最新醫學 69巻8号 
特集 動脈硬化 -病態・診断・治療のUpdate-


要  旨


座談会
 動脈硬化 ―病態・診断・治療の Update―

順天堂大学           代田 浩之
神戸大学             平田 健一
群馬大学           倉林 正彦 (司会)

 座談会の内容
 ・糖尿病に合併する動脈硬化
 ・心不全
 ・CKDに合併する動脈硬化
 ・ACC/AHAガイドライン2013 など
 
     倉林先生      代田先生     平田先生

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病態解明のUpdate
リポタンパク代謝と動脈硬化 ―動脈硬化惹起性リポタンパクの最新知見―

山下静也*
* 大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学講座・総合地域医療学寄附講座 教授

要  旨
 疫学的研究により,動脈硬化性疾患の危険因子は数々明らかになっているが,とりわけ高LDLコレステロール(LDL-C)血症,高トリグリセリド(TG)血症,低HDLコレステロール(HDL-C)血症に代表される脂質異常症は,極めて重要な動脈硬化の危険因子である.脂質異常症に伴って動脈硬化性疾患の発症が増加し,脂質異常症の治療,特にスタチンを中心とした脂質異常症治療薬によるLDL-C値の低下によって,虚血性心疾患の発症が有意に抑制されることがメタ解析で証明された.この場合の動脈硬化はプラーク形成を伴う粥状動脈硬化であり,剖検例の解析によりプラークの進展に伴う脂質蓄積の様子が病理学的に明らかにされてきた.Rossによる傷害反応仮説が提唱され,その後の血管生物学や分子生物学の研究の進展によって,脂質異常症による粥状動脈硬化の進展の分子機構が解明されてきた.リポタンパク質代謝という側面から見れば,粥状動脈硬化の発症には動脈硬化惹起性リポタンパク質が関与する.これらの中には,酸化 LDL・糖化 LDL などの変性 LDL,small dense LDL,レムナントリポタンパク質,Lp(a)などの動脈硬化惹起性リポタンパク質があるが,一方HDLを介した動脈硬化防御機構の異常(低HDL-C血症,高HDL-C血症)によっても粥状動脈硬化が発症する.本稿では,動脈硬化惹起性リポタンパク質の最新知見を紹介する.

キーワード
動脈硬化、スカベンジャー受容体、酸化LDL、レムナント

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病態解明のUpdate
AGE/RAGE と動脈硬化

山岸昌一*
* 久留米大学医学部糖尿病性血管合併症病態・治療学 教授

要  旨
 慢性的な高血糖状態では,還元糖によるタンパク質や脂質のアミノ基の非酵素的糖化反応が進み,循環血液中や組織で終末糖化産物(AGE)が促進的に形成・蓄積されてくる.AGEは,細胞表面受容体であるRAGEによって認識され,酸化ストレスや炎症反応を惹起させてさまざまなサイトカインや増殖因子の発現を誘導し,動脈硬化症を進展させる一方,骨髄からの内皮前駆細胞の動員を阻害することで血管修復系を破綻させる.AGE/RAGE系を抑えることで,動脈硬化症進展のプロセスを制御できるかもしれない.

キーワード
終末糖化産物(AGE)、AGE受容体(RAGE)、色素上皮由来因子(PEDF)、酸化ストレス、動脈硬化

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病態解明のUpdate
血管石灰化のメカニズム

塩井 淳*
* 大阪市立大学大学院医学研究科老年血管病態学 講師

要  旨
 血管石灰化は,心血管疾患の発症・進展にかかわる重要な病態であり,動脈硬化性石灰化とメンケベルグ型中膜石灰化に大別される.石灰化の発症機構には,基質小胞を介する経路と,血管平滑筋細胞が骨芽細胞様細胞に形質転換する経路が関与している.動脈硬化性石灰化の発症・進展には,炎症反応が重要な役割を果たしている.中膜石灰化には,弾性線維の主な構成成分であるエラスチンの断片化とその後の骨形成反応が寄与している.

キーワード
基質小胞、骨芽細胞、細胞老化、マクロファージ、エラスチン

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病態解明のUpdate
脂肪酸結合タンパクと動脈硬化
古橋眞人*   伏屋敬博*   美田知宏*

* 札幌医科大学循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座

要  旨
 FABP4(A-FABP/aP2)は主に脂肪細胞とマクロファージに発現し,代謝・炎症反応を統合してメタボリックシンドロームの進展に重要な役割を果たすことから,糖尿病や動脈硬化に対する新規の薬物治療のターゲットとなる可能性が示唆されている.最近,FABP4が脂肪細胞から分泌され,いわゆるアディポカインとして生理活性を有することが示された.血中 FABP4 濃度は肥満,糖尿病,高血圧,動脈硬化などさまざまなメタボリックシンドロームの病態と関連し,さらには予後規定因子となる可能性が示されている.

キーワード
脂肪酸結合タンパク、アディポカイン、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、動脈硬化

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診断法のUpdate
冠動脈 CT の現状と展望
山本秀也*   木原康樹**

* 広島大学大学院循環器内科学 診療准教授 ** 同教授

要  旨
 冠動脈CTは,循環器病の日常診療に不可欠の診断法である.血管造影上の狭窄病変の検出については,特に高い陰性適中率を有している.さらに近年は,機能的評価法(FFR,心筋血流評価)を併用することにより,さらに診断能が高まることが期待されている.また,血管壁性状の観察から高リスクプラークの同定についても注目され,冠動脈CTを用いた臨床的なイベント発生予測の可能性についても期待が持たれている.

キーワード
冠動脈CT血管造影、脆弱プラーク、機能的狭窄、予後

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診断法のUpdate
血管内エコーの有用性と今後の展望

川崎雅規*
* 岐阜大学大学院医学系研究科循環病態学 臨床准教授

要  旨
 血管内エコー法(IVUS)の進歩により,冠動脈内腔の大きさのみならず血管壁の情報が得られ,それまで冠動脈造影によって映し出される血管内腔のシルエットだけで評価されていた虚血性心疾患の病態診断は,飛躍的に進歩を遂げることとなった.さらに,超音波信号を数学的手法で解析し冠動脈プラークの組織性状診断を可能とする新技術を用いれば,急性冠症候群を発症しやすいプラークの特徴を診断することが可能となった.

キーワード
血管内エコー、超音波、冠動脈、組織性状診断

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診断法のUpdate
血管内 OCT の現状と展望
北端宏規*1  久保隆史*2  赤阪隆史**2

*1 新宮市立医療センター循環器科 *2 和歌山県立医科大学循環器内科 講師 **2 同教授

要  旨
 光干渉断層法(OCT)は,近赤外線を用いた新しい血管内画像診断装置である.その優れた画像解像度(10~20μm)により,急性冠症候群(ACS)の原因となる不安定プラークの微細構造を生体内で評価することが可能となった.現行のOCTは,血管内腔断面積の自動計測機能や三次元画像の構築機能,OCTによる観察部位を冠動脈造影上で確認できる血管造影との co-registration 機能,時相の異なる2つのプルバック画像を同期させ再生することにより,動脈硬化の経時的変化やステント留置後の血管反応を正確かつ簡便に評価することができる dual review mode 機能を有する.デバイスとしての実用性や利便性も向上し,研究用から臨床用ツールへと変貌を遂げつつある.本稿では,血管内OCTの現状と将来展望について述べる.

キーワード
急性冠、経皮的冠動脈インターベンション、光干渉断層法、不安定プラーク

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診断法のUpdate
血管内視鏡の現状と展望
上田恭敬*

* 大阪警察病院循環器内科 部長

要  旨
 血管内視鏡はマクロ病理学の知見に基づいて生体内で診断可能な診断機器であり,急性冠症候群やステント留置後の血管反応などの病態生理を解明するのに有用なだけでなく,長期予後を予測するためのサロゲートエンドポイントとして有用な可能性がある.特に,薬剤溶出性ステント留置後の長期予後を,ステントを被覆する新生内膜や黄色プラーク,血栓の存在から予測できるかを,DESNOTE 試験によって検討しているところである.

キーワード
血管内視鏡、血栓、黄色プラーク、不安定プラーク、ステント

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診断法のUpdate
PWV/ABI の現状と展望
冨山博史*

* 東京医科大学第二内科

要  旨
 我が国で,四肢にオシロメトリック血圧測定カフを装着するのみで,足関節上腕血圧比(ABI)および動脈スティフネス関連指標(脈波速度PWV)を測定する機器が臨床使用されている.ABIは末梢動脈疾患診断に有用であり,同時にABI0.90以下,1.40以上は重症血管障害を示唆し,独立した予後予測指標となる.一方,PWVには上腕-足首間脈波速度と心臓足首血管指数を表示する機器がある.予後予測指標としての有用性の根拠は前者で多く報告されている.

キーワード
脈波速度、足関節上腕血圧比、心臓足首血管指数

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治療法のUpdate
薬剤溶出性ステントの現状と展望
田邉健吾*

* 三井記念病院循環器内科
要  旨
 第1世代の薬剤溶出性ステント(DES)の弱点を軽減したものが第2世代 DES で,現在の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の主流となっている.我が国で使用できるものには Xience,Promus,Nobori,Resoluteがあり,その特徴を概説する.また,次なる展開として生体吸収性スキャフォールドがある.

キーワード
BMS、DES、BVS、Xience、Promus、Nobori、Resolute

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治療法のUpdate
LDL コレステロール低下療法の現状と展望
川尻剛照*

* 金沢大学大学院医薬保健研究域医学系循環医科学専攻臓器機能制御学 准教授
要  旨
 動脈硬化性疾患の予防にスタチンは必須の薬剤であるが,家族性高コレステロール血症など難治性高コレステロール血症に対して併用療法が必要となる.しかしながら,現在使用可能な薬剤に十分なエビデンスはないのも現状で,幾つかの臨床試験が進行中である.また,MTP阻害薬,CETP阻害薬や抗体医薬や核酸医薬技術を応用した PCSK9阻害薬,アポBアンチセンスなど,新しいLDLコレステロール低下薬が開発中である.

キーワード
コレステロール低下療法、スタチン、LDL受容体、PCSK9阻害薬

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治療法のUpdate
抗血小板療法の現状と展望
掃本誠治*   小川久雄**
* 熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学 准教授 ** 同教授

要  旨
 虚血性心疾患,末梢動脈疾患などの動脈硬化性疾患に対する抗血小板療法は,一次,二次予防を問わず,心血管イベント発症予防目的で頻用されている.抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は,ステント血栓症などの血栓性イベント抑制のため一定期間必須とされている.抗血小板薬投与による出血・血栓塞栓症のリスクとベネフィットのバランスを考えることが,日常臨床では重要である.

キーワード
虚血性心疾患、抗血小板薬、経皮的冠動脈インターベンション、動脈硬化性疾患

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治療法のUpdate
DPP-4 阻害薬の抗動脈硬化作用 ―現状と展望―
三田智也*   綿田裕孝**
* 順天堂大学大学院代謝内分泌内科学 ** 同教授

要  旨
 DPP-4阻害薬は,糖代謝,脂質代謝,血圧や体重などの動脈硬化促進因子を改善させる作用と,血管構成細胞である血管内皮細胞,マクロファージや血管平滑筋細胞に基質分解の抑制を介して,あるいは直接作用することで抗動脈硬化的に働く可能性が報告されている.しかし,ヒトに対するDPP-4阻害薬の心血管イベント抑制効果や抗動脈硬化作用は十分に解明されておらず,今後の検討課題と言える.

キーワード
DPP-4阻害薬、動脈硬化、心血管イベント

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連載
現代社会とうつ病

  現代社会において問題となっております「うつ病」について病気そのものの解説、法、サポート体制などを連載形式で詳しく紹介する目的で連載「現代社会とうつ病」を企画致しました。
 66巻5号から約3年間にわたり国内の診療・研究の最前線でご活躍されている先生方に「うつ病」について詳しくご解説をお願いしております。
 第39回は杏林大学・鬼頭 伸輔 先生による「うつ病の Brain Stimulation 療法 ―経頭蓋磁気刺激(TMS)―」です。

要  旨
 経頭蓋磁気刺激(TMS)は,大脳皮質を刺激し皮質や皮質下の機能を変化させる方法である.TMSによるうつ病治療では,左前頭前野への高頻度刺激が標準的な刺激方法であり,通常の診療に近い非盲検下における寛解率は30~40%である.比較的頻度の高い副作用としては,刺激部位の疼痛,不快感,頭痛などがある.さらにTMSを応用した脳刺激療法も報告されている.今後,新規抗うつ療法として確立し普及することが期待される.

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連載
トップランナーに聞く(第44回)
難病 プリオン病に挑む ―高感度異常型プリオンタンパク増幅法の開発とその応用―

 「最新医学」では第66巻からの新企画として「トップランナーに聞く」と題し、最先端の研究をされている40歳前後の先生のインタビューを掲載します。
  第44回は世界で初めてヒトプリオン病患者の髄液中にあるごく微量の異常型プリオンタンパク質の測定に成功された長崎大学の新 竜一郎 先生にお話を伺いました。

 新 竜一郎 先生

 私は、これまで主に致死性神経変性疾患であるプリオン病の病態解明を目指して研究を行ってきました。主な研究成果としては、プリオン増殖機構の解明とプリオン病の早期発見につながりうる異常型プリオンタンパク質試験管内増殖法(RT-QUIC法)を開発したことが挙げられます。RT-QUIC法は、微量の異常型プリオンタンパク質を検出できる高感度なアッセイ法で、実際に我々は代表的ヒトプリオン病であるクロイツフェルト・ヤコブ病患者由来髄液中の異常型プリオンタンパク質を検出できることを明らかにしました。

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連載
ノーベル賞と医学の進歩・発展

 68巻10号からノーベル賞の対象となった業績やその業績が現在どのような恩恵をもたらしているかについて、各領域の専門家の先生方に詳しいご解説をお願いしております。

第22回は洛和会新薬開発支援センター所長・中村 重信 先生による「神経学の発展:神経微細構造の曙 ―ゴルジとカハール―」です。

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トピックス
アディポネクチン受容体作動薬の開発
山内敏正*    門脇 孝**

* 東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科 准教授 ** 同教授

要  旨
 肥満に伴ってアディポネクチンが低下することが,糖尿病,心血管疾患リスク増大の主因であることを見いだし,その受容体AdipoRを同定し,その活性化がAMPKやSIRT1,PPARを活性化するなど,カロリー制限や運動と同様に,生活習慣病を改善するのみならず,寿命延長効果を発揮し,健康長寿に貢献できる可能性を見いだした.AdipoR作動薬の開発を試み,AdipoRonを見いだした.AdipoRonは,肥満による糖尿病を改善させ,運動持久力を増加させ,肥満糖尿病マウスの短くなっている寿命を延伸させた.

キーワード
健康長寿薬、運動模倣薬、新規抗糖尿病薬、大学初日本発創薬、カロリー制限

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トピックス
特発性肺線維症(IPF)におけるオートファジー,マイトファジーの役割
原 弘道*   荒屋 潤**  桑野和善***

* 東京慈恵会医科大学内科学講座呼吸器内科 ** 同准教授 *** 同教授

要  旨
 特発性肺線維症(IPF)は,肺の線維化による広範な構造改変を特徴とする予後不良の呼吸器疾患である.病態解明のため精力的に研究がなされているが,その発症・進展の詳細なメカニズムはいまだ明らかになっていない.細胞内タンパク質/小器官の分解機構であるオートファジーは,重要な恒常性維持機構であり,その機能的な異常は全身さまざまな疾患の病態と関連する.IPFの病態にもオートファジーは関与しており,その役割は徐々に明らかになりつつある.本稿では,IPFの病理学的に特徴的な変化である化生上皮細胞と筋線維芽細胞の増生におけるオートファジー,マイトファジー(ミトコンドリア特異的オートファジー)の果たす役割について解説する.

キーワード
特発性肺線維症(IPF)、オートファジー、マイトファジー

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