最新醫學 71巻7月増刊号 
特集 うつ病


要  旨



どんなときにうつ病と診断するか -うつ病のスクリーニングから診断まで-

高橋 由佳*1  多田 はるか*1  細川 亜耶*1  杉山 暢宏*1*2*3
*1信州大学医学部附属病院精神科 *2信州大学学術研究院保健学系
*3信州大学医学部保健学科作業療法学専攻実践作業療法学領域 教授

要  旨
 労働安全衛生法の改正により,2015年12月1日から労働者数が50人以上の事業場に,ストレスチェックが義務化された.医療現場や産業保健現場では,うつ病のスクリーニングやケアが注目されている.うつ病のスクリーニングツールとしてHADS,CES-D,GHQなどがある.うつ病の診断方法には,客観的観察や内因性概念による従来の診断方法と操作的診断があり,実際の臨床現場では両者を折衷して用いられることが多い.

キーワード
うつ病、HADS、CES-D、操作的診断基準、DSM-5

目次へ戻る



うつ病-周辺疾患(双極性障害,適応障害,パーソナリティ障害,発達障害)との鑑別

廣瀬 智之*   辻井 農亜*   白川 治**
*近畿大学医学部精神神経科学教室 **同教授

要  旨
 うつ病の中核症状である抑うつ症状は,多くの精神疾患で見られ,その鑑別が問題となることも少なくない.本稿では,抑うつ症状を呈することがある,双極性障害,適応障害,パーソナリティ障害,発達障害と,うつ病との鑑別について述べた.抑うつ症状は日常診療で遭遇するありふれた精神症状であり,うつ病に対する適切な対応のためにもうつ病以外の背景精神疾患,うつ病周辺疾患についての理解が求められる.

キーワード
うつ病、双極性障害、適応障害、パーソナリティ障害、発達障害

目次へ戻る



身体疾患に伴ううつ病の身体予後への影響

伊藤 弘人
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会精神保健研究部 部長

要  旨
 本論は脳卒中,心臓病と糖尿病に焦点を当て,身体疾患に伴ううつ病の身体予後への影響の理解に資する知見をまとめるものである.うつ病とうつ状態を合わせた“うつ”に関する知見が多く,脳卒中では,うつを伴うことで死亡率上昇や生活の質低下などが指摘されていた.心臓病と糖尿病では,死亡と心イベントなどの増加がメタ解析で明らかであった.本知見は,身体疾患にうつ病が伴うことは,身体予後悪化要因である可能性を示している.

キーワード
うつ病、糖尿病、心不全、心筋梗塞、脳卒中、予後

目次へ戻る



うつ病と認知症の関係

前嶋 仁*   馬場 元**
*順天堂大学医学部精神医学講座 **同准教授

要  旨
 うつ病と認知症は,本来は性質の異なる疾患であるが,認知症にうつ病が合併する症例や,うつ病から認知症に移行する症例は,しばしば経験する.うつ病と認知症の関係は,①認知症に合併するうつ病,②認知症の初期症状としてのうつ病,③仮性認知症を呈するうつ病,④認知症のリスクファクターとしてのうつ病,などの側面があり,特にうつ病が認知症のリスクと成りうる生物学的背景を解明することは,大変重要であると考えられる.

キーワード
認知症、うつ病、仮性認知症、リスクファクター

目次へ戻る



うつ病のバイオマーカとしての構造MRIの可能性
松田 博史

国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンター センター長

要  旨
 磁気共鳴画像法(MRI)による脳構造の体積測定は,精神・神経疾患の早期診断や鑑別診断,および進行度評価に有用なバイオマーカとして用いられている.うつ病においても,吻側の前部帯状回や海馬亜区域の体積低下が観察され,診断的価値について研究が進んでいる.さらに,うつ病における脳構造のネットワーク異常をとらえる目的で,グラフ理論による連結解析が注目されており,うつ病におけるクラスタ性の低下などが報告されている.

キーワード
うつ病、MRI、退席測定、VSRAD®、グラフ理論

目次へ戻る



うつ病の睡眠障害と対応の仕方
都留 あゆみ*1*2  亀井 雄一**1**2

*1国立精神・神経医療研究センター睡眠障害センター **1同センター長
*2国立精神・神経医療研究センター病院臨床検査部 **2同医長

要  旨
 不眠を主とした睡眠障害は,うつ病の発症や再発のリスクとしても,前駆症状や残遺症状としても重要であり,うつ病と睡眠障害は互いに独立して双方向性に影響を与えるものと考えられるようになってきている.うつ病における不眠症状の特徴や睡眠パラメーターの所見,抗うつ薬の使用によるその変化,うつ病に伴う不眠症状の治療方法(薬物療法,非薬物療法ともに),うつ病と鑑別が必要な睡眠障害などについて概説する.

キーワード
うつ病、睡眠障害、薬物療法、非薬物療法、併存睡眠

目次へ戻る



軽症と中等症・重症のうつ病の治療はどこが違うのか?

山田 和男
東京女子医科大学東医療センター精神科 教授

要  旨
 2009年以降に国内外で公開された,7つのうつ病の治療ガイドラインの記載をもとに,軽症うつ病と中等症・重症のうつ病の治療法の相違について概説した.多くの治療ガイドラインにおいて,軽症うつ病に対しては,認知行動療法や対人関係療法などの精神療法,経過観察,問題解決技法,教育・指導,運動などの非薬物療法が優先されていた.一方,中等症以上のうつ病に対しては,抗うつ薬による治療が第1選択として推奨されていた.

キーワード
軽症うつ病、治療、治療ガイドライン、薬物療法、非薬物療法

目次へ戻る



うつ病と躁うつ病の境界線
野田 隆政*1*2

*1国立精神・神経医療研究センター病院精神科 医長
*2同脳病態統合イメージングセンター臨床脳画像研究部 臨床光画像研究室長

要  旨
 うつ病と躁うつ病は,薬剤選択が異なるために,診断の鑑別が重要である.しかしながら,うつ病エピソードという側面のみでは,臨床上,うつ病と躁うつ病との鑑別は困難である.そのため,診察においては病歴を十分に聴取したり,治療経過の中で躁うつ病の兆候を注意深く観察していくことが求められる.2014年に光トポグラフィー(NIRS)が補助診断検査として保険適用されたことで,うつ病および躁うつ病の臨床はさらに充実したものになることが期待される.

キーワード
うつ病、躁うつ病、抗うつ薬、気分安定薬、光トポグラフィー

目次へ戻る



うつ病の薬物療法のABC
大坪 天平

JCHO 東京新宿メディカルセンター精神科 主任部長

要  旨
 うつ病は多様な病像を示す症候群である.その治療には,抗うつ薬を中心とした薬物療法があるが,その効果にはある程度の限界がある.抗うつ薬1剤でうつ病を治療した場合,反応率はほぼ2/3までで,寛解率は1/3前後である.また,反応しても約半分の症状が残存しており,寛解しても決して症状がゼロになるわけではない.臨床上重要なことは,抗うつ薬が有効であろううつ病と,そうでないうつ病をどう見極めるのかに尽きると考えられる.ここでは,抗うつ薬単剤で治療可能なうつ病の見極めに関して,Ghaemiらの双極スペクトラム障害概念をヒントに述べる.

キーワード
うつ病、薬物療法、寛解、heterogeneous、双極性スペクトラム障害

目次へ戻る



うつ病の治療法の基本
井上 猛** 高江洲 義和*  石川 純*

*東京医科大学精神医学分野 **同主任教授

要  旨
 うつ病の治療において,最も重要なことは正確な診断と見立てである.うつ病の診断は熟練した専門医にとっても,時に簡単ではなく,診断と見立てを間違うと治療は遷延化し,症状悪化を招く.高齢者では認知症との鑑別,非高齢者では双極性障害との鑑別が,うつ病の診断上,特に重要である.治療では,うつ病悪化要因であるストレスをできるだけ少なくすることと抗うつ薬を含めた総合的治療を心がけるべきである.

キーワード
うつ病、双極性障害、認知症、鑑別診断、偽薬効果

目次へ戻る



薬物療法・精神療法以外にはどのような方法があるのか -うつ病と脳刺激法-
鬼頭 伸輔

国立精神・神経医療研究センター病院精神先進医療科 医長
要  旨
 うつ病の治療に応用されている脳刺激法は,侵襲的脳刺激,非侵襲的脳刺激,けいれん療法に大別できる.非侵襲的脳刺激である経頭蓋磁気刺激(TMS)は,簡便に大脳皮質を刺激することができ,海外では,薬物療法に反応しないうつ病に対する治療法として認可されている.磁気けいれん療法(MST)は,TMSを応用したけいれん療法であり,電気けいれん療法と比較し,健忘などの副作用が少ない可能性がある.これらは,国内では未承認であり,今後の動向が待たれる.

キーワード
うつ病、脳刺激法、経頭蓋磁気刺激、磁気けいれん療法

目次へ戻る



なぜ,ベンゾジアゼピン系薬がうつ病治療に推奨されないのか
河野 仁彦*1  稲田 健**1  石郷岡 純*2

*1東京女子医科大学医学部精神医学講座 **1同講師 *2CNS 薬理研究所 主幹

要  旨
 ベンゾジアゼピン(BZ)系薬は,うつ病の急性期の不安症状や不眠に対して,一定の効果が得られる.一方で,BZ系薬には依存性,転倒,認知機能への影響などの副作用があり,これらは長期使用により顕在化しやすい.BZ系薬も,あらゆる医学的介入と同様に,利点と問題点を評価して使用すべきであるが,評価する際には長期的な問題点にも注意を払うべきである.短期的な利点と長期的な問題点を評価すると,BZ系薬をうつ病治療に“長期に”使用することは推奨されないと考えられる.

キーワード
ベンゾジアゼピン、うつ病、薬物療法、有害事象、不安

目次へ戻る



こんなケースは精神科専門医に紹介
玄 東和*   張 賢徳**

*帝京大学医学部附属溝口病院精神神経科 **同教授

要  旨
 うつ病の検知と初期対応が,身体科医に求められる.次の臨床課題は,身体科医がどこまで治療を行うかである.この紹介閾値は,身体科医のうつ病対応力によるところが大きい.精神医学の体系的な卒後教育がない本邦では,うつ病の検知と同時に精神科医に紹介することも何ら問題ではない.治療を行う際には,患者の抱え込みに注意せねばならない.紹介閾値として,英国の国立医療技術評価機構(NICE)ガイドライン,日本版Psychiatry in Primary Care(PIPC)研究会の見解を紹介する.

キーワード
うつ病、身体科医、紹介閾値、NICEガイドライン、PIPC研究会

目次へ戻る



職域におけるメンタルヘルス
鎌田 直樹*1  田中 克俊*2

*1北里大学医学部精神科学 *2北里大学大学院医療系研究科産業精神保健学 教授

要  旨
 職域でのメンタルヘルス活動の中心は,労働者のメンタルヘルスの保持・増進(1次予防),うつ病の早期発見・早期介入(2次予防),再燃再発の防止・職場復帰支援(3次予防)といった予防活動である.このたび,1次予防として,2015年12月からストレスチェック制度が施行された.本稿では,新たな制度であるストレスチェック制度の紹介と合わせて,うつ病の2次予防,3次予防について概説する.

キーワード
ストレスチェック制度、1次予防、2次予防、3次予防、産業精神保健

目次へ戻る



季節性うつ病
三島 和夫
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部 部長

要  旨
 季節性うつ病は,特定の季節に集中して気分エピソードが出現する,周期性発症を特徴とする気分障害の一型である.特に,過眠,炭水化物欲求,体重増加などの非定型うつ症状を伴い,秋冬季に抑うつエピソード,春夏季に軽躁エピソードを呈する双極Ⅱ型が典型例で,冬季うつ病とも呼ばれる.冬季の日照量の減少と連動した,脳内セロトニン神経機能の低下が病因として強く疑われており,人工光照射器を用いた高照度光療法(光療法)が有効である.

キーワード
季節性うつ病、冬季うつ病、日照量、セロトニン、高照度光療法

目次へ戻る



「認知行動療法」を有効にする条件と方法
堀越 勝

国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター センター長

要  旨
 認知行動療法(CBT)は,薬物療法と並び,うつ病治療の第1選択とされているが,実臨床で実施する際には,さまざまな工夫が必要となる.薬物療法と似て,適格な対象疾患に対し,標準的なCBTが,訓練を受けた治療者によって提供されることで,その有効性が保たれる.さらに,困難事例においては,増強療法,併用療法,段階ケアなど,治療効果を高めるCBT介入を追加することで,ある意味でのテーラーメイドで有効なCBTを提供することが可能となる.

キーワード
認知行動療法、CBT、うつ病、CTRS

目次へ戻る



リワークプログラムは再発予防に有効か
五十嵐 良雄

メディカルケア虎ノ門 院長

要  旨
 精神疾患によって休職する社員が増加している.休職状態から症状が改善しても,スムーズに復職が進まないばかりか再休職が多く,再休職予防を最終目標とするリワークプログラムが発展してきた.本稿では“リワーク”を3つのカテゴリーに分類できることを指摘し,医療機関で行われる“医療リワーク”に関するアウトカムを示した.特に,2年間にわたる前向きコホート研究の結果に加え,通常治療群とリワーク群との比較検討結果は,プログラムの治療的効果のエビデンスである.今後の医療リワークに期待される役割を果たすためには,主治医や会社との連携を密にしていく必要があり,コーディネーターを置くことが有効な手段であることを指摘した.

キーワード
リワークプログラム、アウトカム、医療リワーク、再休職、コーディネーター

目次へ戻る



血管性うつ病
秋田 怜香*1  三村 將*2
*1桜ヶ丘記念病院精神科 *2慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室 教授

要  旨
 血管性うつ病(VD)は,脳卒中後うつ病(PSD)と無症候性脳梗塞に伴ううつ病(MRI-definedVD)の2つに大別される.脳の損傷による器質因や心理・社会的要因,脳の脆弱性の顕在化など,複合的な要因が関与して生じてくると考えられる.診断・治療において基本的には一般的なうつ病と同様だが,意欲低下が主であるアパシーと区別する考え方もあり,リハビリテーションなど,身体的な活動性を上げることが,精神症状の改善にも効果的である.

キーワード
脳卒中後うつ病、無症候性脳梗塞、脳血管障害、アパシー、リハビリテーション

目次へ戻る



スルピリドとBDZでうつ病を治療する時代は終わった?
海老澤 尚
和楽会横浜クリニック 院長

要  旨
 本邦のうつ病治療では,スルピリドとベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬(BZD)を使用する頻度が高い.スルピリドは早期の効果発現が期待できるが,長期使用では錐体外路症状,高プロラクチン血症や体重増加などの副作用が懸念される.BZDは治療開始後4週間までは,治療からの脱落率を下げるなどの効果があるが,長期使用では依存のリスクが高まる.いずれの薬剤でも,長期漫然投与を避けるべく,効果・副作用の比較検討に留意する.

キーワード
スルピリド、ベンゾジアゼピン系、うつ病、治療、抗うつ薬

目次へ戻る



抗うつ薬の副作用 -臨床で特に問題となるものについて-
久保 隆光*   山名 正人*   吉村 玲児**
*産業医科大学医学部精神医学教室 **同教授

要  旨
 抗うつ薬の処方は,精神科医に限らずプライマリドクターを始め,多くの医師により行われている.うつ病の薬物治療では,服用中断率が高い.その要因の1つとして,抗うつ薬開始後の,副作用の発現が挙げられる.本稿ではまず,抗うつ薬処方時に遭遇しやすい副作用とその対応法について,薬物治療のアドヒアランスを維持する工夫,さらに,抗うつ薬処方時に生じることのある賦活症候群とセロトニン症候群について,最近の知見を踏まえて論じる.

キーワード
抗うつ薬、副作用、自殺、賦活症候群、セロトニン症候群

目次へ戻る



うつ病のリスクファクター
岡島 由佳
昭和大学医学部精神医学講座 准教授

要  旨
 うつ病の発症機序は,いまだ十分に解明されていない.遺伝的要因,社会的環境因,神経生物学的要因,すべてが関連している病態と考えられている.うつ病発症のリスクファクターは,これまでさまざまなものが報告されているが,年齢,性別から遺伝的要因,パーソナリティ,ライフイベント,幼児期のストレス,生活習慣,服用中の薬剤,身体疾患を挙げた.リスクファクターを理解することによって,疾病予防や早期発見,治療的環境調整などに役立てたい.

キーワード
うつ病、リスクファクター

目次へ戻る



「うつ病かもしれない」患者さんを目の前にして,どのような面接をすればよいか
野村 総一郎
六番町メンタルクリニック 所長

要  旨
 うつ病の初回面接の概略を示す.うつ病診断では,「うつ病かもしれない」という疑いを持つことが何より必要である.精神科面接も一般の医療面接に準じるが,初期診療の段階から精神療法を意識し,“患者のストーリーを読む”ことを心がける.面接スタイルは,患者のニーズを読んで決定していく.従来型の問診に操作的診断を組み入れれば,患者に特有の悩みを受け止めつつ,漏れの少ない診断面接が可能となるように思える.

キーワード
うつ病、精神科診療、面接法、操作的診断

目次へ戻る



一般救急と精神科の連携:自殺未遂者ケアのいま
河西 千秋**  石井 貴男*   井上 佳祐* 白石 将毅*   木川 昌義*
*札幌医科大学医学部神経精神医学講座 **同教授

要  旨
 我が国の自殺率は極めて高い水準にあり,自殺の最大の危険因子である自殺未遂者対策は公衆衛生上の喫緊の課題であるが,最近,「自殺企図の再発防止に対する複合的ケース・マネージメントの効果:多施設共同による無作為化比較試験(ACTION-J)」の成果が,我が国から発信された.これにより,救急医療部門と精神科が連携し,自殺未遂者に対して一定のケース・マネージメント介入を行うことで,自殺再企図を抑止できることが,世界で初めてエビデンスをもって検証された.このモデルは,すでに成果公表前から注目され,厚生労働事業に反映されていたが,2016年度からは,この介入モデルに則った病院内の体制整備と介入実践に対して,新規診療報酬項目が設定され,エビデンスに基づく自殺未遂者ケアが医療制度化された.

キーワード
介入、救急医療、ケース・マネージメント、自殺未遂者

目次へ戻る



「新型うつ病」は学会で認められた正式病名ではない ~しかし,だからこそ,放置せず取り組む必要がある~
小笠原 一能*1  尾崎 紀夫**1
*1名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野客員研究者 **1同教授

要  旨
 メディアの語る“新型うつ(病)”は,元来,精神医学的な“うつ病”の定義に一致しない多様な抑うつ状態の1つだが,それにもかかわらず従来の“うつ病”と同等に扱われ,休養指導や抗うつ薬投与などで画一的に対応された結果,回復が遅延し,職場を中心に社会問題化したものと考えられる.今後は,患者に対する偏見を防ぎつつ,診断の精密化と,薬物投与に限局しない治療方略によって,この新たな状況に対応することが望まれる.

キーワード
うつ病、新型うつ、診断、治療、ガイドライン

目次へ戻る



妊娠・出産とうつ病
加茂 登志子
東京女子医科大学附属女性生涯健康センター 教授

要  旨
 妊娠・出産・子育てをめぐる精神医学は,急速に変化しつつある.本稿では,産後うつ病から周産期うつ病へのパラダイムシフトの意味と,それに沿った精神科治療の在り方について考える.20世紀後半以降,産後うつ病の出現頻度やアウトカムに関する大規模疫学調査が行われ,公衆衛生的問題としての対応が重要視されるようになった.女性のうつ病治療全般に,将来的な妊娠・出産・授乳の可能性の視点まで取り入れた,包括的治療マネージメントガイドラインが求められる方向にもある.

キーワード
うつ病、女性、周産期、ガイドライン

目次へ戻る