最新醫學 70巻3月増刊号 
特集 糖尿病と合併症(前篇) 糖尿病


要  旨


病態生理
糖尿病発症に関連した GWAS,エピゲノム研究

前田 士郎
琉球大学大学院医学研究科先進ゲノム検査医学講座 教授

要  旨
 ゲノムワイド関連解析(GWAS)により,80以上の2型糖尿病感受性遺伝子領域が同定されているが,すべての情報を統合しても,2型糖尿病の遺伝的要因の10%程度しか説明できないと試算されている.一方,次世代シーケンサーを用いたRare variant解析,エピゲノム解析などが試みられており,今後は遺伝要因と環境因子との統合解析が,2型糖尿病疾患感受性機構の全容解明に有用と考えられる.

キーワード
2型糖尿病、ゲノムワイド関連解析、DNAメチル化

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病態生理
インクレチンとスルホニル尿素薬の併用によるインスリン分泌増強における Epac2A シグナルの役割

柴崎 忠雄*1  高橋 晴美*2  清野  進**2
*1神戸大学大学院医学研究科細胞分子医学 講師
*2神戸大学大学院医学研究科分子代謝医学 **2同特命教授

要  旨
 インクレチンは膵β細胞内のcAMPを増加させ,プロテインキナーゼA(PKA)依存性,およびEpac2A依存性経路を介してインスリン分泌を増強する.Exchange protein directry activated by cAMP(Epac)2A はスルホニル尿素(SU)薬でも活性化されることから,インクレチンとSU薬の両方の標的であると考えられる.Epac2Aは,インクレチンとSU薬の相互作用によるインスリン分泌増強において重要な役割を果たしているが,その作用はcAMPとSU薬によるEpac2Aの協調的な活性化によって担われる.

キーワード
Epac2A、cAMP、インクレチン、スルホニル尿素、インスリン分泌

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病態生理
糖毒性による膵β細胞障害

金藤 秀明
川崎医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科 教授

要  旨
 2型糖尿病の発症には遺伝素因と環境因子が関与するが,それらが揃ったからといって,すぐに著しい高血糖を伴う糖尿病に進展するわけではなく,当初は食後に,そして進展すると常時認められるようになる高血糖は,もとより存在するインスリン分泌不全を悪化させ,高血糖の遷延化,重篤化を招く.こうした現象は“膵β細胞ブドウ糖毒性”と呼ばれ,臨床的にも広く知られている.この“ブドウ糖毒性”に酸化ストレスの増加,さらに(インスリンの重要な転写因子である)PDX-1あるいはMafAの発現や活性の低下が関与することが明らかとなってきている.さらに,糖尿病状態では膵β細胞膜上のインクレチン受容体発現が低下すること,またその発現低下も“膵 β細胞ブドウ糖毒性”に関連している可能性も考えられている.

キーワード
膵β細胞、糖毒性、インスリン、転写因子、インクレチン

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病態生理
膵β細胞量の調節因子

淺原 俊一郎*1  木戸 良明*2
*1神戸大学大学院医学研究科内科学講座糖尿病・内分泌内科学
*2神戸大学大学院保健学研究科病態解析学領域分析医科学分野教授

要  旨
 2型糖尿病の発症・進展において,膵β細胞量の減少が関与していることは,我々を含む多くの研究室から報告されている.膵β細胞量の調節機構には,インスリンシグナル,オートファジー,小胞体ストレス,といった細胞内反応が,それぞれ相互作用を起していると考えられる.また最近は,エピジェネティクスやゲノムワイド関連解析(GWAS)によって同定された,2型糖尿病候補遺伝子が膵β細胞量を調節しているという研究成果も出てきている.2型糖尿病の病態把握のために,今後さらなる研究の進展が期待される.

キーワード
インスリンシグナル、小胞体ストレス、エピジェネティクス

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病理・病態生理
小胞体ストレスと糖尿病
永尾 優子*   田部 勝也**  谷澤 幸生***

*山口大学大学院医学系研究科病態制御内科学 **同併任講師 ***同教授

要  旨
 インスリンを大量に合成する膵β細胞は,小胞体ストレスに脆弱な細胞とされる.小胞体機能異常を有するWfs1遺伝子欠損マウスでは,小胞体ストレスが亢進する結果,膵β細胞の選択的脱落とインスリン分泌不全による高血糖を来す.一方,糖尿病状態では過栄養や肥満により増加した遊離脂肪酸が,小胞体ストレス亢進を介して膵β細胞障害を惹起する.したがって,小胞体ストレスの亢進が,糖尿病の病態形成や進展に重要な役割を担うことが考えられる.

キーワード
小胞体ストレス、糖尿病、膵β細胞、インスリン

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病態生理
膵α細胞・グルカゴンの糖代謝における役割
石原 寿光

日本大学医学部内科学系糖尿病・代謝内科学分野 主任教授

要  旨
 インクレチン関連薬によるグルカゴン分泌抑制の重要性が認識されるとともに,グルカゴンと膵α細胞に注目が集まってきている.膵島の20~40%を占めるに過ぎないため,その研究には困難が伴っているが,着実に進歩を続けている.この数年で,α細胞への微小循環,グルカゴンの栄養代謝における新たな役割,グルカゴン分泌の神経制御の詳細などが明らかにされている.さらに,発生工学を駆使した解析は,β細胞の供給源ともいうべきα細胞の新たな役割に光を当てつつある.

キーワード
膵島、膵α細胞、グルカゴン、分化転換

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病態生理
臓器間ネットワークを介した糖・エネルギー代謝制御

井泉 知仁*1  片桐 秀樹*1*2
*1東北大学病院糖尿病代謝科 *2東北大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野 教授

要  旨
 糖尿病や肥満の発症には,糖・エネルギー代謝の恒常性の乱れが深くかかわっている.生体内では種々の臓器が連携して代謝状態を変化させているが,近年の研究成果から,液性因子や神経経路を介した末梢臓器からの代謝情報を中枢神経系が統合し,さまざまな臓器間ネットワークを形成して,全身の代謝調節,恒常性維持に寄与していることが明らかになってきた.本稿では,これら糖・エネルギー代謝にかかわる臓器間ネットワークついて概説する.

キーワード
臓器間ネットワーク、肝臓、脂肪組織、神経シグナル、液性因子

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病態生理
糖尿病における中枢性摂食・代謝調節の破綻
前川 文彦*1  矢田 俊彦*2

*1独立行政法人国立環境研究所環境健康研究センター主任研究員
*2自治医科大学医学部生理学講座統合生理学部門 教授

要  旨
 糖尿病により,視床下部の摂食・エネルギー代謝中枢の誤作動が起り,過食・内臓脂肪蓄積が誘発されることで糖尿病がさらに悪化する“負の連鎖”が知られている.視床下部の摂食中枢神経核である弓状核,腹内側核,室傍核に存在する神経ペプチド含有神経細胞の機能不全が,その病態形成に重要な役割を果たしていることが,近年の研究により明らかになりつつある.    

キーワード
内臓肥満、GKラット、過食、レプチン抵抗性、神経ペプチドY、脳由来神経栄養因子

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病態生理
消化管ペプチドとエネルギー代謝調節
十枝内 厚次**  ワイズ TM ザベッド*   中里 雅光***

*宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学分野 **同講師 ***同教授

要  旨
 腸管上皮の内分泌細胞には,摂食調節に機能する消化管ペプチドを分泌する細胞があり,腸管内の情報や血中の栄養状態を反映して,ペプチドの分泌動態を変化させる.摂食関連の消化管ペプチドは,迷走神経求心路の活性を変化させることで,視床下部での摂食・エネルギー代謝調節に機能することが明らかとなってきた.本稿では,4つの代表的な消化管ペプチドを紹介し,それらがどのようにエネルギー代謝調節に機能するのかを概説する.

キーワード
グレリン、グルカゴン様ペプチド1、コレシストキニン、迷走神経求心路、視床下部

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1型糖尿病
急性1型糖尿病の病態と成因
能宗 伸輔*1  池上 博司**1

*1近畿大学医学部内分泌・代謝・糖尿病内科 講師 **1同主任教授

要  旨
 1型糖尿病は,インスリン分泌細胞である膵β細胞の破壊を背景に,糖利用障害を呈するホルモン欠損症であり,その多くは,膵β細胞に対する自己免疫反応による膵島炎を本態とする,臓器特異的自己免疫疾患である.本邦においては,1型糖尿病発症に至る期間や臨床的特徴により,劇症,急性発症,緩徐進行の3病型に分類されるが,本稿では,最も典型的な1型糖尿病である,急性発症1型糖尿病の病態と成因について概説する.

キーワード
1型糖尿病、自己免疫、膵β細胞、感受性遺伝子

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1型糖尿病
劇症1型糖尿病の病態と成因
徳永 あゆみ*   今川 彰久**

*大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学 **同准教授
要  旨
 劇症1型糖尿病は,1型糖尿病のサブタイプの1つであるが,膵β細胞がほぼ完全に破壊され,臨床経過が非常に急激であることが特徴の疾患である.診断の遅れが予後に影響する本疾患について,疫学データ・臨床的特徴を解説し,その成因について,遺伝因子,ウイルス感染,膵組織所見の観点から,現在までの研究で判明している点につき,紹介する.

キーワード
劇症1型糖尿病、特発性、遺伝因子、抗ウイルス免疫反応、炎症細胞浸潤

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1型糖尿病
緩徐進行1型糖尿病の病態と成因
粟田 卓也

埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科 教授
要  旨
 最近になり,ヒト1型糖尿病の著明な複雑性と多様性が明らかになってきた.本邦では1型糖尿病は,劇症1型糖尿病,急性発症1型糖尿病,緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)の3病型に分類され,診断基準も策定された.免疫学的・遺伝学的検討と膵病理所見の検討から,1型糖尿病の病態・成因について,パラダイムシフトが起っている.その中で,SPIDDMは頻度が高く,膵β細胞が長く残存するために,進展阻止手段の開発が望まれる.

キーワード
緩徐進行1型糖尿病、診断基準、膵島関連自己抗体、エピジェネティクス、膵病理所見

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2型糖尿病,インスリン抵抗性
アディポネクチンの生理学と創薬への期待
岩部 真人   山内 敏正   岩部 美紀   門 脇  孝

東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科

要  旨
 栄養状態に対する生体反応を適切にコントロールすることによって老化の速度を遅らせ,寿命の延長や若さを維持することが可能だと考えられ,代謝制御経路を基盤とした健康長寿を実現する方法が,世界中で待望されている.本稿では,脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンの生理学的・病態生理学的意義から,アディポネクチン受容体の同定とその機能解明,さらに,最新のアディポネクチン受容体活性化低分子化合物の取得と今後の展望について,概説する.

キーワード
アディポネクチン、アディポネクチン受容体、AdipoRon、健康長寿

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2型糖尿病,インスリン抵抗性
PPARファミリーと代謝調節
薄井  勲*   戸邉 一之**

*富山大学大学院医学薬学研究部内科学 診療教授 **同教授

要  旨
 ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)ファミリーは,核内受容体スーパーファミリーの1つであり,リガンドの結合後活性化する転写因子でもある.PPARファミリーはPPARα,PPARβ/δ,PPARγの3種類のアイソフォームから成るが,いずれも糖または脂質代謝の制御に関与する.アイソフォームにより,組織分布やリガンドが異なり,特徴的な機能を持つ.PPARの活性化薬は糖尿病,脂質異常症,動脈硬化症など,代謝疾患の治療薬として広く臨床で用いられている.

キーワード
PPARα、PPARβ/δ、PPARγ、脂肪酸酸化、糖代謝

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2型糖尿病,インスリン抵抗性
糖尿病とミトコンドリア機能障害
野村 和弘*   小 川  渉**
*神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科学 **同教授

要  旨
 ミトコンドリアはエネルギー代謝の中心的役割を担うが,その機能不全はインスリン抵抗性やインスリン分泌不全に深く関与することが明らかになってきている.ミトコンドリアは個体のエネルギー需要や栄養状態に応じて,質的あるいは量的に変化するが,これを担う主要制御因子が転写コアクチベーター,PPARγコアクチベーター1α(PGC-1α)である.近年,PGC-1αの発現低下や機能障害が,インスリン抵抗性や肥満の病態にかかわる可能性が注目されている.

キーワード
ミトコンドリア、糖尿病、PGC-1α、骨格筋ミトコンドリア

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2型糖尿病,インスリン抵抗性
高齢者糖尿病とサルコペニア,フレイル
荒 木  厚

東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科 内科総括部長

要  旨
 高齢糖尿病患者では,下肢の筋肉量,筋力,身体能力が低下しやすく,サルコペニアになりやすい.フレイルは多くの生理機能の低下が蓄積した結果,恒常性が破綻しやすく,死亡などを来しやすい状態であるが,高血糖の糖尿病患者はフレイルを来しやすい.サルコペニアやフレイルの機序には,インスリン抵抗性,炎症,低栄養,ホルモン異常,などがある.フレイルを予防するためには,筋力トレーニングを含む運動,栄養サポート,重症低血糖の予防と柔軟な血糖コントロール目標の設定,が大切である.

キーワード
サルコペニア、フレイル、高齢者糖尿病、インスリン抵抗性

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2型糖尿病,インスリン抵抗性
慢性炎症と異所性脂肪蓄積
田 中  都*1   菅波 孝祥*2*3   小川 佳宏**1*4

*1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子内分泌代謝学分野特任教授 **1同教授
*2東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科臓器代謝ネットワーク講座特任教授
*3科学技術振興機構さきがけ *4科学技術振興機構 CREST

要  旨
 肥満を中心として発症するメタボリックシンドロームは,慢性炎症疾患としてとらえられるようになった.実際に,肥満の脂肪組織では組織リモデリングに伴う種々の変化が生じ,アディポサイトカイン産生や中性脂肪蓄積に代表される,脂肪組織機能の低下に繋がる.その結果,異所性脂肪蓄積がもたらされ,慢性炎症が増悪するなどの知見も増えてきた.本稿では,肥満の脂肪組織炎症と異所性脂肪蓄積について,最近の知見を概説する.

キーワード
脂肪組織リモデリング、脂肪組織炎症、マクロファージ、脂肪組織線維化、異所性脂肪蓄積

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2型糖尿病,インスリン抵抗性
肝臓からみた2型糖尿病・インスリン抵抗性
矢作 直也*1*2
*1筑波大学医学医療系ニュートリゲノミクスリサーチグループ代表 *2同内分泌代謝・糖尿病内科准教授

要  旨
 肝臓はエネルギー代謝の中心臓器であり,糖尿病の病態とも密接にかかわっている.肝臓は,絶食時にはブドウ糖を血中へ放出し,摂食時には糖を取り込む.これらの調節に際しては,肝細胞内外からの多くの情報を統合する形で多岐にわたる複雑なメカニズムが働いており,ゲノム情報を参照する転写レベルの制御も,重要な役割を担っている.

キーワード
糖尿病、脂肪肝、インスリン抵抗性、エネルギー代謝、転写因子

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治療
多能性幹細胞を用いた新規糖尿病治療法確立の展望
川口 義弥
京都大学 iPS 細胞研究所臨床応用研究部門臓器形成誘導分野 教授

要  旨
 ES細胞やiPS細胞を用いて機能的膵島を作製し,糖尿病治療に用いるという夢は,いまだ実現していない.多能性幹細胞を用いて機能的細胞を作製する研究戦略は“発生現象を培養皿上で再現する”という根本思想に基づくが,過去の報告は,その部分的な再現にとどまっている.本稿では,“膵臓は立体構築の中で,外分泌組織と同時に形成され,終生共存する”という,膵臓の成り立ちを重視した我々の研究方針を軸に,将来を展望する.

キーワード
Pdx1、Ptfla、原腸オルガノイド

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治療
運動療法の骨格筋における分子メカニズム
古市 泰郎*   藤井 宣晴**
*首都大学東京人間健康科学研究科ヘルスプロモーションサイエンス学域助教 **同教授

要  旨
 骨格筋において,筋収縮は,インスリンに匹敵する強力な糖輸送促進刺激である.筋収縮もインスリンと同様に,最終的にはグルコーストランスポーター4(GLUT4)を細胞表面へと移動させることによって糖輸送を促進するが,それに至るまでの細胞内情報伝達機構は,両者で異なる.また,継続的な運動トレーニングは,インスリン抵抗性を改善することが知られている.この現象には,GLUT4を貯蔵し細胞内小胞の移動を調節する,TBC1ドメイン・メンバー分子がかかわっていることが,示唆されている.

キーワード
骨格筋、筋収縮、運動、糖輸送、インスリン抵抗性

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治療
高度肥満糖尿病の外科治療
卯 木  智*   前 川  聡**
*首都大学東京人間健康科学研究科ヘルスプロモーションサイエンス学域助教 **同教授

要  旨
 肥満外科治療は,高度肥満に対する確実な減量効果だけでなく,糖尿病に対して劇的な効果があることが知られ,海外では,肥満合併糖尿病治療の1つのオプションになっている.本邦では,腹腔鏡下スリーブ状切除術が2014年4月に保険収載され,今後施行例が増加することが予想される.耐糖能改善機序については,これまでに多くの報告があるが,いまだ不明である.最近では腸内細菌の関与が示唆され,インクレチンだけではなく,複雑な機序が関与していることが明らかになってきた.

キーワード
GLP-1、胃バイパス、スリーブ状胃切除術、腸内細菌、チーム医療

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治療
ビグアナイドの分子作用メカニズム
太田 明雄*   田 中  逸**
*聖マリアンナ医科大学代謝・内分泌内科准教授 **同教授

要  旨
 ビグアナイド(BG)薬(メトホルミン)の血糖低下作用は,肝臓におけるインスリン抵抗性改善と糖新生の抑制が主な作用と考えられている.これまでメトホルミンは,AMP活性化キナーゼ(AMPK)の活性化を介して肝糖産生を抑制するとされてきたが,最近ではメトホルミンのグルカゴンシグナル伝達抑制作用が,新たな機序の1つとして注目されている.

キーワード
AMP活性化キナーゼ、呼吸鎖複合体Ⅰ、アセチルCoAカルボキシラーゼ、腫瘍抑制タンパク、グルカゴン

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治療
インクレチンの膵外作用
矢部 大介*1*2 清 野  裕*3
*1関西電力病院糖尿病・代謝・内分泌センター 部長 *2同疾患栄養治療センターセンター長 *3同病院長

要  旨
 インクレチンは,食事に応答して消化管から分泌され,血糖依存的にインスリン分泌を促進するホルモンの総称で,グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド(GLP)-1が確認されている.近年,基礎的な検討から,GIP,GLP-1のさまざまな膵外作用が明らかにされ,糖尿病に関連した細小血管障害や大血管障害,併存症の予防や進展抑制の点で,注目されている.本稿では,インクレチン関連薬の多面的効果を理解する一助となることを期待して,インクレチンの膵外作用に関する基礎および臨床的知見を整理する.

キーワード
GLP-1、GIP、細小血管障害、大血管障害、併存疾患

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治療
SGLT2 阻害薬:基礎と臨床
池田 富貴*   綿田 裕孝**
*順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学准教授 **同教授

要  旨
 ナトリウム/グルコース共輸送担体(SGLT)2阻害薬は,その薬理作用から,インスリン非依存的に血糖低下作用を示すため,直接的あるいは間接的にインスリンの作用を介する従来の糖尿病治療薬で,十分な血糖降下作用が得られなかった糖尿病患者に対しても,有効性が期待される.また,あらゆる段階の糖尿病患者に対して使用することが可能で,ほかの糖尿病治療薬との併用が可能な薬剤であり,インスリン製剤およびインスリン分泌促進薬との併用時にも,安定した血糖コントロールが期待できる.

キーワード
ナトリウム/グルコース共輸送担体、SGLT2阻害薬、尿糖、低血糖

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治療
今後期待される糖尿病治療薬
近藤 義宣*1*2 寺内 康夫**2
*1茅ヶ崎市立病院代謝内分泌内科
*2横浜市立大学医科学研究科分子内分泌・糖尿病内科学教室 **2同教授

要  旨
 本稿では,開発中の糖尿病治療薬を概説する.グルコキナーゼ活性化薬(GKA)は,血糖降下作用のみならず,β細胞機能改善作用も期待される.ポリエチレングリコール化インスリンは,肝選択的なインスリン作用発現を可能としている.インスリングラルギンU300は,濃縮というシンプルな方法で持効性と安全性を向上している.グルカゴン受容体拮抗薬は,低血糖リスクの低い糖尿病治療薬として開発中である.腸内細菌叢調整薬は,耐糖能回復の可能性も示唆されている.

キーワード
グルコキナーゼ活性化薬、PEGインスリン、インスリングラルギンU300、グルカゴン受容体拮抗薬、
腸内細菌叢調整薬

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