最新醫學 71巻8号 
特集 Structural Heart Diseaseの経カテーテル治療
   -高品質な医療を目指す-


要  旨


座談会
 Structural Heart Diseaseの経カテーテル治療が目指す高品質な医療
  -これからの循環器診療での位置づけ-

榊原記念病院         桃原 哲也
九州大学           有田 武史
大阪大学           鳥飼 慶
榊原記念病院         高山 守正(司会)

 座談会の内容
 ・TAVIの現状
 ・ハートチーム
 ・SAPIEN XTとCore Valveの使い分け
 ・SAPIEN 3
 ・今後の方向性
 など
 
   鳥飼先生  有田先生   高山先生   桃原先生

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先天性心疾患
心房中隔欠損症への経カテーテル欠損孔閉鎖術
―小児科・内科協力の集計から見える本邦の成績と治療法選択―

矢崎 諭*
* 榊原記念病院小児循環器科 部長

要  旨
 心房中隔欠損症のカテーテル閉鎖術は,我が国への導入から10年が経過し,7,000 例を超える治療実績となっている.閉鎖デバイスも2機種が選択可能となっており,外科手術と並ぶ標準的治療としての位置づけが確立された.個別の解剖に応じた合併症リスクの層別化を治療選択に生かして,成績の向上を追求すべき時代となっている.

キーワード
心房中隔欠損、カテーテル治療、デバイス閉鎖術、構造的心疾患

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先天性心疾患
動脈管開存の経カテーテル閉鎖術
―治療の歴史から最新の治療成績―

富田 英*
* 昭和大学横浜市北部病院循環器センター 教授

要  旨
 動脈管開存(PDA)に対するカテーテル治療の歴史は古く,1967年PorstmannらによってIvalon プラグを用いた閉鎖術が初めて報告された.その後,多くのデバイスによるカテーテル治療が試みられたが,コイルの導入後,我が国でも標準的な治療法として定着した.AMPLATZERR Duct Occluder(ADO)により,PDAに対するカテーテル治療の適応は広がりつつあるが,年齢,体重,PDAの形態などにより,適応には一定の限界がある.これらの限界を克服するためのデバイス開発が進められている.

キーワード
動脈管開存(PDA)、経皮的PDA閉鎖術、AMPLATZER®Duct Occluder、コイル、先天性および小児期発症心疾患に対するカテーテル治療の適応ガイドライン

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大動脈弁狭窄症
進歩する TAVI 治療の日本と世界の現状,その行き先は

林田 健太郎*
* 慶應義塾大学医学部循環器内科 専任講師

要  旨
 TAVIはSAVRが不可能,または高リスクな患者における治療オプションとして2002年に誕生し,現在まで全世界で30万人以上が治療を受けている.すでに5年の成績までは明らかになっており,近年は中等度リスクの患者に対してもSAVRに対してより低い死亡率を示している.本稿ではTAVIの世界,そして本邦における現状と今後の展望について概説する.

キーワード
ぢ動脈弁狭窄症、TAVI、SAVR、適応

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大動脈弁狭窄症
経心尖アプローチによる TAVI の注意点

内藤 和寛*   高梨 秀一郎**
* 榊原記念病院心臓血管外科 ** 同主任部長

要  旨
 経心尖アプローチによる経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)は,経大腿アプローチが難しい場合に選択される.適切な体位,皮膚切開,および穿刺部位が重要である.シースの挿入後は出血制御に注意を払う.また,シースの操作により最適透視角度がずれることがあるため,植え込み直前に確認する.アウトカムの改善のため,傍脊椎ブロックが有効である.冠動脈病変を合併する患者では,低侵襲冠動脈バイパス術との併用も考慮する.

キーワード
経カテーテル的だいどうみゃく弁植え込み術、経心尖、体位、傍脊椎ブロック、低侵襲冠動脈バイパス術

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大動脈弁狭窄症
低心機能を呈する重症大動脈弁狭窄症への TAVI 複合戦略
前田 孝一*

* 大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科

要  旨
低心機能を有する大動脈弁狭窄症(AS)患者の場合,その病因[虚血性,複合弁膜症,非代償性(decompensated)ASなど]や大動脈弁治療による効果を評価する一方で,併存疾患を含めたTAVIとしての適応の評価を迅速に行う.また治療に関しても,いかに安全に行うかを迅速に検討しなければいけない場面もあり,これらは各施設のハートチームの手腕が大きく結果に影響する症例群と考える.

キーワード
低心機能、経カテーテル的大動脈弁植え込み術、虚血性心筋症、非代償性大動脈弁狭窄症

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僧帽弁閉鎖不全症
MitraClip の実臨床が進む米国の現状と機能性僧帽弁閉鎖不全症への進展

松本 崇*
* 仙台厚生病院心臓血管センター

要  旨
 MitraClipシステムによる経皮的僧帽弁形成術は,2013年に米国食品医薬品局からの承認を取得し,実臨床への導入が始まった.承認を受けた対象は高リスクな一次性僧帽弁閉塞不全症(MR)であり,その導入は円滑に行われ,良好な初期成績を達成した.一方で,機能性MRに対しては臨床試験が施行されているが,臨床現場からのニーズは高く,MitraClipの早期導入,そして既存の治療法に存在するアンメットニーズ(Unmet Needs)の解消が期待される.

キーワード
僧帽弁閉鎖不全症、カテーテル治療、MitraClip

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僧帽弁閉鎖不全症
欧州における僧帽弁閉鎖不全症への経カテーテル治療の現況

大野 洋平*
* 東海大学医学部内科学系循環器内科学

要  旨
 僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する経カテーテル治療は,主に手術リスクの高い患者の治療オプションとして登場してきた.経カテーテル治療は,すでに確立している外科的治療法を多少変更したものであることが多い.カテーテルによるデバイス治療は,これら外科的アプローチをより少ない手技リスクで真似て行うというのがコンセプトである.本稿では,MitraClipによる弁尖形成術,経カテーテル僧帽弁輪形成術,経カテーテル僧帽弁留置術など,欧州における現状についてまとめる.

キーワード
僧帽弁閉鎖不全症、MitraClip、経カテーテル僧房弁形成術、経カテーテル僧房弁留置術

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肺動脈弁,三尖弁
米国先進治療施設における肺動脈弁治療,三尖弁治療
佐地真育*1*2

*1 榊原記念病院循環器内科
*2 Structural Interventional Fellow, University of Virginia

要  旨
 従来,先天性および後天性高度弁膜症疾患は外科手術のみが侵襲的治療として行われてきた.そのため,そのリスクから侵襲的治療を断念せざるを得ないこともあった.自己三尖弁に対する治療はまだ発展の余地があるが,近年のカテーテル技術の目覚ましい進歩により,肺動脈弁不全および三尖弁位外科的生体弁不全症例は低リスクに治療を行うことが可能になった.ハートチームによる患者にあったハイブリッド治療を提供することが望まれる.

キーワード
カテーテル、低侵襲、ハートチーム、弁膜症、先天性

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肥大型心筋症
Septal Reduction Therapy の展開 ―経皮的アルコール中隔心筋焼灼術の短期・長期効果―
高見澤 格*   山村善政*   高山守正**

* 榊原記念病院循環器内科 ** 同副院長・循環器内科部長

要  旨
 閉塞性肥大型心筋症(hypertrophic obstructive cardiomyopathy:HOCM)は,明らかな心肥大を来す原因なく左室ないしは右室心筋の不均一な心肥大を来す疾患で,左室拡張能低下に加え左室内閉塞による圧較差の出現,相対的心筋虚血,僧帽弁逆流,致死性不整脈の出現といった多彩な臨床像を呈することが知られている.その主要臨床イベントは心不全,突然死,脳卒中であるが,左室内閉塞は心不全の原因ばかりでなく,突然死を引き起こす致死性不整脈の誘引になるため,いかに左室内圧較差を改善するかは重要な課題である.HOCM患者が有する左室内閉塞に対する治療は,ビソプロロールなどのβ遮断薬,シベンゾリンやジソピラミドといったⅠa群,ベラパミルを代表とするCa拮抗薬による薬物治療が第1選択である.これらの薬剤は左室内圧較差を軽減するばかりでなく,拡張能障害の改善,心筋肥大退縮効果,抗不整脈作用などを有し,長期投与することでHOCM患者の予後を改善することが示されている1).しかし,薬物治療では十分に左室内圧較差を軽減できず,臨床症状が残存する症例は少なくない.十分な薬物治療でも左室内圧較差が30mmHgを超えると予後が不良であることが示されているため2~4),薬剤抵抗性の重症例では中隔心筋縮小術(septal reduction therapy:SRT)が必要である.欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインにおいても,薬剤抵抗性で左室内圧較差が50mmHgを超える重症心不全患者(NYHAⅢ~Ⅳ)に対してクラス1(エビデンスレベルB)で推奨されている5).本邦においても2014年にガイドラインが示され,薬物治療抵抗性の心不全症状,狭心症状,失神がある患者において,左室内圧較差が50mmHg以上ある場合はクラス1として推奨されている6).SRTとして以前から,外科的治療である中隔心筋切開切除術(Morrow手術)が欧米では第1選択として良好な成績が報告7)されているが,近年カテーテル治療によるSRTとして経皮的アルコール中隔心筋焼灼術(percutaneous transluminal septal myocardial ablation:PTSMAまたはalcohol septal ablation:ASA)の良好な初期成績と遠隔期成績が報告されている.本稿では当院での経験も踏まえ,PTSMAの急性期および慢性期の治療成績に関して言及する.

キーワード
経皮的中隔心筋焼灼術、超選択的的心筋コントラストエコー、心筋構造異常

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肥大型心筋症
肥大型心筋症に対する中隔心筋切除術と僧帽弁複合体手術
内藤 和寛*   高梨 秀一郎**

* 榊原記念病院心臓血管外科 ** 同主任部長

要  旨
 肥大型心筋症の中でも,中隔の肥厚が高度で,左室内圧較差が大きく,薬物治療に抵抗する症例に対しては,中隔心筋切除術が適応となる.広範な中隔肥厚に対しては,従来から広く行われているMorrow手術に加え,経心尖的拡大心筋切除術が有効である.肥大型心筋症は僧帽弁前方運動により僧帽弁に変性を来すうえに,僧帽弁下組織の異常を合併することも少なくなく,このため僧帽弁複合体全体を考慮した手術が必要になることが多い.

キーワード
肥大型心筋症、僧帽弁複合体、中流部閉塞、拡大中隔心筋切除術、心室瘤

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その他の治療
Vascular Plug の構造的心疾患への応用
原 英彦*

* 東邦大学医療センター大橋病院循環器内科 准教授

要  旨
 バスキュラープラグは血管閉塞を目的として開発され,国内ではセント・ジュード・メディカル社のAMPLATZERR Vascular Plug(AVP)が唯一のデバイスである.AVPには1~4まであるが,本邦で使えるものはAVP1,2,4である.楕円形,卵円形病変のためにデザインされたAVP3は認可されていない.また,本邦や米国では同デバイスの心臓内使用も認められておらず,構造的心疾患には適応外使用となる.
キーワード
バスキュラープラグ、経皮的弁周囲逆流閉鎖術、冠動静脈瘻

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その他の治療
ショックバイタルへの新しい循環補助 Impella の理論と有効性
中田 淳*

* Schwabing Hospital, Munich
要  旨
 急性冠症候群をはじめ,劇症型心筋炎,心室性不整脈等による心原性ショック患者は,原疾患の治療と平行して,血行動態安定のためにしばしば機械的循環補助が必要となる.今日,米国およびヨーロッパで用いられている小型心臓ポンプ(Impella:Abiomed)は,左室内圧容量負荷減少による心筋酸素消費量の減少,心負荷軽減効果がある.

キーワード
心原性ショック、小型心臓ポンプ(Impella)、機械的補助循環法、心負荷軽減効果

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痛みのClinical Neuroscience
(14)Functional Pain Disorder 3.複合性局所疼痛症候群
柴田 政彦   
大阪大学大学院医学系研究科疼痛医学寄附講座 教授

要  旨
四肢の外傷後に痛みが遷延し,浮腫,皮膚温の変化,発汗や発毛の異常,関節可動域制限や拘縮を伴う場合,複合性局所疼痛症候群と呼ばれる.古くから一部の患者に発症するこの病態の機序は謎に包まれていたが,近年,脳機能の変化を伴うことが明らかになってきており,末梢の炎症とともに本症候群の原因や治療と関連する重要な現象として注目されている.外傷後の発症が多いことから,心理社会的要因も絡みやすく,治療抵抗性であることが少なくない.


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連載
肉眼解剖学者がみたヒト大脳の立体構造

 脳の肉眼解剖学に40年間携わってこられた金沢医科大学・篠原治道先生による誌面講義の第17回は「外側・下方からのアプローチ(6)外側膝状体と内側膝状体」です。
 開業医、研修医、専門医の方々にもご興味やご関心をもって頂けるような内容となっています。

外側・下方からのアプローチ(6)外側膝状体と内側膝状体(本文より)

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トピックス
肺がんにおける EGFR エクソン 20 挿入遺伝子変異
安田 浩之*
* 慶應義塾大学医学部呼吸器内科
要  旨
 EGFRエクソン20挿入遺伝子変異は,全EGFR遺伝子変異の4~10%を占める遺伝子変異群である.EGFRエクソン20挿入遺伝子変異の多くは,第1世代 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKIs)に耐性であることが知られている.近年,第3世代EGFR-TKIsの一部が同変異に有効である可能性が報告された.本稿では,EGFRエクソン20挿入遺伝子変異に関して,頻度や分布,EGFR-TKIsへの感受性などについて,近年得られた知見も含めて概説する.

キーワード
肺がん、EGFRエクソン20挿入遺伝子変異、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬

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トピックス
iPS 細胞技術を使った軟骨疾患研究
妻木 範行*
* 京都大学 iPS 細胞研究所(CiRA)増殖分化機構研究部門細胞誘導制御学分野 教授

要  旨
 人工多能性幹細胞(iPS細胞)は,体細胞である皮膚細胞や血液細胞から作られる細胞で,ほぼ無限に増やすことができ,かつ,体のあらゆる組織の細胞に分化できる.これらの性質により,iPS細胞技術は種々の組織/臓器の疾患の再生治療法開発と疾患モデル研究を飛躍的に進めうる.関節軟骨損傷に対しては,iPS細胞から軟骨細胞/軟骨組織を作り,損傷部に移植する再生治療研究が進んでいる.自己iPS細胞だけでなく,ボランティアドナーから作られたiPS細胞ストックを使った同種iPS細胞由来軟骨移植研究が計画されている.また,骨系統疾患の中で軟骨異常が原因である軟骨形成異常症に対しては,患者の皮膚細胞や血液細胞からiPS細胞を作り,それを軟骨細胞へ分化誘導させることで,患者の病的軟骨に相当する組織を培養皿上に作ることができる.これを疾患モデルとして,骨系統疾患の病態解析や創薬研究が行われている.

キーワード
人工多能性幹細胞、関節軟骨損傷、軟骨再生、骨系統疾患、FGFR2軟骨形成異常症

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症例
食思不振による低栄養状態に対して経腸栄養を行いながら化学放射線療法を完遂し奏効が得られた切除不能膵頭部がんの1例
壷井邦彦*1  鎌田 実*2  足立幸人*3

*1 社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会野江病院消化器外科 *2 同放射線治療科部長 *3 同消化器外科・副院長


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