TAC に共通した病態である.治療は病型により異なるが,難治例では脳深部刺激が用いられている.

キーワード
群発頭痛、三叉神経脊髄路尾側亜核、上唾液核、視床下部

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その他の一次性頭痛性疾患 ―ICHD-3β における変更点を中心に―
藤木直人*
* 国立病院機構北海道医療センター神経内科 医長

要  旨
 「その他の一次性頭痛性疾患」は片頭痛,緊張型頭痛,三叉神経・自律神経性頭痛のいずれにも属さない一次性頭痛である.アイスクリーム頭痛などごくありふれた頭痛から睡眠時頭痛のような極めてまれな頭痛まで,さまざまなものが含まれている.病態は不明なものが多く,難治性の頭痛も多い.ICHD-3βにおいては診断基準がより明確化されている.これらの頭痛の存在を知っておくことは,頭痛の診療において重要である.

キーワード
その他の一次性頭痛性疾患、雷鳴頭痛、貨幣状部痛、睡眠時頭痛、新規発症持続性連日性頭痛

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薬物乱用頭痛の診療
永田栄一郎*
* 東海大学医学部内科学系神経内科 准教授

要  旨
 薬物乱用頭痛(MOH)は,鎮痛薬,トリプタンやエルゴタミン製剤などの急性期頭痛治療薬を慢性的に使用することで起こり,その頭痛は社会生活に大きな支障となる.治療として,原因薬剤である頭痛薬の内服中止が原則であるが,患者個々の状況や背景に応じて予防薬を考慮しながら中止を試みる.また,中止後も再発が多いために,一定期間の観察も重要である.医療側と患者のMOHに対する正しい理解と患者モチベーションを維持させることが重要である.

キーワード
薬物乱用頭痛、鎮痛薬、トリプタン、片頭痛、緊張型頭痛

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連載
現代社会とうつ病

  現代社会において問題となっております「うつ病」について病気そのものの解説、法、サポート体制などを連載形式で詳しく紹介する目的で連載「現代社会とうつ病」を企画致しました。
 66巻5号から約3年間にわたり国内の診療・研究の最前線でご活躍されている先生方に「うつ病」について詳しくご解説をお願いしております。
 第38回は国際医療福祉大学・鈴木 映二 先生による「サポート体制-双極障害の当事者会-」です。

要  旨
 日本における双極性障害に特化した当事者会として法人化されたものは,特定非営利活動法人日本双極性障害団体連合会(ノーチラス会)が唯一である.この会の正式な発足は平成22年9月16日と比較的新しく,現在会員数約300人と小規模であるが,会報の発行,セルフヘルプ活動(例会など),啓発事業(講演会など),レクレーション事業,相談事業(無料電話相談,無料電話ピアヒアリング,面接での相談,談話室など)などを活発に行っている.

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連載
トップランナーに聞く(第40回)
新たな自然炎症経路・インフラマソームの研究

 「最新医学」では第66巻からの新企画として「トップランナーに聞く」と題し、最先端の研究をされている40歳前後の先生のインタビューを掲載します。
  第42回はインフラマソームと呼ばれる自然炎症経路の発見の疾患制御に関する第一人者である自治医科大学の高橋 将文 先生にお話を伺いました。

 髙橋 将文 先生

 専門は、もともとは循環器内科医でしたので、動脈硬化や心筋梗塞、心不全、大動脈瘤といった心血管病や、これらの原因となる肥満やメタボリックシンドロームについて研究をしていました。特に、感染や異物が関与しない心血管病で、どうして炎症(無菌性炎症と言います)が起こるのかという疑問を持っていましたが、信州大学での研究をきっかけとしてインフラマソームという新たな炎症経路を知り、これまで心筋梗塞や血管障害、動脈硬化、大動脈瘤などの病態でのインフラマソームの役割を明らかにしてきました。

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連載
ノーベル賞と医学の進歩・発展

 68巻10号からノーベル賞の対象となった業績やその業績が現在どのような恩恵をもたらしているかについて、各領域の専門家の先生方に詳しいご解説をお願いしております。

第20回は京都大学・宮地 良樹  先生による「光線治療の光と影 ~ニールス・フィンセン受賞から100年を経て~」です。

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トピックス
マクロプロラクチン血症の病態
島津 章*1   服部尚樹*2
*1 国立病院機構京都医療センター臨床研究センター センター長
*2 立命館大学薬学部臨床薬理学研究室 教授


要  旨
 マクロプロラクチン血症は,分子量150kD以上の大分子プロラクチン(PRL)が血中で優位に増加する疾患で,高PRL血症の15~25%と高頻度に認められる.クリアランス低下のため高 PRL 血症を来すが,生物活性は低いため臨床症状に乏しい症例が多い.マクロプロラクチンの多くは IgG 結合 PRL,特に自己抗体結合 PRL である.自己抗体産生機序として,慢性炎症に伴う PRLの修飾が関与している可能性がある.

キーワード
マクロプロラクチン血症、高プロラクチン血症、自己抗体結合プロラクチン、
ポリエチレングリコール法


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トピックス
細胞老化と発がん制御
高橋暁子*
* 公益財団法人がん研究会がん研究所がん生物部 主任研究員


要  旨
 細胞老化は,正常な細胞が持つがん抑制機構であり,ヒトやマウスの体内の前がん病変部で悪性化を防いでいると考えられてきた.しかし最新の研究成果から,細胞老化がさまざまな加齢性疾患の発症にかかわることや,むしろ発がんを促進する作用を持つことが明らかになり,細胞老化が加齢に伴うがんの罹患率の上昇に関与している可能性も示唆されている.本稿では,がん抑制と発がん促進という正反対の二面性を持つ細胞老化について概説する.

キーワード
細胞老化、がん抑制、発がん、良性腫瘍、肥満

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トピックス
新しい ALS/SCA 交差点病 Asidan の発見と臨床
阿部康二**1   池田佳生*2   菱川 望*1
*1 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学 **1 同教授
*2 群馬大学大学院医学系研究科脳神経内科学 教授


要  旨
 50 歳以降に小脳失調で発症し,その後に運動ニューロン障害を呈する特異な常染色体優性遺伝性家系を見いだした.これらの家系はほとんどが岡山県と広島県の県境にある芦田川流域出身であることから,阿部らは本遺伝性疾患を「Asidan」と命名し,2011 年にその原因遺伝子 NOP56 の変異を発見し,続いて臨床的意義,認知機能低下の特徴,嚥下機能障害の特徴,聴力障害の特徴などの解明を進めた.いわば ALS と SCA の交差点病(crossroad mutation)と言える本疾患の位置づけから考えて,本疾患の解明が神経内科の重要な二大神経変性疾患の解明の両方に資するものと考えられる.

キーワード
Asidan、ALS、SCA

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