最新醫學 69巻9号 
特集 NASH -最新の知見-


要  旨


座談会
 NASH の最新の知見 ―基礎と臨床―

三重大学           竹井 謙之
筑波大学             正田 純一
東京女子医科大学        橋本 悦子 (司会)

 座談会の内容
 ・ガイドラインに関して
 ・遺伝的素因
 ・診断バイオマーカー
 ・治療に関して など
 
     正田先生      橋本先生     竹井先生

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基礎
NASH の疾患概念

西原利治**  廣瀬 享*   小笠原光成*
* 高知大学消化器内科 ** 同教授

要  旨
 NAFLDは非飲酒者で脂肪肝を呈する原因不明の慢性進行性肝疾患の総称で,近年の肥満人口の増加に伴い,本邦のみならず国際的にも急増している.本症は,肝病変の活動性が高くて肝硬変への移行や肝疾患関連死を生じる頻度の高いNASHと,活動性が低くて肝硬変への移行も少ないNAFLに分けられ,その判別には風船様肝細胞が重要視される.

キーワード
生活習慣病、メタボリックシンドローム、脂肪肝、肝硬変、肝細胞がん

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基礎
遺伝的素因と NASH

本多 靖*1   結束貴臣*1  小川祐二*1 今城健人*1   米田正人*1  斉藤 聡**1
中島 淳***1  堀田紀久子*2

*1 公立大学法人横浜市立大学附属病院肝胆膵消化器病学 **1 同准教授 ***1 同主任教授
*2 京都大学大学院医学研究科ファーマコゲノミクスプロジェクト

要  旨
 近年,GWAS技術の進歩に伴い遺伝的素因とNASHとの関係について多数の報告がなされている.PNPLA3は,人種を越えたNAFLD/NASHの疾患感受性遺伝子とされる.我々の検討では,PARVBが新たな疾患感受性遺伝子であると示唆された.NASH の発症・進展には遺伝的素因の関与が示されており,疾患感受性遺伝子の同定およびその機能解析が今後のNASHの予防や治療の一助となるであろう.本稿では,NAFLD/NASH に関連する遺伝的素因を文献,自験例をもとに概説する.

キーワード
NASH、脂肪肝、ゲノムワイド関連解析(GWAS)、PNPLA3PARVB

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基礎
インスリン抵抗性と NASH

川口 巧*   古賀浩徳*   鳥村拓司**
* 久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門 講師 ** 同教授

要  旨
 インスリン抵抗性は,NAFLD/NASH 患者において高頻度に認められる病態である.インスリン抵抗性がNAFLD/NASH の原因か結果かはいまだ明らかではないが,近年の基礎的研究により,インスリンの標的臓器である脂肪組織,消化管,骨格筋における変化が,インスリン抵抗性を介してNAFLD/NASH の発症に関与することが示唆されている.また,肝臓は糖代謝に深くかかわる臓器であり,NAFLD/NASH もインスリン抵抗性を惹起する.本稿ではインスリン抵抗性と NAFLD/NASH の関連について,臓器相関の観点から最近の知見を中心に概説する.また,インスリン抵抗性が肝発がんに及ぼす影響についても論ずる.

キーワード
インスリン抵抗性、高インスリン血症、NAFLD、臓器相関、肝細胞がん

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基礎
サイトカインと NASH
鎌田佳宏**1*2 三善英知**2  吉田雄一*1 竹原徹郎***1

*1 大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学 講師 **1 同准教授 ***1 同教授
*2 同機能診断科学准教授 **2 同教授

要  旨
 NASHはメタボリックシンドロームの肝臓における表現型であり,その病態形成にはさまざまな生理活性物質が関与している.脂肪組織から分泌されるアディポサイトカイン,卵巣から分泌されるエストロゲン,さらには肝臓から分泌されるヘパトカインのNASH進展への影響について,多数の基礎的・臨床的研究が行われてきた.これら生理活性物質のNASH病態進展における役割解明は,NASH治療の重要なヒントになりうる.

キーワード
アディポネクチン、Sfrp5、ヘパトカイン、フェチュイン、CCL2

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基礎
酸化ストレスと NASH
池嶋健一*   渡辺純夫**

* 順天堂大学大学院医学研究科消化器内科学 ** 同教授

要  旨
 NASHの病態には,活性酸素種(ROS)過剰産生による酸化ストレスが大きく関与している.肝細胞では,糖代謝負荷に伴うミトコンドリア電子伝達系からの電子漏出や,ミクロソーム・ペルオキシソームでの脂質β酸化亢進などによるROS過剰産生によって酸化ストレスが生じる.また,自然免疫系賦活に伴うクッパー細胞や浸潤白血球からのROS産生により,肝微小環境はさらに強い酸化ストレスに曝される.ROSは肝星細胞を活性化して肝線維化を惹起するのみならず,肝発がんの重要なトリガーとなる.したがって,NASHの予防・治療には酸化ストレス軽減へのアプローチが重要である.

キーワード
活性酸素種(ROS)、ミトコンドリア、オートファジー、肝線維化、肝発がん

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臨床
NAFLD/NASH の疫学と病態

高橋宏和*1  江口有一郎*2  安西慶三**1
*1 佐賀大学医学部肝臓糖尿病内分泌内科 **1 同教授   *2 同肝疾患医療支援学講座 教授 

要  旨
 NAFLD の有病率は 20~30%,NASH の有病率は3~5% と推計されている. NAFLD は男性(41%)が女性(17.7%)よりも高頻度である.合併する生活習慣病として肥満は最も重要である.糖尿病の有病率は 47.3% で,糖尿病患者は線維化が進展した NASH を有するリスクも高い.脂質異常症としては,高 LDL コレステロール血症,低 HDL コレステロール血症,高中性脂肪血症の有病率が高かった.また,高血圧の有病率は約 40% であった.

キーワード
内臓脂肪型肥満、インスリン抵抗性、膵β細胞機能、エストロゲン、閉経

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臨床
NAFLD/NASH の診断の現状と課題
角田圭雄*   伊藤義人**

* 京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学 講師 ** 同教授

要  旨
 NAFLDの診断は肝脂肪化に加えて,飲酒歴の聴取,他の慢性肝疾患の除外を行う.NASH診断のゴールドスタンダードは肝生検であり,肝細胞の大滴性脂肪化に加えて,炎症を伴う肝細胞の風船様変性を認めるものと定義する.アポトーシスのマーカーであるサイトケラチン18やNAFICスコアなどによりNASHを予測することが可能である.また線維化進展例の予測には,AST/ALT比や血小板数,肝線維化マーカーが参考になり,NAFLD fibrosis score や FIB-4 index は肝疾患関連死亡や予後の予測にも有用である.

キーワード
大滴性脂肪化、肝生検、肝細胞風船様変性、肝線維化、NASH

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臨床
NAFLD/NASH の画像診断
鈴木通博*

* 川崎市立多摩病院 病院長(聖マリアンナ医科大学)

要  旨
 NAFLDの画像診断は,超音波所見では,肝実質エコーレベル上昇,肝腎コントラスト,脈管不明瞭,深部エコー減衰の4つがあり,その感度は極めて高い.しかし客観性や定量性に欠けるため,CTやMRI検査が行われる.CTでは,正常の肝実質のCT値は脾のCT値より高い.脂肪肝の場合,肝実質のCT値が低下するため,肝脾CT値比(L/S比)が低下し,0.9未満のときに脂肪肝と診断する.MRIではT1 強調画像で高信号を呈することが知られている.しかしこれら画像診断では,NAFLDにおける非進行性の単純性脂肪肝と肝硬変,肝細胞がんに進展するNASHとの鑑別は不可能とされ,新たな画像診断の登場が期待されている.

キーワード
NAFLD、NASH、画像診断、キセノンCT

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臨床
NASH の予後 ―病理組織を中心に―
川中美和**  西野 謙*   河本博文*** 山田剛太郎****

* 川崎医科大学総合内科学2 講師 川崎医科大学附属川崎病院 講師 ** 同准教授 
*** 同教授 **** 同特任教授

要  旨
 NAFLにおいては NASHや肝硬変への進展頻度は低いが,死亡率は一般住民より高く,その死因は肝関連死が少ない.また,NASHにおいてはNAFLよりも予後が悪く,肝関連死も増加する.複数回肝生検症例の検討では,観察期間3.2~13.8年で肝線維化進行例32~53%,不変例30~50%,改善例16~29%である.線維化進行因子としては,肝生検時の炎症や線維化軽度,フィブロネクチン,また年齢,糖尿病や高血圧の有無,AST高値,ALTの変動,BMIやHOMA-IRの上昇などがいわれている.今後,進展するNASHを見極め,フォローや治療を行うことが重要である.

キーワード
NASH、NAFLD、予後、肝組織

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臨床
NASH の予後 ―肝発がんを中心に―
兵庫秀幸*   相方 浩**  茶山一彰***

* 広島大学病院消化器・代謝内科 診療講師 ** 同講師 *** 同教授
要  旨
 NAFLD/NASHの有病率は増加しており,その予後を見据えた治療方針の決定が重要となる.メタボリックシンドロームの肝表現型でもある NAFLD/NASHがゆえに,肥満・内臓肥満,高血圧,脂質異常症,糖尿病,高尿酸血症などの併発が多く,その予後には肝硬変・肝がんなどの肝関連疾患死のみならず,心血管関連疾患死や肝がん以外の他臓器の悪性腫瘍死が関連している.非アルコール性脂肪肝(NAFL),NASH,肝硬変という病期により,予後規定因子が変わると推測される.

キーワード
NASH、肝がん、予後因子

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臨床
小児の NAFLD/NASH
乾 あやの*

* 済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科 部長
要  旨
 NAFLDは,現代社会によって発症した.小児のNAFLD/NASHの長期予後は不明である.しかし,小児期にNAFLD/NASHが改善あるいは治癒する頻度は低い.医療従事者だけではこの疾患を治癒に導くことは厳しい.NAFLDを現代社会の問題点の一側面ととらえて,社会全体として取り組むべき課題である.

キーワード
NAFLD、NASH、メタボリックシンドローム、運動療法、食事療法

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臨床
二次性 NASH
徳重克年*
* 東京女子医科大学消化器内科 准教授

要  旨
 NASHは肥満や生活習慣病を基盤として発症する症例がほとんどである.しかし,下垂体機能低下症,薬剤(タモキシフェンなど),甲状腺機能低下症,多■胞卵巣症候群,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,性腺機能低下症,膵頭十二指腸切除に伴うNASHも注目され,いわゆる二次性NASHと分類されている.いまだ原発性,二次性NASHの明確な分類・定義はない.下垂体機能低下を伴ったNASHでは成長ホルモン投与が病態改善に有効であり,注目されている.今後二次性NASHの病態の解明は,本来のNASHの治療につながる可能性もあり,解析が待たれる分野である.

キーワード
二次性NASH、下垂体機能低下症、成長ホルモン、薬剤、膵頭十二指腸切除後

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臨床
NAFLD/NASH の治療 Update
佐藤 顕*   米田政志**
* 愛知医科大学消化器内科 講師 ** 同教授

要  旨
 メタボリックシンドロームの肝臓での表現型とされる NAFLD および NASH は,近年増加の一途をたどっている.将来的な肝硬変,肝がんへの進展を防ぐための治療は現在どの程度確立しているのか,本稿では2014年4月に刊行された『NAFLD/NASH診療ガイドライン2014』に沿って,NAFLD/NASH の治療について概説する1).

キーワード
NASH、NAFLD、治療、FXRアゴニスト

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連載
現代社会とうつ病

  現代社会において問題となっております「うつ病」について病気そのものの解説、法、サポート体制などを連載形式で詳しく紹介する目的で連載「現代社会とうつ病」を企画致しました。
 66巻5号から約3年間にわたり国内の診療・研究の最前線でご活躍されている先生方に「うつ病」について詳しくご解説をお願いしております。
 第40回は慶應義塾大学・髙宮 彰紘 先生による「新しいうつ病治療 ―脳深部刺激(DBS)―」です。

要  旨
 治療抵抗性うつ病に対する治療として,neuromodulationの分野の発展が著しい.その中で近年は脳深部刺激(DBS)が注目されている.DBSの効果は月単位で認められ,刺激部位への局所作用よりも,神経ネットワーク全体の修飾が効果発現に重要である.DBSは他の治療法で反応しない症例に対しても持続的な効果が期待できるとともに,うつ病の生物学的基盤の理解の向上に寄与すると考えられる.今後日本でもDBSを導入していくかどうかについて,慎重な議論が行われることを期待したい.

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連載
トップランナーに聞く(第45回)
臨床研究を通じた地域の救急システム改善の試み

 「最新医学」では第66巻からの新企画として「トップランナーに聞く」と題し、最先端の研究をされている40歳前後の先生のインタビューを掲載します。
  第45回は日本版心肺蘇生ガイドライン2010教育と普及の共同座長で院外心肺停止者の救命率の実態や効果的な救急処置について分析・検討を進められている京都大学の石見 拓 先生にお話を伺いました。

 石見 拓 先生

 循環器内科医として研鑽を積む中で、心臓病患者の多くは病院に搬送される前に亡くなり、病院到着後の治療ではこのような方たちを救えない事実に直面し、病院前救急医療体制の充実や心肺蘇生にかかわる研究に参加するため、大阪に移り、院外心停止症例を全数登録し蘇生効果を検証する研究プロジェクトに加わる。胸骨圧迫のみの心肺蘇生でも効果があることを証明するとともに、『胸骨圧迫+AED』からなる簡易講習会の普及を目指し、各地で講習会・講演会を開催.臨床研究でその効果検証も試みていいる。

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連載
ノーベル賞と医学の進歩・発展

 68巻10号からノーベル賞の対象となった業績やその業績が現在どのような恩恵をもたらしているかについて、各領域の専門家の先生方に詳しいご解説をお願いしております。

第23回は神戸大学名誉教授・杉山 武敏 先生による「前立腺がんのホルモン療法 ―チャールズ・ハギンス博士―」です。

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トピックス
大顆粒リンパ球性白血病と STAT3 変異
中島秀明*

* 慶應義塾大学医学部血液内科 准教授

要  旨
 大顆粒リンパ球性白血病(LGL)はCD8+ の細胞傷害性T細胞がクローン性に増殖する疾患である.最近LGLにおいて,主要なシグナル分子であるSTAT3が高頻度に変異していることが報告された.変異は2量体形成に重要なSH2ドメインに集中しており,これによってSTAT3が恒常的に活性化していた.STAT3変異の発見により,LGLの病態解明と治療法開発の進展が期待される.

キーワード
大顆粒リンパ球性白血病(LGL)、STAT3、遺伝子変異、細胞内シグナル

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トピックス
進行・再発悪性軟部腫瘍に対するパゾパニブ
森田佐知*    安藤雄一**

* 名古屋大学医学部附属病院化学療法部 ** 同教授

要  旨
 パゾパニブは VEGFR-1,2,3,PDGFR-α,β,およびKITに対して阻害作用を示すマルチターゲットの経口チロシンキナーゼ阻害薬である.標準的抗がん剤治療後の進行悪性軟部腫瘍患者を対象としたプラセボ対照国際共同第Ⅲ相試験(PALETTE 試験)で有意に無増悪生存期間を改善した結果をもとに,2012年9月に承認された.20132014年3月には腎細胞がんに対して効能追加されている.ここでは,悪性軟部腫瘍に対する役割を中心に解説する.

キーワード
パゾパニブ、悪性軟部腫瘍、PALETTE試験

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