最新醫學 70巻10号 
特集 大きく変化する神経内分泌腫瘍(NET)の概念と治療


要  旨


対談
 最新醫學900号のあゆみと昨今の医学会・医療界を取り巻く環境



髙久 史麿 先生


「英語の雑誌も読みますが、日本語の方が手軽で、よく頭に入るので、時間的にも効率がいいです」


井村 裕夫 先生

「Physican Scientistを育てていく雑誌として重要な役割を演じてほしいというのが期待です」

 髙久先生                   井村先生
内容 ・『最新醫學』に対する思い出
・大規模臨床研究の重要性と課題
・8年ぶりの医学会総会を振り返って
・先制医療とDOHaD

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座談会
 NET in 2015 ―病因と病態の解明に向けて―

京都医療センター        島津 章
関西電力病院          河本 泉
東北大学             笹野 公伸 (司会)

 座談会の内容
 ・WHO2010分類の意義
 ・WHO2010の問題点
 ・原発病変と転移性病変におけるグレード
 ・呼吸器におけるNETのWHO分類
    -WHO2015-        
 ほか
 
  河本先生       笹野先生        島津先生

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総論
神経内分泌腫瘍 ―臨床と研究の歴史と現状―

今村正之*
* 日本神経内分泌腫瘍研究会 理事長

要  旨
 インスリンやセクレチン,ガストリンという消化管ホルモン発見とその生理学的意義の研究の歴史と,インスリノーマやガストリノーマという機能性神経内分泌腫瘍(NET)の診療の要点と注意点について述べ,NETのKi67指標に基づくWHO2010病理分類の意義と治療薬の開発と,日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS)の発足と診療ガイドライン作成と公開などについて述べた.

キーワード
消化管ホルモン、神経内分泌腫瘍、膵・消化管診療ガイドライン、日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS)、多発性内分泌腫瘍診療ガイドブック

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総論
神経内分泌腫瘍の名称と我が国の疫学の変遷

伊藤鉄英**  李 倫學*   立花雄一* 植田圭二郎*   藤山 隆*   三木正美*
安永浩平*   鈴木俊幸*   田中琢磨* 河邉 顕*   藤森 尚*   肱岡真之*

* 九州大学大学院医学研究院病態制御内科学 ** 同准教授

要  旨
 神経内分泌腫瘍(NET)は,内分泌細胞や神経細胞から発症する腫瘍の総称で,Oberndorferが1907年に初めて多発性の小腸腫瘍の性状からkarzinoide(カルチノイド)として報告した.2010年に改訂された新WHO分類では,カルチノイドという用語はカルチノイド徴候のみに用いて,NETに名称が統一された.また,日本における膵・消化管NETの疫学調査が施行され,その実態が解明されてきた.第2回全国疫学調査によると,2010年の膵NETの年間受療者数は2005年の約1.2倍に,消化管NETは約1.8倍に増加している.

キーワード
神経内分泌腫瘍、カルチノイド、疫学、膵神経内分泌腫瘍、消化管神経内分泌腫瘍

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総論
神経内分泌腫瘍 ―臨床的概要と内分泌学的特色―

島津 章*
* 国立病院機構京都医療センター 臨床研究センター長

要  旨
 神経内分泌腫瘍(NET)は,神経内分泌細胞に由来する腫瘍の総称で,全身のさまざまな臓器に発生する.我が国の疫学調査では,膵・消化管NETの受療者は 11,000人を超え,増加傾向にある.機能性 NET ではホルモン過剰による特異的な症状から診断されることが多いが,非機能性 NET では症状が少なく進行例が多い.診療には存在診断および正確な局在診断が必要であり,NET 患者の悉皆登録への期待が大きい.

キーワード
疫学、機能性NET、非機能性NET、存在診断

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診断
胃・十二指腸神経内分泌腫瘍の内視鏡診断と治療方針
八田和久*1   小池智幸**1   飯島克則*2   下瀬川 徹***1

*1 東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野/東北メディカル・メガバンク機構 助教
**1 東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野講師 ***1 同教授 *2 秋田大学消化管内科 教授

要  旨
 胃・十二指腸神経内分泌腫瘍(NET)は,内視鏡にて粘膜下腫瘍の形態をとることが多く,やや黄色調,中心に陥凹を伴うことがある.超音波内視鏡では,第2,3層に主座を持つ,境界明瞭な低エコー性病変となることが多い.胃NETの治療方針(内視鏡切除もしくは外科切除)はRindi分類の病型によるとされている.十二指腸NETの治療方針は,ガストリノーマ,乳頭部NETでは外科切除が推奨されるが,それ以外では腫瘍径によるとされている.

キーワード
胃神経内分泌腫瘍、十二指腸神経内分泌腫瘍

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診断
膵神経内分泌腫瘍の画像所見

肱岡 範**1  水野伸匡**1  原 和生**1 今岡 大**1  吉田 司*1  奥野のぞみ*1
稗田信弘*1  田近正洋*2  田中 努*2 石原 誠*2  丹羽康正**2  山雄健次***1

*1 愛知県がんセンター中央病院消化器内科部 **1 同医長 ***1 同部長
*2 同内視鏡部医長 **2 同部長

要  旨
 膵神経内分泌腫瘍(PNEN)の画像診断について解説した.NETG1/G2の典型例は,境界明瞭,髄様,多血性の所見を呈するため鑑別診断にPNENを挙げることは容易である.しかし非典型例として,①■胞変性,②乏血性,③膵管狭窄併発,④主膵管内進展があることを認識しておくことが重要である.また,NECは膵管がんに類似した画像所見を呈するため注意が必要である.

キーワード
膵神経内分泌腫瘍(PNET)、NET、画像診断

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診断
EUS-FNA による膵神経内分泌腫瘍診断の実際
菅野 敦**  正宗 淳*** 吉田直樹* 本郷星仁*   中野絵里子*   三浦 晋*
濱田 晋*   菊田和宏*   粂  潔* 廣田衛久**  下瀬川 徹****

* 東北大学大学院消化器病態学分野 ** 同院内講師 *** 同准教授 **** 同教授

要  旨
 消化管や膵臓に発生する神経内分泌腫瘍(NEN)の報告数が増加している.2010年に,細胞分裂所見と Ki67 標識率に基づいて分類される新しいNENのWHO病理分類が公表された.超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を用いた膵NEN(PNEN)の診断における有用性が報告され,組織学的診断のみならず,悪性度診断にも応用されている.EUS-FNAを用いてPNENの診断を行うためには十分な組織量が必要であり,穿刺方法や検体処理法を工夫する必要がある.    

キーワード
Ki67、WHO分類、NET、NEC

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診断
膵 ・消化管神経内分泌腫瘍の細胞像の特徴と細胞診の注意点
笠島敦子*1*2 安達友津*1  小泉照樹*1 三浦弘守*1  藤島史喜*1  渡辺みか*1
笹野公伸**1*3

*1 東北大学病院病理部 **1 同部長 *2 東北大学大学院総合地域医療研修センター 准教授
*3 東北大学大学院医学系研究科病理診断学分野 教授

要  旨
 超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)の普及に伴い,膵・消化管神経内分泌腫瘍(GEP-NET)を細胞診によって診断する機会が増えている.GEP-NETのうち高分化型神経内分泌腫瘍(NET)では,特徴的な核所見により細胞診の有用性が高い.一方で,NETでも非典型的な細胞像を呈する症例や,NETと細胞像が類似する他病変も存在し,常にその可能性を念頭に置いて診断することが重要である.GEP-NET の中でも特に細胞診で遭遇する頻度の高い膵NETと,その鑑別となる病変の細胞像を紹介する.

キーワード
神経内分泌腫瘍、細胞診、EUC-FNA

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診断
神経内分泌腫瘍の病理組織像の最近の概念の変遷
笹野公伸*1**2 笠島敦子*2*3

*1 東北大学大学院医学系研究科医科学専攻病理病態学講座病理診断学分野 教授
*2 東北大学病院病理部 **2 同部長 *3 東北大学大学院医学系研究科総合地域医療研修センター 准教授

要  旨
 神経内分泌腫瘍(NET),特に膵消化管神経内分泌腫瘍(GEP-NET)の病理学的概念は,腫瘍細胞の増殖動態に基づく新分類であるWHO 2010によりかなり整理された.しかしどのような分類でも完全なものはなく,特にNEC/NENG3はKi67標識率が20%以上の症例と規範されているが,治療への反応性,臨床予後などの点で今後細分化する必要があると考えられている.また,WHO 2015として最近提唱された呼吸器原発の NET の病理分類との整合性も考えていかなくてはならない.

キーワード
神経内分泌腫瘍、病理学、Ki67、小細胞がん

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診断
膵神経内分泌腫瘍の分子遺伝学
谷内田真一*

* 国立がん研究センター研究所がんゲノミクス研究分野 ユニット長
要  旨
 膵神経内分泌腫瘍(NET)の全エクソンシークエンス解析が終了して,約4年が経過した.これまでの既知のドライバー遺伝子(MEN1)に加えて,新規のドライバー遺伝子(ATRX/DAXX),さらにmTOR経路が深く関与することが明らかになった.2015年2月に,イタリアと豪州を中心とした100例の全ゲノムシークエンス解析がICGCミーティングで発表された.膵 NET の網羅的なゲノム解析はほぼ終了し,この成果を踏まえた既知の分子標的治療薬の対象患者の層別化や,新たな分子標的治療薬の開発の時代を迎えようとしている.
キーワード
mTOR経路、ATRX/DAXX、MEN1、分子標的治療

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診断
遺伝性神経内分泌腫瘍 ―多発性内分泌腫瘍症1型に伴う膵・消化管 NET―
櫻井晃洋*

* 札幌医科大学医学部遺伝医学 教授
要  旨
 神経内分泌腫瘍(NET)腫瘍細胞における体細胞遺伝子変異の網羅的解析では,半数近くにおいて MEN1遺伝子の変異が認められ,この遺伝子がNET発生に大きく関与していることが明らかにされている.NETの10%はその背景に多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)を有しており,NET患者のうちから適切にMEN1患者を診断することは,膵NETの治療方針の決定はもちろん,それ以外のMEN1関連病変のサーベイランスや治療計画の決定,さらにはリスクのある血縁者に対する早期診断と早期治療も可能にする.

キーワード
MEN1遺伝子、多発性、選択的動脈内カルシウム注入試験、発症前診断

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治療
消化管神経内分泌腫瘍の外科的治療
柴田 近*  岩指 元*  児山 香* 向田和明*  荒木孝明*  木村俊一* 中嶋夏磯*

* 東北薬科大学病院消化器外科

要  旨
 遠隔転移を伴わない消化管神経内分泌腫瘍(NET)の場合,一部の症例で内視鏡的治療が許容されるが,多くの症例でリンパ節郭清を伴う切除術が推奨される.発症部位によってリンパ節転移の頻度が異なるなど,部位による差も認められるため,これらを考慮して術式を決定すべきである.遠隔転移を伴う消化管NETでも,腫瘍の遺残なく切除が可能であれば切除術が推奨されている.

キーワード
リンパ節廓清、Rindi分類

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治療
診療ガイドラインに基づいた膵神経内分泌腫瘍の治療
河本 泉*1*2 今村正之*3
*1 関西電力病院 外科部長 *2 関西電力医学研究所外科(神経内分泌腫瘍)研究部 部長
*3 関西電力病院内分泌腫瘍センター センター長

要  旨
 膵神経内分泌腫瘍(NET)は,過剰分泌されるホルモンの有無・種類により多くのサブカテゴリーに分類される.また遺伝性疾患に伴うものと散発性NETにも分類される.遺伝性疾患に伴うNETでは,異時性・同時性に多発する傾向がある.悪性腫瘍としての治療と過剰分泌されるホルモンによる内分泌症状の緩和の両方を考慮した手術適応,術式選択が重要である.診療ガイドラインに沿って膵NETの外科治療について説明を行う.

キーワード
膵神経内分泌腫瘍、インスリノーマ、ガストリノーマ、非機能性、MEN1

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治療
薬物療法
森実千種*   奥坂拓志**
* 国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科 ** 同科長

要  旨
 神経内分泌腫瘍(NET)の内分泌症状に対しては,ソマトスタチンアナログなどの治療薬が用いられる.また,ソマトスタチンアナログにはNETの増殖抑制作用も示されている.分子標的薬としては膵原発NETに対してエベロリムスやスニチニブの有効性が示されている.細胞傷害性薬剤としてはストレプトゾシン,テモゾロミドなどがキードラッグである.神経内分泌がん(NEC)に対してはシスプラチン+エトポシド併用療法もしくはシスプラチン+イリノテカン併用療法が用いられている.

キーワード
ソマトスタチンアナログ、エベロリムス、スニチニブ、シスプラチン+エトポシド併用療法、シスプラチン+イリノテカン併用療法

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治療
膵・消化管原発神経内分泌腫瘍に対する集学的治療 ―転移病巣に対する局所療法を中心に―
勝屋友幾*   本間義崇*   朴 成和**
* 国立がん研究センター中央病院消化管内科 ** 同科長

要  旨
 膵・消化管原発の神経内分泌腫瘍(NET)は,診断時に遠隔転移,特に肝転移を認めることが多い.治癒の可能性から肝転移巣の外科的切除が第一選択となるが,手術適応とならない症例でも,ラジオ波焼灼術や血管内治療などの局所療法を行うことにより,機能性腫瘍の症状緩和,局所の病勢制御,一定の生存割合の改善が得られる.転移病巣を伴う NET では,外科的切除,薬物療法,局所療法などによる集学的治療が重要である.

キーワード
膵・消化管原発性神経内分泌腫瘍、肝転移、外科的切除、ラジオ波焼灼、血管内治療

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痛みのClinical Neuroscience
(4)慢性の痛みの疫学
中村裕之** 三苫 純子*

*金沢大学医薬保健研究域医学系環境生態医学・公衆衛生学 **同教授

要  旨
 壮年者および高齢者の多くが腰痛,膝痛,肩痛をはじめ多くの部位に慢性的に痛みを有しており,日常生活動作やQOLに及ぼす影響は大きい.このため慢性の痛みにおいては単に医学的な面だけではなく,多くの側面にも注目して扱う必要がある.そのため今後,慢性の痛みにおける診断・治療を進めるための組織として,集学的(学際的)痛みセンターを構築することなどにより,学問的基盤のもと,慢性の痛みに対する対策を総合的に進める必要がある.

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連載
肉眼解剖学者がみたヒト大脳の立体構造

 脳の肉眼解剖学に40年間携わってこられた金沢医科大学・篠原治道先生による誌面講義の第7回は「外側からのアプローチ(4)前頭斜走路(仮称)と放線冠,下部視放線(マイヤー/フレヒジヒ-マイヤーのループ),紡錘状回と舌状回,グラチオレット管と前交連」です。
 開業医、研修医、専門医の方々にもご興味やご関心をもって頂けるような内容となっています。


下側頭溝によって区画されている紡錘状回および側副溝によって区画される舌状回を確認しながら皮質灰白質を刮ぐ
(本文より)

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連載
連載
ノーベル賞と医学の進歩・発展

 68巻10号からノーベル賞の対象となった業績やその業績が現在どのような恩恵をもたらしているかについて、各領域の専門家の先生方に詳しいご解説をお願いしております。

第34回は北海道大学教授・浅香 正博 先生による「ウォーレン,マーシャルによるヘリコバクター・ピロリ菌発見とその意義」です。

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トピックス
肝内グリコーゲンセンサーと脂肪分解をつなぐ神経性飢餓応答
泉田欣彦*

* 東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科

要  旨
 生命の最も危機的な代謝環境である飢餓に適応するよう,エネルギーの貯蔵様式と消費形態を生体は巧みに進化させてきた.我々の最新の研究により,肝内のグリコーゲン消費を感知する未知なるメカニズムが存在すること,さらに神経系制御によって短期的かつ簡便なエネルギー利用形態となる糖代謝と大量のエネルギー利用を可能とする脂質代謝の2つの制御様式を密接に連関し,精緻に制御していることが明らかになった.

キーワード
エネルギーメタボリズム、グリコーゲン、神経、脂肪分解

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トピックス
骨細胞による多臓器制御 ―造血幹細胞・免疫システムからエネルギー代謝まで―
片山義雄*

* 神戸大学医学部附属病院血液内科 講師

要  旨
 造血/免疫/糖・脂質エネルギー代謝に共通する特徴として,進化の過程で外界からのストレスに対応し全身の恒常性を維持するために高度に洗練されてきたシステムという側面が挙げられる.これは,地球上の重力を感知し続けることで培われた機構ととらえると,メカノトランスダクションと臓器連関の存在が見えてくる.重力感知装置である骨組織内骨細胞が,この多臓器間ネットワークの中心に位置することが明らかとなってきた.

キーワード
造血幹細胞ニッチ、骨細胞、重力、免疫、エネルギー代謝

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