最新醫學 71巻6号 
特集 多発性硬化症と視神経脊髄炎:基礎から臨床まで


要  旨


特集
脱髄性疾患の疫学から考える病因・病態と予防 ―序論に代えて―

吉良 潤一*
* 九州大学大学院医学研究院神経内科学 教授

要  旨
 多発性硬化症の動物モデルとされる実験的自己免疫性脳脊髄炎の抑制効果により,多くの疾患修飾薬が開発された.これらは再発をよく抑えるが,軸索障害による慢性的な障害進行の抑制は十分でない.多発性硬化症の真のモデルは存在しないので,疫学調査で示されたリスク因子から病因や病態を考察することの意義は大きい.このような解析から障害進行の病態が解明され,障害進行を抑える真の疾患修飾薬が開発されることを期待したい.

キーワード
脱髄、多発性硬化症、疫学、環境要因、遺伝要因

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座談会
 多発性硬化症の疾患修飾薬の活用
―Induction Therapy と Escalation Therapy をどう使い分けるか―

大阪大学       中辻 裕司
愛媛大学        越智 博文
九州大学        吉良 潤一(司会)

 座談会の内容
 ・多発性硬化症[MS]の自然歴と疾患修飾薬
 ・MSの自然歴における治療介入のポイント
 ・MSの疾患修飾薬(国内と海外承認薬)
 ・Induction therapyとescalation therapy
 など
 
   越智先生      吉良先生     中辻先生

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特集
脱髄性疾患の分子免疫病理学

眞﨑 勝久*
* 九州大学大学院医学研究院神経内科学

要  旨
 多発性硬化症(MS)や視神経脊髄炎(NMO)は代表的な中枢性脱髄性疾患であり,それぞれ髄鞘やアストロサイトを標的とした自己免疫疾患と考えられている.本稿では,両者の一般的な病理学的特徴に加え,大脳皮質病変や髄鞘再生など最新の知見を概説する.さらに,コネキシン脱落,NMOにおけるdistal oligodendrogliopathyの存在,早期病巣としての isolated perivascular lesion など自験データも紹介する.

キーワード
多発性硬化症、視神経脊髄炎、アストロサイト、アクアポリン4、コネキシン

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特集
脱髄性疾患の免疫病態研究最前線細胞性免疫マーカー

奥野 龍禎*   中辻 裕司**  望月 秀樹***
* 大阪大学大学院医学系研究科神経内科学 講師 ** 同准教授 *** 同教授

要  旨
 近年,T細胞をターゲットとした多発性硬化症(MS)の疾患修飾薬(DMD)の有効性が示されてきている.しかし,近年開発されたDMDには長期安全性のデータが乏しく,進行性多巣性白質脳症(PML)などの重篤な副作用が出現する場合もある.また各薬剤にはnon-responderが存在するため,治療反応性や副作用を予測するためのバイオマーカーの開発が求められている.本稿では,MSにおける細胞性免疫研究とバイオマーカーの現状について紹介する.

キーワード
多発性硬化症、細胞性免疫、腸内細菌、バイオマーカー、Sema4A

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特集
中枢神経脱髄性疾患の自己抗体研究の進歩と液性免疫マーカーの臨床応用の留意点

田中 惠子*
* 金沢医科大学総合医学研究所/神経内科学
(現新潟大学脳研究所細胞神経生物学分野

要  旨
 中枢神経の代表的脱髄疾患である多発性硬化症では,病態に抗体の関与が示唆されるが,疾患特異的抗体は確定していない.一方,視神経脊髄炎では抗アクアポリン4抗体が特異的診断マーカーとなり,病態形成にも密接に関与することが明らかにされた.また,成人の視神経炎,脊髄炎で検出される抗MOG抗体にも関心が高まっている.同様の臨床像を呈する多数例で再現性よく検出される抗体は,診断的価値が高い.

キーワード
脱髄疾患、自己抗体、多発性硬化症、視神経脊髄炎、抗NMDA受容体脳炎

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特集
多発性硬化症の画像診断学の進歩
谷川 万里子*   中原 仁*   鈴木 則宏**

* 慶應義塾大学医学部神経内科 ** 同教授

要  旨
 多発性硬化症(MS)の診断や治療の効果判定において,核磁気共鳴画像(MRI)は今や欠かせないツールである.MS診療に携わる医師はT2強調画像,T2-FLAIR 画像,あるいはガドリニウム造影T1強調画像などのMRI撮像法を頻用しているが,皮質内病変や髄鞘再生の評価は困難であった.しかしながら昨今,これら課題を克服する撮像法が開発されてきている.本稿では,皮質病変を描出するdouble inversion recovery(DIR法)と髄鞘再生を描出するmyelin map法を概説する.

キーワード
多発性硬化症、髄鞘、核磁気共鳴画像(MRI)、DOuble inversion recovery(DIR)法、Myelin map法

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特集
アジア人種の特性を考慮した脱髄性疾患の最新の診断プロトコール

中島 一郎*
* 東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座神経内科学分野 准教授・副科長

要  旨
 日本を含む東アジア,東南アジアでは多発性硬化症の有病率が非常に低いため,相対的に視神経脊髄炎や多相性に経過する急性散在性脳脊髄炎の割合が高く,また神経ベーチェット病など,ほかに頻度の高い炎症性中枢神経疾患があるために,炎症性脱髄疾患の診断が欧米よりも難しい.臨床経過や症状だけでは鑑別できないことが多いため,種々の検査結果を参考にして適切に診断する必要がある.

キーワード
急性散在性脳脊髄炎、抗アクアポリン4抗体、抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体、
核磁気共鳴画像、髄液オリゴクローナルバンド

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特集
日本では多発性硬化症と視神経脊髄炎の急性期治療はどうあるべきか

森 雅裕*
* 千葉大学大学院医学研究院神経内科 准教授

要  旨
 多発性硬化症(MS),視神経脊髄炎(NMO)とも,再発予防に関してはモノクローナル抗体療法など新規治療薬が追加されたり,今後追加されることが期待されているが,急性増悪期の治療はステロイドの大量療法,血液浄化療法,ヒト免疫グロブリン大量静注療法が使われるようになって久しい.有効性のエビデンスはMSに対するステロイドの大量療法を除いては十分に蓄積されておらず,その今後の蓄積や急性増悪治療薬の開発が期待される.

キーワード
多発性硬化症、視神経脊髄縁、急性期治療、ステロイドパルス療法、血液浄化療法

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特集
日本で保険収載されている多発性硬化症疾患修飾薬の使用のしかた
松井 真**  長山 成美*

* 金沢医科大学神経内科 准教授 ** 同主任教授

要  旨
 多発性硬化症の疾患活動性抑制および障害進行抑制を目的とした薬剤が,疾患修飾薬である.日本ではインターフェロンβ-1bおよび1a,フィンゴリモド,ナタリズマブ,グラチラマー酢酸塩の5剤が保険収載されている.それぞれの作用機序と特性,副作用に熟知し,個々の患者の疾患活動性,社会的背景やニーズを考慮して治療法を選択し,インフォームド・コンセントを取得してなるべく早期に開始することが重要である.    

キーワード
多発性硬化症、インターフェロンβ、フィンゴリモド、ナタリズマブ、グラチラマー酢酸塩

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特集
多発性硬化症の新しい疾患修飾薬の開発の現状と展望
越智 博文*

* 愛媛大学大学院医学系研究科老年・神経・総合診療内科学 講師

要  旨
 米国食品医薬品局によって承認された多発性硬化症(MS)に対する疾患修飾薬は,すでに13種類に上る.また,再発寛解型MSを対象とした第Ⅲ相臨床試験の結果が公表されている薬剤には,ダクリズマブやラキニモド,オクレリズマブがある.さらに,フィンゴリモドより高い受容体サブタイプ選択性を持つ新たな薬剤の開発も進んでいる.今後は,オクレリズマブやビオチンのような進行型MSに対する治療薬の開発も期待されている.

キーワード
疾患修飾薬、米国食品医薬品局、再発寛解型多発性硬化症、進行型多発性硬化症、臨床試験

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特集
視神経脊髄炎の最新の治療と展望 ―抗 IL-6 受容体抗体療法を含めて―
荒木 学*1*2 山村 隆**1**2

*1 国立精神・神経医療研究センター多発性硬化症センター **1 同センター長
*2 同神経研究所免疫研究部 **2 同部長

要  旨
 抗アクアポリン4抗体発見により視神経脊髄炎の免疫病態の解明が進み,自己抗体の産生に重要なB細胞や形質芽細胞,また,急激に進行する激しい炎症に補体,好中球,好酸球の関与が大きいことが明らかになった.急性増悪期,再発抑制の標準治療に対する難治例が多いことから,これらの免疫細胞を標的にした治療薬,また,関連する分子(B細胞表面抗原,IL-6,補体)を標的にしたモノクローナル抗体療法の開発が進んでいる.

キーワード
視神経脊髄炎、アクアポリン4、モノクローナル抗体

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特集
性差学の多発性硬化症・視神経脊髄炎治療への応用
清水 優子*

* 東京女子医科大学神経内科 准教授

要  旨
 多発性硬化症(MS)と視神経脊髄炎(NMO)・NMO関連疾患(NMOSD)は,代表的な中枢神経系炎症性疾患で,女性に多い疾患である.また発症は20~40歳代で,発症することにより,女性特有の妊娠・出産というライフスタイルに大きな影響を及ぼす.両疾患の性差には,性ホルモンが病態・発症に関与していると考えられており,治療への応用も試みられている.本稿ではMS/NMOSDにおける性ホルモンの免疫学的機序への関与について,最近の知見を述べたいと思う.
キーワード
性差、性ホルモン、多発性硬化症、視神経脊髄炎、治療

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特集
多発性硬化症の高次脳機能障害と認知リハビリテーション
新野 正明**  宮﨑 雄生*

* 北海道医療センター臨床研究部 ** 同部長
要  旨
 多発性硬化症(MS)の症状は身体障害で評価されることが多いが,MSでは中枢神経系に多数の病変を呈することが特徴であり,高次脳機能障害を評価する必要がある.MSにおける高次脳機能障害は,注意・集中・情報処理といった領域が障害されやすく,それを拾い上げるバッテリーを用いることが重要である.MSにおける高次脳機能障害の治療としては,現時点で有効性が確立されているものはない.認知リハビリテーションはその改善が期待されるが,介入方法も多岐にわたり,評価も難しいため,今後データの蓄積が必要である.

キーワード
多発性硬化症、高次脳機能、神経心理学的リハビリテーション

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特集
多発性硬化症・視神経脊髄炎の遺伝子研究の最前線
松下 拓也*

* 九州大学大学院医学研究院神経内科学 講師

要  旨
 多発性硬化症,視神経脊髄炎関連疾患は,遺伝要因と環境要因の双方がその発症に関連する複雑疾患である.人種間で有病率が異なり,遺伝的背景の違いを反映していると考えられている.いずれの疾患もヒト白血球抗原遺伝子の多型が強く発症に関連しており,その臨床的特徴にも影響を及ぼしている.病態の理解を目指してゲノムワイド関連解析が行われており,多発性硬化症については関連遺伝領域が多数同定されている.一方,視神経脊髄炎についてはその有病率の低さから,いまだ信頼性の高い関連解析は行われていない.現在,生物学的機能の関連性について,さまざまな側面から情報が蓄積されており,遺伝的関連解析の結果にその知識を応用することで,疾患にとって重要な機能的まとまりの抽出が試みられている.また,疾患の臨床的特徴との関連解析が今後進むことが期待される.

キーワード
多発性硬化症、視神経脊髄炎、ヒト白血球抗原、ゲノムワイド関連解析

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痛みのClinical Neuroscience
(12)Functional Pain Disorder 1.口腔顔面痛
野間  昇

日本大学歯学部口腔診断学講座 准教授

要  旨
近年,国際頭痛学会,国際歯科学会+国際疼痛学会口腔顔面痛SpecialInterestGroup(OFP-SIG)が相次いで,「国際頭痛分類第3版β版(ICHD-3β」1),「顎関節症の診断基準(DC/TMD)」2)を発表し,口腔顔面関連領域の疼痛性疾患の診断基準を示した.本稿では,これらの疾患分類の新定義,診断基準に照らし合わせて,口腔顔面痛,特にBMS(舌痛症含む),顎関節症,頭痛(神経血管性疼痛)について解説を行う.


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連載
肉眼解剖学者がみたヒト大脳の立体構造

 脳の肉眼解剖学に40年間携わってこられた金沢医科大学・篠原治道先生による誌面講義の第15回は「外側・下方からのアプローチ(4)扁桃体,内側嗅条,分界条,分界条床核,視床線条体静脈,背側扁桃体出力線維路(仮称),腹側扁桃体出力線維路(仮称),ブローカ対角帯(再)」です。
 開業医、研修医、専門医の方々にもご興味やご関心をもって頂けるような内容となっています。

外側・下方からのアプローチ(4)扁桃体,内側嗅条,分界条,分界条床核,視床線条体静脈,背側扁桃体出力線維路(仮称),腹側扁桃体出力線維路(仮称),ブローカ対角帯(再)(本文より)

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連載
トピックス
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌の基礎と臨床
青木 弘太郎*   石井 良和**  舘田 一博**
* 東邦大学医学部微生物・感染症学講座 ** 同教授
要  旨
 腸内細菌科細菌のカルバペネム系薬に対する耐性機序は,カルバペネマーゼ産生もしくは非カルバペネマーゼ型βラクタマーゼ大量産生に加えて抗菌薬透過孔の減少または欠損によるものの2種類に大別される.2015年3月にコリスチンが,カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)を含めた多剤耐性菌感染症治療薬として本邦で再承認された.予後不良であるCREによる血流感染症に対して,カルバペネム系薬を含めた併用療法の効果も着目されつつある.

キーワード
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌、併用療法

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トピックス
マイオカインの研究に関する最近の話題
大内 乗有**  大橋 浩二*

* 名古屋大学大学院医学系研究科分子心血管病学講座 ** 同教授

要  旨
 骨格筋は運動機能やエネルギー代謝調節にかかわる臓器としてだけでなく,マイオカインと総称すべき分泌因子を産生する内分泌器官としての役割も果たしていることが明らかとなってきた.近年の研究成果により,運動トレーニングによって発現制御され,代謝や心血管系に作用するマイオカインが同定されている.本稿では,心血管系に作用するマイオカインの最近の研究成果について概説する.

キーワード
マイオカイン、FstⅡ、FGF21、心血管病、骨格筋肥大

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特報:平成27年度井村臨床研究奨励賞受賞記念論文
慢性腎臓病(CKD)全ステージにおけるCKD-MBD(ミネラル骨代謝異常)
濱野 高行*

* 大阪大学大学院医学系研究科腎疾患統合医療学寄附講座 准教授


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