最新醫學 71巻3号 
特集 がん低侵襲治療の最前線



要  旨


座談会
 がん低侵襲治療の現状と方向性

東京医科大学           池田 徳彦
聖マリアンナ医科大学      鈴木 直
慶應義塾大学           北川 雄光 (司会)

 座談会の内容
 ・何をもって低侵襲と見なすか
 ・手術療法と非手術療法
 ・胸腔鏡・腹腔鏡・ロボット支援手術の現状
 ・がん低侵襲治療の方向性
 など
 
   鈴木先生      北川先生      池田先生

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脳腫瘍に対する低侵襲治療

近藤聡英*   新井 一**
* 順天堂大学脳神経外科 准教授 ** 同教授

要  旨
 脳腫瘍は中枢神経系に発生する腫瘍であり,その罹患自体が生命維持に直結する特異性から,安全な医療の確立に注力されてきた.しかし,CTやMRIといった神経放射線学的画像技術の進歩から無症候性腫瘍が指摘されるようになり,その自然歴が明らかになるにつれ,低侵襲性医療介入の必要性に迫られている.現在のこの領域での取り組みにつき,治療のみならず診断技術も含めて横断的に総括する.

キーワード
脳腫瘍、神経放射線学的画像、内視鏡手術、放射線治療、ナビゲーションシステム

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頭頸部悪性腫瘍に対する低侵襲治療

朝蔭孝宏*
* 東京医科歯科大学頭頸部外科 教授

要  旨
 頭頸部領域は「食べる」,「話す」といった,人間が生きていくうえで欠かせない機能を担っている.それに加えて「外見」も大変重要な要素である.よって,頭頸部領域の悪性腫瘍を治療するにあたり,根治性はもちろんのこと,「食べる」,「話す」,「外見」などの障害を最小限にする配慮が必要である.今回はがん治療の3本の柱である手術,放射線,化学療法に分けて,頭頸部領域の低侵襲治療について述べる.

キーワード
系口腔的腫瘍切除術、小線源治療、導入化学療法

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消化器がんに対する内視鏡治療(消化管)

後藤 修*   佐々木 基*   飽本哲兵* 藤本 愛*   落合康利*   前畑忠輝*
西澤俊宏*   矢作直久**

* 慶應義塾大学医学部腫瘍センター低侵襲療法研究開発部門 ** 同教授

要  旨
 リンパ節転移の可能性が極めて低いと考えられる消化管がんにおいては,内視鏡による低侵襲治療によって治癒切除が得られる.ポリープ切除術,内視鏡的粘膜切除術(EMR),内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などさまざまなバリエーションがあり,腫瘍の肉眼型や大きさに応じて選択される.近年ではESD技術を用いて内視鏡治療のさらなる適応拡大が模索されており,手技の確立と普及が期待される.

キーワード
ポリペクトミー、EMR、ESD、LECS、NEWS

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膵胆道がんに対する内視鏡治療の現状
殿塚亮祐*   糸井隆夫*** 祖父尼 淳** 土屋貴愛*   辻 修二郎*   池内信人*
鎌田健太郎*   田中麗奈*   梅田純子* 本定三季*   向井俊太郎*   藤田 充*
山本健治郎*   森安史典****

* 東京医科大学臨床医学系消化器内科学分野 ** 同講師 *** 同准教授 **** 同主任教授

要  旨
 近年,内視鏡機器や技術の発達により,膵胆道がんに対してもさまざまな治療が内視鏡下で行えるようになり,内視鏡的胆道ドレナージや十二指腸ステント留置術,内視鏡的乳頭切除術,胆道鏡下治療,超音波内視鏡下インターベンションなど,その治療法は多岐にわたっている.しかしながら,まだ十分なエビデンスが得られていない領域も多く,今後のさらなる検討,手技の標準化,デバイスの開発が必要である.

キーワード
膵がん、胆道がん、悪性胆道狭窄、内視鏡治療、低侵襲治療

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肺がんに対する低侵襲治療の現状

池田徳彦*** 梶原直央**  前田純一*
* 東京医科大学呼吸器甲状腺外科 ** 同教授 *** 同主任教授

要  旨
 肺がん診断の進歩により,早期肺がんと遭遇する頻度が増加した.このような病変の治療に際し,根治と低侵襲の両立が望まれる.胸腔鏡手術は本邦の肺がん手術の70%を占めるに至り,また区域切除をはじめとする縮小手術の割合も増加している.ロボット手術は肺がん領域では黎明期であるが,近い将来,新たな精密な手術法となることが期待されている.本稿ではこれらの手術法の現状に関して報告する.

キーワード
肺がん、低侵襲治療、胸腔鏡手術、区域切除術、ロボット手術

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消化管がん(食道・胃・大腸)に対する腹腔鏡下手術の現況と展望

山梨高広*   中村隆俊**  佐藤武郎** 内藤正規*   細田 桂**  小倉直人*
三浦啓壽*   筒井敦子*   渡邊昌彦***

* 北里大学医学部外科学 ** 同専任講師 *** 同教授

要  旨
 1990年代初めより,低侵襲化を目指し,消化管がん(食道・胃・大腸)に対する腹腔鏡下手術および胸腔鏡下手術が導入され,国内外の臨床試験から生み出される膨大なエビデンスのもと,現在の目覚ましい治療成績に至った.しかし実臨床で広く行われている治療はいまだ立証されていないことも事実であり,科学的根拠に基づく医療(EBM)を構築していくために,さらなる臨床試験などによる検証の継続が必要であると考えられる.

キーワード
腹腔鏡下手術、胸腔鏡下手術、食道がん、胃がん、大腸がん

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肝胆膵悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術の現況
久保田喜久*   金子弘真**

* 東邦大学医学部外科学講座一般・消化器外科学分野 ** 同主任教授

要  旨
 肝胆膵悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術は普及しつつあるが,各臓器の特性によりその適応に格差がある.いずれの臓器も開腹術と成績を比較したランダム化比較試験は行われていないが,症例が蓄積されたことにより,低侵襲の評価だけではなく腫瘍学的な長期成績も報告されるようになった.また最近では,多施設共同研究による大規模な propensity score matching analysis も行われ,より高いエビデンスの獲得へ向けて努力がなされている.    

キーワード
腹腔鏡下手術、肝胆膵、悪性腫瘍

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内視鏡・腹腔鏡合同手術の現状と展望
熊谷厚志*1  比企直樹***1 布部創也**1 井田 智*1  大橋 学**1  山本頼正**2
平澤俊明*2  大前雅実*2  藤崎順子***2 佐野 武****1 山口俊晴*3

*1 がん研有明病院消化器外科 **1 同医長 ***1 同部長 ****1 同センター長
*2 同消化器内科 **2 同副部長 ***2 同部長 *3 同病院長

要  旨
 腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)は,内視鏡と腹腔鏡によって至適な胃切除範囲を決定し,切除および縫合閉鎖を行う術式である.胃粘膜下腫瘍に対する低侵襲手術として確立され,胃がん治療への応用が期待されている.胃がんに対してLECSを行うにあたり,胃内容の腹腔内への漏出とそれによる腹膜播種が懸念されている.Inverted LECS with crown method や NEWS,CLEAN-NET は胃内容の漏出を防ぐことを目指した手法である.「LECS+センチネルリンパ節生検」は,胃がんに対する究極の低侵襲治療として期待される.

キーワード
LECS、Crown法、NEWS、CLEAN-NET、センチネルチンパ節生検/b>

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泌尿器科がんに対する腹腔鏡手術・ロボット支援手術
吉田 崇*   松田公志**

* 関西医科大学腎泌尿器外科 助教 ** 同教授

要  旨
 泌尿器科では,前立腺がんや腎細胞がん,腎盂尿管がん,膀胱がんを中心にがん診療を行っている.その治療過程の中で手術は非常に大きなウエートを占め,患者の予後およびQOLを大きく左右する.そのため我々は,高い治療効果を有し,かつ低侵襲な手術を目指して,腹腔鏡手術やロボット支援手術を積極的に取り入れながら,日々進歩を続けている.今回,泌尿器科がんにおける腹腔鏡手術とロボット支援手術の概要と現状を解説する.

キーワード
泌尿器科がん、腹腔鏡手術、ロボット支援手術

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肝胆膵悪性腫瘍に対する各種局所治療
伊藤浩光*1  工藤 篤**1  落合高徳*1 伴 大輔*1  藍原有弘*1  松村 聡*1 光法雄介*1  
田中真二*2  田邉 稔***1

*1 東京医科歯科大学医歯学総合研究科肝胆膵外科 **1 同講師 ***1 同教授
*2 同分子腫瘍医学教授

要  旨
 肝胆膵領域の悪性腫瘍に対する治療の主体は外科切除とされるが,実際は病気の進行により切除が困難な症例も多い.また侵襲が大きい治療のため,高齢者や併存症を抱える患者では全身状態により適応外となる場合もある.近年,医療技術の発達に伴い,低侵襲の局所治療は肝胆膵領域においても治療の選択肢となるケースが増加し,より一層注目されている.
キーワード
ラジオ波焼灼療法、凍結治療、光線力学的治療、高密度焦点式超音波治療、不可逆電気穿孔法

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乳がんに対する低侵襲治療の新展開 ―ラジオ波熱焼灼療法を中心に―
木下貴之*

* 国立がん研究センター中央病院乳腺外科 科長
要  旨
 乳がんの外科治療は乳房温存療法やセンチネルリンパ節生検法がすでに標準化し,治療の低侵襲化ばかりでなく,高い整容性も要求されている.本邦においても乳がんの罹患率が上昇するとともに,マンモグラフィ検診の普及や画像診断法の進歩により早期乳がんの発見機会の割合が増加してきている.このような時代的背景と患者の要望に応えるため,低侵襲的療法である non-surgical ablation が注目されている.

キーワード
乳がん、ラジオ波焼灼療法、凍結療法、先進医療、臨床試験、非侵襲的手術療法

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婦人科がんに対する低侵襲治療としての妊孕性温存治療に関する最近の話題
岩端秀之*   鈴木 直**

* 聖マリアンナ医科大学産婦人科学 ** 同教授

要  旨
 近年,婦人科がんの罹患率も増加傾向を示しているが,集学的治療の進歩に伴い,多くの患者が「がん」を克服できるようになってきた.若年婦人科がん患者においてがん治療による妊孕性消失を回避するためには,妊娠・出産に必要な婦人科臓器とその機能を温存する必要がある.しかしながら,元来妊娠・出産にかかわる臓器を対象とする婦人科がん領域においては,一部の状況を除いて最初から将来の妊娠・出産をあきらめて臓器を摘出し,がんと闘わなければならない状況が少なくない.そこで本稿では,将来の妊娠・出産のための機能を残す,いわば低侵襲治療の1つである,婦人科がんに対する妊孕性温存治療の最近の話題に関して概説させていただく.

キーワード
子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、妊孕性温存、性腺機能温存

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重粒子線を用いた低侵襲がん放射線治療
鎌田 正*

* 国立研究開発法人放射線医学総合研究所重粒子医科学センター センター長
要  旨
 重粒子線治療は情報処理技術の目覚ましい進歩とその応用により,過去20年の間に飛躍的な進歩を遂げてきた.当初世界で1ヵ所のみであった重粒子線治療施設は国内で5ヵ所,海外を含めると10ヵ所となり,さらに増加しつつある.高齢化に伴うがん罹患率の増加と患者自身による治療法の選択という全世界的な流れの中で,重粒子線治療は低侵襲で機能と形態温存が可能ながん治療として,日本のみならず海外からも大きな期待を集めている.

キーワード
重粒子線、適応、成績、装置開発

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低侵襲内視鏡治療の技術革新に向けた新しい機器の開発
中島清一*

* 大阪大学次世代内視鏡治療学 特任教授

要  旨
 近年,軟性鏡(消化器内視鏡)と硬性鏡(腹腔鏡)に「統合」の動きが見られる.両者の長所を活かし,短所を補完し合う「次世代内視鏡」においては,消化管の内・外の概念は事実上失われ,管腔,腹腔を自在に行き来しながら最適なアプローチで低侵襲に消化器疾患の治療が可能となると考えられる.必要な機器の開発は緒についたばかりであるが,その一部は現行治療へ積極的にスピンオフされ,威力を発揮するものと期待されている.

キーワード
内視鏡治療、消化器内視鏡、腹腔鏡、医療機器、機器開発

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痛みのClinical Neuroscience
(9)本邦における慢性痛対策:見えてきた課題
山口大学           田口 敏彦
大阪大学           柴田 政彦
東京慈恵会医科大学     北原 雅樹
愛知医科大学         牛田 享宏 (司会)

 座談会の内容
 ・慢性痛の人口と損失の現状と課題
 ・海外の流れ
 ・評価法
 ・これからの慢性疼痛対策、予防
 など
 
   鈴木先生      北川先生      池田先生


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連載
肉眼解剖学者がみたヒト大脳の立体構造

 脳の肉眼解剖学に40年間携わってこられた金沢医科大学・篠原治道先生による誌面講義の第12回は「外側・下方からのアプローチ(1)海馬 海馬(頭/指,体,尾,采,歯状回,歯状縁,アンモン角,海馬台),嗅内皮質(仮称),脳弓(脚,体,頸,交連前線維,交連後線維),小帯回,脳梁,内側・外側縦条,灰白層,上衣,海馬白板」です。
 開業医、研修医、専門医の方々にもご興味やご関心をもって頂けるような内容となっています。

外側・下方からのアプローチ(1)海馬 海馬(頭/指,体,尾,采,歯状回,歯状縁,アンモン角,海馬台),嗅内皮質(仮称),脳弓(脚,体,頸,交連前線維,交連後線維),小帯回,脳梁,内側・外側縦条,灰白層,上衣,海馬白板(本文より)

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連載
トップランナーに聞く(第60回)
アディポネクチン/アディポネクチン受容体シグナルの全容解明に向けた挑戦

 「最新医学」では第66巻からの新企画として「トップランナーに聞く」と題し、最先端の研究をされている40歳前後の先生のインタビューを掲載します。
  第60回は骨格筋における作用と分子機能の解析からアディポネクチン受容体が長寿経路を活性化することを発見された東京大学の岩部 真人 先生にお話を伺いました。


 岩部 真人 先生

 私は、東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科の門脇孝先生の研究室に所属し、肥満・2型糖尿病・生活習慣病発症の分子機構に関する研究、アディポネクチン受容体シグナル伝達機構の解明とそれら疾患の根本的治療薬となる受容体活性化薬の臨床応用に向けた橋渡し研究に取り組んでおります。

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連載
ノーベル賞と医学の進歩・発展

 68巻10号からノーベル賞の対象となった業績やその業績が現在どのような恩恵をもたらしているかについて、各領域の専門家の先生方に詳しいご解説をお願いしております。

第39回は京都大学名誉教授・桂 義元 先生による「T細胞認識機構の解明 -ZinkernagelとDoherty-」です。

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トピックス
膵β細胞の再生 ―最近の進歩―
伊藤 遼*1*2 豊田太郎*1  稲垣暢也**2 長船健二**1

*1 京都大学 iPS 細胞研究所増殖分化機構研究部門 **1 同教授
*2 京都大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学 **2 同教授

要  旨
 より良い糖尿病治療法の確立に向け,膵β細胞再生の研究が盛んに行われている.そのアプローチとして,膵β細胞の増殖促進,他細胞種から膵β細胞へのリプログラミング,多能性幹細胞から膵β細胞への段階的分化誘導がある.膵β細胞再生の研究進捗は目覚ましく,再生膵β細胞を用いた細胞療法や創薬が現実へと近づきつつある.しかし一方で,膵β細胞再生は効率の低さや安定性,安全面やコストなどの課題もあり,今後の研究の進展が期待される.

キーワード
膵β細胞、再生医療、iPS細胞、分化誘導、糖尿病

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トピックス
次世代シークエンサーを用いた先天性甲状腺機能低下症の遺伝子診断
鳴海覚志* 長谷川奉延**

* 慶應義塾大学医学部小児科 ** 同教授

要  旨
 従来法の数万倍以上の解析力を持つ次世代シークエンシング(NGS)は,研究的解析のみならず臨床遺伝子診断においても利用が広がってきている.本稿では,NGSの原理とワークフローを解説し,筆者らが2012年から運用している先天性内分泌疾患(先天性甲状腺機能低下症を含む)の網羅的遺伝子解析系Endocrinomeシステムを例に,その解析経験を紹介する.

キーワード
次世代シークエンシング、遺伝子変異、先天性甲状腺機能低下症

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